赤文字は、現在の計画から 追加・修正した主な箇所を示しています。 レイアウトや体裁などについては「案」作成の際に整えます。 世田谷区風景づくり計画 改定素案 (令和7年(2025年)9月) 令和8年(2026年)4月 世田谷区 あいさつ こちらに保坂区長あいさつ文を掲載予定です。 目次 T.風景づくりの基本的な考え方 第1章 計画の主旨 1-1 1.『風景』と『風景づくり』 1-2 2.計画策定の背景と目的 1-5 3.本計画の構成 1-6 4.風景づくりのあゆみ 1-9 第2章 世田谷の風景特性 2-1 1.世田谷の風景の成り立ち 2-2 2.世田谷の風景特性 2-6 第3章 風景づくりの理念・方向性 3-1 1.風景づくりの理念  3-2 2.取組みの基本姿勢 3-2 3.地域の個性を活かす 風景づくりの方向性 3-8 4.協働でまちの魅力を高める 風景づくりの方向性 3-22 U.風景づくりの取組み 第4章 区民主体の風景づくり 4-1 1.区民主体の風景づくりの推進  4-2 2.風景づくりの普及・啓発 4-12 第5章 建設行為等における風景づくり 5-1 1.建設行為等の計画をする前に 5-2 2.建設行為等における風景づくりの誘導 5-4 3.風景づくりの方針・基準など 5-10 4.建設行為等の届出 5-56 第6章 屋外広告物における風景づくり 6-1 1.屋外広告物の表示等に関する基本的な考え方  6-2 2.屋外広告物の表示に関する基本事項  6-2 3.「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」による屋外広告物の誘導 6-3 4.協議制度による屋外広告物の誘導 6-4 第7章 公共施設における風景づくり 7-1 1.公共施設における風景づくりの考え方 7-2 2.公共施設の整備に関する指針 7-2 3.「風景づくりのガイドライン(公共施設編)」に基づく整備など 7-2 4.景観重要公共施設に関する事項 7-5 第8章 様々な制度を活用した風景づくり 8-1 1.景観法に基づく制度の活用 8-2 2.他の法令などに基づく制度の活用 8-3 V.風景づくりの推進体制 第9章 協働による風景づくりの推進体制 9-1 1.協働による風景づくりの推進体制  9-2 2.計画の検証・評価 9-4 関連資料 1.風景特性基準の対象 (1)まとまったみどり基準 (2)河川基準 (3)緑道基準 (4)歴史的資産基準 (5)農の風景基準 (6)拠点基準 (7)幹線道路基準 (8)世田谷線沿線基準 2.地域風景資産、界わい宣言一覧 (1)地域風景資産 (2)界わい宣言 参考資料 1.用途地域図 2.色彩について 3.風景づくり計画見直しの検討経過 4.風景づくり委員会名簿 5.用語集 「風景づくり計画の構成図」をこちらに図示しています。 T.風景づくりの基本的な考え方 第1章 計画の主旨 第1章は、計画の主旨として本計画の全体的な枠組みを示します。 まず、「風景」「風景づくり」の言葉の定義を確認し、本計画策定の背景と目的を明らかにします。 また、本計画の位置づけや計画の全体構成などを示すとともに、これまでの世田谷における風景づくりの取組みを整理します。 1.『風景』と『風景づくり』                              世田谷区では、景観法(以下、本計画において景観法を「法」と記載します)の目的である良好な景観の形成を進めていくにあたり、「景観」ではなく「風景」という言葉を使用しています。 「風景」は、目に見える景色だけではなく、そこに生活する人々がつくりだすものであり、暮らしや営みなどの積み重ねによるという、これまで世田谷区で進めてきた街づくりの取組みや議論を経る中で得られた考え方によるものです。 このことを踏まえ、本計画において「風景」および「風景づくり」を以下のように定義します。 「風景」とは、風土と文化や歴史の表れであり、そこに生活する人々によって創造され、受け継がれてきたものです。それゆえ風景は、そこに生活する人々のまちへの愛着を深め、地域の個性や価値観を形成するものであり、そこに生活する人々の貴重な共有の財産です。 「風景づくり」とは、地域の個性あふれる世田谷らしい風景を、守り、育て、つくることです。 こうした風景づくりに取り組むことにより、みどりとみずに恵まれた良好な住宅都市として魅力や質をさらに高めていきます。 歴史ある資源を守ること、建築物の建築、庭先の草木を育てることや地域の祭りの継承など、日常の暮らしの中の何気ないひとつひとつの行動が風景づくりにつながっています。 (この計画における「みどり」は、「世田谷区みどりの基本計画2018年度〜2027年度」にて示す「みどり」の対象とは異なります。) 地域の個性を活かし協働でまちの魅力を高める世田谷の風景づくり 「窓辺に花を飾る」、「敷地周りを掃除する」「地域の祭りに参加する」「周辺と調和した建物をつくる」など、日常の暮らしの中の何気ないひとつひとつの行動が、風景づくりにつながっています。 このような「風景づくりにつながる行動」を、ここで鳥観図で示しています。 区民、事業者、町内会・自治会・NPO、大学・学校・保育園、行政など、世田谷に関わるあらゆる主体が、日々の暮らしの中で、風景づくりを意識して取り組むことで、地域の個性を活かした世田谷のまちの魅力を高めていきます。 2.計画策定の背景と目的                                世田谷区は武蔵野台地の西南部に位置し、江戸や東京都心の近郊として発展してきました。その風景は豊かなみどりとみずや変化に富んだ地形に各時代の人々の生活が積み重なってできてきたものです。 昭和50年(1975年)以降、様々な機会を通して区民や事業者の参画により風景づくりを進めると共に、都市デザインの先進自治体として公共事業と民間建築が連携し、快適で特色のある住宅都市の風景を形成してきました。平成11年(1999年)3月には「世田谷区風景づくり条例」を制定し、建設行為の指導誘導の他、区民の主体的な風景づくりを推進する仕組みである「地域風景資産の選定」や「界わい宣言の登録」といった、区民、事業者、区が協働で風景づくりを推進する意義や仕組みを位置付けました。 このような風景づくりの取り組みを進める中「景観法」(平成16年6月18日法律第110号)の制定により、地方自治体によって法を根拠とした景観形成の推進が可能となりました。 区ではこれまでの取り組みをさらに推進していくために、平成19年12月に東京都の区市町村では初の景観行政団体となり「風景づくり計画」を策定し、平成20年4月より運用を行ってきました。 平成27年(2015年)4月には、計画の改定を行い、風景特性の再整理や風景づくりの理念・方向性を明らかにするとともに、建設行為等における風景づくりについては、一般地域を細分化し、風景特性基準の設定、公共施設や屋外広告物に関する事項の規定など、きめ細かい風景づくりを進めてきました。 この度、概ね10年の計画期間が満了することから、令和6年(2024年)度に改定された世田谷区基本計画や令和7年(2025年)度に改定された世田谷区都市整備方針の第2部「地域整備方針(後期)」などの上位計画との整合性や社会状況の変化への対応などを踏まえ、以下の3つの視点のものと見直しを行いました。 1.区民が「風景づくり」を身近に感じ、取り組める仕組みを整えます。 2.街の未来を考えて、風景づくりの誘導を進化させます。 3.地域の風景を先導する公共施設の風景づくりをさらに推進します。 今回の改定により、区の風景づくりへの理解がさらに深まるととともに、本計画の各取組みを総合的に運用することにより、世田谷の風景の魅力をさらに高めることを目指します。 3.本計画の構成                                    (1)計画の位置づけ 風景づくり計画は、「世田谷区基本構想」に即し策定された都市整備領域の分野別整備計画の一つとして位置付けるとともに、「世田谷区基本計画」や風景づくりに関連する他の分野別計画と整合するものです。 また、本計画は景観法第8条及び世田谷区風景づくり条例に基づく景観計画として定め、東京都景観計画にも即した世田谷区らしい風景づくりを総合的に推進していくための計画です。 「風景づくり計画の位置づけ」を、ここで図示しています。 (2)計画の全体構成 本計画は「T.風景づくりの基本的な考え方」「U.風景づくりの取組み」「V.風景づくりの推進体制」の3つの内容によって構成されています(P4〜5 「風景づくり計画の構成図」参照)。 「T.風景づくりの基本的な考え方」では、本計画の位置付けや全体構成等の計画の主旨、世田谷の風景の特性を整理し、世田谷区の風景づくりの理念や方向性を示します。 「U.風景づくりの取組み」では、「T.風景づくりの基本的な考え方」に基づき実施する風景づくりの具体的な取組みを示します。区民主体の風景づくりを支援する制度や風景づくりの普及・啓発など、主に区民が中心となって進める取組み、また、建設行為等や屋外広告物における風景づくりの誘導を図るための方針・基準、公共施設における風景づくりの考え方、景観重要公共施設、景観重要建造物や樹木に関する事項など、主に区や事業者が中心となって進める取組みなど、多様な主体が進める風景づくりを支える区の取組みを示します。 「V.風景づくりの推進体制」では、風景づくりの理念や方向性の実現に向けて計画に定められた取組みが適切に実施されるよう、計画の推進体制などを示します。 (3)計画の期間 本計画は、都市整備領域の分野別整備計画として「世田谷区都市整備方針」に即すことから、当該方針の「第二部 地域整備方針(後期)」の計画期間に即し、概ね10年を計画の期間とし、上位計画の変更や風景づくり重点区域の指定などにより必要が生じた場合は、適宜見直しを行います。 (4)対象区域 風景づくり計画の対象区域は、世田谷区全域とします。これは法第8条第2項第1号の「景観計画区域」に該当するものです。 (5)計画とSDGsとの関係 SDGs(持続可能な開発目標)とは、平成27年(2015年)の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標のための2030アジェンダ」にて記載された、令和12年(2030年)までに世界中で取り組む国際目標で、持続可能な世界を実現するための17のゴール(目標)から構成されています。 区では、「世田谷区基本計画」において、SDGsと各分野別政策との関連を明らかにし、関連性を意識しながら分野横断的な施策展開を図り、持続可能な社会の実現を目指しています。 本計画においても、「世田谷区基本計画」で示した分野別政策「18 魅力ある街づくり」と関連する SDGsのゴールを意識しながら、風景づくりの取組みを進めていきます。 「世田谷区基本計画」の「政策18 魅力ある街づくり」と関連するSDGsのゴール 産業と技術革新の基盤をつくろう 【インフラ、産業化、イノベーション】 強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る。 住み続けられるまちづくりを 【持続可能な都市】 包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する。 気候変動に具体的な対策を 【気候変動】 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。 4.風景づくりのあゆみ                                世田谷区では、昭和50年(1975年)の区長公選制復活から、区の特性を活かした区民参加の街づくりを積極的に進めています。昭和55年(1980年)に有識者による都市美委員会を発足、街づくり事業の都市デザインの導入、公共施設のデザインの向上を目指し、調査検討が行われました。この過程の中で、「魅力ある風景づくり」を進めるには、風景は地形・自然、歴史・文化、生活により形成されるものであり、区民や事業者など風景の形成にかかわる主体と区の創意工夫、日々の活動により形成され維持されるものであること(ただ表層の整備を行えばよいのではないこと。また、規制・誘導のみに頼るものではないということ。)を確認します。そこで他の自治体に先駆け、区民参加で公共施設整備を進めるとともに、せたがや百景の選定など、区民が自分たちの街や風景を考え、愛着を持ってもらえるよう、普及啓発の取組みを積極的に進めてきました。 このような取組みを重ね、区では平成11年(1999年)に「世田谷区風景づくり条例」を制定しました。風景づくり条例には、区民、事業者、区のそれぞれの風景づくりの役割を示すとともに、建設行為等の指導誘導のほか、区民の主体的な風景づくりを推進する仕組みとして「地域風景資産の選定*」や「界わい宣言の登録*」を位置づけ、区民、事業者、区が協働で風景づくりを推進する意義や仕組みを定めています。 その後、景観に対する社会的な関心の高まりを受けて、平成16年(2004年)に景観法が制定され、地方自治体が法に基づき地域独自の良好な景観形成を進められるようになりました。 区では平成19年(2007年)に景観法に基づく景観行政団体となり、「風景づくり計画」を策定し、地域の個性や魅力を高める風景づくりを推進するための事業・施策に取り組んでいます。 コラム:これまでの風景づくりの取組み(抜粋) @区民参加による公共施設整備の取組み  煙突コンペ(世田谷清掃工場煙突色彩デザイン公募) 世田谷区では、昭和63年(1988年)、世田谷清掃工場の煙突の建替えに伴い、煙突の色彩デザインを一般公募しました。1,040点の応募作品が857人から寄せられ、審査委員会による審査により、砧公園や世田谷美術館などの周囲の環境と調和した色彩の煙突が誕生しました。作品展と表彰式は世田谷美術館で開催されました。現在も、空と雲を表現したデザインのこの煙突は、環八通り沿道のランドマークとして親しまれています。  応募用紙を筒状に巻くと煙突の形になるといった工夫は、その後の「外環道東名ジャンクション(仮称)換気塔色彩デザインコンクール」においても引き継がれました。 A区民主体による風景づくりの取組み せたがや百景と地域風景資産 「せたがや百景」は、昭和59年(1984年)に、「発見 わがまちのいい風景」をキャッチフレーズに区民から「好ましい風景」を募り、推薦された2,700の風景から選定委員会による議論、延べ92,000票に及ぶ区民投票により上位100か所の風景を選定した取組みです。 選定後には、冊子や百景カルタ、切り絵ハガキなどの作成、選定されていることを示す石柱サインなどの設置、百景ラリーや百景コンテストの開催など、多くの区民に参加頂き、親しまれてきました。さらに、百景を活かした、また百景を支えるまちづくりを目指し検討が進められましたが、時代の流れとともに変化や消失していくものが出てきました。 そこで、新たな風景づくりの取り組みとして、ただ特徴的な風景、素敵な風景を選定するだけでなく、区民が主体となり大切にしたい身近な風景を守り、育て、つくる風景づくりの手がかりとなることを目的とした「地域風景資産」制度が平成11年(1999年)に風景づくり条例に規定されました。 「地域風景資産」の選定は、風景づくり活動を生み出すための仕組みであり、地域で大切にしたい風景のために活動する人の輪を広げ、風景を育んでいくことを目指しています。そのため、資産を選定する過程においても、あらゆる場面で多くの区民が関わってきたことが特徴です。平成14年(2002年)の第1回選定からこれまでに計3回の選定により86か所の地域風景資産が選定され、区民主体の風景づくりが続いています。 B広域的かつ長期的な開発における区民、事業者、区の協働による取組み 「北沢デザインガイド」を活用した連続した空間の風景づくり 「北沢デザインガイド」は、小田急線(代々木上原駅〜梅ヶ丘駅間)の上部空間に区が整備する通路、緑地・小広場などの公共施設について、地域の個性を活かしながら、秩序のある連続した空間づくりに役立てるためのデザインの指針として、平成27年(2015年)に策定しました。 「上部利用デザインワークショップ」により区民参加でつくった3つの「デザインコンセプト」に基づき、区施設の整備におけるデザインの方針や具体的方策をまとめています。ガイドで示す「デザインコード」については、区が整備する通路、緑地・小広場などの施設の設計・施工に反映させるとともに、周辺施設の整備においても「デザインコンセプト」の理念を共有し、新たな街の魅力が周辺の街に拡がっていくことを目指しています。 デザインコンセプト @四季を感じ、みんなにやさしい空間が、多様な人々をつなぐ A街の記憶や風景を映し、3駅につづく新たな路が、私たちの地域をつなぐ Bみんなで創り育て、ゆるやかに変わる場所が、時を超え心をつなぐ C地域の魅力や特徴を活かした風景づくりの取組み 風景づくり重点区域「界わい形成地区」の指定   区では、平成29年度(2017年度)より、奥沢1〜3丁目において、これまで地域の皆様が育んでこられた奥沢の魅力的な風景を守り育てて次世代へ引き継ぐことを目的とした「奥沢の風景を育むプロジェクト」に地域の皆様とともに取り組んできました。   平成29年度(2017年度)にまちあるきや意見交換会、セミナーを開催し、「これからの奥沢の風景」について考え、平成30年度(2018年度)からは、地域の特徴を活かした風景づくりを進めるために方針やルールを設けることができる制度である「界わい形成地区」指定の検討と、イベントの開催や普及啓発等の「風景づくりの実践」の両輪による取組みを地域の皆様とともに開始しました。 奥沢の風景を守り育てる手立てを考える「ワークショップ」や奥沢の風景の魅力を共有するためのイベント「風景祭」の開催や界わいニュースの発行などにより、地域の皆様とともに思いを共有し内容の検討を進めました。令和2年度(2020年度)には奥沢駅と奥沢子安公園方面を結ぶ斜めの道の愛称を募集し、令和3年度(2021年度)に奥沢小学校の子どもたちからも提案があった「道祖神通り」に決定しました。 そして、令和4年(2022年)6月30日、区内で初めての指定となる界わい形成地区「奥沢1〜3丁目等界わい形成地区〜みどりと人がつなぐおくさわの風景づくり〜」を指定し、同年10月1日より運用を開始しました。 令和6年(2024年)3月には、奥沢小学校でサクラの植樹式を行うなど、地域の子どもたちも風景づくりに参加し、郷土愛を育む取組みを進めています。 第2章 世田谷の風景特性 世田谷には、武蔵野台地の上に広がる住宅地、豊かに流れる多摩川、多摩川に沿った斜面地の国分寺崖線のみどり、そして世田谷の原風景とも言える農の風景や歴史を感じさせる風景、にぎわいのある風景など多様な風景があります。 第2章では、世田谷区が歩んできた時代の流れを踏まえながら、世田谷の風景の成り立ちについて把握するとともに、世田谷の風景を特徴づけている要素を風景特性として整理し、それぞれの内容について示します。 1.世田谷の風景の成り立ち                            起伏豊かな世田谷の地形 世田谷区の地形は、南西部の多摩川に沿って成城・大蔵・瀬田・野毛に至る国分寺崖線を境に、北東側は台地、南西側は低地に分けられます。武蔵野台地の一部である台地部には、幾筋かの河川によって浸食された、丘や谷の起伏が存在します。この地形が世田谷の風景の基盤となっています。 また区内には、河川沿いを中心に先土器時代の集落跡から中世近世の城館や民家跡などが確認されており、古くから地形状況を踏まえた人々の営みがあったことがわかります。 近郊農村から始まる世田谷の街並み(江戸時代〜明治末期) 江戸時代の頃になると、江戸市中に向けて野菜を供給する近郊農村として発展してきました。現在でも各所に残されている屋敷林や農地は、世田谷の原風景と言えるものです。 江戸時代から風光明媚な景勝地としても知られていた国分寺崖線では、明治の終わり頃から、実業家・政治家などの別邸が建てられました。現在でもその名残をとどめています。 鉄道の開通と世田谷の街並みの形成(明治末期〜昭和初期) 明治の終わりから昭和初期にかけて、鉄道の建設が進みます。明治40年(1907年)に渋谷〜二子玉川間で玉川電車(現田園都市線)が開通し、大正4年(1915年)には京王電車(現京王線)の新宿〜調布間が開通しました。大正末期から昭和初期にかけて、下高井戸線(現世田谷線)、小田急線、目蒲線(現目黒線)、東横線、大井町線が相次いで開通し、昭和8年(1933年)の井の頭線の開通で、ほぼ今日の区内の鉄道網ができあがりました。 鉄道の開通と呼応するように、住宅地の開発も進められました。大正1〜2年(1912〜1913年)に開発された新町住宅は、当時の駒沢村深沢と玉川村下野毛にかかる山林・原野を切り開いた民間の分譲住宅地です。また、目蒲線(現目黒線)の開通を機に多くの海軍士官たちが住居を構えた奥沢の「海軍村」をはじめ、当時の雰囲気を今に伝える住宅地の風景が残されています。 大正12年(1923年)9月1日の関東大震災は、東京・横浜を中心に大きな被害をもたらしました。世田谷区には震災により罹災した避難民が身を寄せ、そのまま定住した人もおり、人口は急増しました。下町各所から寺院が移転した烏山寺町、牛込(現、新宿区)から移転してきた学校とその分譲住宅地で形成された成城町、下谷(現、台東区)から移転してきた商店からなる太子堂の下の谷商店街などの特徴ある街は、関東大震災を機に形づくられたものです。 大正13年(1924年)の組合設立準備から昭和29年(1954年)の事業完了まで、30年をかけて行われた玉川全円耕地整理事業は、現在の世田谷区の面積の約4分の1を占める玉川地域(旧玉川村全域)を対象としたものです。昭和初期は、基盤整備の全盛期で都市計画法による土地区画整理事業も数多く着手されました。 第二次世界大戦後の急激な都市化 第二次世界大戦後、東京への人口集中と急激な市街化が進みました。軍用地の跡地には、昭和女子大学や東京農業大学をはじめ、中学校や高校、病院などの施設が数多く建設されました。また、昭和39年(1964年)に開催された東京オリンピックにあわせて、競技会場となった駒沢公園や馬事公苑、アクセス道路の整備など、多くのオリンピック関連事業による整備が行われました。また、昭和30年代から40年代にかけて、都営住宅第2団地(下馬アパート)や大蔵団地をはじめ、幾つもの大規模な集合住宅団地が建設されました。 都市デザインによる風景づくり 昭和50年(1975年)の区長公選制の復活をきっかけに、世田谷区の特性を活かした街づくりがスタートしました。昭和57年(1982年)に庁内に都市デザイン室が設置され、用賀プロムナードの整備やトイレコンペの実施など区民参加で魅力的な都市空間を生み出すとともに、せたがや百景をはじめとした普及・啓発事業が行われました。 平成11年(1999年)に風景づくり条例を制定し、平成19年(2007年)には都内区市町村初の景観行政団体となり、平成20年(2008年)に「風景づくり計画」を策定しました。地域風景資産の選定など、区民・事業者・区との協働による風景づくりに取り組んでいます。 「住宅都市」世田谷 令和3年(2021年)度の土地利用現況調査によると、区内宅地の約75%(区全体面積の50.4%)で住居系の土地利用がなされています。また、用途地域の指定では住居系が約9割(第一種低層住居専用地域が約5割)の面積を占めています。住居系用途地域の占める面積割合は23区の中で最も高く、世田谷区が住宅都市と言われる理由のひとつです。 また、区内の約4分の1をみどりとみずが占めています。区では、みどりの量の確保、質の向上、区民との協働の推進により、みどり率33%を目指しています(「世田谷みどり33」)。このような特徴を踏まえながら、「世田谷区建築物の建築に係る住環境の整備に関する条例」や「みどりの基本条例」等の制度を運用し、みどり豊かな住宅地の街づくりに取り組んでいます。 大規模な敷地などにおける土地利用の転換 社宅や寮などの大規模な施設の売却、屋敷林の伐採、団地の建替え、駅周辺の再開発事業等、大規模敷地の土地利用の転換により、以前の風景を継承しながらも、新しく道路、公園、駅前整備広場が整備されるなど風景が大きく変化しています。 三軒茶屋駅周辺においては、平成8年(1996年)、市街地再開発事業により世田谷区のシンボルともなるキャロットタワーが整備され、商業・業務機能の再整備、劇場の整備など文化と生活情報の拠点づくりが進められました。 また、平成16年(2004年)から着手された小田急線(代々木上原駅〜梅ヶ丘駅間)の連続立体交差事業及び複々線化事業による東北沢、下北沢、世田谷代田の3駅の地下化によって生じた線路跡地の一部が、通路や広場などの公共施設として活用されています。 二子玉川駅東側では、昭和60年(1985年)に閉園した二子玉川園(遊園地)跡地での再開発事業が平成27年(2015年)に完了し、住宅、商業施設、事務所などが一体となった新しい街に生まれ変わりました。 2.世田谷の風景特性                          (1)地形                                                        武蔵野台地を幾筋かの河川が浸食し形づくられた起伏の豊かな地形は、世田谷の風景の基盤となるものです。それらは国分寺崖線に代表される斜面地や坂道、高台からの眺望、国分寺崖線の稜線への眺めに風景の特性としてあらわれ、また河川と台地からなる起伏の中で形成される住宅地、商店街、公園・緑地にも読みとることができます。 風景をかたちづくる基盤となる地形 世田谷区の地形は、大きく武蔵野台地と多摩川の低地とに区分されます。台地から多摩川に向かって幾筋かの小河川が台地を深く刻み込みながら流れ込むことにより、国分寺崖線や23区で唯一の渓谷である等々力渓谷など、起伏に富んだ豊かな風景をつくりだしています。 河川、水路に沿って多くの埋蔵文化財が発見されていることは、当時の土地利用や生活の履歴を知る手がかりであり、また、台地の上で多く区画整理が行われてきたことや、斜面地に残る武蔵野の雑木林の自然風景など、世田谷特有の地形はこれまでの市街地の形成に大きな影響を及ぼしています。このように世田谷固有の地形は、世田谷の風景を形づくる基盤となっている重要な風景特性です。 起伏によりつくられる特徴的な見晴らし 地形の起伏によってつくりだされる高低差は、特徴的な眺めをつくりだしています。 国分寺崖線上から富士山への眺望、仙川の崖線上から市街地への見晴らし、市街地からの崖線や台地に残された樹林地への見通しや見渡し、台地から沢に下る坂道がつくる見晴らしは、台地を幾筋もの河川が刻み込んだ世田谷の地形の特徴を感じさせます。 特に国分寺崖線の崖上から多摩川や富士山などへの見晴らしは、段丘状の地形ならではのものであり、崖線の風景を特徴づける重要な要素です。歴史的にも江戸時代中期以降、瀬田の行善寺からの眺望は「玉川八景」として親しまれてきました。現在は、崖下平坦部の市街化も進み、当時の農村や自然の風景とは変わってきましたが、世田谷の中では希少な見晴らしのある風景を得ることができます。 地形を感じさせる坂道                       坂道は、起伏の豊かな世田谷の地形を感じさせる重要な要素です。坂道を通して展開する多摩川や市街地の見晴らしは、地形の豊かさを感じることができる特徴的な風景といえます。 ここに、風景特性(地形)の図があります。標高、遺跡、古道、緑道、河川、旧河川、鉄道を図示しています。 (2)みどり・みず                                                      国分寺崖線などの連続するみどりをはじめとして、武蔵野台地の面影を残す樹林地、寺社のみどり、大規模な公園や緑地のみどり、住宅地のみどり、宅地の開発に合わせて植えられた並木やシンボルとなる高木、また、豊かな流れを保つ多摩川や野川をはじめ様々な水辺や湧水がつくる風景は、世田谷の風景を形成する重要な要素です。 国分寺崖線を骨格とした連続するみどり 多摩川、野川に沿って国分寺市から大田区にかけて連続する国分寺崖線は、みどりが豊かで湧水などの自然環境に恵まれた、区を代表する風景です。 斜面地にまとまった樹林が連続する風景は、もっとも崖線らしさを特徴づけるもので、豊かな動植物を育む区内の生態系の要となっています。 崖線のみどりの連続性を感じさせる重要な要素として、松などの高木で特徴づけられるスカイラインがあげられます。多摩川や野川沿いからは、中遠景に崖線の連続したみどりのスカイラインを見渡すことができる場所が随所にあります。 樹林地や公園などのまとまったみどり 武蔵野台地の雑木林の面影を残す樹林地、寺社のみどり、大規模な公園や緑地には、比較的まとまったみどりが残されています。令和3年(2021年)度「みどりの資源調査」では、区全体のみどり率は24.4%で、そのうちの約7割が樹木や樹林に覆われた樹木地です。量感のあるまとまったみどりは、潤いのある風景を形成する核となっています。また、区民などと協働による公園緑地の管理を行うことで、良好な風景をつくっています。 街なかのみどり 街なかには、緑道や並木、シンボルとなる高木、敷地内を彩る花木など、様々なみどりの風景がありま かつての河川を暗渠化して整備した緑道は、その線形は残しつつ、今は憩いと安らぎを与える散歩道です。 住宅地の開発とあわせて植えられた桜やイチョウの並木は年を重ねるにつれて街の風景に溶け込み、風格をもたらしています。区の樹でもあるケヤキの高木は、かつて近郊農村であった世田谷の風景を語る上で欠かせない存在です。 また、敷地内にある手入れの行き届いた庭木や彩り豊かに飾られた花々の様子は、道行く人を楽しませるとともに、街の魅力を高めることに貢献しています。 潤いのある河川や水辺                          区内には多摩川をはじめ、野川や丸子川など、複数の河川が流れています。中でも多摩川は東京を代表する河川であり、豊かに広がるみどりとみずの風景は、人々に憩いと安らぎを与えています。 また、野川、丸子川、仙川などの水辺は、周辺のみどりと一体となり、潤いのある風景となっています。 国分寺崖線沿いには約90か所の湧水地点が確認されています。多くの水生生物や植物を育む多様な生態系は、豊かな自然を感じられる風景です。 ここに、風景特性(みどり・みず)の図があります。主な公園、まとまった緑地や公園のみどりを図示しています。 (3)地域の歴史・文化                                               地域のシンボルとして重要な意味をもつ古墳や寺社、世田谷ゆかりの文人を偲ぶ歴史的庭園、農の風景や近代住宅地の面影を感じさせる歴史的な建築物、身近なところに点在する碑、ボロ市などの催し、地域の新たな風景づくりに資する建築物・建造物などは、地域の歴史や文化を伝える重要な要素です。 地域の歴史を物語る歴史的資産                     区内には、数多くの遺跡があります。先土器時代、縄文時代、古墳時代の集落跡、高塚古墳や横穴古墳、中世近世の城趾や民家跡などその種類も豊富です。また、国や都、区が指定・登録する建造物や史跡などの文化財をはじめ、古くからある寺社、近代住宅地の面影を感じさせる歴史的な建築物や石碑なども、数多く存在します。 また、関東大震災の後多くの寺院が移転し、今もなお特徴的な街並みが形成されている烏山寺町のように、複数の建物などが集積することによって特徴的な風景が作り出されている「界わい」も幾つか見られます。 これらの点や面としての歴史的資産は、地域の歴史を物語るとともに、地域の風景を継承し、地域の魅力や個性を表すものとして貴重な存在です。 昔からの街道・古道                        区内には、五街道のひとつである甲州街道や、東海道の裏街道として重視されていた大山道、瀧坂道、登戸道(津久井街道)、鎌倉道などの街道や古道が存在します。 街道や古道沿いには、今でも往時の面影を残す風景が見られる場所もあり、地域の歴史が偲ばれる特徴ある風景をつくる要素です。 地域の魅力を高める伝統的な行事・催し      区内の各地では、地域の住民などが中心となり実施されてきた伝統的な行事や催しがあります。中でも、1月と12月の15・16日の年2回、代官屋敷を中心に通称ボロ市通りで行われる「ボロ市」は、400年以上の伝統を持ち、冬の風物詩として1日に約20万人もの人出でにぎわっており、ボロ市通りでは街並みに配慮した建物もつくられつつあります。 このような地域が培ってきた伝統的な行事や催しは、地域の歴史や文化を体感でき、季節の風物詩として風景を演出する要素のひとつです。 地域の新たな風景づくりに資する建築物・建造物             近年、新たに整備された建築物や建造物においても、地域の特性を踏まえた優れたデザインは、地域のシンボルとなり、新たな風景を先導するものとして大きな役割を果たします。 また、区民公募のコンペによりデザインされた世田谷清掃工場の煙突や、区民参加で整備された公園や緑道など、区民のアイデアが地域の新たな風景に活かされることで、区民の風景に対する愛着を高めることにつながります。 ここに、風景特性(歴史・文化)の図があります。重要文化財、指定文化財、都選定歴史的建造物、有形・無形民俗文化財、寺町界わい、ボロ市界わい、遺跡、特徴的な施設を図示しています。 (4)住宅地                                                        大正から昭和初期における分譲住宅地や、玉川全円耕地整理事業をはじめとした宅地開発、戦後の都市化や人口集中に伴う団地やマンション開発など、区内の住宅地は、開発された時期や方法、そこに住む住民らの生活の営みにより様々な風景があります。 時代の積み重ねから築かれてきた特徴ある住宅地           江戸の近郊農村であった世田谷は、明治維新以降、関東大震災、第二次世界大戦、高度経済成長期と、その時々の影響を受けながら、郊外住宅地から住宅都市へと大きく変化していきました。その時々の特徴的な風景の積み重ねが、現在の世田谷の風景を形づくっています。 <国分寺崖線沿いの別邸建築> 国分寺崖線は、江戸時代から風光明媚な景勝地として知られており、明治の終わり頃になると岡本から上野毛にかけて、実業家・政治家などの別邸が建てられるようになりました。今もなおこの周辺では崖線のみどりと共存した良好な住宅地の風景がみられます。 <鉄道の開通を契機につくられた特徴的な住宅地> 大正から昭和初期にかけて、鉄道の開通を契機に特徴的な住宅地がつくられました。 現在の桜新町は、玉川電気鉄道の沿線開発として、大規模な住宅地開発が計画的に行われたことが始まりです。また、目蒲線(現目黒線)の開通により多くの海軍士官たちが住居を構えた奥沢の「海軍村」、桜並木を中心に特徴的な街路が印象的な上北沢駅前の住宅地、成城学園の学園町として開発された住宅地など、幾つもの住宅地が形成され、今も当時の風景を知ることのできる街並みが残されています。 また、玉川地域(旧玉川村全域)で行われた玉川全円耕地整理事業によって整備された都市基盤は、現在のゆとりある整然とした街並みの基礎となっています。 <戦後の急激な住宅市街地化> 戦後の世田谷は東京への人口集中の影響を受けて急激な市街化が進みました。昭和30年代から40年代にかけて、都営住宅第2団地(下馬アパート)や大蔵団地をはじめ、幾つもの大規模な団地や企業の社宅等が建設されました。 一方で、道路などの都市基盤が整備されない中で市街化が進んだことにより、いわゆる密集市街地も形成されました。 <変化しつづける住宅市街地> 世田谷区は、住居系の用途地域指定が約9割を占める「住宅都市」です。近年は戸建て住宅や共同住宅の建替えに加えて、社宅や農地だった場所に民間の大規模マンションが建設されるケースが多く見られ、また、宅地の細分化など街並みの変化もみられます。 ここに、風景特性(住宅地)の図があります。主な大規模団地、戦前の特徴的な住宅地等、玉川全円耕地整理を図示しています。 (5)農                                                         農地や屋敷林の風景は、かつて近郊農村であった世田谷の原風景といえるものです。農地は現代都市において原風景の営みが感じられる貴重な風景であり、屋敷林は地域の目印になるみどりにもなっています。 世田谷の原風景としての農の風景                     江戸時代の頃から江戸市中向けに野菜などを供給する農村として発展してきた世田谷の農業は、明治期以降、東京の急激な市街化や人口の増加により、より多くの野菜を生産・出荷するようになりました。 しかし、戦後の高度経済成長とともに都市化が進み、多くの農地は宅地化されました。各所に残された農家の屋敷林や農地の風景は、かつての近郊農村であった世田谷を思いおこさせる原風景といえるものです。 区では、生産緑地の指定や農業振興の取組みに加え必要な農地の保全を図るため、世田谷区農地保全方針を策定し、「農地保全重点地区」を計7か所指定(平成26年(2014年)度時点)しています。また、喜多見四・五丁目は、東京都の「農の風景育成地区」に指定されています。 都市農業振興基本法に基づき平成28年(2016年)に閣議決定された都市農業振興基本計画では、市街化区域内農地の位置づけを「宅地化すべきもの」から都市に「あるべきもの」と転換しました。このように、減少している農地がますます貴重なものとなっており、保全に向けた検討が進められています。 農に親しむ風景                       都市における農地は、農作物を生産するだけでなく、潤いや安らぎが感じられる風景の創出やみどりとみずの環境保全、災害時の防災拠点、レクリエーションのひとつとしての農に親しむことなど、多面的で公益的な機能を有する空間として捉えられています。 例えば区内には区民が土に触れ、野菜づくりを楽しむ場として農家が開設する「ふれあい農園」や「農業体験農園」、区画貸しの「区民農園」などがあります。そこでは、週末家族で農に親しむ姿が見られるなど、都市の農ならではの風景を見ることができます。また農地に隣接して農産物の直売所が点在する様子も世田谷の特徴的な風景といえます。 また、世田谷の農の文化や風景、環境を継承するために整備された公園として「農業公園」が区内4か所に整備されています。農業公園では区民が日常的に農に触れ、学び、楽しむことができ、野菜や花の育つ様子を間近に見たり、農作業体験に参加して、農業の楽しさや難しさを体感できる場となっています。 次大夫堀公園民家園では、名主屋敷を復元し、公園内の次大夫堀や水田とあわせて、江戸時代後期から明治時代初期にかけての農村風景が再現されています。 ここに、風景特性(農)の図があります。民家園、世田谷区農地保全方針農地保全重点地区、東京都農の風景育成地区を図示しています。 (6)にぎわい                                                      独自の文化や情報を発信する三軒茶屋、下北沢、二子玉川や、駅前商店街などには、商業機能が集積し、多くの人が訪れ活力に満ちています。こうしたにぎわいの風景は、街の顔や拠点として地域を魅力的にし、世田谷の個性を生み出す重要な要素です。                                   活気あふれる広域生活・文化拠点            三軒茶屋、下北沢、二子玉川は、都市整備方針において区を越えた広域的な交流の場となる「広域生活・文化拠点」として位置づけられています。ここでは、独自の文化やファッションなどを発信する魅力と活気にあふれる街が形成されているとともに、複合商業施設や文化施設などがにぎわいのある風景をつくり出し、区外からも多くの人が訪れています。 生活感が溢れ、個性的な商店街             区内には、駅周辺を中心に多くの商店街があります。日常生活に密着したサービス等を提供している商店街には、さまざまな店舗などが建ち並び、生活感が溢れにぎわいのある街並みを形成しています。 また、祖師ヶ谷大蔵駅周辺のウルトラマン商店街や桜新町駅周辺のサザエさん通りなど、地域資源を活かしてにぎわいづくりに取り組んでいる個性豊かな商店街も多くあり、特徴ある風景を形成しています。 イベントがつくるにぎわいの風景            昭和53年(1978年)の第1回開催以来、世田谷の夏の風物詩として広く区民に定着している「せたがやふるさと区民まつり」をはじめ、多摩川の河川敷で行われる「世田谷区たまがわ花火大会」、多くのパフォーマーが三軒茶屋を舞台に大道芸を披露する「三茶de大道芸」、羽根木公園で行われる「せたがや梅まつり」、桜新町、成城、上北沢など各地で行われる桜まつりなど、毎年恒例となった大小さまざまなイベントが、区内の各地で催されています。 多くの人でにぎわうイベントの風景は、地域に欠かすことのできない季節の風物詩として、認識されています。 また、馬事公苑前のけやき広場では、NPO団体などが中心となって周辺住民と連携し、定期的にマルシェやワークショップなどが開催され、住民や来訪者がつながる場がもたらす風景が日常の風景になりつつあります。 ここに、風景特性(にぎわい)の図があります。世田谷区都市整備方針広域生活・文化拠点、商店街を図示しています。 (7)みち                                                        “みち”には環状七号線や環状八号線などの幹線道路や地区幹線道路、主要生活道路、地先道路など機能ごとに様々な道路があり、沿道の建築物などとあわせて多様な風景をつくっています。また、緑道などは歩いて心地よい風景をつくっています。これらの“みち”は、生活の中で多くの人が行き交い目に触れる風景であり、地域の印象を左右する重要な要素です。 近年では、都市防災機能の強化だけでなく、安全で快適な歩行空間の確保、良好な都市景観の創出を目的として、必要性の高い路線から優先的に無電柱化整備が進められています。 街の骨格となる幹線道路の風景 環状七号線や環状八号線、玉川通りや甲州街道などの幹線道路は、広い幅員を持ち大きな街路樹が育っています。多くの人が日々利用し目にする幹線道路は、街の骨格です。 また沿道には多くの店舗や事務所など中高層の建物が建ち並び、常に多くの自動車が行き交う、幹線道路ならではの風景がみられます。 日常の営みとともにある生活道路の風景             主要生活道路や地先道路などは、通勤や通学、買い物、散歩など、日々の生活の中で利用する身近な道路です。こうした道路を舞台として生活感のある風景が見られるとともに、街路樹の緑や休憩できるベンチが設けられている場所もあり、日常の一部として地域の人々の生活に根づいています。 憩いの空間として親しまれる緑道の風景           区内には、烏山川緑道や北沢川緑道など、みどり豊かな緑道として整備されているところが幾つもあります。 桜並木が名所となっているところもあり、都市の中で季節を感じることができる貴重な空間です。遊具や健康器具などが設置されていたり、烏山川緑道や北沢川緑道では区民参加により整備が行われ、潤いのある安全で身近な空間として、多くの区民に親しまれています。 特徴のあるみち                      用賀駅北口から砧公園、世田谷美術館を結ぶ「用賀プロムナード」は、瓦の舗装と玉砂利の水路によってデザインされ、「いらか道」の愛称で散歩や憩いの空間として親しまれています。 また馬事公苑のけやき広場や弦巻プロムナードの整備など、特徴のあるデザインによって整備された場所では、印象的な“みち”の風景をつくりだしています。 みちを活用した日常の場づくり                      商店街の通りの一部が住民のくつろぎの空間となるハッピーロード尾山台の「つながるホコ天プロジェクト」や、三軒茶屋駅周辺のさらなる賑わいの創出や滞在性の向上を目的とする「SANCHA STREET TERRACE」など、歩行者天国で生まれる道路空間を活用した日常の風景を彩る活動が各地で催されています。 ここに、風景特性(みち)の図があります。高速道路、幹線道路、地区幹線道路、主要生活道路、緑道、特徴のあるみち、を図示しています。 (8)鉄道                                                        区内の鉄道整備は、明治40年(1907年)に営業開始した玉川電車に始まり、現在では京王線、小田急線、井の頭線、世田谷線、田園都市線、大井町線、目黒線、東横線の各鉄道路線が敷設されています。鉄道沿線や駅周辺の風景は区民のみならず鉄道利用者を含む多くの人が目にし、日々の生活に馴染み深い風景です。 小田急線・京王線の連続立体交差化                      小田急線と京王線では連続立体交差事業により、道路と鉄道の立体化が進められています。 小田急線(東北沢駅〜世田谷代田駅間)では、地下化に伴い新たな駅舎が完成するとともに、線路跡地を活用した施設や通路、緑地・小広場などが整備され、住民や来街者が出会い交流する新たな風景が生まれています。 京王線においても、笹怏w〜仙川駅間の連続立体交差事業が進められており、今後、駅前や沿線の風景が大きく変化します。 駅から広がるにぎわいの風景                 駅は、多くの人が利用するため、駅前広場は出会いや交流、活気やにぎわいが生まれ、街の顔となっています。 また駅周辺には商店街も多く、そこに集積した店舗や事務所などを利用する人々によるにぎわいが広がっています。 地域で生活する人々の暮らしの中心でもある駅周辺では、親しみのあるにぎわいの風景を見ることができます。 生活に溶け込んだ特徴的な世田谷線の風景   下高井戸駅と三軒茶屋駅の間を結び運行されている東急世田谷線は、2両編成の色とりどりのコンパクトな車両が住宅地の中をゆったりとした速度で走ります。沿線には季節毎に楽しめる草木や花々が植えられ、利用者の目も楽しませてくれる、世田谷の特徴的な風景です。 ここに、風景特性(鉄道)の図があります。各鉄道駅乗降客数を図示しています。 第3章 風景づくりの理念・方向性 世田谷区の風景特性を踏まえて魅力的な風景づくりを推進するため、世田谷区における風景づくりの基本的な考え方を、「風景づくりの理念」「取組みの基本姿勢」「地域の個性を活かす風景づくりの方向性」「協働でまちの魅力を高める風景づくりの方向性」として示します。 「地域の個性を活かす風景づくりの方向性」では、区全体の風景づくりの方向性を示すと共に、更に地域の資源や特性、街づくりの動向などから、地域ごとの風景づくりの考え方を示します。 また、「協働でまちの魅力を高める風景づくりの方向性」では、多様な主体の参加を導きながら協働による風景づくりを深めていくとともに、風景づくりに対する区民の主体性を高めるための風景づくりの方向性を示します。 1.風景づくりの理念                                                       世田谷の風景は、起伏豊かな地形のもと、みどりやみずに恵まれ、それぞれの時代の中で生活する人々に育まれて現在の姿を築いてきました。風景には、自然や地形の中での人々の営みが反映されています。 こうした世田谷の風景をこれからも、守り、育て、つくっていくための視点があります。 第一は、あらためて地域の個性を再認識し、それらを活かすということです。約58?の中に約92万人が暮らす大都市である世田谷には、みどり豊かな住宅地、駅前の活発な商店街、幹線道路沿いの中高層建築物など、様々な暮らしの風景があります。とりわけ国分寺崖線をはじめとする地形の起伏、河川や水辺などの自然的要素、古道や社寺などの歴史的な空間や建造物など、長い年月を積み重ねてきた自然や歴史には、地域を持続させる手がかりがあるはずです。 第二に、区に関わる多くの人々が風景づくりに参加することです。風景は公共の財産です。区民や地域の事業者をはじめ、行政や企業さらには通勤・通学者や来街者も含めたあらゆる人が、世田谷の魅力を知り、先人たちが築き上げてきた歴史・風土を尊重し、目指すべき風景のあり方を共に考え、それぞれの立場や場面で風景をより良くする活動に参加していくことが、世田谷の風景の魅力を高めることにつながります。 このような考えのもと、世田谷区が目指す風景づくりの理念を示します。 <風景づくりの理念> 地域の個性を活かし 協働でまちの魅力を高める 世田谷の風景づくり 2.取組みの基本姿勢                                                       区民・事業者・区が連携し、風景づくりの理念を実現していくためには、それぞれが風景づくりに対する共通認識をもって取り組むことが必要です。 「取組みの基本姿勢」では、私たちが風景づくりに取り組むにあたって共有しておくべき取組み姿勢を示します。 また、風景づくりは、建築物の建築にとどまらず、庭先の草木を育てることや災害への備えなど、日常の暮らしの様々な場面に関わっています。言い換えれば、暮らしに関わるあらゆる機会を捉えて風景づくりに取り組んでいくことも可能です。 そこで、近年の世田谷区の動向や変化する社会状況を踏まえながら、これから私たちが風景づくりの理念を実現していくために、ひとりひとりが認識し共有しておくべき取組みの姿勢を幾つかの「キーワード」とともに示します。 <取組みの基本姿勢> 区民・事業者・区の協働で風景づくりに取り組む 次世代に向けて 愛着と誇りを持てるような風景づくりを進める 自然や歴史的・文化的遺産を継承し 新たな都市の風景を創造していく 今後の取組みに向けたキーワード キーワード「維持管理」 区内では、経年により建て替えや耐震化工事が必要な建築物が多数あります。一方で、リノベーションによる活用増加やSDGsの考え方などから、新たな建築物をつくるだけでなく、既存建築物を維持管理し活用していくことも求められています。風景づくりにおいても、新しくつくる姿勢だけでなく、今あるものを大切に維持管理しながら、風景を引き継ぎ、さらに魅力あるものに磨きをかけていくという姿勢も重視します。 キーワード「グリーンインフラ」 みどりには、日影をつくったり水分を蒸発散させたりすることで気温上昇を抑え、ヒートアイランド現象を和らげる効果や、二酸化炭素を吸収することで地球温暖化を緩和する効果が期待されます。また、舗装されていない緑化された土面等は雨水を吸収しやすく、河川や下水道管に流れる雨水を減らす効果があります。 グリーンインフラは、このような自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方です。区ではグリーンインフラを「自然環境が持つ様々な機能を目的に応じて積極的かつ有効に活用することで、安全で快適な都市の環境を守り、街の魅力を高める社会基盤や考え方のこと」と捉え、みどりの保全や豪雨対策を推進しています。 風景づくりにおいても、グリーンインフラの観点を踏まえ、「やすらぎ・憩いの空間の形成」や「良好な風景の形成」に繋がる風景づくりに取り組みます。 キーワード「ウォーカブル」 近年、道路や駐車場が都市空間の大半を占めている利用現状を、歩行者のための空間へ転換していく、人中心のウォーカブルな公共空間が求められています。区でも、国土交通省が募集する「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成を目指したウォーカブルな街づくりをともに推進する「ウォーカブル推進都市」について、令和元年(2019年)に賛同しました。 風景づくりにおいても、安心・安全で、居心地が良く歩きたくなるまちなかの形成の視点を重視し、積極的に取り組みます。 キーワード「防災減災」 近年の気候変動により河川氾濫や土砂災害など、都市型災害リスクの高まりが深刻になる中で、災害に備える「防災」や災害が発生したあとの「復興」について、これまで以上の取組みが求められています。 防災・減災対策、復興街づくりを進める際には、地域の歴史資産を含めた地区の特性を活かし、魅力を高めていく風景づくりに取り組みます。 キーワード「ウェルビーイング」 ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に満たされた状態にあること*1を言います。よりよい社会を目指し、ウェルビーイングを実現していくことが求められるようになってきています。 世田谷区において風景づくりとは、地域の個性あふれる世田谷らしい風景を守り、育て、つくることであり、ウェルビーイングの実現にも貢献するものです。風景づくりに取り組むにあたっては、ウェルビーイングの実現を意識しながら取り組みます。 キーワード「次世代に向けて」 令和6年(2024年)に実施した区政モニターアンケートでは、世田谷区の風景に対する関心の高さに比べて、風景づくりに関する活動に参加した人の割合が高いとは言えない状況です。また、地域風景資産の第1回の選定から20年以上が経過し、「活動者の高齢化」や「後継者の不在」を理由に、風景づくり活動団体の数が減少しています。 世田谷の個性あふれる魅力的な風景を次世代に引き継ぐためにも、区民が風景づくりを身近に感じ、取り組みやすい環境や仕組みを整えていきます。 コラム:今後の取組みに向けたキーワードについて @グリーンインフラ 区では、グリーンインフラを「世田谷区みどりの基本計画」や「世田谷区豪雨対策行動計画(改定)」、「世田谷区環境基本計画」などに位置付けています。また、区と区民、事業者がそれぞれの立場でグリーンインフラに取り組むための指針として、「せたがやグリーンインフラガイドライン(令和6年3月)」を策定し、みどりの保全や豪雨対策を推進しています。 区によるグリーンインフラの取組みの一例として、区立保健医療福祉総合プラザ(うめとぴあ)や小田急線上部利用施設があげられます。 うめとぴあでは、段状緑化と保水性竪樋(じゃかご樋)を導入しています。建物に降った雨水は最上階から各階のバルコニーに設置された植栽基盤(段上緑化)へと保水性に優れた保水性竪樋(じゃかご樋)を伝ってゆっくりと流れ、建物に降った雨水の流出抑制効果を高めています。また、緑の散歩道やレインガーデンもあり、緑地や生態系の保全に寄与しています。 小田急線上部利用施設では、透水性舗装や雨水貯留型ブロック舗装を採用して下水道への流入負荷を軽減させる機能を持たせたほか、雨庭のある広場では傾斜地形を活かして降雨時に水の移ろいを楽しめる「雨庭」をはじめ、木陰をつくる植栽やくつろげる芝生広場、幼児・児童向けの遊具などを配置し、良好でみどり豊かな環境を創出しました。  また、世田谷区ではグリーンインフラの取組みの普及啓発やグリーンインフラの実践者を養成することを目的として「世田谷グリーンインフラ学校〜自分でもできる雨庭づくり〜」を開催しています。 Aウォーカブル 区においては、平成25(2013)年9月に策定した「世田谷区基本構想」の九つのビジョンの一つとして「より住みやすく歩いて楽しいまちにする」を掲げ、区民とともに、地域の個性を活かした都市整備を進めてきました。 こうした中、国においても、人中心のウォーカブルな公共空間の必要性について、国土交通省が令和3(2021)年5月に策定した「ストリートデザインガイドライン」においては、「まちなかの人とクルマの交通量と、それぞれに要している面積との「アンバランス」が生じていることから、道路と駐車場で区域面積の過半を占めてしまうような空間利用の現状を、人々のための空間へ転換することが必要である。」などとしています。 区は、国土交通省が募集する「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成をめざしたウォーカブルな街づくりをともに推進する「ウォーカブル推進都市」について、令和元(2019) 年に賛同しました。 街づくりにおいては、三軒茶屋駅周辺における滞在性を向上させる公共的な空間の利活用の取組みや、下北沢駅周辺においても、歩行者が主体の安全・快適で、回遊性のある街づくりの取組みを行っています。各地区の特色や資源を活かしながら、区民の健康増進にも繋がる「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成に向けて、引き続きウォーカブルな視点に立った取組みを進めていく中で、これらの視点を重視して風景づくりに取り組みます。 B防災復興  近年の気候変動により河川氾濫や土砂災害など、都市型災害リスクの高まりが深刻になる中で、災害に備える「防災」や災害が発生したあとの「復興」について、これまで以上の取組みが求められています。  国土交通省においても平成24年に「復興まちづくりにおける景観・都市空間形成の基本的考え方」をまとめており、まちづくりにおける都市デザイン上の配慮は、後手に回れば、「付け足し」 のデザインに陥ったり不自然な景観を生む要因になるほか、必要以上の華美な意匠によるコスト増加を招きかねないことから、とりわけ、復興の初期段階から配慮することで、高い効果が見込まれると示しています。  東日本大震災の復興の際に、宮城県における災害復旧工事では、震災以前から植生していた植物の保全や生きものの生息環境の保全、景観に配慮した護岸工事が行われました。 また、岩手県においても、ふるさと景観再生の手引きで景観形成の考え方を示し、自然や地形、歴史を読み解くことに始まり、周辺との調和や地域の特徴を尊重した景観の演出を図るなど、復興まちづくりを進める上で早い段階から景観の視点を含めた検討の際の配慮事項をまとめています。  世田谷区においては、「防災街づくり基本方針」で防災街づくりの進め方として「防災面だけではなく、住環境や地区の資源など様々な要素を踏まえ、地区の魅力を高めていく街づくりを行っていく」と示しています。防災・減災対策、復興街づくりを進める際には、地域の歴史資産を含めた地区の特性を活かし、魅力を高めていく風景づくりに取り組みます。 Cウェルビーイング  世田谷区において風景づくりとは、地域の個性あふれる世田谷らしい風景を守り、育て、つくることであり、ウェルビーイングの実現にも貢献するものです。そして、その風景づくりは実は私たちの身近にあります。私たちが意識せずにしている日常の暮らしの中の何気ない行動が、実は世田谷のまちの風景を良くしています。例えば、「窓辺に花を飾る」ことは建物に彩りや温かみをもたらし、通りの風景の演出にもつながります。「落ち葉掃きをする」ことは、まちの清潔感を保ち、良好な風景をつくります。その他にも、「みどりを育てる」「自転車をきれいに停める」「気の合う仲間とマルシェに出店する」ことも、立派な風景づくりです。 このような風景づくりをすることで、達成感や充実感を感じ、また、その風景を見る人の癒しや喜びを生み、ウェルビーイングの実現につながります。さらに、この風景づくりをしている「風景をつくる人」と「その風景を見る人、楽しむ人」が活動を通して繋がることで、「風景を見る人、楽しむ人」の感謝や敬意などの気持ちが、「風景をつくる人」の意欲ややる気に繋がり、互いに愛着や幸福感が生まれることでウェルビーイングの実現につながっています。 風景づくりに取り組むにあたっては、ウェルビーイングの実現を意識しながら取り組みます。 3.地域の個性を活かす風景づくりの方向性                                             風景づくりの理念を実現していくためには、みどりやみずの保全・育成をはじめ、歴史的資産の維持・保全、新たな街づくりや建設行為、区民による風景づくり活動など、風景がそこに生活する人々により創造されていることを踏まえた上で、風景特性を活かしながら、それぞれの取組みの中で着実に魅力を高めていくことが必要です。 (1)風景づくりの方向性 「風景づくりの方向性」では、「住宅都市」世田谷として、“暮らしの風景”を大切にしていくことを基本的な考え方として捉えつつ、「自然」「歴史・文化」「にぎわい」の視点から、風景づくりの理念を実現していくための方向性を示します。 自然 地形を尊重し、みどりやみずの風景を守り育てる 地形 武蔵野台地固有の地形や起伏の高低差がもたらす眺望などの要素を活かし、世田谷の風景の魅力を高める ・武蔵野台地を幾筋かの河川が浸食し形づくられた起伏の豊かな地形は、世田谷の風景の基盤となるものです。一方、大がかりな地形の変更は大きな災害をもたらす要因にもなります。地域の個性を表す大切な要素として地形を尊重し、これを活かした風景づくりを進めます。 ・地形の起伏によってつくりだされる斜面地や坂道、高台からの眺望は、大切にしたい風景特性であり、とりわけ国分寺崖線の崖上から多摩川や富士山などの見晴らしは、世田谷区ならではの風景です。高低差がもたらす眺望を大切にした風景づくりを進めます。 みどり・みず 多様なみどりの保全・創出と共にみどりの風景の質の向上を図る 河川や湧水などの様々なみず資源の保全とともに、潤いある風景づくりを進める ・国分寺崖線の斜面地に連続するまとまったみどりの風景は、崖線らしさの象徴です。崖線の樹林がつくるみどりの連続性、スカイラインの維持・創出に努めます。 ・武蔵野台地の雑木林の面影を残す樹林地や社寺のみどり、大規模公園・緑地などのまとまったみどりは、みどり豊かな世田谷の風景を形成していく核となるものです。まとまったみどりの保全・創出とともに、まとまったみどりを起点としてみどりの風景の広がりと質の向上を図ります。 ・街なかにある緑道、並木や高木、敷地内を彩る花木は、地域のシンボルとなるとともに、街の印象を向上させます。地域の特徴的なみどり資源は、風景づくりに活かしていきます。 ・豊かな流れを保つ多摩川や野川などの河川や湧水などの様々なみず資源があることも、住宅都市世田谷の風景の魅力です。みず環境の保全と共に、みどりとの調和を図りながら、自然豊かな潤いのある風景づくりを進めます。 ・建設行為等にあたっては、生きもののつながりを意識し地域の特性に合った樹種の植栽など、生物多様性に配慮した世田谷らしい風景づくりを進めます。 歴史・文化 地域の歴史や文化の特性を引き出し、風景づくりに活かす 地域の歴史・文化 地域の歴史や文化を感じ取れる要素を継承し、風景づくりに活かすことで、地域の個性や魅力を高める ・区内には古代の古墳から古道や街道、近代の駒沢給水塔まで、それぞれの時代の多様な遺産や遺跡、建造物などが残されています。これらの歴史的資産は地域の歴史や文化を伝える貴重な要素です。歴史的資産を継承しながら、地域の風景の個性や魅力を引き出し風景づくりに活かします。歴史的資産を保全し、難しい場合には地域の歴史が感じられる空間とするなど、場所に残された記憶を継承していきます。 ・ボロ市や多摩川花火大会など、地域で行われている行事や催しは、地域の歴史や文化を体感できたり、季節の風物詩として風景を演出する貴重な要素です。地域の魅力を高める行事などを、その行事などが行われる場所や周辺の風景づくりに活かしていきます。 ・近年整備された建築物や公共施設などにおいても、優れたデザインで地域の風景を先導しているものや地域のランドマークとなっているものもあり、新たな風景を築く核となります。これらの周辺では、対象となる建造物などを活かしながら周辺の風景の質を高めていきます。また、建設行為等が行われる際には、地域の新たな風景づくりに資する整備となるよう誘導を図ります。 ・防災・減災対策を行う際は、その機能だけでなく、住環境や地区の資源など様々な要素を踏まえ、地区の魅力を高めていく風景づくりを誘導します。 ・復興街づくりを進める際は、地域の歴史資産を含めた地区の特性を把握し、風景にも配慮していきます。 住宅地 みどりとみずの豊かな住宅都市として、住宅地それぞれの成り立ちや特徴を認識し、愛着と誇りを持てる風景づくりを進める ・江戸の近郊農村として発展し、明治維新以降、その時々の社会的な動向や時代のニーズと共に様々な住宅が建設され、その積み重ねにより現在の住宅都市としての世田谷の風景を形づくってきました。それぞれの住宅地の成り立ちや特徴を認識し、区民が愛着と誇りをもって暮らす環境を育むよう、住宅都市としての風景づくりの質を高めていきます。 ・大規模団地やマンションなどの建て替えは、風景が大きく変わることから、既存の高木などの風景の記憶も活かしながら、周辺の街並みと調和を図り、また、街づくりと連携しながら次世代に向けて先導的な風景づくりを進めていきます。 ・夜間における安全性・安心感を確保した照明環境を整備します。 過度な明るさや暗がりを排除し、暖かみのある質の高い光により、落ち着きを感じることのできる快適な住環境を形成します。 農 世田谷の原風景である農の風景を尊重した風景づくりを進める ・江戸の近郊農村として発展した世田谷には、都市化が進んだ今も農地が残り、都市農業の振興が図られています。世田谷の原風景である農の風景を尊重し、周辺では農地を活かした風景づくりを進めます。 にぎわい 活力や交流が生まれ、親しみのあるにぎわいの風景をつくる にぎわい 街の拠点として地域の個性を引き出しながら魅力的な空間を育み、にぎわいや活気を誘導する ・都市整備方針で広域生活・文化拠点として位置付けている三軒茶屋、下北沢、二子玉川では、それぞれの拠点の個性をより一層活かし、多くの来街者が魅力的に感じられる活気とにぎわいのある風景づくりを進めます。地域特性を踏まえた夜間照明を取り入れることで、にぎわいある夜間の風景づくりを演出します。住宅地に隣接する場合は、落ち着きのある暮らしの照明へ緩やかにつなぎます。 ・商店街では、街づくりや商業振興と連携を図りながら、地域での取り組みや地域資源などを活かし、地域の魅力や個性を引き出すようなにぎわいの風景づくりを進めます。 ・広域生活・文化拠点や商店街では、人々が集い憩い、多様な活動が生まれる、歩いて楽しい風景づくりを進めます。 みち 幹線道路などの沿道では、街の骨格となる風景をつくる 緑道など地域の特徴的なみちでは、特性を活かした風景づくりを進める ・幹線道路や地区幹線道路などは、多くの人が日々利用し、目にする風景であり、街の骨格です。道路整備の際は、街路樹などによる潤いのある風景の形成の推進や無電柱化整備を検討します。また、沿道の建設行為等に対しては、このことを踏まえた風景づくりを誘導します。 ・緑道や用賀プロムナード、地域住民や利用者が休憩できるベンチ等のある空間など、歩行者や地域の憩い空間となるみちやみち沿いでは、潤いとやすらぎの感じられる風景づくりを誘導するとともに、周辺のみどりや風景資源との連続性を図ることで、更に歩いて楽しいみちづくりを進めます。 鉄道 整備が進み変化する鉄道沿線では、街づくりと連携した風景づくりを推進する 世田谷線沿線では、親しみのある沿線の風景づくりを進める ・連続立体交差事業が進められている京王線では、駅前広場やその周辺の整備において、街づくりと連携し、新たな魅力的な風景の創出を進めます。 ・世田谷線の風景は、生活に溶け込む特徴的な風景として多くの人に親しまれています。世田谷線の沿線では、車窓からの眺めに配慮し親しみのある沿線の風景づくりを進めます。 (2)地域ごとの風景特性と街づくりの動きに対する考え方                        世田谷区では、平成3年(1991年)に地域行政制度を導入し、5つの地域でそれぞれ具体的な街づくりを進めています。風景づくりと地域の街づくりは密接に関わることから、(1)で示した風景づくりの方向性を踏まえ、主な風景資源や特性、街づくりの動きに対する風景づくりの考え方を、「世田谷」「北沢」「玉川」「砧」「烏山」の地域ごとに示します。 世田谷地域 <自然> 〜地形、みどり・みず〜 地形・眺望への配慮 北沢川緑道沿いの斜面地や桜丘の台地などでは、眺望が開けた場所があります。豊かな地形を活かしながら、その眺めを多くの人が共有できるよう工夫します。 まとまったみどりとの連続性の創出 世田谷公園や桜丘すみれば自然庭園、世田谷観音等の社寺などのまとまったみどりは、地域の風景を特徴づける大切な要素です。まとまったみどりを起点に、より多くの人がみどりを感じられるよう、みどりの連続性に配慮した風景づくりを進めます。 緑道から広がる散歩道 烏山川緑道や蛇崩川緑道などの緑道は地域住民などに憩いと潤いを提供する散歩道です。隣接敷地や緑道沿道で建設行為等を行う際には、緑道の植生などの特性を踏まえながら積極的にみどりを配置することで、みどりの連続性を深めます。また、緑道周辺の公園などの風景資源と連携を図りながら、更に散歩に適した空間づくりを進めます。 <歴史・文化> 〜地域の歴史・文化、住宅地、農〜 歴史的・文化的資産を活かす 世田谷地域には、440年以上の伝統を持つボロ市や、近代化遺産である駒沢給水所、松陰神社、世田谷城主・吉良氏に関する痕跡、大山道や瀧坂道といった古道など、歴史的な資産が点在しています。それらの歴史的資産の周囲においては、歴史的資産に対して建築物の配置や、植栽により空間のつながりを持たせたり、街づくりに資産を活かすなどの工夫を行います。 大規模敷地の建て替え等に伴う街づくりとの連携 大規模敷地における建て替えや土地利用転換では、みどり豊かでゆとりある良好な住環境の形成及びにぎわいのある商業環境の形成、公園や公開空地の整備や緑化、歴史的資産への配慮などを誘導し、街づくりと連携して風景づくりを進めます。 密集市街地での防災街づくりとの連携 太子堂や三宿とその周辺には、関東大震災をきっかけに、東京の中心部からの移住により密集市街地となっているところがあります。防災性の向上のため、建物の不燃化・耐震化を進めるとともに、道路や公園等の整備を進める中で、防災街づくりと連携した風景づくりを進めます。 農の風景との共存 桜丘地区は農地保全重点地区に指定され、農地の保全・育成が図られており、地区内には、桜丘農業公園があります。農地の周辺で建設行為等を行う際には、土やみどりなど田園風景に調和するデザインや素材を採用したり、敷地内緑化や敷地境界を生垣にするなどの工夫をし、農地と建築物などが共存する風景づくりを進めます。 <にぎわい> 〜にぎわい、みち、鉄道〜 三軒茶屋(広域生活・文化拠点)の風景づくり 三軒茶屋は、その発展の歴史を活かし、庶民的雰囲気のにぎわいと活気に満ちた風景づくりを進めます。また、広域的な交流の場として商業・業務・文化などの多様な機能を備えた拠点とするため、再開発事業などでは魅力的な空間づくりを誘導します。 商店街から広がる風景づくり 駅周辺などに広がる商店街では、商店街の取り組みや地域資源を風景づくりに活かすとともに、街づくりと連携した取組みを進めます。 大通りの心地よい空間づくり 玉川通り、世田谷通り、環状7号線など大通り沿道の建設行為等は、街並みのスカイラインや形態・意匠・色彩に配慮するとともに、可能な限り緑化を図るなど、歩いて楽しい街づくりを目指し、歩行者にも心地よい空間を創出します。 親しみのある世田谷線沿線の風景づくり 住宅地の中を色とりどりの車両が走る世田谷線は、沿線に植えられた季節毎の草木や花々とともに人々の目を楽しませてくれる、世田谷の特徴的な風景です。車窓や沿線からの眺めに配慮し、沿線の魅力を高める風景づくりを進めます。 北沢地域 <自然> 〜地形、みどり・みず〜  地形・眺望への配慮 北沢川などの河川やその支流に沿って斜面地が連続し、松原、羽根木、代田、大原などの台地からは、富士山を望むこともできるような眺望が開けた場所もあります。豊かな地形を活かしながら、その眺めを多くの人が共有できるよう工夫します。 まとまったみどりとの連続性の創出 羽根木公園、森厳寺などの社寺、鉄道沿線の土手などのまとまったみどりは、地域の風景を特徴づける大切な要素です。まとまったみどりを起点に、より多くの人がみどりを感じられるよう、みどりの連続性に配慮した風景づくりを進めます。 緑道から広がる散歩道 再生水を流したせせらぎが整備されている北沢川緑道をはじめ、緑道は地域住民などに憩いと潤いを提供する散歩道です。隣接敷地や緑道沿道で建設行為等を行う際には、緑道の植生などの特性を踏まえながら積極的にみどりを配することで、みどりの連続性を高めます。また、緑道周辺の公園などの風景資源と連携を図りながら、更に散歩に適した空間づくりを進めます。 和田堀給水所 みどりの拠点である和田堀給水所の整備に合わせ、新たな地域資源の形成を図ります。 <歴史・文化> 〜地域の歴史・文化、住宅地、農〜 歴史的・文化的資産を活かす 豪徳寺や玉川上水、瀧坂道、鎌倉道、甲州街道といった古道など、歴史的・文化的資産の周辺においては、資産に対して建築物の形態や配置、植栽により空間のつながりを持たせたり、街づくりに資産を活かすなどの工夫を行います。 保健福祉の街づくりとの連携 「やさしいまちづくり」のモデル地区として福祉的環境整備を進めてきた梅ヶ丘駅周辺地区を「保健福祉の街づくり重点ゾーン」として「梅ヶ丘駅〜豪徳寺駅・山下駅界わい街づくりデザイン指針」を策定しました。この指針に基づき、ユニバーサルデザインによる街づくりを重点的に進め、公共施設や大規模な建築物の建設及び道路などの改修の際には、街づくりと連携し、風景づくりとしても魅力を高めます。 密集市街地での防災街づくりとの連携  北沢、大原を中心に、戦後の人口急増の中、木造賃貸住宅が増加したことにより密集市街地となっているところがあります。防災性の向上のため、建物の不燃化・耐震化を進めるとともに、道路や公園などの整備を進める中で、防災街づくりと連携した風景づくりを進めます。 特徴的な住宅地の風景を伝える 代沢、代田にある大正から昭和初期にかけて分譲された住宅地では、敷地境界の大谷石やゆとりある区画、みどり豊かな庭など、当時の風景が感じられる家並みが残されています。このことを踏まえながら、調和の取れた住宅地の街並みを育んでいきます。 農の風景との共存 桜上水地区は農地保全重点地区に指定され、農地の保全・育成が図られています。農地の周辺で建設行為等を行う際には、土やみどりなど田園風景に調和するデザインや素材を採用したり、敷地内緑化や敷地境界を生垣にするなどの工夫をし、農地と建築物などが共存する風景づくりを進めます。 <にぎわい> 〜にぎわい、みち、鉄道〜  下北沢(広域生活・文化拠点)の風景づくり 下北沢は、商業・文化などの機能を備えた拠点として、その発展の歴史や道に沿って商店が広がる風景、演劇などが盛んな特性、小田急線の地下化に伴い新たに整備された上部空間の街並みなどを活かし、若者が訪れる活気ある魅力的な場所として、安心して歩ける、買い物が楽しめる、魅力的な空間づくりを進めます。 商店街から広がる風景づくり 駅周辺などに広がる商店街では、商店街の取組みや地域資源を風景づくりに活かすとともに、街づくりと連携した取組みを進めます。 大通りの心地よい空間づくり 甲州街道や環状七号線など大通り沿道の建設行為等は、街並みのスカイラインや形態・意匠・色彩に配慮するとともに、可能な限り緑化を図るなど、歩行者にも心地よい空間を創出します。 京王線連続立体交差事業と連携した風景づくり                                           京王線連続立体交差事業が進む代田橋駅から桜上水駅の周辺では、側道や駅前広場などの整備により、歩行者の回遊性向上を図るとともに、周辺の街づくりと連携した風景づくりを進めます。 小田急線上部における魅力的な風景づくり 地下化された小田急線上部(代々木上原駅〜梅ヶ丘駅間)では、住民参加と官民連携により新たに整備された上部利用施設を軸に、地域と連携しながら、周辺と調和し、みどり豊かで歩いて心地よい魅力的な風景づくりを育みます。 親しみのある世田谷線沿線の風景づくり 住宅地の中を色とりどりの車両が走る世田谷線は、沿線に植えられた季節毎の草木や花々と共に人々の目を楽しませてくれる、世田谷の特徴的な風景です。車窓や沿線からの眺めに配慮し、沿線の魅力を高める風景づくりを進めます。 玉川地域 <自然> 〜地形、みどり・みず〜  地形・眺望への配慮 複数の河川が入り組んだ玉川地域は地形の起伏が豊かです。国分寺崖線からは、富士山を眺められる場所も多くあります。こうした地形を活かし、多くの人が豊かな地形からの眺望を共有できるよう工夫します。 国分寺崖線のみどりの見え方への配慮 国分寺崖線のみどりは、多摩川方向からよく望むことができます。その眺めの途中にある建築物などは、みどりの連続性や川辺から崖線への視線を考慮し、植栽や形態、色彩を工夫します。 国分寺崖線等のみどりとみずを活かした風景づくり 瀬田、上野毛、野毛、尾山台に続く国分寺崖線には、武蔵野固有の多様な植生や生態系及び湧水が残され、それらを活かした瀬田四丁目旧小坂緑地や上野毛自然公園があります。進行中の玉川野毛町公園拡張事業では、古墳や樹木を活かした風景の公園を計画しています。また、崖線や二子玉川公園周辺を「世田谷・みどりのフィールドミュージアム(二子玉川公園周辺地区)」として、この地区で見られるみどりや生きものを紹介し、地域全体を学習・体験の場として活かす取組みが行われています。 花火大会が開かれる多摩川沿いの公園など、みどりとみずのある空間を活かし、身近に自然の魅力を共有できる風景づくりを進めます。 等々力渓谷の風景の保全 等々力渓谷は23区で唯一の渓谷であり、東京都指定の名勝です。渓谷の保全とともに、渓谷を活かした周辺地域の風景づくりを進めます。 まとまったみどりとの連続性の創出 駒沢オリンピック公園や馬事公苑、浄真寺や玉川神社などのまとまったみどりは、地域の風景を特徴づける大切な要素です。まとまったみどりを起点に、より多くの人がみどりを感じられるよう、みどりの連続性に配慮した風景づくりを進めます。 緑道や河川から広がる散歩道 呑川緑道などの緑道や、多摩川沿いをはじめ、丸子川、谷戸川、谷沢川などの河川は大切な風景の要素で、河川沿いは地域住民などに憩いと潤いを提供する散歩道です。緑道や河川沿いで建設行為等を行う際には、特性を踏まえながら積極的にみどりを配置することで、みどりやみずの連続性を深めます。また、緑道や河川周辺の風景資源と連携を図りながら歩いて楽しい風景づくりを進めます。 <歴史・文化> 〜地域の歴史・文化、住宅地、農〜  歴史的・文化的資産を活かす 浄真寺や古道(大山道)、玉川電気鉄道跡地、国分寺崖線に分布する遺跡などをはじめ、歴史的・文化的資産の周辺においては、資産に対して建築物の形態や配置、植栽により空間のつながりを持たせたり、街づくりに資産などを活かすなどの工夫を行います。 特徴的な住宅地の風景を伝える 国分寺崖線内や、新町住宅地、奥沢の海軍村及び玉川田園調布などの大正から昭和初期にかけてつくられた住宅地では、当時の風景が感じられる街並みが残されています。また、玉川全円耕地整理事業が実施された地域は、道幅にゆとりのある道路も多く、美しい並木道も数多くあります。このことを踏まえながら、住宅地として調和の取れた街並みを育んでいきます。 農の風景との共存 瀬田地区や中町・深沢・等々力地区は農地保全重点地区に指定され、農地の保全・育成が図られており、地区内には瀬田農業公園があります。農地の周辺で建設行為等を行う際には、土やみどりなど田園風景に調和するデザインや素材を採用したり、敷地内緑化や敷地境界を生垣にするなどの工夫をし、農地と建築物などが共存する風景づくりを進めます。 <にぎわい> 〜にぎわい、みち、鉄道〜  二子玉川(広域生活・文化拠点)の風景づくり 二子玉川は、多摩川や国分寺崖線といった地形やその発展の歴史を踏まえ、商業・業務・文化・交流・レクリエーションなどの機能を備えた拠点とするため、にぎわいと居住、自然環境の調和に配慮した潤いのある風景づくりを進めます。 商店街から広がる風景づくり サザエさん通りをはじめ、駅周辺などに広がる商店街では、商店街の取り組みや地域資源を風景づくりに活かすとともに、街づくりと連携した取組みを進めます。 大通りの心地よい空間づくり 玉川通りや環状八号線など大通り沿道の建設行為等は、街並みのスカイラインや形態・意匠・色彩に配慮するとともに、可能な限り緑化を図るなど、歩行者にも心地よい空間を創出します。 地域の特性を活かした等々力大橋(仮称)の整備 現在整備が進められている等々力大橋(仮称)や、二子橋などの多摩川を横断する橋の建設や維持管理等にあたっては、多摩川沿いの豊かなみどりとみずや多摩川側からみる国分寺崖線への眺望など地域の特性を活かした風景づくりを進めます。 特徴のある公共施設を活かした風景づくり 用賀プロムナードやけやき広場など、地域にある特徴的な公共施設を活かした風景づくりを進めます。 砧地域 <自然> 〜地形、みどり・みず〜  地形・眺望への配慮 野川、仙川、谷戸川の複数の河川が入り組んだ砧地域は地形の起伏が豊かです。国分寺崖線からは、富士山を眺められる場所も多くあります。こうした地形を活かし、多くの人が豊かな地形からの眺望を共有できるよう工夫します。 国分寺崖線のみどりへの見通しの配慮 国分寺崖線のみどりは、野川や仙川からよく望むことができます。その眺めの途中にある建築物などは、みどりの連続性や川辺から崖線への視線を考慮し、植栽や形態、色彩を工夫します。 国分寺崖線等のみどりとみずを活かした風景づくり 成城、大蔵、岡本に続く国分寺崖線には、武蔵野固有の多様な植生や生態系及び湧水が残され、特に成城では成城みつ池特別緑地保全地区や成城三丁目崖の林特別緑地保全地区が指定されているほか、複数の市民緑地が公開され、崖線と野川一帯を「世田谷・みどりのフィールドミュージアム(成城学園前駅周辺地区)」として、地域住民との協働により、身近な自然の豊かさを区民共有の財産として守り育み、学習の場として活かす取組みが行われています。崖線内やその周辺で建設行為等を行う際には、国分寺崖線やこれを保全・育成する取組みに配慮し、崖線風景の阻害要因とならないようにします。 まとまったみどりとの連続性の創出 砧公園をはじめとするまとまったみどりは、地域の風景を特徴づける大切な要素です。まとまったみどりを起点に、より多くの人がみどりを感じられるよう、みどりの連続性に配慮した風景づくりを進めます。 河川から広がる散歩道 多様な生きものが生息・生育できる水辺環境の再生を図っている多摩川、野川、仙川などのみず資源は地域の大切な風景の要素で、河川沿いは地域住民などに憩いと潤いを提供する散歩道としても親しまれています。河川沿いで建設行為等を行う際には、特性を踏まえながら積極的にみどりを配置するなどで、みどりやみずの連続性を深めます。また、河川周辺の風景資源と連携を図りながら、更に散歩に適した空間づくりを進めます。 <歴史・文化> 〜地域の歴史・文化、住宅地、農〜  歴史的・文化的資産を活かす 砧地域には喜多見を中心に歴史ある社寺や遺跡、古墳が多くあり、静嘉堂や成城の近代建築も見られます。また登戸道や筏道などの古道もあります。それらの歴史的・文化的資産の周囲においては、資産に対して建築物の配置や、植栽により空間のつながりを持たせたり、街づくりに資産を活かすなどの工夫を行います。 ? 特徴的な住宅地の風景を伝える 大正末期、成城学園の立地により開発された成城の住宅地は、現在でもゆとりのある区画が継承され、近代住宅も一部残り、当時植えられたイチョウや桜の並木は地域の資産に成長しました。住民により策定された成城憲章を踏まえ、みどりとゆとりある区画を保全し、成城らしい街並みを伝え継ぐ風景づくりを進めます。 大規模敷地の建替え等に伴う街づくりとの連携  大規模敷地における建て替えや土地利用転換にあたっては、既存のみどりや周辺環境を活かしながら、道路や公園などの都市基盤の整備を含め、周辺の住環境と調和した風景づくりを進めます。特に祖師谷団地については、けやき並木などの風景を継承するとともに、隣接する低層住宅地との調和に努めます。 農の風景との共存  喜多見・宇奈根地区は農地保全重点地区に指定され、農地の保全・育成が図られています。特に喜多見四・五丁目は東京都の「農の風景育成地区」に指定されており、かつての農村風景を再現した次大夫堀公園や、喜多見農業公園があるほか、「世田谷・みどりのフィールドミュージアム(喜多見4・5丁目農の風景育成地区)」として、世田谷の農や喜多見の歴史・文化を守り育み、学習の場として活かす取組みが行われています。農地の周辺で建設行為等を行う際には、土やみどりなど田園風景に調和するデザインや素材を採用したり、敷地内緑化や敷地境界を生垣にするなどの工夫をし、農地と建築物などが共存する風景づくりを進めます。 <にぎわい> 〜にぎわい、みち、鉄軌道〜  商店街から広がる風景づくり ウルトラマン商店街をはじめ、地域に点在する商店街では、商店街の取り組みや地域資源を風景づくりに活かすとともに、街づくりと連携した取組みを進めます。 大通りの心地よい空間づくり 世田谷通りや環状八号線など大通り沿道の建設行為等は、街並みのスカイラインや形態・意匠・色彩に配慮するとともに、可能な限り緑化を図るなど、歩行者にも心地よい空間を創出します。 外環道東名ジャンクション周辺のみどりとみずが調和した風景づくり 外環道東名ジャンクション周辺では、街づくりと連携しながら、みどりやみずと調和した風景づくりを進めます。ジャンクション整備に伴い創出される上部空間については、国分寺崖線のみどりや野川のみずなどの自然環境や遺跡等の記憶、風致地区内のゆとりある住環境と調和した整備を進めます。 小田急線駅周辺の街づくりと連携した風景づくり 連続立体交差化された小田急線千歳船橋駅から喜多見駅間は、駅周辺商店街の活性化とあわせて、周辺市街地との調和を図りながら、歩行空間の確保やベンチの設置などに取り組み、安全で誰もが楽しいウォーカブルな街づくりと連携した風景づくりを進めます。 烏山地域 <自然>  〜地形、みどり・みず〜  地形への配慮 仙川をはじめ、かつての河川の支流沿いには、両岸に斜面地が連なっています。地形や斜面地のみどりを活かした風景づくりを進めます。 まとまったみどりとの連続性の創出 烏山寺町をはじめとする寺院や法人などの所有する大きな敷地のみどり、蘆花恒春園や祖師谷公園、(仮称)北烏山七丁目緑地などにはまとまったみどりが見られます。これらのまとまったみどりは、地域の風景を特徴づける大切な要素です。まとまったみどりを起点に、より多くの人がみどりを感じられるよう、みどりの連続性に配慮した風景づくりを進めます。 水資源を活かした風景づくり 仙川には地域風景資産である祖師谷中橋をはじめデザインが工夫された橋が多く架けられ、みどりとみずが感じられる遊歩道が整備されています。仙川以東では、地域の北西から南東方向に向けて、烏山川や北沢川につながる支流や水路敷が随所に見られます。また、烏山寺町周辺は、“宙水”と呼ばれる武蔵野台地において貴重な浅い地下水の層があります。高源院には湧水によりできた弁天池があり、区の特別保護区に指定されています。これらのみずに関わる資源を活かしながら、散歩も楽しめるような風景づくりを進めます。 <歴史・文化> 〜地域の歴史・文化、住宅地、農〜  烏山寺町の保全・継承 関東大震災で都心から移転してきた寺が集まって形成されている烏山寺町は、寺院のみどりも色濃く、区内でも特質的な環境を創出しており、地域住民や寺院による自主協定のもと、宙水や地域環境の保全を目的とした取り組みも行われています。歴史・文化のみならず自然環境としても貴重な烏山寺町の特性を踏まえ、訪れる人にとっても魅力的な風景を育みます。 歴史的・文化的資産を活かす 烏山地域には、烏山寺町をはじめとする社寺、瀧坂道や甲州街道といった古道のほか、蘆花恒春園内には小説家・徳冨蘆花の書院や母屋も残され、小説には当時の風景を垣間見ることができます。また、世田谷文学館は、現代建築でありながら、久保家屋敷跡の庭園を活かしたつくりになっています。このような歴史的・文化的資産の周辺においては、資産に対して建築物の形態や配置、植栽により空間のつながりを持たせたり、街づくりに資産を活かすなどの工夫を行います。 特徴的な住宅地の風景を伝える 京王線開通後、大正末期より、上北沢駅前には桜並木を中心とした街区割りが個性的な住宅地が造成されました。およそ100年が経過し、豊かに育った桜並木は住宅地のシンボルであり、地域住民によって守り、育てられています。こうした経過を踏まえながら、調和の取れた住宅地の街並みを育んでいきます。 大規模敷地の建替えなどに伴う街づくりとの連携 烏山地域には八幡山団地や烏山北住宅などの住宅団地をはじめとした、大規模な敷地が点在しており、老朽化の進行とともに建替えなどによる居住環境の改善が必要とされています。住宅団地の建替えなどにあわせ、街づくりと連携をはかりながら、みどりのネットワークの創出など、風景づくりを進めます。 農の風景との共存 北烏山・給田地区や上祖師谷地区は、農地保全重点地区に指定され、農地の保全・育成が図られているほか、区内でも比較的多くの農地や屋敷林が残っている地域です。農地の周辺で建設行為等を行う際には、土やみどりなど田園風景に調和するデザインや素材を採用したり、敷地内緑化や敷地境界を生垣にするなどの工夫をし、農地と建築物などが共存する風景づくりを進めます。 <にぎわい> 〜にぎわい、みち、鉄道〜  商店街から広がる風景づくり 駅周辺などに広がる商店街では、商店街の取り組みや地域資源を風景づくりに活かすとともに、街づくりと連携した取組みを進めます。 大通りの心地よい空間づくり 甲州街道や環状八号線など大通り沿道の建設行為等は、街並みのスカイラインや形態・意匠・色彩に配慮するとともに、可能な限り緑化を図るなど、歩行者にも心地よい空間を創出します。 京王線連続立体交差事業と連携した風景づくり 京王線の連続立体交差事業が進む上北沢駅から千歳烏山駅の周辺では、側道や駅前広場などの整備により、歩行者の回遊性向上を図るとともに、周辺の街づくりと連携した風景づくりを進めます。特に、千歳烏山駅周辺では駅前広場や補助216号線の道路事業、駅南口の再開発事業などにより風景が大きく変化するため、魅力的な空間づくりを進めます。 4.協働でまちの魅力を高める風景づくりの方向性                           区では、様々な公共施設整備や普及啓発事業を行う中で、参加と協働による風景づくりを進めてきました。これまでの成果を踏まえつつ、幅広い切り口を設けて多くの区民や多様な主体の参加を導きながら協働による風景づくりを深めていくと共に、風景づくりに対する区民の主体性を高め、自発的な実践を促していきます。 (1)多様な主体の参加と協働による風景づくりの推進 地域の風景特性を活かした建設行為等や風景づくり活動団体による地域風景資産等を守り育てる活動のほかにも、現在、区内では地域の居場所づくりや趣味を活かしたイベントの実施、事業者や専門家、大学が連携した街づくり活動など、幅広い切り口の風景づくり活動が広がっています。 風景づくりの主体は多様になっており、従来の「区民・事業者・区」の枠を越え専門家や大学・学校等、町会・自治会・商店街、NPOや地域団体などに広がっています。 これらの多様な主体(区や行政を含む)が協働・連携しながら、それぞれの主体が活躍できる仕組みや体制をつくることにより、質の高い風景づくりに取り組みます。 ここに「多様な主体との協働により進める風景づくり」の図があります。 (2)区民主体の風景づくりの推進 1)ひとりひとりが担い手となる風景づくり 自宅の窓辺に花を飾ることや家の前の道路を掃除することなど、個人が普段の生活の中でできる行動の積み重ねは、地域の風景づくりへとつながっています。また、居場所づくりや趣味を活かした活動などが日常の風景の一部となって地域住民に親しまれているなど、風景づくりの種は区内の至るところで見ることができます。特に、住宅の占める割合の高い世田谷区では、区民ひとりひとりの実践が大切です。 区では、このようなひとりひとりが自分に合った風景づくりを自分のペースで実践できるよう、「風景」や「風景づくり」の考え方をより広く周知していきます。 2)区民や街づくりに関わる団体等との協働による風景づくり 風景づくりは、区民が自発的に進める活動をきっかけに、共感する人や団体とつながることで、幅広い活動へ展開していく可能性を持っています。区民ひとりひとりが風景づくりの担い手となり、そこから近隣・地域へと風景づくりの幅を広げ、更には、街づくりやコミュニティ形成へつなげるなど、様々な方向へ展開させていくことが、地域の魅力を高めていくことにつながります。このような風景づくり活動が進めやすくなる仕組みや支援を用意するとともに、時代に合わせた取組みや内容となるよう引き続き検討します。 コラム:風景づくりとの多様な関わり方 風景づくりへの関わり方は、日常の暮らしの中で気軽に楽しむものから、主体となって地域の風景づくりを進めるまで、様々です。幅広い区民が、ライフスタイルや関心にあわせて無理なく風景づくりに関わることが大切です。区では、多くの区民が風景づくりに関わり実践できるような機会や支援する制度を提供し、区民主体の風景づくりを進めていきます。 ここに「関心やライフスタイルに合わせた風景づくりとの関わり方」を示した図があります。 コラム:協働、連携による風景づくりの事例 事例1)既存樹木を保全した建築計画の実現 (区関係所管の連携) 国分寺崖線に隣接するみどり豊かな敷地における解体事業者からの既存樹木をすべて伐採する計画の相談に対して、支所街づくり担当部署、みどり政策担当部署と連携して対応し、視認性の高い道路や川沿いにある既存樹木を複数残すこととなりました。その後、建設事業者の協力により既存樹木を活かした計画がなされ、国分寺崖線の緑と調和した風景が保全されました。 事例2)北沢デザインガイドの活用 (区民・事業者・区の連携) 小田急線(代々木上原駅〜梅ヶ丘駅間)の上部空間に区が整備する通路、緑地・小広場等の公共施設について、区民参加で作成した「北沢デザインガイド」を活用し、支所街づくり担当部署、土木部工事担当部署、みどり政策担当部署との連携や事業者の協力を得ながら、地域の個性を活かした街並みと調和した魅力ある風景づくりが行われました。(関連:1−15ページ) 事例3)歴史的建造物を活用した街づくり (区・企業の連携) 企業が所有する保養施設の敷地における街づくりの際、敷地内で活用が計画されている近代建築について、東京都景観担当部署や区の支所街づくり担当部署、文化財担当部署との連携により、東京都指定歴史的建造物として選定されました。また、当該地の宅地開発や敷地内に建設された共同住宅、福祉施設等についても風景づくりの誘導を行い、事業者の協力を得て、新しい魅力的な風景が創出されました。 コラム:地域活動から生まれる風景の事例 (「bajico」や「おやまちプロジェクト」の取組み) 区内では、風景づくりを意識しないで行われている地域活動が、結果的に地域の魅力的な風景となっている事例があります。その例として挙げられるのが「bajico」や「おやまちプロジェクト」です。 【bajico】  「bajico」とは、「馬事公苑界わいコミュニティデザインプロジェクト」の愛称です。人と人とのつながりや心の豊かさの再確認をテーマに、地域に関心を持つ住民、区内の大学、企業、NPO、近隣店舗などのメンバーで会議体を組織し、世田谷区都市デザイン課と協働で取り組んでいます。現在は馬事公苑前の「けやき広場」にて年に3〜4回のイベントを開催しており、周辺住民にとって馴染みのある風景となっています。 【おやまちプロジェクト】  「おやまちプロジェクト」とは、尾山台周辺地域で、商店街・小中学校・大学・地域住民など、多様な人々が参加し、日常の中に交流や学び、チャレンジの場を生み出している取組みです。「つながるホコ天プロジェクト」や「おやまちカレー食堂」など、各々が持ち味を発揮しながら、自分たちの手でまちでの暮らしをより豊かにする活動を行っています。実際にまちの多様な世代の人々との出会いやつながりを通して新たな活動が創出されており、尾山台の街を彩る風景の一部となっています。 コラム:旧校舎を活用した多様な主体による活動から生まれる風景の事例 (「HOME/WORK VILLAGE」や「まもりやまテラス」の取組み) 世田谷区内では近年、近隣学校との統合などにより使われなくなった旧校舎を様々な機能を集約した複合施設へリノベーションして、区内産業の活性化や地域コミュニティの醸成を促す取組みが進んでいます。 学校だったころの特徴や、地域の特性を引き継ぎ、活かしながら、区、事業者、地域団体などの多様な主体による活動により、新たな風景が生まれています。 【まもりやまテラス】 『まもりやまテラス』は、旧守山小学校をリノベーションし、地域交流や地域活動を促すことを目的として2019年にオープンした複合施設です。  旧守山小学校では、自然観察会やビオトープ作り、風力発電、屋上緑化活動などの環境学習に力を入れており、また、校庭の一角にウッドデッキを作り、地域の憩いの場とするなど、地域交流の拠点としても親しまれていました。そうした地域との関わりや学校の思いを引継ぎ、地域の方々が運営に関わることができる拠点として、誕生しました。  誰でも気軽に利用することが出来る「交流ロビー」や、運動などに使用できる「広場」や「多目的室」、その他地域の方たちによる、畑いじりや盆栽、各種スポーツなどの「部活動」という様々な定期活動や、地域の賑わいを生み出す手段として、独自の登録制度を設けるなど、1年を通して『まもりやまテラス」を活用した様々な活動が行われています。 【HOME/WORK VILLAGE(ホーム / ワーク ヴィレッジ)】 『HOME/WORK VILLAGE』は、旧池尻中学校の建物を活用し、世田谷区による産業活性拠点創出事業の一環として開設された施設です。 この施設は、「暮らし (HOME)」と「仕事 (WORK)」を見つめ直し、私たちの社会に残された「宿題 (HOMEWORK)」を解決することを目的とし、オフィスやカフェ、飲食、ショップ、教育・文化・スポーツ施設などが集う複合施設として2025年に誕生しました。 地域の住民や訪問者が集い、この場所を基点に世田谷がひとつのVILLAGE(=集落やコミュニティ)のように緩やかにつながり、交流し、様々な活動が活性化していくことを目指しています。 事業支援や新たなビジネス機会の創出・交流を促し、スタジオや体育館でのスポーツ体験や、定期的に広場で開催されるマルシェやワークショップに参加し、ブックラウンジでは、コーヒーや好きな本を自由に楽しむなど、さまざまな人が集い、楽しみ、挑戦できる地域に根差した拠点として活用されています。 第2部 風景づくりの取組み はじめに、「風景づくりの理念」を実現する風景づくりの主な取組みの体系図を示しています。 内容は次の通りです。 「風景づくりの理念」、地域の個性を活かし、協働でまちの魅力を高める、世田谷の風景づくり の実現に向けた体系を説明しています。 (1)地域の個性を活かす 風景はそこに生活する人々によりつくられてきた暮らしや営みの積み重ねであることを踏まえ、地域の風景特性を活かし、次の視点によりその魅力を高めていきます。 区内の身近で魅力ある風景と、その風景を守り育てる活動を地域風景資産に選定・登録するとともに、街の魅力の核となる建造物や樹木を景観重要建造物・樹木などとし、地域で大切にされている風景を守り育てます。 また、用途地域ごとに定めたゾーンや風景特性に沿った風景づくりの方針・基準を定め、建設行為等や屋外広告物の誘導を行うことにより、世田谷らしい風景を守り育てます。 @地域の個性を表し大切にされている風景を守り育てる 地域風景資産 風景づくり条例に基づき、地域の風景を特徴づけている大切な要素を区民とともに選定します。 界わい宣言 風景づくり条例に基づき、まとまりのある区域内で自主的に行う風景づくり活動を宣言します。 界わい形成地区 風景づくり条例に基づき、地域住民との話し合いにより地域に合わせた風景づくりの方針や基準を検討します。 A世田谷らしい風景を守り育てる 建設行為等における風景づくり 景観法に基づく、建設行為等の風景づくりの流れ 風景特性・理念・方向性の把握 ひとつひとつの建設行為によって風景がつくられます。風景づくり計画に示す「風景特性」「風景づくりの理念・方向性」などを確認してください。 計画地周辺の風景特性の把握 計画地及び計画地周辺の風景特性(地形やみどり、街並みの色彩や素材、自然や歴史・文化資産など)を確認し、より良い計画とするヒントとしてください。 風景づくりに配慮した計画 建設行為等を行う際は、「風景づくりの方針」や「ゾーン別基準」、「風景特性基準」に基づき計画を行います。 一定規模以上の建設行為等は届出制度により風景に配慮された計画となるよう誘導・調整を行います。 届出・手続き 事前相談・調整 事前調整会議(せたがや風景デザイナーからの助言による調整) 届出 着工 屋外広告物における風景づくり 景観法・風景づくり条例に基づき、 「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」により屋外広告物を誘導します。 環状七号・八号線に面する敷地内の屋外広告物にはよりよい風景づくりにつながるよう協議を行います。 公共施設における風景づくり 景観法・風景づくり条例に基づき、 風景づくりを先導していくため、「公共施設の整備に関する指針」や「風景づくりのガイドライン(公共施設編)」に基づき整備や維持管理を行います。 また、景観重要公共施設に関する事項を定めます。 (2)協働でまちの魅力を高める 多くの区民や多様な主体の参加を導くため、幅広い切り口を設けて協働による風景づくりを深めていくとともに、風景づくりに対する区民の主体性を高め、自発的な実践を促していきます。 風景づくり活動団体の登録・支援や風景づくりアドバイザーの派遣、区民が風景づくりを身近に感じ気軽に参加したくなる普及啓発から担い手を広げ継続的な関りに繋げます。 子どもや若者、子育て世代など様々な世代、専門家や大学・学校、町会・自治会・商店街、NPOや地域団体など、様々な主体が協働・連携して活躍できる仕組みや体制を整え、まちの魅力を高めます。 @区民主体の風景づくりの推進 風景づくり活動団体の登録・支援 風景づくり活動を行う団体を「風景づくり活動団体」として登録し、風景づくり活動についての指導助言を行うアドバイザーの派遣や、活動団体同士で情報共有を行う交流会の開催などにより支援します。 風景づくりの普及・啓発 普及啓発冊子の発行 セミナーやフォーラムの開催 他部署が開催するイベントなどにおける周知活動の実施 体験型イベントなどの開催 風景づくりの教育の実施 SNSをはじめとしたデジタル・メディアの活用(情報発信・イベントなど) 風景づくりアドバイザーの派遣 専門的知識を有するアドバイザーの派遣などにより、区民や事業者が自主的に行う風景づくりを支援します。 A多様な主体の参加と協働よる風景づくり 多様な主体の協働による風景づくり 多様な主体が協働・連携し様々な取り組みを進めます。 せたがや風景デザイナーを活用した誘導による風景づくり 風景へ与える影響が大きい規模の建設行為等や屋外広告物の設置等を行う際に、様々な分野の専門家である、せたがや風景デザイナーを活用します。 第三者的な視点から、計画内容と風景づくり計画で定める定性・定量的な基準との整合を確認し、より良い計画となるよう誘導を行います。 続いて、 第4章 区民主体の風景づくり 区民が主体となって進める風景づくりを推進するための取組みや、風景づくりに活用できる様々な制度や助成、普及啓発の考え方や取組みを「区民主体の風景づくりの推進」「風景づくりの普及・啓発」として示します。 1.区民主体の風景づくりの推進                                   (1) 区民による風景づくりを広げるための取組み 風景づくりを広げるための制度を展開し、区民による自発的な風景づくりを支援します。 1)地域風景資産 地域で大切にしたい風景を区民の手で守り・育て・つくる活動を支援するために、地域の風景を特徴づけている大切な要素を区民と共に剪定するのが「地域風景資産」です。選定を通して、多くの区民と共に大切にしたい風景の価値を考えるきっかけとなっています。 平成14年(2002年)度の第1回選定から平成19年(2007)度の第2回選定、平成25年(2013)度の第3回選定と計3回の選定を経て、地域の公園、歴史的な建造物のある空間、散策路など、計86か所の区内の特徴あるさまざまな風景が地域風景資産として選定されています。 地域風景資産の選定にあたっては、選定方法の検討や、推薦者のサポート、実際の選定作業など多くの場面で区民の方々が関わりながら行ってきました。 今後、時代にあわせた選定・登録のあり方の検討、活動の担い手が不足している団体等への支援、新たな活動団体の登録、地域風景資産の周知や普及啓発など、地域風景資産制度の更なる発展に向けた検討や取組みを区民と共に進めます。 コラム:地域風景資産の例 双子の給水塔の聳え立つ風景  活動団体:駒沢給水塔風景資産保存会  大正13年(1924年)に多摩川で取水した水を当時の澁谷町(現・渋谷区)へ送水するために、駒沢の給水所に2つの給水塔(駒沢給水塔)が造られました。 駒沢給水塔は当時の最先端技術を結集した堅牢かつ独創的な意匠を持つ貴重な土木構造物であり、街のシンボルとして地域住民にとって愛着の深い施設であるとの理由により土木学会から「推奨土木遺産」としても認定されています。 活動団体「駒沢給水塔風景資産保存会」により、『この歴史ある近代産業建築を、その周辺環境をも含めて後世に受け継いでいく』ことを目的とし、会誌の発行や様々なイベントでのパネル展示、近隣小学校などへの各種見学会の実施などにより、駒沢給水塔を多くの人に知ってもらうための活動が行われています。 季節の野草に出会う小径  活動団体:船橋小径の会  船橋の住宅街に、四季の草花に出会える土のまま残された径(みち)があります。延長約300mのこの小径では木々や季節の草花が青々と茂り、鳥や昆虫などが生息し、花壇や庭園のように飾られた風景とはちがう、どこか懐かしい心地良さを感じながら歩くことができます。 活動団体「船橋小径の会」により、身近な風景・環境の大切さを伝えつつ、保全・育成・魅力を創出し地域の原風景再生につなげていくことを目的として、日々の小径の管理や小径に生息する昆虫・動植物の調査、小径の植物を活かして制作を行う「小径公房」での製作体験、近隣小学校への出前講座などにより、身近な自然の大切さをPRしています。 コラム:地域風景資産の選定 みなさんが生活する街の中には、生活や文化が感じられる街並みや、人々が行き交う商店街のにぎわい、日常に癒しや彩りを与えてくれる緑など、そこに暮らす人々の心に共有され、みんなが誇りと愛着を持っている大切な風景がたくさんあります。 地域風景資産とは、風景づくり活動を生み出すための仕組みです。風景を大切にしたいという一人ひとりの思いをきっかけに、風景のために活動する人の輪を広げ、大切にしたい身近な風景と、その風景を「守り、育て、つくる」ことを目的とした風景づくり活動をセットで選定することで、世田谷の風景を育んでいくことを目指しています。 以下に、これまで行ってきた計3回の選定の内、平成25年(2013年)に行った第3回選定のプロセスや取り組みについてご紹介します。資産を選ぶ過程においても、あらゆる場面で多くの区民が関わっていることが特徴です。 【地域風景資産の選定(第3回)】 @地域風景資産候補の募集 「大切にしたい身近な風景」を地域風景資産候補として区に推薦します。 ・推薦に向けて 推薦にあたっては、初めに映像や、寸劇、基調講演、パネルディスカッションなどにより、地域風景資産の仕組みをわかりやすく説明する場を設けた他、推薦の手続きをわかりやすくまとめた冊子「推薦の手引き」を作成しました。 ・募集の広報(平成24(2012年)年7月〜同年12月7日) 区報の第1面、区のホームページ、チラシやポスターなどにより、募集を開始しました。ポスターは駅や公共施設にも掲示しました。地域風景資産の募集説明会の参加募集と組み合わせて情報発信を行うことで、単なるお知らせとならないよう工夫しました。 募集期間中には、第1回、第2回で選定された地域風景資産の活動人に、風景づくり活動を体験できるイベントを積極的に開催して頂き、チラシにもスケジュールを掲載することで、推薦者に実際にどんな活動があるのかが伝わると共に、活動人にとってもPRの機会となりました。 ・地域風景資産への関心を高めるイベントの開催(平成24年(2012年)10月21日〜同年11月23日) 様々な視点から地域風景資産に関心を持ってもらうため、募集期間中に、「知る、体験する、発見する」といった3つの切り口でイベントを開催しました。 ・風景づくり講座(平成24年(2012年)10月21日) 世田谷区の風景づくりの前身である「せたがや百景」について講演を行い、「身近にどんな百景があるか?」「新たに百景にしたい風景はどういうものか」についてのマップづくりを行いました。 また、世田谷についての情報誌「世田谷ライフ」の編集部の方たちに登壇頂き、編集者の目線で、世田谷の街からどのように情報を引き出しているかを伺いました。 ・風景づくり体験ツアー(平成24年(2012年)10月28日) 実際に地域風景資産の活動の現場を体験してもらう主旨でツアーを企画しました。当日は天候が悪く、十分な活動ができなかったものの、地元の活動人に協力いただき、本格的な活動があることが参加者に伝わる内容となりました。 ・風景発見まち歩き(平成24年(2012年)11月23日) 過去の選定で資産があまりないエリアから推薦を集めることと、せたがや百景や区内のランドマークの中で、地域風景資産に選定されてないものも推薦につなげることを目的に4つのエリアを同時に歩き、ゴールですべてのルートの成果を共有するワークショップを実施しました。 地域の大学や区の風景づくりに関わっている大学にも協力いただき、全てのコースで学生の方も参加し、いろいろな世代の視点でコースを体験できるよう工夫しました。 A 風景づくりプランの作成 推薦人は、地域風景資産候補の特徴や風景づくり活動のアイデアなどをまとめた「風景づくりプラン」を区に提出します。 ・風景づくりプランのつくり方を伝える「推薦者向け説明会」の開催(平成25年(2013年)1月26日) 推薦者に向けて、選定条件や選定までのプロセスを理解してもらうため、詳細な説明内容を盛り込んだ冊子「風景づくりプランマニュアル」を作成・配布し、先輩活動人のプラン作りのエピソードなどを交えながら説明しました。 ・候補のお披露目(平成25年(2013年)3月2日) 応募があった候補を、風景づくりフォーラムとパネル展でお披露目しました。 ・現場確認まち歩き(平成25年(2013年)4月13日・14日・20日) 推選のあった地域風景資産候補を実際に確認するまち歩きを行いました。まち歩きでは第1回、第2回で選定された地域風景資産の先輩活動人が「サポーター」として現場をリードして、風景づくりプランの作成に不可欠な「@対象の確認、A所有者の確認、Bどんな風景づくりができそうか」のアドバイスを行いながら進めました。 サポーターの心構え @プランを書くのは推薦人!  Aおしつけではなく、耳を傾けよう  Bそっと手をさしのべる  Cman to man ではなく one for all(ひとりはみんなのために) Dいつも笑顔で! ・プラン作成 風景づくりプランの作成を、公開作業日として、@テーマ別、A地区別、B最終調整の3回開催しました。 「サポーター」と現場確認をして見えてきた課題を調整しながら作成を行いました。 ・選定人の選出 区民、学識経験者、区職員の計10名を選定人として選出しました。区民の選定人は、選定の趣旨をよく理解し、総合的な判断が出来る区民を選定することとし、風景づくり委員会の区民委員と地域風景資産の活動人から選出しました。 選定人の心構え @推薦人・活動予定者のやる気やプランのよいところを育てよう A現場主義!現場で見て聞いて感じたことを大切にしよう B素直な感覚を大切に、議論を重ねよう ・選定人現場確認(平成25年(2013年)9月29日、10月5日・6日) 27件の推薦現場を、1日9件ずつ3日間に渡って、現場確認を行いました。現場確認は1か所あたり15分とし、5分間推薦人から説明を行い、10分間質疑応答を行いました。 5分間の説明では、現場に仲間をたくさん連れて、紙芝居形式でプレゼンするケースや、現場に大型モニターを持ち込んでプレゼンするケースなどもあり、限られた説明の機会を効果的に活かしていこうという推薦人の方もいました。 ・公開選定会(平成26年(2014年)1月26日) 選定人は、風景づくりプランと現場確認を基に、「地域風景資産選定の条件」について、「A:条件を満たしている」、「B:条件は満たしているか現時点で課題がある、「条件を満たしていない」の3つの視点で判断しました。 地域風景資産選定の条件 @風景としての資産の価値があること A地域の共感・共有があること B風景づくりにつながるアイデアがあること Cコミュニティづくりにつながる可能性があること 推薦人による最終説明と選定人からの質疑応答の後、公開により選定結果が発表され、新た に20件の地域風景資産が誕生しました。 ・選定後の対応 選定会後には、活動人同士の絆を深めるための懇親会を開催したり、パネル展や区報などにより、新たな地域風景資産のお披露目を行いました。 2)界わい宣言 区民が、自宅周辺の近隣の方々と風景づくりを進める手立てとして、まとまりのある区域内における3人以上の土地・建物等の所有者などが、区域内で自主的に行う風景づくり活動を宣言します。 宣言された風景づくりの内容を区に登録する事で、風景づくり条例に基づく位置づけが得られるため、区が周知すると共に、地域活動を積極的に進めることができます。これまで、区内の4か所の界わい宣言が登録されています。 コラム:界わい宣言の例 奥沢・土とみどりの街づくり宣言 土とみどりを守る会 「緑豊かな街並みを維持し、心安らぐ街にしていくための住環境づくり」を宣言の目標として、平成16年(2004年)3月に宣言し登録されました。 活動内容(抜粋) @街並みの調和を大切にし、まちの歴史を刻む建物など、語り継がれていく風景を皆で守る。 A街並みに寄与している樹木を推奨し、周囲の住民の理解を得て、その保全に努め、生活空間を豊かにしてゆくための活動を進める。 B季節の花がある楽しい街並みづくりや、文化活動を通してご近所づきあいを活性化し、地域のコミュニケーションを深める活動を進める。 3)界わい形成地区  地域の特徴を活かした風景づくりを進めるため、地域独自の方針や基準を策定し、区に届出を行う建設行為等の種類や規模を定めることができる、景観法及び風景づくり条例に基づく制度です。指定に当たっては、地域での十分な話し合いや合意形成を図りながら、めざしたい風景像や風景づくりの方向性を示す「風景づくりの方針」、めざしたい風景の実現に向けた「風景づくりの基準」を策定します。指定後は、区が届出を通して事業者に「風景づくりの方針」や「風景づくりの基準」を遵守するよう指導・誘導を行います。また、地域と区が定期的に情報共有を行いながら、協働で地域の特徴にあった風景づくりを進めていきます。  界わい形成地区は、現在「奥沢1〜3丁目等地区」の1か所が指定されています(令和8年(2026年)4月時点)。 コラム:界わい形成地区の例 奥沢1〜3丁目等界わい形成地区 〜みどりと人がつなぐ おくさわの風景づくり〜 奥沢1〜3丁目等地区は、みどり豊かな住宅地や歴史を感じさせる街並みなど地域固有の風景を残し、また、住民団体の地域活動も活発に行われている地域です。 区では、平成29年(2017年)度より、この魅力的な風景を地域住民の手で守り育てて次世代を担う子どもたちへ引き継ぐため、「奥沢の風景を育むプロジェクト」に地域住民と共に取り組んできました。 平成29年(2017年)度にまちあるきや意見交換会、セミナーを開催し、「これからの奥沢の風景」について考え、平成30年(2018年)度からは、地域の特徴を活かした風景づくりを進めるために方針やルールを設けることができる制度である「界わい形成地区」指定の検討と、イベントの開催や普及啓発などの「風景づくりの実践」の両輪による取組みを地域住民と共に開始しました。奥沢の風景を守り育てる手立てを考える「ワークショップ」や奥沢の風景の魅力を共有するためのイベント「風景祭」の開催、界わいニュースの発行などにより地域住民と共に思いを共有し内容の検討を進めてきました。 令和2年(2020年)度には奥沢駅と奥沢子安公園方面を結ぶ斜めの道の愛称を募集し、令和3年(2021年)度に奥沢小学校の子どもたちからも提案があった「道祖神通り」に決定しました。 そして、令和4年(2022年)6月30日、区内で初めての指定となる界わい形成地区、「奥沢1〜3丁目等界わい形成地区〜みどりと人がつなぐおくさわの風景づくり〜」を指定し、同年10月1日より運用を開始しました。 運用にあたっては、敷地の道路に面した部分を緑化し周辺の緑との連続性を図ることや、区域内のすべての建築物を届出対象とするなど、独自のルール(詳細は5−31以降に記載)を定めています。 令和6年(2024年)3月には、奥沢小学校でサクラの植樹式を行うなど、地域の子どもたちも風景づくりに参加し、郷土愛を育む取組みを進めています。 4)風景づくり活動団体の登録・支援 区民が主体的に取り組む風景づくり活動を推進するため、風景づくりに関する自主的な活動を行う団体を「風景づくり活動団体」として登録し、支援します。 コラム:風景づくり活動団体とは 風景づくり活動団体の登録制度は、区民の自主的な風景づくり活動を支援する仕組みです。 風景づくり活動団体として登録されると、区の風景づくりの取組みの情報共有や、区と風景づくり活動団体とで行う交流会への参加、技術的支援や専門家の派遣など、風景づくり活動についての支援を受けることができます。 また、区が行う風景づくりの取組みや、区内の様々な場所で活動している他の活動団体の取り組みを報告する「風景づくり交流会」の場で意見交換することで、自身の風景づくり活動に活かせる新たな気づきや繋がりが生まれ、また、区民が実際に風景づくり活動に踏み出す際にも、様々な支援策によるサポートを受けることができます。 5)風景づくりアドバイザーの派遣 協働による風景づくりや区民等が自主的に行う風景づくりを支援するために、風景づくりに関して専門的知識を有する風景づくりアドバイザーを派遣して、区民等が自主的に行う風景づくりを支援します。 コラム:風景づくりアドバイザーの活用 風景づくりアドバイザーは、風景づくりに関する悩みや課題を解決することを目的に、風景づくり活動を行う区民のもとへ、風景づくりに関して専門的知識をもつアドバイザーを派遣する制度です。 これまでには、風景づくり活動が行われている道路整備の設えの提案や、地域風景資産の隣接地で行われる建築工事が、当該地域風景資産に与える影響の調査・助言、風景づくり活動に繋がる取組みについての講演などで活用してきました。 事例1 成城3丁目桜と紅葉の並木の私道整備 地域風景資産やせたがや百景にも選定されているこの道路は、成城学園が住宅地として開発され始めた頃に、大きな邸宅の玄関に続くアプローチとしてつくられた砂利敷きの私道です。 私道の両側には桜と紅葉の並木があり、四季折々の美しい風景を形成しています。 しかし、砂利敷きの為、経年や宅配車の増加などにより、所々に轍ができ水たまりが生じるようになり、通行に支障が出ていました。 そこで、趣のある砂利敷きの風景を維持しつつ、安心して通行が出来る私道の整備を検討することになりました。 検討にあたっては、風景づくりアドバイザー制度を活用し、私道所有者の方々からの要望の取りまとめや、まちづくりの専門家の観点から具体的な整備案の検討や、解決すべき課題などについてアドバイス頂きました。 様々な検討を重ねた結果、路盤の転圧や、落ち葉や土が溜まった側溝の清掃、浸透枡の設置などにより並木の根を傷めずに、砂利敷きの風景を維持したまま、轍による水たまりを解消することができました。 事例2 船橋小径の隣接地の建築による小径への影響調査など 船橋の住宅街に、地域風景資産にも選定されている四季の草花に出会える土のまま残された小径があります。 延長約300mの小径では木々や季節の草花が青々と茂り、鳥や昆虫などが生息し、懐かしく心地良い自然を感じながら歩くことができ、地域住民の方々により木々や草花の管理が行われています。 令和2年(2020年)に隣接する高校の建て替え工事に伴い、グラウンドも整備を行うことになり、小径の風景も大きく変わる事になりました。 そこで小径の風景を保全するために、風景づくりアドバイザー制度を活用し、グラウンド整備工事による小径の樹木への影響の調査や、小径内の日照条件の変化などを考慮した樹木の選定、小径に面する高校敷地に植えられる樹木の提案などについてアドバイスを頂きました。 現在でも、地域住民が主体となり、近接する大学などと共に連携しながら風景づくり活動が行われており、地域の小学校において課外授業を行うなど、船橋の原風景を感じることができる貴重な学びの場になっています。 (2)区民による風景づくりに活用できる制度 世田谷区では、区民の街づくりや地域づくりの活動に関する助成制度や支援制度が数多くあり、その中には風景づくりにつながるものがあります。区民が街づくりや地域づくりに取り組む際には、関係所管と連携しながら、それぞれの目的の達成と併せて魅力的な風景がつくられるよう支援します。 風景づくりにつながる仕組みや制度、助成等 みどりづくりからつながる風景づくり ・緑化助成制度 みどり豊かな環境を確保し安全で潤いとやすらぎのある街づくりを進めるため、植栽帯やシンボルツリー、屋上緑化など、緑化に必要な費用の一部を助成する制度です。 ・3軒からはじまるガーデニング支援制度 近隣の3軒以上で構成される緑化活動を行うグループを対象に、緑化に関するアドバイザーの派遣などの支援をする制度です。 ・みどりと花いっぱい活動 花や自然を大切にする心を育み、花づくりを通して地域のつながりを深める活動の支援として、区と協定を結んだ地域住民や団体(3名以上)に対して、公園や商店街などの花壇に植え付ける花苗等の資材を提供する制度です。 ・市民緑地制度 都市に残された民有地のみどりを保全し、公開することで、地域に憩いの場を提供することを目的とした都市緑地法によって定められている制度です。 ・小さな森制度 野鳥や昆虫など自然生態の保護や、まちに潤いを与える民有の緑地を登録することにより、都市の貴重なみどりを保全する制度です。 ・緑地協定 都市緑地法に基づき、地域の環境を良好に保つために、土地所有者の合意を得たうえで、緑地の保全や緑化に関するルールを定める制度です。 街のルールづくりからつながる風景づくり ・地区計画等 都市計画法などに基づき、安全で住み良い街の将来像を実現することを目的として、建築物の用途や形態、道路、公園等の街づくりのルールを定めることができる制度です。 ・地区街づくり計画 世田谷区街づくり条例に基づき、法的な項目にとらわれることなく、地区の特性に応じて幅広い内容を地区のルールとして定めることができる制度です。 ・区民街づくり協定 区民や自治会などが、地域で定めた街づくりに関するルールを「区民街づくり協定」として区に届出することができます。区は一定の要件を満たしたものについて区民街づくり協定として登録できる制度です。 ・建築協定 建築基準法に基づき、土地所有者などが建築物の敷地面積や用途、面積や高さ、意匠などについて、独自の基準をつくり、お互いに守りあっていくことを約束(協定)する制度です。 地域活動からつながる風景づくり ・地域の絆連携活性化事業 区内の町会、自治会などの地縁団体及び区内の地域で公益的活動を行う団体が、相互に協力し、地域の絆を深め、連携を拡充しながら実施する地域の活性化への取組みを支援する事業です。 ・市民活動支援事業 区民生活の向上や豊かな地域社会の実現を目的に、さらなる市民活動の促進を図るため、NPO等の市民活動団体と区が地域の課題解決などのために事業などを実施する「提案型協働事業」を実施しています。 ・地域活動団体への助成 地域でコミュニティ活動を実践している団体に、活動に必要な物品または指導員謝礼などを助成(地域活動団体支援事業)する制度です。 ・地域共生のいえづくり支援制度 自己所有の建物の一部あるいは全部を活用した場づくりを支援することで、地域共生のまちづくりを推進し暮らしやすい環境と、地域の絆を生み出し育んでいくことを目的とした支援制度です。 環境や安全への配慮からつながる風景づくり ・ブロック塀等撤去工事助成 道路に面した安全性が確認できないブロック塀等について、撤去費用の一部を助成する制度です。 ・雨水タンクの設置助成 大雨時の道路の冠水や、雨水が河川へ一気に流入することによる河川の氾濫の抑制に繋げるため、雨水タンクの設置費用の一部を助成する制度です。 ・雨水浸透施設の設置助成 雨水を敷地内の地下に浸透させることで、グリーンインフラ(雨水貯留浸透、湧水保全、みどりの保全や創出、ヒートアイランド現象の抑制など)に繋げるため、雨水浸透施設の設置費用の一部を助成する制度です。 まちづくり活動の実践からつながる風景づくり ・トラストボランティア団体 世田谷の自然や歴史的・文化的環境などの保全活動を行っています。 ・世田谷トラストまちづくり活動助成事業 区民主体のまちづくり活動に対して助成する事業です。 ・街づくり専門家派遣 街づくりに専門的な知識を持った人が、街づくり協議会などの活動を支援する区の制度です。 にぎわいのある商店街からつながる風景づくり ・商店街施設整備事業への助成 商店街の振興並びに近隣住民の安全性や利便性及び快適性の向上を目的に行う商店街の共同施設・地域コミュニティ施設の整備等の事業を補助します。(主な例:街路灯の設置・建替え、カラー舗装、休憩所や交流施設、ポケットパークの改修、整備など)  原則商店街の活性化につながる「新規性」のある事業に限ります。 2.風景づくりの普及・啓発                                                (1)風景づくりの普及・啓発の考え方 多様な主体との協働により、風景づくりを進めていく必要がある一方で、地域での風景づくりにおいては、風景づくりや活動に対する興味・関心の差、担い手の不足、活動の継続性などの課題も生じています。 魅力的な風景づくりを推進するため、以下のような視点をもって普及・啓発活動を進めていきます。 1)「風景づくり」が身近にあることをより多くの人々に伝える 風景づくりを広げていくためには、区内に住む子ども・若者・大人はもちろんのこと、区外から通勤・通学する人、区内の様々な営みに関わる人など、より多くの人々にまずは世田谷の風景の魅力や風景づくりの取組みを知ってもらい、関心を持ってもらう事が必要です。 また、風景は人々の貴重な共有の財産であり、個人が普段の生活の中でできる行動が地域の風景づくりへとつながっていることを知ってもらい、区民ひとりひとりが風景づくりの主体である事を認識してもらうことが大切です。 多様な媒体や機会を活用しながら、多角的な情報発信を進めていきます。 2)風景づくりを身近に感じ、共感し、気軽に参加したくなる情報の発信、機会の提供を行う 風景への関心が実践につながるように、区民が気軽に、楽しみながら一歩を踏み出せる、風景づくりを体験・共感することができるような情報の発信やイベントなどの企画を進めます。 3)多世代・多様な主体へ担い手を広げる 多様な価値観を持つ人々の風景づくりへの参加は、風景づくりの幅を広げ、質の向上につながります。 子どもや若者、子育て中の親などの様々な世代、専門家や大学・学校、町会・自治会・商店街、NPOや地域活動団体など、様々な状況で世田谷に関わりを持つ人々が風景づくりに参加することで、新たな視点やニーズを取り入れ、ノウハウを活用することができます。多世代・多様な主体へ風景づくりの輪を広げるため、それぞれのニーズを探りながらそれに関わる風景づくりの参加の場の創出(きっかけづくり)に取り組みます。 4)風景づくりが継続・継承される仕組みをつくる 風景づくりを持続させていくためには、風景づくりの担い手として率先して取り組んでいる人々が、より質を高めた活動を行うと同時に、新たな担い手の参加により、今ある活動と新たな取組みをつなげていくことが重要です。 風景づくりが継続され、新たな担い手へつながり広がるよう普及・啓発を行い、風景づくりが継続・継承される仕組みを検討していきます。 (2)具体的な取組み    風景づくりを身近に感じ、共感し、気軽に参加することから、風景づくり活動を担う人の裾野を広げるため、以下のような取組みを実施し、普及啓発を進めます。 普及啓発の取組み  ・普及啓発冊子の発行 世田谷の素敵な風景や活動を紹介する「風景PRESS」などを発行していきます。 ・セミナーやフォーラムの開催 風景づくり活動を行う団体同士での交流会や、都市デザインフォーラムなどを開催していきます。 ・区主催のイベント等における周知活動の実施 様々な部署で行うイベントなどに参加し、風景や風景づくり活動について周知を行っていきます。 ・体験型イベントなどの開催 街歩きや、謎解きなど、参加者が実際に体を動かし体験できるイベントを企画していきます。 ・風景づくりの教育の実施 子ども達に風景や風景づくりについての意識を醸成し、郷土愛を育み、将来の担い手になってもらえるよう学校への出張講座などを行っていきます。 ・SNSをはじめとしたデジタル・メディアの活用(情報発信、イベントなど) 各種イベントの広報や情報発信について、デジタル・メディアを活用して、より多くの方々に情報が行き渡るよう、進めていきます。 コラム:普及啓発の取組みの例 事例1 都市デザインフォーラム 「誰にとっても快適で魅力あふれるまちのデザイン」について、その視点や活動に関して区民・事業者・行政が共に考え理解を深めるため、区民を対象として「都市デザインフォーラム」を毎年開催しています。 令和6年(2024年)度は「風景を楽しんで暮らしをもっと豊かに!」をテーマに開催しました。 日常生活で少しだけ「風景」を意識して行動すると、「幸福感」が生まれ、日常の生活がますます豊かになることを会場の皆さんで共有しました。 日常の何気ない行動が風景づくりに貢献していることや、「風景をつくる人」「風景を見る人、楽しむ人」が関わり合い共存することで、日々の暮らしが豊かになっていくことに気が付くことができたフォーラムとなりました。 今後も、様々なテーマで毎年開催していきます。 事例2 体験型イベント 多くの区民に風景について関心を持ってもらう事を目的に、風景を楽しむ体験型のイベントを企画、実施します。 これまでに、地域風景資産を巡ってクイズに解答する「クイズラリー」や、奥沢のみどり豊かな住宅地や歴史を感じさせる街並みを巡って魅力を再発見してもらうための「スタンプラリー」などの体験型イベントを実施しました。 事例3 子ども・若者を対象としたイベント 次世代を担う子ども・若者たちが世田谷の風景づくりに親しみ、愛着を持てるよう、実際に現地へ赴き、世田谷の風景の魅力について楽しみながら学ぶことができるような体験型のイベントを企画、実施します。 これまでに、池尻大橋から三軒茶屋の地域風景資産をテーマとして親子で謎解きをしながらまち歩きを行う「なぞときまちあるき」や、毎年、世田谷の特徴的で魅力的な風景を紹介する「風景プレス」や、謎解きの要素を盛り込んだ「謎解き風景プレス」の発行などに取り組んできました。 それぞれの取組みの写真や資料を掲載しています。 第5章 建設行為等における風景づくり 風景づくりを進める上で、建築物や工作物などの建設行為等は非常に大きな役割を担います。 第5章では、建設行為等を行う者が共通の価値観を持って計画を行えるよう、法に基づいて指定した「風景づくりの方針・基準」を示します。 1.建設行為等の計画をする前に                         「風景」とは、その地域の風土と文化や歴史の表れであり、これまでそこに生活してきた先人の人々の暮らしや営みの積み重ねによってつくられ、受け継がれてきました。 よって、「風景」は、そこに生活する人々のまちへの愛着を深め、地域の個性や価値観を形成するものであり、「地域の大切な共有の財産」です。 そして、「風景づくり」とは、地域の個性あふれる風景を、守り、育て、つくることです。 これから行われるひとつひとつの建設行為等によって、世田谷の新たな風景がつくられていきます。 風景は「地域の大切な共有の財産」であることから、建設行為等を計画する際は、地域の風景特性を把握し、地域の風景に配慮した計画とするなど、世田谷の魅力的な風景づくりに貢献することが求められます。 次ページに、建設行為等を行うにあたって大切にする風景づくりの考え方を示します。 これらに基づき「3.風景づくりの方針・基準など」を定めています。 (1)受け継がれてきた地域の個性を尊重する 時代の流れの中で育まれてきた地域の風景の個性を大切にします。建設行為等にあたっては、周辺の風景特性に配慮した配置や規模、形態・意匠・色彩、外構にするとともに、地形を活かした計画や地域の植生に合った植栽とするなどにより、地域で受け継がれてきた風景の文脈を次世代へ引き継ぎます。 計画する際には、周辺地域にも目を向け、どのような自然や歴史・文化が息づいているのか、地域の魅力や個性を感じ取り、より良い計画とするためのヒントにしましょう。 コラム:植栽で受け継ぐ地域の風景 既存の生垣や樹木を残した建替え 地域で受け継がれてきた風景の文脈を引き継ぐひとつの方法として、建物を建て替えや増改築の際に、もともと敷地にあった樹木を残し活かす方法があります。 特に、道路境界部にある生垣を残すことで、周辺の風景への影響をおさえることができます。 区では、一定基準以上の既存樹木を保全する場合には、「みどりの計画書」における緑化基準の樹木本数基準について、本数優遇制度があります。 また、一定基準以上の樹木を移植する場合は、その費用の一部を助成しています。 建築物の計画をする際は、既存樹木の特性や生育環境を考慮し、可能な限り既存樹木の活用することにより、風景の継承と質の高い風景づくりへの配慮をお願いいたします。 (2)風景のまとまりや連続性を大切にする 建設行為等の計画をする際には、周囲の建築物やみどりと調和するよう配置や形態・意匠・色彩、外構に配慮することで、風景のまとまりや連続性のある、地域になじんだ風景を生み出します。 計画地に隣接する敷地や道路を挟んだ向かい側の敷地など、周囲にはどのような建築物があり、どのような色彩や素材を用いているのかを把握し、周辺の街並みとの関係を踏まえて計画しましょう。 (3)歩いて楽しめる風景を育む 沿道のみどりの潤いや人々が出会い交流する雰囲気を感じることができるなど、歩いて楽しめる風景を育みます。 建設行為等にあたっては、アイストップとなる場所を意識した効果的な植栽や人が滞留できる空地の確保、照明の工夫などにより、歩行者の目線を意識したより質の高い計画となるよう配慮します。 (4)街並みを整える 上記(1)〜(3)の考え方を踏まえた計画とした上で、道路などの公共空間からの見え方を意識し、細部の設えをさらに工夫することにより、街並みが整った魅力的な風景となります。 計画する際には、室外機やアンテナなどの設備を設置する際に目立たないよう工夫する、駐車場やごみ置き場を植栽で隠すなど、魅力的な街並みとなるよう配慮します。 2.建設行為等における風景づくりの誘導                              (1) 建設行為等の誘導の考え方 建設行為等を行う際は、風景特性、風景づくりの理念・方向性を本計画の第1章〜第3章で確認の上、地域特性を踏まえた良好な風景の形成に向けて、風景づくりに配慮した計画を、景観法に基づく景観計画区域の区分に応じた「風景づくりの方針」「風景づくりの基準」に基づき行います。 また、「風景づくりの基準」については、「風景づくりの手引き(別冊)」を参考とします。 なお、一定規模以上の建設行為等については、区に対して法及び風景づくり条例に基づく届出が必要です(P.5-57参照)。 また、届出の対象外である建設行為等についても、風景づくりの方針・基準を参考にして、よりよい風景づくりの工夫が必要です。 また、風景が大きく変わることが予想される建設行為等では、状況に応じて風景への配慮について関係部署との段階的な調整や、せたがや風景デザイナーを活用した事前調整会議の開催などの誘導を図ります。 建設行為等の流れの図 風景特性、風景づくりの理念・方向性の確認 (第1章〜第3章) 現地確認などによる計画地及び計画地周辺の風景特性の把握 風景づくりに配慮した計画 風景づくりの方針・基準 区域 一般地域 低層住宅系ゾーン 住宅共存系ゾーン 商業系ゾーン 風景づくり重点区域 水と緑の風景軸 界わい形成地区 それぞれのゾーンや区域に、風景づくりの方針と基準があります。 また、それぞれの風景特性に風景づくりの基準が定められています。 まとまったみどり基準 河川基準 緑道基準 歴史的資産基準 農の風景基準 拠点基準 幹線道路基準 世田谷線沿線基準 さらに、風景づくりの基準を、事例などを用いて解説した風景づくりの手引きがあります。 (建設行為等における計画編、色彩編、奥沢1〜3丁目等界わい形成地区〜みどりと人がつなぐ おくさわの風景づくり〜です) 届出対象の場合 建設行為等の届出手続 建設行為等(工事着工) へ 届出対象外の場合は、そのまま建設行為等(工事着工) へ (2)景観計画区域の指定 法第8条第2項第1号の「景観計画区域」は、世田谷区全域とし、「風景づくり重点区域」と、それ以外の世田谷区全域を対象にした「一般地域」に区分します。 景観計画区域図を掲載しています。 景観計画区域の区分の表を掲載しています。 一般地域 低層住宅系ゾーン 第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域 住宅共存系ゾーン 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域及び市街化調整区域 商業系ゾーン 近隣商業地域及び商業地域 風景づくり重点区域 水と緑の風景軸 国分寺崖線とその周辺 界わい形成地区 「水と緑の風景軸」以外で、風景づくりを重点的に推進する区域 計画敷地が複数のゾーンにまたがっている場合は、敷地の過半を占めるゾーンの基準を適用します。 水と緑の風景軸の範囲の範囲の住居表示の表を掲載しています。 界わい形成地区の範囲の範囲の住居表示の表を掲載しています。 奥沢1〜3丁目等界わい形成地区の区域図を掲載しています。 1)一般地域 一般地域は、土地利用状況と連携を図ることで風景づくりの効果を高めるため、都市計画に定める用途地域をもとに、建築物の形態や意匠に影響を与える主な要因である「用途」、「高さ・規模」および「現状の土地利用状況」を踏まえ、次の「低層住宅系ゾーン」「住宅共存系ゾーン」「商業系ゾーン」に区分します。 一般地域 低層住宅系ゾーン 第一種低層住居専用地域及び第二種低層住居専用地域 住宅共存系ゾーン 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域及び市街化調整区域 商業系ゾーン 近隣商業地域及び商業地域 2)風景づくり重点区域 風景づくりを重点的に推進する必要がある区域を、世田谷区風景づくり条例に基づき、「風景づくり重点区域」として指定します。風景づくり重点区域には、「水と緑の風景軸」と「界わい形成地区」があります。 水と緑の風景軸 成城から玉川田園調布までつながる国分寺崖線及び国分寺崖線と一体となって風景をつくりだしている区域。 界わい形成地区> 指定の対象となる地区の例 ・景観重要建造物、景観重要公共施設の周辺 ・にぎわい・文化・福祉などの拠点で区民や来街者が多く訪れる区域 ・区民の風景づくり活動が活発な区域 ・その他、良好な風景の形成を重点的に推進する必要があると考える区域 など 指定の考え方 ・界わい形成地区は、区域の風景特性を活かし、個性を創出するため、風景づくり重点区域として区域独自の「風景づくりの方針」、「風景づくりの基準」を策定し、景観法に基づく届出対象行為や規模を定め、風景づくりの誘導を図ることが可能です。 ・界わい形成地区は、対象区域内の住民など関係権利者の意見を踏まえて指定します。 ・良好な風景づくりを目的とする地区街づくり計画や地区計画などを行う際には、界わい形成地区の指定と連携を図ります。 ・景観法に基づき一定の要件を満たした土地の区域については、住民などによる界わい形成地区指定の提案も可能です(景観法第11条 住民等による提案)。 ・界わい形成地区を指定する際は、景観法に基づく所定の手続き及び風景づくり委員会の審議が必要となります。 (3) 風景づくりの方針・基準の考え方 建設行為等を行う者が共通の価値観を持って計画を行えるよう、地域特性を踏まえた「風景づくりの方針・基準」を法に基づいて指定し、良好な風景づくりの実現を目指します。 1)風景づくりの方針(法第8条第3項) 風景づくりの方針は、将来にわたり良好な風景づくりを図っていく上で必要な方針を定めるものです。 一般地域の3つのゾーン(低層住宅系ゾーン・住宅共存系ゾーン・商業系ゾーン)及び風景づくり重点区域(水と緑の風景軸・界わい形成地区)において、ゾーン毎の特性を踏まえて風景づくりの方向性を示します。 2)風景づくりの基準(法第8条第4項第2号) 風景づくりの基準は、建設行為等に対し、配置、高さ・規模、形態・意匠・色彩などについて定める基準です。以下の「ゾーン別基準」と「風景特性基準」を定めます。 ゾーン別基準 ゾーン別基準は、一般地域の3つのゾーン及び風景づくり重点区域(水と緑の風景軸・界わい形成地区)において、ゾーン毎の特性を踏まえ、建設行為等を行う際に適合すべき基本的な基準です。 風景特性基準 風景づくりを行う上で、特に調和や配慮が求められる風景特性に隣接または近接する対象範囲で建設行為等を行う場合、それぞれのゾーン別基準に付加して適合を求める基準です。 まとまったみどり基準、河川基準、緑道基準、歴史的資産基準、農の風景基」、拠点基」、幹線道路基」、世田谷線沿線基」の計8つの基準を設けます。 コラム:世田谷の風景特性を活かした建設行為等の誘導の仕組みの工夫 建築物や工作物などは、風景を構成する大きな要素の一つです。 そのため区では、建設行為等の計画が風景づくりに配慮した計画となるよう、以下に示す2つの考え方に基づき誘導しています。 ひとつは「大きな視点で見た風景の特徴に調和すること」、もう一つは「敷地周りの風景の特徴を活かして、地域の風景や計画自体の魅力を高めること」です。 @大きな視点で見た風景の特徴に調和した風景づくり 世田谷のまちを大きな視点で見ると、同じ区内でも住宅地と商業地とではつくられてきた風景が異なっています。また、みどり豊かな国分寺崖線一帯など、一定の範囲で特徴を持った地域もあります。 風景は、その中で生活する人々の共有の財産であるため、建設行為等を計画する際には、このような大きな視点で見たときに調和のとれた風景となるよう配慮した計画を立てることが求められます。 そこで、世田谷区では5つに区分したゾーン(「低層住宅系ゾーン」「住宅共存系ゾーン」「商業系ゾーン」「水と緑の風景軸」「界わい形成地区」)のそれぞれに風景づくりの方針・基準を設けることで、大きな視点で見たときに調和のとれた風景となるよう誘導しています。 A敷地周りの特徴を活かした風景の魅力を高める風景づくり 建築物や工作物などを敷地単位で捉えると、敷地の周りには、まとまったみどり、河川、歴史的な建築物、農地など、世田谷らしい風景を形づくる特徴的な要素がたくさんみられます。 これらの付近で建設行為等を行う場合は、その特徴に配慮するなど、周辺の風景の魅力を高めることが求められます。また、そうすることで計画自体の魅力も向上します。 そこで、世田谷の風景を特徴づけている8つの要素について「風景特性基準」を設け、地域の個性を活かした風景をつくることができるよう誘導しています。 このように、「大きな視点」と「敷地単位の視点」を組み合わせることで、それぞれの計画地に合わせたきめ細やかな誘導をすることにより、世田谷らしい風景づくりに取り組んでいます。 ゾーン別基準と風景特性基準による誘導のイメージ図を掲載しています。 3.風景づくりの方針・基準など                        (1)ゾーン別方針・基準 1)−1 一般地域(ゾーン別/方針・基準) @低層住宅系ゾーン                                 風景の特性 低層住宅系ゾーンは、第一種低層住居専用地域および第二種低層住居専用地域からなるゾーンです。 区内の約5割が該当し、『住宅都市』世田谷を形づくっているゾーンです。 建築物の高さの上限が10mまたは12mに制限されているため、1〜3階建ての低層住宅が中心です。 街並みの様子は地域によって様々ですが、比較的ゆとりのある敷地に豊かなみどりが保全された住宅地の街並みも多く見られます。 風景づくりの方針(法第8条第3項) 低層住宅系ゾーンでは、それぞれの地域がもつ特性を活かしながら、みどり豊かでゆとりや落ち着きのある街並みを維持・創出し、さらに質の高い魅力的な住宅地の風景づくりを目指します。 なお、計画にあたっては、第3章の「3.地域の個性を活かす風景づくりの方向性」における、5つの地域別の「(2)地域ごとの風景特性と街づくりの動きに対する考え方」を踏まえ、地域で進行している街づくりの動向などに配慮した風景づくりを目指します。 低層住宅系ゾーンのイメージ図 形態・意匠は建築物単体のバランスだけではなく、周辺の街並みとの調和を図る。 敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑との連続性を図るよう工夫する。 隣接する建築物との壁面位置など、周辺の街並みとの連続性を考慮した配置とする。 風景づくりの基準(景観法第8条第4項第2号) 建築物等の風景づくりの基準 一般地域 低層住宅系ゾーン 配置 @適切な隣棟間隔の確保や道路側に空地を設けるなど、ゆとりのある配置とする。 A隣接する建築物との壁面位置を揃えるなど、周辺の街並みとの連続性を考慮した配置とする。 B敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 C坂道や斜面地など地形の変化がある場合は、これを活かした配置とする。 D並木や街路樹に面した場所は、これを活かした配置とする。 高さ・規模 @戸建住宅を中心とした周辺の街並みの高さ・規模に配慮する。 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は建築物単体のバランスだけではなく、周辺の街並みとの調和を図る。 周辺の戸建住宅を中心とした街並みスケールを考慮し、壁面の分節化や色彩の工夫などにより圧迫感の軽減及び街並みの連続性を図る。 B角地や道路の突きあたりなどアイストップとなる場所では、形態・意匠・色彩を工夫し魅力ある風景づくりを図る。 C色彩は、別表1−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表1−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。(P.4-18参照) Dバルコニーやベランダを設置する場合は、周辺からの見え方に配慮し、洗濯物や設備などが道路などから直接見えない構造・意匠とする。 E屋根・屋上・外壁などに設備などがある場合は、歩行者からの見上げや周辺からの見え方に配慮し、目立たないように工夫する。 F太陽光パネルを設置する場合は、設置位置や形態、色彩など、風景を損なわないように工夫する。 G坂道や斜面地など地形の変化がある場合は、外構及び低層部のデザインにこれを活かした工夫をする。 H並木や街路樹に面した場所では、外構及び低層部のデザインにこれを活かした工夫をする。 外構・緑化等 @外構計画は、敷地内のデザインのみを捉えるのではなく、隣接する敷地や周辺の街並みと調和を図った色調や素材とする。 A敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑との連続性を図るよう工夫する。 B既存の高木や状態の良い樹木は、可能な限りそれを活かした外構計画とする。 C緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 D住宅地では、夜間の風景を落ち着きあるものとするため、過度な照明とならないよう配慮する。 E敷地内のごみ保管場所や駐車場、駐輪場、室外機などの付帯設備は、目立たないよう配置や植栽などを工夫する。 F擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 その他 @周辺に地域風景資産*や界わい宣言*、古道など風景資源がある場合は、これを活かした配置、形態・意匠、外構などに配慮する。 A道路に面する場所に空地を設ける場合は、活動や交流を促す空間づくりに配慮する。 B屋外広告物を設置する場合は、「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」を参考に、周囲の風景と調和したものとなるよう工夫する。 工作物の風景づくりの基準 一般地域 低層住宅系ゾーン 配置 @周囲の公園、道路、河川などから見たときに、圧迫感を感じさせないような隣棟間隔を確保する。 A敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 高さ・規模 @高さを要する工作物は、広い範囲からの見え方に配慮する。 形態・意匠・色彩 @周囲の公園、道路、河川などの主要な眺望点から見たときに、周辺の風景と調和した形態・意匠とし、長大な壁面の工作物は避ける。 A色彩は、別表1−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表1−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。(P.4−18参照) 外構・緑化等 @敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑との連続性を図るよう工夫する。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 B緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 開発行為の風景づくりの基準 一般地域 低層住宅系ゾーン 土地利用 @事業地内のオープンスペースと周辺地域のオープンスペースが連続的なものとなるように計画するなど、周辺地域の土地利用と関連付けた土地利用計画とする。 A公園や広場空間を設ける場合は、周辺の街並みにおいて魅力的な風景となるよう工夫する。 B事業地内の将来的な街づくりのイメージを意識し、まとまりのある計画とする。 C敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 造成等 @大幅な地形の改変を避け、長大な擁壁や法面などが生じないようにする。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 緑化 @敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑と連続するよう工夫する。 A緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 土地の開墾、土石の堆積、水面の埋立て等の風景づくりの基準 一般地域 低層住宅系ゾーン 土地利用 @事業地内外の将来的な街づくりのイメージを意識し、まとまりのある計画とする。 造成等 @大幅な地形の改変を避け、長大な擁壁や法面などが生じないようにする。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 緑化 @造成後の事業地は、可能な限り緑化を行い、周辺の街並みやみどりの風景との調和を図る。 A緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 木竹の伐採の風景づくりの基準 一般地域 低層住宅系ゾーン 緑化 @伐採された緑を補うよう、視認性の高い場所に可能な限り緑化を図る。 A緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 A住宅共存系ゾーン                                                                                風景の特性 住宅共存系ゾーンは、低層住宅系ゾーンや商業系ゾーン以外の住居系などの用途地域からなるゾーンです。 戸建て住宅や集合住宅などの住宅を中心としながらも、商業・業務施設や工場など多様な用途の建物が共存しています。 また、低層から中高層まで様々な高さや規模の建築物がみられ、多様性のある街並みが形成されています。 風景づくりの方針(法第8条第3項) 住宅共存系ゾーンでは、住宅を中心としながらも様々な用途や規模の建築物がお互いに配慮しながら、街並みとして調和のとれた風景づくりを目指します。 また、隣接する低層住宅系ゾーンの街並みに配慮した風景づくりを目指します。 なお、計画にあたっては、第3章の「3.地域の個性を活かす風景づくりの方向性」における、5つの地域別の「(2)地域ごとの風景特性と街づくりの動きに対する考え方」を踏まえ、地域で進行している街づくりの動向などに配慮した風景づくりを目指します。 住宅共存系ゾーンのイメージ図 適切な隣棟間隔の確保や道路などの公共空間と連続した空地の確保など、ゆとりのある配置とする。 高さは、周辺の建築物群のスカイラインとの調和に配慮する。 形態・意匠は建築物単体のバランスだけではなく、周辺の街並みとの調和を図る。 敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑との連続性を図るよう工夫する。 風景づくりの基準(景観法第8条第4項第2号) 建築物等の風景づくりの基準 一般地域 住宅共存系ゾーン 配置 @適切な隣棟間隔の確保や道路などの公共空間と連続した空地の確保など、ゆとりのある配置とする。 A隣接する建築物との壁面位置を揃えるなど、周辺の街並みとの連続性を考慮した配置とする。 B敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 C坂道や斜面地など地形の変化がある場合は、これを活かした配置とする。 D並木や街路樹に面した場所は、これを活かした配置 高さ・規模 @高さは、周辺の建築物群のスカイラインとの調和に配慮する。 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は建築物単体のバランスだけではなく、周辺の街並みとの調和を図る。特に建築物の低層部は、周辺環境を考慮し、魅力ある歩行者空間に寄与するよう、形態・意匠・色彩を工夫する。 A周辺の街並みスケールを考慮し、長大で平滑な壁面を生じさせないなど、壁面の分節化や色彩の工夫等により圧迫感の軽減及び街並みの連続性を図る。特に低層の街並みに隣接する場合は、低層の街並みからの見え方に配慮する。 B角地や道路の突きあたりなどアイストップとなる場所では、形態・意匠・色彩を工夫し魅力ある風景づくりを図る。 C色彩は、別表1−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表1−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。(P.4−18参照) Dバルコニーやベランダを設置する場合は、周辺からの見え方に配慮し、洗濯物や設備などが道路などから直接見えない構造・意匠とする。 E屋根・屋上・外壁などに設備などがある場合は、歩行者からの見上げや周辺からの見え方に配慮し、目立たないように工夫する。 F太陽光パネルを設置する場合は、設置位置や形態、色彩など、風景を損なわないように工夫する。 G坂道や斜面地など地形の変化がある場合は、外構及び低層部のデザインにこれを活かした工夫をする。 H並木や街路樹に面した場所では、外構及び低層部のデザインにこれを活かした工夫をする。 外構・緑化等 @外構計画は、敷地内のデザインのみを捉えるのではなく、隣接する敷地や周辺の街並みと調和を図った色調や素材とする。 A敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑との連続性を図るよう工夫する。 B既存の高木や状態の良い樹木は、可能な限りそれを活かした外構計画とする。 C緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 C住宅地では、夜間の風景を落ち着きあるものとするため、過度な照明とならないように配慮する。また、人通りの多い場所などでは、周辺状況に応じた夜間の風景となるよう配慮する。 D敷地内のごみ保管場所や駐車場、駐輪場、室外機などの付帯設備は、目立たないよう配置や植栽などを工夫する。 E擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 F隣接するオープンスペースとの連続性を図る。 その他 @周辺に地域風景資産*や界わい宣言*、古道など風景資源がある場合は、これを活かした配置、形態・意匠、外構などに配慮する。 A大規模な建築行為等で空地を設ける場合は、活動や交流を促す空間づくりに配慮する。 B屋外広告物を設置する場合は、「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」を参考に、周囲の風景と調和したものとなるよう工夫する。 工作物の風景づくりの基準 一般地域 住宅共存系ゾーン 配置 @周囲の公園、道路、河川などから見たときに、圧迫感を感じさせないような隣棟間隔を確保する。 A敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 高さ・規模 @高さを要する工作物は、広い範囲からの見え方に配慮する。 形態・意匠・色彩 @周囲の公園、道路、河川などの主要な眺望点から見たときに、周辺の風景と調和した形態・意匠とし、長大な壁面の工作物は避ける。 A色彩は、別表1−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表1−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。(P.4−18参照) 外構・緑化等 @敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑との連続性を図るよう工夫する。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 B緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 開発行為の風景づくりの基準 一般地域 住宅共存系ゾーン 土地利用 @事業地内のオープンスペースと周辺地域のオープンスペースが連続的なものとなるように計画するなど、周辺地域の土地利用と関連付けた土地利用計画とする。 A公園や広場空間を設ける場合は、周辺の風景において魅力的な空間となるよう工夫する。 B事業地内の将来的な街づくりのイメージを意識し、まとまりのある計画とする。 C敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 造成等 @大幅な地形の改変を避け、長大な擁壁や法面などが生じないようにする。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 緑化 @敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑と連続するよう工夫する。 A緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 土地の開墾、土石の堆積、水面の埋立て等の風景づくりの基準 一般地域 住宅共存系ゾーン 土地利用 @事業地内外の将来的な街づくりのイメージを意識し、まとまりのある計画とする。 造成等 @大幅な地形の改変を避け、長大な擁壁や法面などが生じないようにする。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 緑化 @造成後の事業地は、可能な限り緑化を行い、周辺の街並みやみどりの風景との調和を図る。 A緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 木竹の伐採の風景づくりの基準 一般地域 住宅共存系ゾーン 緑化 @伐採された緑を補うよう、視認性の高い場所に可能な限り緑化を図る。 A緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 B商業系ゾーン                                                  風景の特性 商業系ゾーンは、近隣商業地域、商業地域の用途地域からなるゾーンです。主に駅周辺や商店街、大通りの沿道の一部が該当します。 商業系ゾーンには、商業・業務施設などが集積し、多くの人が訪れます。こうしたにぎわいの風景は、街の顔や拠点として地域の魅力を高める役割を担うとともに、新たな風景を創造する場としても期待されています。 風景づくりの方針(法第8条第3項) 商業系ゾーンでは、それぞれの地域での取り組みや地域資源を活かし、個性豊かでにぎわいのある風景をつくります。 また、安心・快適な歩行者空間や交流の場を創出し、街の顔や拠点として魅力のある風景づくりを目指します。 なお、計画にあたっては、第3章の「3.地域の個性を活かす風景づくりの方向性」における、5つの地域別の「(2)地域ごとの風景特性と街づくりの動きに対する考え方」を踏まえ、地域で進行している街づくりの動向などに配慮した風景づくりを目指します。 商業系ゾーンのイメージ図 高さは、周辺の建築物群のスカイラインとの調和に配慮する。 駅周辺や人通りの多い場所では、にぎわいの連続性を創出するよう、建築物の低層部の形態・意匠を工夫する。 道路などの公共空間と連続した空地の確保などにより、圧迫感を軽減し、公共空間との関係性を考慮した配置とする。 風景づくりの基準(景観法第8条第4項第2号) 建築物等の風景づくりの基準 一般地域 商業系ゾーン 配置 @道路などの公共空間と連続した空地の確保などにより、圧迫感を軽減し、公共空間との関係性を考慮した配置とする。 A隣接する建築物との壁面位置を揃えるなど、周辺の街並みとの連続性を考慮した配置とする。 B敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 C坂道や斜面地など地形の変化がある場合は、これを活かした配置とする。 D並木や街路樹に面した場所は、これを活かした配置とする。 高さ・規模 @高さは、周辺の建築物群のスカイラインとの調和に配慮する。 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は建築物単体のバランスだけではなく、周辺の街並みとの調和を図る。特に駅周辺や人通りの多い場所では、にぎわいの連続性を創出するよう、建築物の低層部の形態・意匠を工夫する。 A周辺の街並みスケールを考慮し、長大で平滑な壁面を生じさせないなど、壁面の分節化や色彩の工夫等により圧迫感の軽減及び街並みの連続性を図る。特に低層の街並みに隣接する場合は、低層の街並みからの見え方に配慮する。 B角地や道路の突きあたりなどアイストップとなる場所では、形態・意匠・色彩を工夫し魅力ある風景づくりを図る。 C色彩は、別表1−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表1−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。(P.4−18参照) Dバルコニーやベランダを設置する場合は、周辺からの見え方に配慮し、洗濯物や設備などが道路などから直接見えない構造・意匠とする。 E屋根・屋上・外壁などに設備などがある場合は、歩行者からの見上げや周辺からの見え方に配慮し、目立たないように工夫する。 F太陽光パネルを設置する場合は、設置位置や形態、色彩など、風景を損なわないように工夫する。 G坂道や斜面地など地形の変化がある場合は、外構及び低層部のデザインにこれを活かした工夫をする。 H並木や街路樹に面した場所では、外構及び低層部のデザインにこれを活かした工夫をする。 外構・緑化等 @外構計画は、敷地内のデザインのみを捉えるのではなく、隣接する敷地や周辺の街並みと調和を図った色調や素材とする。 A敷地内の接道面や建築物の壁面は、可能な限り緑化を図る。 B既存の高木や状態の良い樹木は、可能な限りそれを活かした外構計画とする。 C緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 D人通りの多い場所では、周辺状況に応じた夜間の風景となるよう配慮する。 E敷地内のごみ保管場所や駐車場、駐輪場、室外機等の付帯設備は、目立たないよう配置や植栽などを工夫する。 F擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 F隣接するオープンスペースとの連続性を図る。 その他 @周辺に地域風景資産*や界わい宣言*、古道など風景資源がある場合は、これを活かした配置、形態・意匠、外構などに配慮する。 A大規模な建築行為等で空地を設ける場合は、活動や交流を促す空間となるよう配慮する。 B屋外広告物を設置する場合は、「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」を参考に、周囲の風景と調和したものとなるよう工夫する。 工作物の風景づくりの基準 一般地域 商業系ゾーン 配置 @周囲の公園、道路、河川などから見たときに、圧迫感を感じさせないような隣棟間隔を確保する。 A敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 高さ・規模 @高さを要する工作物は、広い範囲からの見え方に配慮する。 形態・意匠・色彩 @周囲の公園、道路、河川などの主要な眺望点から見たときに、周辺の風景と調和した形態・意匠とし、長大な壁面の工作物は避ける。 A色彩は、別表1−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表1−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。(P.4−18参照) 外構・緑化等 @敷地内の接道面や工作物の壁面は、可能な限り緑化を図る。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 B緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 開発行為の風景づくりの基準 一般地域 商業系ゾーン 土地利用 @事業地内のオープンスペースと周辺地域のオープンスペースが連続的なものとなるように計画するなど、周辺地域の土地利用と関連付けた土地利用計画とする。 A公園や広場空間を設ける場合は、周辺の風景において魅力的な空間となるよう工夫する。 B事業地内の将来的な街づくりのイメージを意識し、まとまりのある計画とする。 C敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 造成等 @大幅な地形の改変を避け、長大な擁壁や法面などが生じないようにする。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 緑化 @敷地内の接道面や建築物の壁面は、可能な限り緑化を図る。 A緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 土地の開墾、土石の堆積、水面の埋立て等の風景づくりの基準 一般地域 商業系ゾーン 土地利用 @事業地内外の将来的な街づくりのイメージを意識し、まとまりのある計画とする。 造成等 @大幅な地形の改変を避け、長大な擁壁や法面などが生じないようにする。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 緑化 @造成後の事業地は、可能な限り緑化を行い、周辺の街並みやみどりの風景との調和を図る。 A緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 木竹の伐採の風景づくりの基準 一般地域 商業系ゾーン 緑化 @伐採された緑を補うよう、視認性の高い場所に可能な限り緑化を図る。 A緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 1)−2 一般地域(色彩基準) 一般地域内の色彩基準は各ゾーン共通とし(ただし、特定のゾーンに対する特記事項を除く。)、別表1−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表1−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。 別表1−1 色彩基準(一般地域内共通) 外壁基本色(外壁各面の5分の4以上はこの範囲から選択) 色相0R〜4.9YRの場合 明度4以上8.5未満は彩度4以下 明度8.5以上は彩度1.5以下 色相5YR〜5Yの場合 明度4以上8.5未満は彩度6以下 明度8.5以上は彩度2以下 その他の色相の場合 明度4以上8.5未満は彩度2以下 明度8.5以上は彩度1以下 外壁強調色(外壁各面の5分の1以下で使用可能) 色相0R〜4.9YRの場合 明度に関係なく彩度4以下 色相5YR〜5Yの場合 明度に関係なく彩度6以下 その他の色相の場合 明度に関係なく彩度2以下 数値基準の例外 ・着色をしていない透明ガラスや型板ガラスについては、周辺の景色や空の色彩などを反映し、その色彩が一定でないことからこの数値基準によらないことができる。 しかし、着色をしているガラスなどについては、この色彩基準を踏まえるものとする。 ・商業系ゾーンの大規模建築物などの低層部において、にぎわいを創出する空間を積極的に整備していく必要があると認められる場合、風景づくり委員会などの意見を聴取の上、2階以下かつ10m未満においては数値基準によらないことができる。 ・低層住宅系ゾーンで延面積3,000u未満の建築物において、温かみのある落ち着いた住環境の創出が目的であると認められる場合、風景づくり委員会などの意見を聴取の上、全部又は一部において明度4以上の規定を3以上とすることができる。(ただし、無彩色を除く。) ・地区計画など一定の広がりの中で地域特性を踏まえた数値基準が定められている場合は、この数値基準によらないことができる。 ・石材などの自然素材を使用する場合は、風景づくり委員会などの意見を聴取した上で、この数値基準によらないことができる。 ・地域の良好な風景づくりの形成に貢献する場合または用途上やむを得ないと認められる場合などは、本計画の実現に資する色彩計画については、風景づくり委員会などの意見を聴取した上で、この数値基準によらないことができる。 参考として色彩基準の範囲のカラーチャートを掲載(東京都景観色彩ガイドラインより引用) 別表1−2 色彩の考え方 外壁 @区内で多く使用されている暖色系の色相を用い、統一感のある街並みとなるよう配慮する。暖色系以外の色相を使う場合は彩度を低くするよう配慮する。 A高明度の色彩は街並みに違和感が生じやすいため、彩度を低くおさえ、低光沢の素材を用いるなど配慮する。汚れの目立ちやすいパステルカラーは避ける。 B明度差(コントラスト)の大きい配色や複数の色相による配色などは街並みに違和感が生じやすいため、配色は明度差を5未満におさえた同系色を用いるよう配慮する。 C中高層部は遠景からの眺望に配慮し、空と対比が大きい暗い色 (明度4未満)を避け、彩度も低めにおさえるよう配慮する。 屋根 @屋根面の立ち上がりは外壁に含めて面積割合を算定する。 A眺望や周囲の街並みや樹木などとの調和を踏まえ、以下に示す色彩を用いるよう配慮する。 屋根の参考値 色相5YR〜5Yの場合 勾配屋根の明度は6以下 陸屋根の明度は7以下 彩度は4以下 その他の色相の場合 勾配屋根の明度は6以下 陸屋根の明度は7以下 彩度は2以下 緑との調和 @周辺の樹木との調和を図るため、樹木の色彩(明度5、彩度6程度)より目立ちすぎないよう、明度および彩度の対比を和らげ、樹木と調和しやすい暖色系の色相を用いるよう配慮する。 素材 @反射や光沢の強いものは避け、落ち着いた自然な表情の建材や塗料を用いるよう配慮する。 コラム 暖色系の色相について 区内の既存建築物・工作物の外壁基本色の約8割が暖色系色相に属している。 街で多く用いられていることから親しみやすく、飽きのこない色彩である。 また、自然の土や砂、樹皮などと共通性があり、自然の緑とも調和しやすい。建築物や工作物の色彩は、できるだけこの暖色系の範囲で考えることが望ましい。 一方、暖色系以外の色相は、建築物などの外装色としてはあまり用いられていないことから、街並みに違和感が生じやすい。 使用する際には、周辺との調和などに十分な配慮が必要である。 2)−1 風景づくり重点区域(水と緑の風景軸/方針・基準)   ●風景の特性 水と緑の風景軸は、成城から玉川田園調布までつながる国分寺崖線及び国分寺崖線と一体となって風景をつくりだしている区域です。この地域は区内でもみどりが豊かで湧水などの自然環境に恵まれた、世田谷区を代表する田園都市的な風景を有する場所です。 国分寺崖線の斜面地にまとまったみどりが連続する風景をはじめ、崖線の起伏によって創り出される斜面地や坂道、高台からの眺望は、崖線らしさを特徴づけるものであり、大切に守り育んでいきたい風景特性です。 加えて、江戸時代から風光明媚な景勝地としても知られ、明治末期から実業家・政治家等の別邸が建てられるようになり、今もなおこの周辺では崖線のみどりと共存した良好な住宅地の風景が見られる場所もあります。 ●風景づくりの方針(法第8条第3項) 水と緑の風景軸では、風景の特性を踏まえて以下の7つの考え方をもとに風景づくりを行います。 1地形の特色を大切にした風景づくりを進める 2崖線のみどりを大切にした風景づくりを進める 3崖線の湧水・河川を活かした風景づくりを進める 4地域の歴史的資産を活かした風景づくりを進める 5地域の生活風景を活かした風景づくりを進める 6街と暮らしを結ぶ道の風景づくりを進める 7崖線の風景と調和した彩りの風景づくりを進める なお、計画にあたっては、第3章の「3.地域の個性を活かす風景づくりの方向性」における、5つの地域別の「(2)地域ごとの風景特性と街づくりの動きに対する考え方」(玉川地域、砧地域)を踏まえ、地域で進行している街づくりの動向などに配慮した風景づくりを目指します。 水と緑の風景軸の商業系ゾーンのイメージ図 崖線の緑や周辺建築物群のスカイラインとの調和に配慮し、著しく突出した高さの建築物は避ける。 擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 適切な隣棟間隔の確保や道路側に空地を設けるなど、ゆとりのある配置とする。 ●風景づくりの基準(法第8条第4項第2号) 風景づくり重点区域・建築物等 水と緑の風景軸 配置 @適切な隣棟間隔の確保や道路側に空地を設けるなど、ゆとりのある配置とする。 A隣接する建築物との壁面位置を揃えるなど、周辺の街並みの連続性を考慮した配置とする。 B敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 C崖線の緑や周辺の街並みの緑の風景が連続するような配置となるよう工夫する。 D坂道や斜面地など地形の変化がある場合は、これを活かした配置とする。 E並木や街路樹に面した場所は、これを活かした配置とする。 高さ・規模 @崖線の緑や周辺建築物群のスカイラインとの調和に配慮し、著しく突出した高さの建築物は避ける。特に崖線の樹木に隣接する敷地では、崖線の低地部から見たときに、崖線の台地部の樹木の最高高さを超えないよう配慮する。 A崖線の風景との一体性や調和が図れるよう、周辺の主要な眺望点(道路・河川・公園など)からの見え方に配慮する。 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は建築物単体のバランスだけでなく、崖線の緑や周辺の街並みとの調和を図る。 A周辺の街並みスケールを考慮し、長大で平滑な壁面を生じさせないなど、壁面の分節化や色彩の工夫等により圧迫感の軽減及び街並みの連続性を図る。特に低層の街並みに隣接する場合は、低層の街並みからの見え方に配慮する。 B角地や道路の突きあたりなどアイストップとなる場所では、形態・意匠・色彩を工夫し魅力ある風景づくりを図る。 C色彩は、別表2−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表2−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。(P.4-24参照) Dバルコニーやベランダを設置する場合は、周辺からの見え方に配慮し、洗濯物や設備などが道路などから直接見えない構造・意匠とする。 E屋根・屋上・外壁などに設備などがある場合は、設置位置や色彩などについて、崖線からの見下ろしや歩行者からの見上げ、周辺からの見え方に配慮し、目立たないように工夫する。 F太陽光パネルを設置する場合は、設置位置や形態、色彩など、風景を損なわないように工夫する。 G坂道や斜面地など地形の変化がある場合は、外構及び低層部のデザインにこれを活かした工夫をする。 H並木や街路樹に面した場所では、外構及び低層部のデザインにこれを活かした工夫をする。 外構・緑化等 @外構計画は、敷地内のデザインのみを捉えるのではなく、隣接する敷地や周辺の街並みと調和を図った色調や素材とする。 A崖線への日照や開放感のある視界の確保に配慮して、オープンスペースを確保し、隣接するオープンスペースとの連続性を図る。 B敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑との連続性を図るよう工夫する。 C崖線の緑や緑のスカイラインに配慮し、既存の高木や状態の良い樹木は、可能な限りそれを活かした外構計画とする。 D緑化計画は、崖線の植生に調和した樹種を選定する。 E生育環境や生育特性、維持管理を見据えた植栽とする。 F敷地内に湧水などの水辺がある場合は、これらを活かした空間を形成するとともに保全を図る。 G住宅地や崖線の斜面地内では、落ち着きある夜間の風景とするため、過度な照明とならないように配慮する。 H敷地内のごみ保管場所や駐車場、駐輪場、室外機などの付帯設備は、目立たないよう配置や植栽などを工夫する。 I擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 その他 @周辺に地域風景資産*や界わい宣言*、古道など風景資源がある場合は、これを活かした配置、形態・意匠、外構などに配慮する。 A大規模な建築行為等で空地を設ける場合は、活動や交流を促す空間となるよう配慮する。 風景づくり重点区域・工作物 水と緑の風景軸 配置 @周囲の公園、道路、河川などから見たときに、圧迫感を感じさせないような隣棟間隔を確保する。 A敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 高さ・規模 @周辺の建築物群のスカイラインとの調和を図り、崖線の台地部の高さから著しく突出した高さの工作物は避けるよう配慮する。 A崖線の低地部から崖線の緑が眺望できるような配置や規模とし、崖線の連続性を確保する。 形態・意匠・色彩 @崖線上や崖線の低地部、周囲の公園、道路、河川などの主要な眺望点から見たときに、周辺の風景と調和した形態・意匠とし、長大な壁面の工作物は避ける。 A色彩は、別表2−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表2−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。 外構・緑化等 @敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑との連続性を図るよう工夫する。 A緑化にあたっては、崖線の植生に調和した樹種を選定する。 B生育環境や生育特性、維持管理を見据えた植栽とする。 C住宅地や崖線の斜面地内では落ち着きある夜間の風景とするため、過度な照明とならないように配慮する。 D擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 風景づくり重点区域・開発行為 水と緑の風景軸 土地利用 @事業地内のオープンスペースと周辺地域のオープンスペースが連続的なものとなるように計画するなど、周辺地域の土地利用と関連付けた土地利用計画とする。 A公園や広場空間を設ける場合は、周辺の風景において魅力的な空間となるよう工夫する。 B緑のネットワーク形成など、事業地内外の将来的な街づくりのイメージを意識し、まとまりのある計画とする。 C敷地内や敷地周辺に歴史的な資源や残すべき自然などがある場合は、これを活かした配置とする。 造成等 @崖線などの大幅な地形の改変を避け、長大な擁壁や法面などが生じないようにする。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 緑化 @敷地内の接道面など視認性の高い場所は、積極的に緑化し、周辺の緑と連続するよう工夫する。 A緑化にあたっては、崖線の植生に調和した樹種を選定する。 B生育環境や生育特性、維持管理を見据えた植栽とする。 風景づくり重点区域・土地の開墾、土石の堆積、水面の埋立て等 水と緑の風景軸 土地利用 @緑のネットワーク形成など、事業地内外の将来的な街づくりのイメージを意識し、まとまりのある計画とする。 造成等 @崖線などの大幅な地形の改変を避け、長大な擁壁や法面などが生じないようにする。 A擁壁は、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう工夫する。 緑化 @造成後の事業地は、可能な限り緑化を行い、周辺の街並みや崖線などみどりの風景との調和を図る。 A緑化にあたっては、崖線の植生に調和した樹種を選定する。 B生育環境や生育特性、維持管理を見据えた植栽とする。 風景づくり重点区域・木竹の伐採 水と緑の風景軸 緑化 @伐採された緑を補うよう、視認性の高い場所に可能な限り緑化を図る。 A緑化にあたっては、崖線の植生に調和した樹種を選定する。 B生育環境や生育特性、維持管理を見据えた植栽とする。 コラム:建築行為等における外構・植栽計画の重要性と効果について 風景づくりにおいて、樹木や植栽などのみどりは大切な要素の一つです。建築物等の計画をする際には、みどり豊かな住宅地である世田谷区の特性を踏まえた植栽計画とすることが求められます。そこで、植栽計画を立てる際に考慮すべきポイントをいくつかご紹介します。 〇周辺環境に目を向ける  植栽計画にあたっては、周辺の街並みや自然環境を把握することから始めましょう。例えば、地域でよく見られる樹種を選ぶことで、広い視点から見たときに統一感のある風景を作り出すことができ、計画敷地内の植栽も奥行きや広がりのある印象となります。また、地元の植物を使用することでメンテナンスが容易になり、地域の生態系の維持にもつながります。 〇既存の樹木を最大限活用する  敷地を更地にしてから設計を始めるのではなく、まずは現状を観察し、どの樹木を残せるかを考えることが大切です。特に大きな樹木や道路沿いの生垣・植栽などは、その地域の歴史や個性を表す風景の一部となっていることが多く、地域住民にとって愛着のある存在です。これらを保全することで、計画建物自体の個性が増し、質が向上するとともに、これまでの風景の継承にもつながります。 〇維持管理を見据えた計画をする  植栽は時間とともに成長し、変化していきます。そのため、長期的な視点でどのような風景を形成したいのかを考え、適切な樹種や配置を選ぶことが求められます。日当たりや風通しなどの環境条件や、維持管理のしやすさを考慮した植栽計画とすることで、メンテナンスの負担を軽減し、地域とともに成長する風景づくりにつながります。 〇地域コミュニティとの協働  大規模な建築物等の植栽計画を立てる際には、積極的に地域の声を取り入れてみましょう。イベントやワークショップなどを通じて計画段階から地域住民に関わってもらうことで、地域から親しまれる施設となり、愛される風景を作り出すことができます。さらに、風景づくりや街づくりに対する機運の醸成にもつながります。 2)−2 風景づくり重点区域(水と緑の風景軸/色彩基準) 水と緑の風景軸では、別表2−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表2−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。 別表2−1 色彩基準(水と緑の風景軸) 外壁基本色(外壁各面の4/5以上はこの範囲から選択) 色相0R〜5Yの場合 明度4以上8.5未満 彩度4以下 その他の色相の場合 明度4以上8.5未満 彩度1以下 屋根色 色相5YR〜5Yの場合 明度6以下 彩度4以下 その他の色相の場合 明度6以下 彩度2以下 数値基準の例外 ・屋根色について、陸屋根の場合は明度を7以下とすることができる。 ・着色をしていない透明ガラスや型板ガラスについては、周辺の景色や空の色彩などを反映し、その色彩が一定でないことからこの数値基準によらないことができる。しかし、着色をしているガラスなどについては、この色彩基準を踏まえるものとする。 ・地区計画など一定の広がりの中で地域特性を踏まえた数値基準が定められている場合は、この数値基準によらないことができる。 ・石材などの自然素材を使用する場合は、風景づくり委員会などの意見を聴取した上で、この数値基準によらないことができる。 ・地域の良好な風景づくりに貢献する場合または用途上やむを得ないと認められる場合などについては、風景づくり委員会などの意見を聴取した上で、この数値基準によらないことができる。 参考として色彩基準の範囲のカラーチャートを掲載(東京都景観色彩ガイドラインより引用) 別表2−2 色彩の考え方 外壁 @区内で多く使用されている暖色系の色相を用い、統一感のある街並みとなるよう配慮する。暖色系以外の色相を使う場合は彩度を低くするよう配慮する。 A緑の中から突出しやすい白系の色彩(明度8.5以上)を用いることは避ける。汚れの目立ちやすいパステルカラーの使用は避ける。 B明度差(コントラスト)の大きい配色や複数の色相による配色などは街並みに違和感が生じやすいため、配色は明度差を5未満におさえた同系色を用いるよう配慮する。 C中高層部は遠景からの眺望に配慮し、空と対比が大きい暗い色 (明度4未満)を避け、彩度も低めにおさえるよう配慮する。 屋根 @崖線上等からの眺望や周囲の街並みや樹木などとの調和を考え、低明度、低彩度の落ち着いた色彩を用いる。 緑との調和 @周辺の樹木との調和を図るため、樹木の色彩(明度5、彩度6程度)より目立ちすぎないよう、明度および彩度の対比を和らげ、樹木と調和しやすい暖色系の色相を用いるよう配慮する。 A花や新緑、落葉など、季節ごとの風景の変化を踏まえた色彩に配慮する。 素材 @反射や光沢の強いものは避け、落ち着いた自然な表情の建材や塗料を用いるよう配慮する。 3)−1 風景づくり重点区域(界わい形成地区/方針・基準) @奥沢1〜3丁目等界わい形成地区                                                          ●風景づくりの方針(法第8条第3項) みどりと人がつなぐ おくさわの風景づくり 奥沢は、みどり豊かな住宅地や歴史を感じさせる街並みなど地域固有の風景を残している他、町会や風景づくり活動団体を中心とした住民主体の地域活動も活発に行われている地域です。みどりの持つ様々な機能を活かすと共に、これまでの奥沢の街並みを継承する風景づくりを進め、奥沢らしさをこれからも時代を越えてつなげていきます。 さらに、奥沢1〜3丁目等界わい形成地区では、上記方針を踏まえて、各エリアの特性を活かした以下の6つの項目を大切にした風景づくりを進めます。 大きなみどり シンボルとなる特徴的な樹木を大切に活かした風景づくりを進めます。 小さなみどり 低木や草花による道路際の緑化を推進し、みどりがつながる風景づくりを進めます。 歴史 地域の歴史を物語る近代建築をはじめとする、地域の歴史的資産を活かした風景づくりを進めます。 建物 庭先のみどりと調和する建物により、落ち着きのある質の高い住宅地の風景づくりを進めます。 交差点 交差点のみどりを育み、歴史資源を活かし、潤いと安らぎのある沿道の風景づくりを進めます。 地形 通りの特徴や高低差を活かし、街と暮らしを結ぶ沿道の風景づくりを進めます。 なお、計画にあたっては、第3章の「3.地域の個性を活かす風景づくりの方向性」における、5つの地域別の「(2)地域ごとの風景特性と街づくりの動きに対する考え方」(玉川地域)を踏まえ、地域で進行している街づくりの動向などに配慮した風景づくりを目指します。 ●各エリアの風景の特性と方針、将来像 緑の街並みエリア   風景の特性 奥沢1〜3丁目は、世田谷区の南東に位置し、戸建て住宅と集合住宅を中心とした低層住宅地となっています。地区の西側には東急目黒線奥沢駅が位置し、駅周辺や自由通り周辺、諏訪山通り沿道等は、賑わいのある商店街となっています。地区の北側と東側に位置する九品仏川、呑川に向かって低くなる地形となっています。 地区内の住宅地では、庭先に植えられたみどりがつながる特徴的な通りの風景が見られ、また、ところどころに大きな樹木も残されています。これらのみどり豊かで落ち着いた風景は、地区住民の方々一人一人の手によって守り、育まれています。     方針の項目 緑の街並みエリアでは、上記の風景特性を踏まえ、方針の6つの項目のうち、「大きなみどり」「小さなみどり」を特に大切にし、また、「歴史」「建物」「交差点」「地形」を大切にした風景づくりを進めます。 将来像のイメージ図 敷地内の道路際は、樹木や草花等により積極的に緑化し、周辺のみどりとつながるよう工夫します。 奥沢の風景になじむ樹木を植栽します。(シンボルツリーや既存の樹木の保存など) 特徴 大きな樹木 特徴 つながる庭先のみどり 歴史と緑のエリア【重点エリア】 風景の特性 目蒲線(現:東急目黒線・多摩川線)開通(大正12年(1923年))の頃、奥沢駅の近くに土地をお持ちの方が独力で宅地開発を行い、海軍省本部や軍港などへの地の利から海軍士官が移り住みました(大正末期〜昭和初期)。玄関ポーチのある近代建築やシュロの木など、当時の面影が残る街並みがみられます。また、周辺には庭先のみどりや生垣が多く、みどり豊かな落ち着いた住宅地の風景がみられます。 方針の項目 歴史と緑のエリアでは、上記の風景特性を踏まえ、方針の6つの項目のうち、「大きなみどり」「小さなみどり」「歴史」を特に大切にし、また、「建物」「交差点」「地形」を大切にした風景づくりを進めます。 将来像のイメージ図 建物のデザインは、建物単体のバランスだけでなく、周辺の近代建築等との調和を図ります。 既存の高木や状態の良い樹木は、可能な限りそれを活かし、目に留まりやすい大きなみどりを守り育てます。 特徴 既存の近代建築 特徴 シュロの木などの大きな樹木 特徴 つながる庭先のみどり 道祖神通りエリア【重点エリア】 風景の特性 奥沢駅から南東方向に伸びる奥沢子安公園方面を結ぶ道路は、碁盤目状の街区に対して斜めに交差し、ゆるやかな高低差と沿道の豊かなみどりにより魅力的な風景となっています。この道は、玉川全円耕地整理によってつくられました(奥沢東区/昭和11年(1936年))。道路沿いの敷地は、建物が道路に対して斜めに配置されているものが多く、特徴的な沿道の風景がみられます。途中に、道の神様「道祖神」があり、駅までの通勤や通学路などとして周辺住民の方々に親しまれています。 方針の項目 道祖神通りエリアでは、上記の風景特性を踏まえ、方針の6つの項目のうち、「大きなみどり」「小さなみどり」「交差点」「地形」を特に大切にし、また、「歴史」「建物」を大切にした風景づくりを進めます。 将来像のイメージ図 よう壁や土留め、接道部の空きスペースは、通りからの見え方が魅力的になるよう、使用する素材や植栽を工夫します。 角地や道路の突きあたりなど、通りからよく見える場所では、魅力的な交差点風景となるよう建物のデザインや植栽を工夫します。 特徴 ゆるやかな高低差 特徴 つながる庭先のみどり 特徴 道路神 特徴 シンボルとなる樹木 ●風景づくりの基準(景観法第8条第4項第2号)建築物等 建築物等(すべての規模)奥沢基準 ※区域内のすべての建築物等について、下表の「風景づくりの基準」が適用されます。 配置 @適切な隣棟間隔の確保や道路側に空地を設けるなど、可能な限りゆとりのある配置となるよう工夫する。 A坂道や斜面地など地形の変化がある場合は、これを活かした配置とする。 形態・意匠・色彩 @角地や道路の突きあたりなどアイストップとなる場所では、形態・意匠・色彩を工夫し魅力ある風景づくりを図る。 A「歴史と緑のエリア」及び「道祖神通りエリア」の色彩は、別表3−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表1−2の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。(緑の街並みエリアは非該当) B「緑の街並みエリア」の色彩は、周辺の風景との調和を図る。(歴史と緑のアリア・道祖神通りエリアは非該当) Cバルコニーやベランダを設置する場合は、周辺からの見え方に配慮し、洗濯物や設備などが道路などから直接見えない構造・意匠とする。 D太陽光パネルを設置する場合は、設置位置や形態、色彩など、風景を損なわないように工夫する。 外構・緑化等 @既存の高木や状態の良い樹木は、可能な限りそれを活かした外構計画とする。 A可能な限り、奥沢の風景になじむ樹木による緑化を図る。(シンボルツリーの配置、既存樹木の保存など) Bやむを得ず既存の樹木を伐採した際は、可能な限り視認性の高い場所に樹木による緑化を図る。 C敷地内の接道面など視認性の高い場所は、樹木や草花等により積極的に緑化し、道路沿いの塀や柵の高さや素材に配慮するなど、周辺の緑との連続性を図るよう工夫する。 D緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植え付け場所や植栽基盤を工夫する。 E角地や道路の突きあたりなどアイストップとなる場所では、角地部分に樹木を植えるなど、通りからの見え方に配慮し、魅力ある交差点の風景となるよう工夫する。 F擁壁及び土留めは、可能な限り自然素材を使用し、緑化と併用するなど周辺環境と調和するよう、通り沿いに庭先の緑がつながるよう工夫する。 G敷地の鋭角部分が通りに面する場合は、可能な限り敷地の鋭角部分を緑化し、通り沿いに庭先の緑がつながるよう工夫する。 H坂道や斜面地など地形に変化がある場合は、外構のデザインにこれを活かした工夫をする。 その他 @敷地内や周辺に重点エリア、地域風景資産や界わい宣言、古道など風景資源がある場合は、これを活かした配置、形態、意匠、色彩、外構などに配慮する。 A地域の歴史や風土を物語る資源は、可能な限り保全・活用を図る。 B屋外広告物を設置する場合は、「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」を参考に、奥沢の風景と調和したものとなるよう工夫する。 建築物等(一定規模以上のもの) ※下表の用途地域に応じた一定規模以上の建築物等については、界わい形成地区の基準に加え、下表の「風景づくりの基準」が併せて適用されます。 用途地域 第一種低層住居専用地域 規模 延べ面積が 1,500 u以上又は高さが10m以上のもの 風景づくりの基準(建築物等)1)-1:一般地域@低層住宅系ゾーンの「風景づくりの基準」 用途地域 第一種中高層住居専用地域、第一種住居地域 規模 延べ面積が 1,500 u以上又は高さが15m以上のもの 風景づくりの基準(建築物等)1)-1:一般地域A住宅共存系ゾーンの「風景づくりの基準」 用途地域 近隣商業地域、商業地域 規模 延べ面積が 3,000 u以上又は高さが30m以上のもの 風景づくりの基準 1)-1:一般地域B商業系ゾーンの「風景づくりの基準」 建築物等に関する風景づくりの基準について 奥沢1〜3丁目等界わい形成地区における建築物等に適用される風景づくりの基準は、すべての建築物等について界わい形成地区の基準が適用されます。また、用途地域に応じた一定規模以上の建築物等については、用途地域に応じた風景づくりの基準があわせて適用されます。 工作物(自動車車庫等(自動車、自動二輪車、自転車及び原動機付自転車のためのもの、建築物であるものを除く。以下同じ。)) ※区域内のすべての工作物(自動車車庫等)については、下表の「風景づくりの基準」が適用されます。 風景づくりの基準(工作物) 形態・意匠・色彩、屋外広告物 @屋外広告物を設置する際は、「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」を参考に、奥沢の風景と調和したものとなるよう工夫する。 A説明板や精算機、ロック装置などの設備は、通りからの見え方に配慮し、周辺の風景に調和するよう形態・意匠や色彩などを工夫する。 配置、外構・緑化等 @駐車場(機械式駐車場を含む。)、駐輪場等は、通りから目立たないように配置や植栽などを工夫するとともに、可能な限り緑化を図る。 A緑化計画は、周辺の植生に調和した樹種を選定するとともに、植物の良好な生育が可能となるよう、植栽基盤を工夫する。 工作物(自動販売機) ※区域内のすべての工作物(自動販売機)については、下表の「風景づくりの基準」が適用されます。 風景づくりの基準(工作物) 配置、形態・意匠・色彩 @自動販売機を設置する際は、周辺の風景と調和した意匠・色彩とするなど、通りからの見え方に配慮する。 工作物(自動販売機以外の用途。自動車車庫等においては一定規模以上に限る。) ※下表の一定規模以上の工作物については、下表の用途地域に応じた「風景づくりの基準」が併せて適用されます。 用途地域 第一種低層住居専用地域 規模 敷地面積が 3,000 u以上又は高さが60m以上のもの 風景づくりの基準(工作物) 1)-1:一般地域@低層住宅系ゾーンの「風景づくりの基準」 用途地域 第一種中高層住居専用地域、第一種住居地域 規模 敷地面積が 3,000 u以上又は高さが60m以上のもの 風景づくりの基準(工作物) 1)-1:一般地域A住宅共存系ゾーンの「風景づくりの基準」 用途地域 近隣商業地域、商業地域 規模 敷地面積が 3,000 u以上又は高さが60m以上のもの 風景づくりの基準(工作物) 1)-1:一般地域B商業系ゾーンの「風景づくりの基準」 開発行為【土地の開墾、土石の堆積、水面の埋め立て等】【木竹の伐採】 開発行為 ※下表の一定規模以上の開発行為については、下表の用途地域に応じた「風景づくりの基準」が適用されます。 規模 区域の面積が 3,000 u以上のもの 用途地域 第一種低層住居専用地域 風景づくりの基準(開発行為)1)-1:一般地域@低層住宅系ゾーンの「風景づくりの基準」 用途地域 第一種中高層住居専用地域、第一種住居地域 風景づくりの基準(開発行為)1)-1:一般地域A住宅共存系ゾーンの「風景づくりの基準」 用途地域 近隣商業地域、商業地域 風景づくりの基準(開発行為)1)-1:一般地域B商業系ゾーンの「風景づくりの基準」 土地の開墾、土石の堆積、水面の埋め立て等 ※下表の一定規模以上の土地の開墾、土石の堆積、水面の埋め立て等については、下表の用途地域に応じた「風景づくりの基準」が適用されます。 規模 区域の面積が 3,000 u以上のもの 用途地域 第一種低層住居専用地域 風景づくりの基準(土地の開墾、土石の堆積、水面の埋め立て等)1)-1:一般地域@低層住宅系ゾーンの「風景づくりの基準」 用途地域 第一種中高層住居専用地域、第一種住居地域 風景づくりの基準(土地の開墾、土石の堆積、水面の埋め立て等)1)-1:一般地域A住宅共存系ゾーンの「風景づくりの基準」 用途地域 近隣商業地域、商業地域 風景づくりの基準(土地の開墾、土石の堆積、水面の埋め立て等)1)-1:一般地域B商業系ゾーンの「風景づくりの基準」 木竹の伐採 ※下表の一定規模以上の木竹の伐採については、下表の用途地域に応じた「風景づくりの基準」が適用されます。 規模 樹林地の面積が 1,000 u以上のもの。ただし、高さが10m以上の樹木(竹を除く)についてはすべてのもの 用途地域 第一種低層住居専用地域 風景づくりの基準(木竹の伐採)1)-1:一般地域@低層住宅系ゾーンの「風景づくりの基準」 用途地域 第一種中高層住居専用地域、第一種住居地域 風景づくりの基準(木竹の伐採)1)-1:一般地域A住宅共存系ゾーンの「風景づくりの基準」 用途地域 近隣商業地域、商業地域 風景づくりの基準(木竹の伐採)1)-1:一般地域B商業系ゾーンの「風景づくりの基準」 3)−2 風景づくり重点区域(界わい形成地区/色彩基準) @奥沢1〜3丁目等界わい形成地区                                  奥沢1〜3丁目等界わい形成地区の色彩基準は、「歴史と緑のエリア」及び「道祖神通りエリア」では、別表3−1に定める色彩基準に適合するとともに、別表1−2(P5-23)の色彩の考え方を踏まえ、周辺の風景との調和を図る。「緑の街並みエリア」では、周辺の風景との調和を図る。 別表3−1 外壁基本色(外壁各面の4/5以上はこの範囲から選択) 色相0R〜4.9YRの場合 明度3以上8.5未満は彩度4以下 明度8.5以上は彩度1.5以下 色相5YR〜5Yの場合 明度3以上8.5未満は彩度6以下 明度8.5以上は彩度2以下 その他の色相の場合 明度3以上8.5未満は彩度2以下 明度8.5以上は彩度1以下 数値以外の例外 ・着色をしていない透明ガラスや型板ガラスについては、周辺の景色や空の色彩などを反映し、その色彩が一定でないことからこの数値基準によらないことができる。しかし、着色をしているガラスなどについては、この色彩基準を踏まえるものとする。 ・地区計画など一定の広がりの中で地域特性を踏まえた数値基準が定められている場合は、この数値基準によらないことができる。 ・石材などの自然素材を使用する場合は、風景づくり委員会などの意見を聴取したうえで、この数値基準によらないことができる。 ・地域の良好な風景づくりの形成に貢献する場合または用途上やむを得ないと認められる場合などは、本計画の実現に資する色彩計画については、風景づくり委員会などの意見を聴取した上で、この数値基準によらないことができる。 参考として色彩基準の範囲のカラーチャートを掲載(東京都景観色彩ガイドラインより引用) なお、用途地域に応じた一定規模以上の建築物等については、建築物等(一定規模以上のもの)の色彩基準が併せて適用されます。 (2)風景特性基準 1)まとまったみどり基準                               ●風景の特性 区内の大規模な公園・緑地などの量感あるまとまったみどりは、地域の潤いのある風景を形成する核となるものです。 ●風景特性基準の方向性 まとまったみどりが存在する公園などを中心として、周辺にみどりを波及させ、周辺地域が一体となった、みどり豊かな潤いのある風景づくりを目指します。 ●対象範囲 対象となるまとまったみどりの敷地境界から50mの範囲に掛かる敷地。 【対象】*関連資料「2.風景特性基準の対象」参照 近隣公園、地区公園、総合公園、運動公園、 特殊公園(風致公園、歴史公園、農業公園)、広域公園、都市林、都市緑地、特別緑地保全地区、特別保護区 ●風景づくりの基準(法第8条第4項第2号) 風景づくりの基準(建築物等) 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、まとまったみどりと調和する素材や色彩とするなど、周辺からのまとまったみどりの見え方や、まとまったみどりからの見え方が魅力的になるよう工夫する。 Aみどりとの色彩の連続性を図るため、無彩色が中心とならないよう配慮する。 Bまとまったみどりから見える建築物に付帯する構造物や設備などが目立たなくなるよう工夫する。 外構・緑化等 @まとまったみどりとの敷地境界や接道部は、積極的に緑化するとともに、植生に調和した樹種を選定するなど、周辺が一体となったみどり豊かな空間となるよう工夫する。 風景づくりの基準(工作物) 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、まとまったみどりと調和する素材や色彩とするなど、周辺からのまとまったみどりの見え方や、まとまったみどりからの見え方に配慮する。 Aみどりとの色彩の連続性を図るため、無彩色が中心とならないよう配慮する。 外構・緑化等 @まとまったみどりとの敷地境界や接道部は、積極的に緑化するとともに、植生に調和した樹種を選定するなど、周辺が一体となったみどり豊かな空間となるよう工夫する。 風景づくりのイメージ図(まとまったみどり基準) まとまったみどりから見える建築物に付帯する構造物や設備などが目立たなくなるよう工夫する。 形態・意匠は、周辺からのまとまったみどりの見え方や、まとまったみどりからの見え方が魅力的になるよう工夫する。 まとまったみどりとの敷地境界や接道部は、積極的に緑化するとともに、植生に調和した樹種を選定するなど、周辺が一体となったみどり豊かな空間となるよう工夫する。 2)河川基準                                                    ●風景の特性 区内に流れる複数の河川(一級河川・水路など)がつくるみどりとみずの風景は、人々に憩いと安らぎを与える大切な風景の要素です。 ●風景特性基準の方向性 河川と河川沿いのみどりが一体となり、さらにみどり豊かで潤いのある風景をつくることにより、魅力ある風景を形成することを目指します。 ●対象範囲 対象となる河川に面する敷地及び対象となる河川沿道に面する敷地(暗渠の部分は除く)。 【対象】*関連資料「2.風景特性基準の対象」参照 多摩川、野川、仙川、谷沢川、丸子川、谷戸川 ●風景づくりの基準(法第8条第4項第2号) 風景づくりの基準(建築物等) 高さ・規模 @河川沿道や橋梁など周辺の主要な眺望点からの見え方を考慮し、高さは、周辺建築物群のスカイラインとの調和に配慮する。 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、水辺の自然環境との調和に考慮し、道路や橋梁などからの河川の見え方が魅力的になるよう工夫する。 Aみどりやみずとの色彩の連続性を図るため、無彩色が中心とならないよう配慮する。 B河川や河川沿道から見える建築物に付帯する構造物や設備などが目立たなくなるよう工夫する。 外構・緑化等 @河川や河川沿道に面する敷地の境界は積極的に緑化するとともに、河川と一体となった魅力的なみどりとみずの空間となるよう工夫する。 風景づくりの基準(工作物) 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、水辺の自然環境と調和させ、道路や橋梁などからの河川の見え方に配慮する。 Aみどりやみずとの色彩の連続性を図るため、無彩色が中心とならないよう配慮する。 外構・緑化等 @河川や河川沿道に面する敷地の境界は積極的に緑化するとともに、河川と一体となった魅力的なみどりとみずの空間となるよう工夫する。 風景づくりのイメージ図(河川基準) 河川沿道や橋梁など周辺の主要な眺望点からの見え方を考慮し、高さは、周辺建築物群のスカイラインとの調和に配慮する。 河川や河川沿道から見える建築物に付帯する構造物や設備などが目立たなくなるよう工夫する。 河川や河川沿道に面する敷地の境界は積極的に緑化するとともに、河川と一体となった魅力的なみどりとみずの空間となるよう工夫する。 3)緑道基準                                                       ●風景の特性 区内には、中小河川の上部を利用し、緑豊かな緑道として整備されているところが多くあります。これらは、都市の中で季節を感じられる散歩道として、親しまれている風景です。 ●風景特性基準の方向性 緑道のみどりと緑道沿いの敷地のみどりが一体となることにより、歩いて心地よい緑道空間の風景の魅力をさらに高めることを目指します。 ●対象範囲 *関連資料「2.風景特性基準の対象」参照 世田谷区立公園条例による緑道に面する敷地及び対象となる緑道沿道に面する敷地。 ●風景づくりの基準(法第8条第4項第2号) 風景づくりの基準(建築物等) 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、緑道のみどりや舗装などを考慮し、緑道の見え方が魅力的になるよう工夫する。 Aみどりとの色彩の連続性を図るため、無彩色が中心とならないよう配慮する。 B緑道から見える建築物に付帯する構造物や設備などが目立たなくなるよう工夫する。 外構・緑化等 @緑道沿いは、積極的に緑化するとともに、植生に調和した樹種を選定するなど、緑道と一体となった空間となるよう工夫する。 風景づくりの基準(工作物) 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、緑道のみどりや舗装などと調和させ、緑道の見え方に配慮する。 Aみどりとの色彩の連続性を図るため、無彩色が中心とならないよう配慮する。 外構・緑化等 B緑道沿いは、積極的に緑化するとともに、植生に調和した樹種を選定するなど、緑道と一体となった空間となるよう工夫する。 風景づくりのイメージ図(緑道基準) 形態・意匠は、緑道のみどりや舗装などを考慮し、緑道の見え方が魅力的になるよう工夫する。 緑道から見える建築物に付帯する構造物や設備などが目立たなくなるよう工夫する。 緑道沿いは、積極的に緑化するとともに、植生に調和した樹種を選定するなど、緑道と一体となった空間となるよう工夫する。 4)歴史的資産基準                                                ●風景の特性 文化財などの歴史的資産は、地域の歴史を伝える貴重な要素であり、地域の個性や魅力を表すものです。 ●風景特性基準の方向性 歴史的資産の見え方や周辺との調和を考慮することにより、歴史的資産のもつ趣を周辺にも波及させ、歴史や文化を感じられる風景づくりを目指します。 ●対象範囲 対象となる歴史的資産の敷地境界から50mの範囲に掛かる敷地。 【対象】*関連資料「2.風景特性基準の対象」参照 ・文化財 (国、都、区指定の建造物及び無形民俗文化財で特定の場所があるもの) ・東京都選定歴史的建造物及び特に景観上重要な歴史的建造物等 ●風景づくりの基準(法第8条第4項第2号) 風景づくりの基準(建築物等) 配置 @歴史的資産の前景となる敷地では、周辺の道路など主要な眺望点から歴史的資産への眺望を可能な限り遮らないよう配置を工夫する。 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、歴史的資産に使用されている素材や色彩と調和するものを用いるなど、周辺からの歴史的資産の見え方や、歴史的資産からの見え方が魅力的になるよう工夫する。 A歴史的資産との色彩の連続性を図るため、無彩色が中心とならないよう配慮する。 B歴史的資産から見える建築物に付帯する構造物や設備などが目立たなくなるよう工夫する。 外構・緑化等 @歴史的資産の敷地との境界は、可能な限り緑化を図る。 風景づくりの基準(工作物) 配置 @歴史的資産の前景となる敷地では、周辺の道路など主要な眺望点から歴史的資産への眺望を可能な限り遮らないよう配置を工夫する。 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、歴史的資産に使用されている素材や色彩となじむものを用いるなど、周辺からの歴史的資産の見え方や、歴史的資産からの見え方に配慮する。 A歴史的資産との色彩の連続性を図るため、無彩色が中心とならないよう配慮する。 外構・緑化等 @歴史的資産の敷地との境界は、可能な限り緑化を図る。 風景づくりのイメージ図(歴史的資産基準) 形態・意匠は、歴史的資産に使用されている素材や色彩と調和するものを用いるなど、周辺からの歴史的資産の見え方や、歴史的資産からの見え方が魅力的になるよう工夫する。 歴史的資産の前景となる敷地では、周辺の道路など主要な眺望点から歴史的資産への眺望を可能な限り遮らないよう配置を工夫する。 コラム:東京都歴史的景観保全の指針に基づく配慮 東京都では、「歴史的景観保全の指針(令和2年(2020年)2月 東京都)」に基づき、東京都選定歴史的建造物などの壁面や敷地境界から100mの範囲において「建設行為等*」を行う場合は、歴史的景観への配慮を求めています。 *この指針における「建設行為等」は以下となります。 ・建築その他の工作物の新築、増築、改築、移転及び外観の変更 ・土地の区画形質の変更 ・樹木の伐採及び植栽 5)農の風景基準                                                    ●風景の特性 区内に残る農地や屋敷林の風景は、世田谷の原風景といえるものであり、市街化が進んだ現在の世田谷において、原風景としての営みが感じられる貴重な風景です。 ●風景特性基準の方向性 農地の周辺では農の風景に配慮した風景の形成を推進することで、地域特性を高める風景づくりを目指します。 ●対象範囲 *関連資料「2.風景特性基準の対象」参照 世田谷区農地保全方針の農地保全重点地区内及び東京都農の風景育成地区内の生産緑地の敷地境界から50mの範囲に掛かる敷地。 ●風景づくりの基準(法第8条第4項第2号) 風景づくりの基準(建築物等) 配置 @農地側に空地を設けるなど、通風や日照などを考慮した配置となるよう工夫する。 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、土やみどりと調和するものを用いるなど、農の風景との調和を工夫する。 Aみどりとの色彩の連続性を図るため、無彩色が中心とならないよう配慮する。 B農地から見える建築物に付帯する構造物や設備などが目立たなくなるよう工夫する。 外構・緑化等 @農地との境界は緑化によりみどりの連続性を図る。 風景づくりの基準(工作物) 配置 @農地側に空地を設けるなど、通風や日照などを考慮した配置となるよう工夫する。 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、土やみどりと調和するものを用いるなど、農の風景との調和に配慮する。 Aみどりとの色彩の連続性を図るため、無彩色が中心とならないよう配慮する。 外構・緑化等 @農地との境界は緑化によりみどりの連続性を図る。 風景づくりのイメージ図(歴史的資産基準) 農地側に空地を設けるなど、通風や日照などを考慮した配置となるよう工夫する。 農地との境界は緑化によりみどりの連続性を図る。 形態・意匠は、土やみどりと調和するものを用いるなど、農の風景との調和を工夫する。 6)拠点基準                                                    ●風景の特性 三軒茶屋、下北沢、二子玉川は、都市整備方針において区を越えた広域的な交流の場となる『広域生活・文化拠点』として位置付けられています。この地域は商業施設や文化施設などが集積し、多くの人が訪れる区内でも特に活力に満ちた地域です。 ●風景特性基準の方向性 商業業務機能や文化情報発信機能が集積する拠点として、それぞれの発展の歴史を踏まえ、人々が訪れ交流するにぎわいあふれる風景づくりを目指します。また、都市整備方針や都市計画などの内容を尊重しながら、にぎわいの風景づくりを進めていきます。 ●対象範囲 世田谷区都市整備方針において、広域生活・文化拠点(三軒茶屋、下北沢、二子玉川)に位置付けられた地域で、用途地域や地区計画などを踏まえた範囲とする。 ●風景づくりの基準(法第8条第4項第2号) 風景づくりの基準(建築物等) 配置 @にぎわいの創出に貢献する配置となるよう工夫する。 形態・意匠・色彩 @街並みとの調和を踏まえながら形態・意匠を工夫し、魅力ある拠点の風景づくりを図る。 A道路・河川・公園など、主要な眺望点からの見え方及び後背地などの周辺からの見え方に配慮し、長大で平滑な壁面を生じさせないよう、壁面の分節化や色彩の工夫などにより、圧迫感の軽減を図る。 外構・緑化等 @潤いあるにぎわい空間の創出に貢献するよう、緑化を工夫する。 風景づくりの基準(工作物) 形態・意匠・色彩 @街並みとの調和を踏まえながら形態・意匠を工夫し、拠点の風景づくりに配慮する。 外構・緑化等 @潤いあるにぎわい空間の創出に貢献するよう、緑化を工夫する。 風景づくりのイメージ図(拠点基準) にぎわいの創出に貢献する配置となるよう工夫する。 街並みとの調和を踏まえながら形態・意匠を工夫し、魅力ある拠点の風景づくりを図る。 潤いあるにぎわい空間の創出に貢献するよう、緑化を工夫する。 7)幹線道路基準                                                 ●風景の特性 幹線道路は、通行する多くの自動車や歩行者が日常を通じて目にする、風景の骨格としても大切な要素です。 ●風景特性基準の方向性 対象範囲においては、幹線道路沿道に建設される建築物の統一感の形成やスカイラインの調和、後背の低層住宅地などへの配慮を図ることにより、街の骨格として、統一感のある空間を創出し、また歩行者にも心地よい風景づくりを目指します。 ●対象範囲 幹線道路、地区幹線道路、高速道路に面する敷地。(概成区間、事業中区間を含む) ●風景づくりの基準(法第8条第4項第2号) 風景づくりの基準(建築物等) 高さ・規模 @幹線道路などからの見え方を考慮し、高さは、周辺の建築物群のスカイラインとの調和に配慮する。 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は幹線道路などに面する周辺の建築物との連続性を考慮しながら見え方を工夫し、統一感のある沿道の風景づくりを図る。 A幹線道路などからの見え方および幹線道路などの後背地など周辺からの見え方に配慮し、長大で平滑な壁面を生じさせないよう、壁面の分節化や色彩の工夫などを行うことで、圧迫感を軽減するとともに街並みの調和を図る。 B幹線道路などの後背地や周辺から見える建築物に付帯する構造物や設備などが、目立たなくなるよう工夫する。 外構・緑化等 @緑豊かで快適な幹線道路などを創出するため、幹線道路沿いは、可能な限り緑化を図る。 風景づくりの基準(工作物) 形態・意匠・色彩 @形態・意匠は、幹線道路などに面する周辺の建築物との連続性を考慮しながら見え方を工夫し、沿道の風景づくりに配慮する。 外構・緑化等 @緑豊かで快適な幹線道路などを創出するため、幹線道路沿いは、可能な限り緑化を図る。 風景づくりのイメージ図(幹線道路基準) 幹線道路などからの見え方及び幹線道路などの後背地など周辺からの見え方に配慮し、長大で平滑な壁面を生じさせないよう、壁面の分節化や色彩の工夫などを行うことで、圧迫感を軽減するとともに、街並みの調和を図る。 幹線道路などからの見え方を考慮し、高さは、周辺の建築物群のスカイラインとの調和に配慮する。 緑豊かで快適な幹線道路などを創出するため、幹線道路沿いは、可能な限り緑化を図る。 8)世田谷線沿線基準                                                ●風景の特性 住宅地の中をゆったりとした速度で走る世田谷線は、地域の生活風景に溶け込む世田谷ならではの風景として、多くの人々に親しまれています。 ●風景特性基準の方向性 対象範囲においては、車窓や沿線の眺めを意識した風景づくりを行うことにより、世田谷線沿線の風景の魅力をさらに高めることを目指します。 ●対象範囲 *関連資料「2.風景特性基準の対象」参照 世田谷線に面する敷地および世田谷線沿道に面する敷地。 ●風景づくりの基準(法第8条第4項第2号) 風景づくりの基準(建築物等) 形態・意匠・色彩 @外壁や塀などの形態・意匠は車窓や沿線からの見え方を工夫し、魅力ある沿線の風景づくりを図る。 A車窓や沿線から見える建築物に付帯する構造物や設備などが目立たなくなるよう工夫する。 外構・緑化等 @世田谷線や世田谷線沿道に面する敷地の境界では、積極的に緑化を図る。 風景づくりの基準(工作物) 形態・意匠・色彩 @外壁や塀などの形態・意匠は車窓や沿線から、見え方を工夫し、沿線の風景づくりに配慮する。 外構・緑化等 @世田谷線や世田谷線沿道に面する敷地の境界では、積極的に緑化を図る。 風景づくりのイメージ図(世田谷線沿線基準) 外壁や塀などの形態・意匠は車窓や沿線からの見え方を工夫し、魅力ある沿線の風景づくりを図る。 世田谷線や世田谷線沿道に面する敷地の境界では、積極的に緑化を図る。 4.建設行為等の届出                                         (1)建設行為等の届出の考え方 地域の個性を活かした世田谷らしい風景づくりを進める上で、建築物や工作物などによる建設行為等は、大きな役割を果たします。そのため、建設行為等を行う際には、それらに関わるすべての者が「風景づくりの方針」や「風景づくりの基準」を共有し、方針や基準を踏まえた計画とすることが求められます。 特に、規模の大きな建設行為等は、周辺の風景に大きな影響を及ぼします。そこで、「(2)届出対象行為・規模」に示す一定規模以上の建設行為等を行う事業者には、建築確認などの前に法に基づく建設行為等の届出を義務づけ、「風景づくりの方針」および「風景づくりの基準」への適合を求めるための指導・誘導を行います。 (2)届出対象行為・規模 1)一般地域 行為 建築物の新築、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更(法第16条第1項第1号) 規模又は内容 低層住宅系ゾーン 延べ面積が1,500 u以上又は高さが10mを超えるもの(ただし、仮設建築物並びに隣接する道路などから容易に望見することができないもの及び望見したときに外観の変化のないものを除く) 住宅共存系ゾーン 延べ面積が1,500 u以上又は高さが15mを超えるもの(ただし、仮設建築物並びに隣接する道路などから容易に望見することができないもの及び望見したときに外観の変化のないものを除く) 商業系ゾーン 延べ面積が3,000 u以上又は高さが30mを超えるもの ただし、仮設建築物並びに隣接する道路などから容易に望見することができないもの及び望見したときに外観の変化のないものを除く 行為 工作物の新設、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更(法第16条第1項第2号) ※橋梁以外の工作物は、煙突、鉄柱、装飾塔、記念塔、物見塔、昇降機、コースター、製造施設、貯蔵施設、遊戯施設、自動車車庫(建築物であるものを除く)、墓園、その他これらに類するものとする。なお、架空電線路用並びに電気事業法第2条第1項第10号に規定する電気事業者及び同項第12号に規定する卸供給事業者の保安通信設備用のもの(擁壁を含む)並びに電気通信事業法第2条第5項に規定する電気通信事業者の電気通信用のものを除く。 規模又は内容 敷地面積が3,000u以上又は高さが60m以上のもの 河川等を横断する延長10m以上の橋梁 行為 都市計画法第4条第12項に規定する開発行為(法第16条第1項第3号) 規模又は内容 区域の面積が3,000u以上のもの 行為 土地の開墾、土石の採取、鉱物の採掘その他の土地の形質の変更(法第16条第1項第4号) 規模又は内容 区域の面積が3,000u以上のもの 行為 木竹の伐採(法第16条第1項第4号) 規模又は内容 樹林地の面積が1,000u以上のもの ※樹林地の面積には、樹林地と連なる広がりをもった草地なども含むものとする。 行為 屋外における土石、廃棄物、再生資源その他物件の堆積(法第16条第1項第4号) 規模又は内容 区域の面積が3,000u以上のもの 2)水と緑の風景軸                                行為 建築物の新築、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更(法第16条第1項第1号) 規模又は内容 延べ面積が500u以上又は見かけの高さ※2が10m以上のもの ※ただし、仮設建築物並びに隣接する道路等若しくは野川及び多摩川の堤などから容易に望見することができないもの及び望見したときに外観の変化のないものを除く。 行為 工作物の新設、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更(法第16条第1項第2号) ※橋梁以外の工作物は、煙突、鉄柱、装飾塔、記念塔、物見塔、昇降機、コースター、製造施設、貯蔵施設、遊戯施設、自動車車庫(建築物であるものを除く)、墓園、その他これらに類するものとする。なお、架空電線路用並びに電気事業法第2条第1項第10号に規定する電気事業者及び同項第12号に規定する卸供給事業者の保安通信設備用のもの(擁壁を含む)並びに電気通信事業法第2条第5項に規定する電気通信事業者の電気通信用のものを除く。 規模又は内容 敷地面積が1,000u以上又は見かけの高さが10m以上のもの、河川等を横断する延長10m以上の橋梁 ※見かけの高さとは、建築物(工作物)が地盤と接する場所の最も低い所から建築物(工作物)の最上部までの高さとする。建築物の屋上部の塔屋又は建築物以外のもので壁面上の物がある場合は、見かけの高さに含むものとする。 行為 都市計画法第4条第12項に規定する開発行為(法第16条第1項第3号) 規模又は内容 区域の面積が500u以上のもの 行為 土地の開墾、土石の採取、鉱物の採掘その他の土地の形質の変更(法第16条第1項第4号) 規模又は内容 区域の面積が500u以上のもの 行為 木竹の伐採(法第16条第1項第4号) 規模又は内容 樹林地の面積が1,000u以上のもの。ただし、高さ10m以上の樹木(竹を除く。)についてはすべてのもの ※樹林地の面積には、樹林地と連なる広がりをもった草地なども含むものとする。 行為 屋外における土石、廃棄物、再生資源その他物件の堆積(法第16条第1項第4号) 規模又は内容 区域の面積が500u以上のもの 3)界わい形成地区 @奥沢1〜3丁目等界わい形成地区   行為 建築物の新築、増築、 改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更 (法第16条第1項第1号) 規模又は内容 すべてのもの ただし、仮設建築物並びに隣接する道路などから容易に望見することができないもの及び望見したときに外観の変化のないものを除く 行為 工作物の新設、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更(法第16条第1項第2号) ※橋梁以外の工作物は、煙突、鉄柱、装飾塔、記念塔、物見塔、昇降機、コースター、製造施設、貯蔵施設、遊戯施設、自動車車庫(建築物であるものを除く)、墓園、駐車施設、駐輪施設、自動販売機その他これらに類するものとする。なお、架空電線路用並びに電気事業法第2条第1項第10号に規定する電気事業者及び同項第12号に規定する卸供給事業者の保安通信設備用のもの(擁壁を含む)並びに電気通信事業法第2条第5項に規定する電気通信事業者の電気通信用のものを除く。 規模又は内容 敷地面積が3,000u以上又は高さが60m以上のもの。商業地域、近隣商業地域以外に設置される自動車車庫等(自動車、自動二輪車、自転車及び原動機付自転車のためのもの。ただし、戸建て住宅、長屋、共同住宅等に設置される居住者用のものを除く)、自動販売機については、すべてのもの 行為 都市計画法第4条第12項に規定する開発行為(法第16条第1項第3号) 規模又は内容 区域の面積が3,000u以上のもの 行為 土地の開墾、土石の採取、鉱物の採掘その他の土地の形質の変更(法第16条第1項第4号) 規模又は内容 区域の面積が3,000u以上のもの 行為 木竹の伐採(法第16条第1項第4号) 規模又は内容 樹林地の面積が1,000u以上のもの。ただし、高さ10m以上の樹木(竹を除く。)については、すべてのもの。 ※樹林地の面積には、樹林地と連なる広がりをもった草地などを含むものとする。 行為 屋外における土石、廃棄物、再生資源その他物件の堆積 (法第16条第1項第4号) 規模又は内容 区域の面積が3,000u以上のもの (3)届出と手続き 1)届出手続きの流れ 届出対象行為を行う際の基本的な届出手続きの流れを、ここで図示してます。 区では、事業者に対し、計画の早い段階から事前相談・協議を求め、風景づくり計画との整合、風景づくり基準との適合を確認し、良好な風景形成に寄与する計画となるよう指導・誘導を行います。さらに、近隣住民への情報提供の実施やせたがや風景デザイナーを交えた計画内容の調整(事前調整会議)を通して、より本計画の趣旨に即した、世田谷の風景づくりに寄与する計画となるよう、事業者に促します。 2)事前調整会議 事前の調整・誘導にあたっては、事業者・せたがや風景デザイナー・区の3者による「事前調整会議」を開催し、専門的知識や現場感覚を取り入れながら、効果的な調整・誘導を図ります。 コラム:『せたがや風景デザイナー』による事前調整会議 法に基づく「風景づくりの基準」やガイドラインに規定する「誘導基準」では、マンセル値による色彩に関する定量基準のほかに、「〜との調和を図る」「〜に配慮する」「〜を工夫する」といった定性基準を定め、計画地やその周辺の特性に応じた風景づくりの誘導を行っています。区では、この定性基準による誘導をより効果的に実施するため、『せたがや風景デザイナー』による事前調整会議を活用しています。  事前調整会議は、建設行為等の届出や屋外広告物を設置する前に、せたがや風景デザイナーと事業者、区の担当者が集まり、計画地周辺の特性に応じたより良い計画となるよう意見交換を行う場です。事業者が計画する建設行為等について、せたがや風景デザイナーの経験と知識を活かして具体的なアドバイスや提案を行います。両者がお互いに計画に対する考え方を交えることで、事業者の風景づくりに対する理解がさらに深まり、会議を実施した案件の約8割において結果を踏まえた対応をしていただいています。   『せたがや風景デザイナー』とは  都市計画や建築・都市デザイン、色彩デザイン、ランドスケープ、屋外広告物など各分野で活躍する専門家の方々で、建設行為等や屋外広告物等に関する指導・助言の業務を行うため風景づくり条例に基づき区長が委嘱しています。 区の職員も会議に同席し、せたがや風景デザイナーからの提案やアドバイスを聞くことにより、そこで得た知識を窓口誘導の際に応用するなど、職員自身のスキル向上にもつながっています。 このように、せたがや風景デザイナーによる事前調整会議は、区の風景を守り、育て、つくるための特徴的で重要な役割を担っています。 事前調整会議において指摘が出された物件数のうち、工事完了までに対応した物件数とその割合を、表示しています。 令和4年度 29件中21件 72% 令和5年度 35件中27件 77% 令和6年度 26件中22件 85% 第6章 屋外広告物における風景づくり 第6章では、風景に大きな影響を与える要素のひとつである屋外広告物について、風景づくりの観点から表示等に関する基本的な考え方や景観計画区域内での表示に関する基本事項、「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」や協議制度による誘導について示します。 1.屋外広告物の表示等に関する基本的な考え方              屋外広告物は、街の中で必要な情報を伝える重要な存在です。一方で、設置場所周辺の人々にメッセージを伝えることを目的として公共空間に向けて表示されるため、風景に大きな影響を与える要素の一つです。このため、先に示した「風景づくりの基準」とあわせて風景づくりの誘導を一体的に進めることで、良好な風景づくりに取り組んでいきます。  2.屋外広告物の表示に関する基本事項                    景観計画区域内での屋外広告物の表示に関する基本事項を以下の通り定めます。 屋外広告物の表示等の制限(法第8条第2項第4号イ) @屋外広告物は、東京都屋外広告物条例に基づく許可が必要なものはもとより、自家用及び公共広告物などを含め、規模、位置、色彩などのデザインなどが、地域の風景特性を踏まえた良好な風景づくりに寄与するような表示・掲出とする。 A水と緑の風景軸や大規模な公園・緑地などのまとまった緑の周辺では、みどりや地形など地域の風景をつくる背景、建築物や並木など風景を構成する要素との調和に十分配慮した屋外広告物を表示・掲出する。 B歴史的資産の周辺では、歴史的・文化的な面影や雰囲気を残す街並みなどに配慮した屋外広告物を表示・掲出する。 C大規模な建築物や高層の建築物における屋外広告物は、風景に対する影響が広範囲に及ぶ場合があることなどから、表示の位置や規模などについて、十分配慮する。 D地域の活性化は、大規模で過剰な広告物の掲出ではなく、美しく落ち着きのある風景の形成をはじめとする地域の魅力向上が重要であるという視点に立って、地域振興や街づくりを進めていく。 E住宅地の落ち着いた街並みを保全・形成するため、住宅地の色彩と調和した表示とする。 3.「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」による屋外広告物の誘導                                     区内で屋外広告物を表示又は掲出する設置者に対して、「屋外広告物の表示等の制限」及び制限に関する具体的な配慮事項を示した「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」に基づき計画するよう誘導します。 「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」は、世田谷区風景づくり条例第8条の2第1項に基づく「風景づくりのガイドライン」であるとともに、「屋外広告物の表示に関する事項」に基づき地域の風景に寄与する屋外広告物の考え方を示すものであり、東京都屋外広告物条例や関係法令と整合するものです。 「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」の位置づけの図と、風景づくりガイドライン(屋外広告物編)の表紙の写真、を掲載しています。 「風景づくりのガイドライン(屋外広告物編)」で対象とする屋外広告物 店舗・企業等の名称表示や商品・サービス等の宣伝に用いる商業広告のうち、「東京都屋外広告物条例に規定される広告物(屋外広告物法第2条第1項)」とともに、風景づくりに影響を与える表示物として「建築物の窓面等の内側から屋外に向けて表示する広告物」を対象とします。 東京都屋外広告物条例に規定される広告物は、広告塔、広告板、プロジェクションマッピング、小型広告板/はり紙・はり札等、広告旗、立看板等、電柱又は街路灯柱の利用広告、標識利用広告、宣伝車、バス又は電車の車体利用広告で長方形の枠を利用する方式によるもの、前記以外の車体利用広告、アドバルーン、広告幕、アーチ、装飾街路灯、店頭装飾です。 風景づくりに影響を与える表示物とは、建築物の窓面等の内側から屋外に向けて表示する広告物です。 4.協議制度による屋外広告物の誘導 (風景づくり条例第31条の2)   表示面積が大きく、広範囲の風景に影響を与える屋外広告物が多く設置されている環状七号線及び環状八号線沿道では、一定規模以上の屋外広告物を表示又は掲出する設置者に対して、より良い風景づくりにつながるよう協議制度を活用した誘導を行います。 (1)協議の対象となる区域・規模・行為 区域 環状七号線及び環状八号線に面する敷地 規模 東京都屋外広告物条例に定める屋外広告物で、表示面積の合計が10uを超えるもの 行為 表示又は設置(表示内容の変更、改造又は移転を含む) 区域の簡略的な図面を掲載しています。 (2)協議の流れ 一定規模以上の屋外広告物を表示又は掲出する際には、以下の流れに沿って協議を行います。必要に応じてせたがや風景デザイナーを交えた協議を行うことで、より良い計画となるよう誘導します。 協議の流れのフロー図を掲載しています。 屋外広告物の企画 ガイドラインに基づく屋外広告物の計画 東京都屋外広告物条例に基づく許可申請が不要の場合、行為の着手完了。 東京都屋外広告物条例に基づく許可申請が必要な場合、 特定の区域外の場合は、行為の着手完了。 特定の区域内の場合は、 風景づくり条例に基づく協議書の提出 せたがや風景デザイナーとの協議等 変更協議(計画に変更があった場合) 行為の着手完了 完了報告 なお、せたがや風景デザイナーとは、風景づくり条例に基づき、技術的指導助言を行う専門家のことです。 コラム:東京都屋外広告物条例とは 東京都屋外広告物条例は、安全の確保と景観の保全を目的として、広告板などの屋外広告物について規制などをしている条例です。広告物が倒れたり落下したりするなど通行人に危害を加えるのを防ぐとともに、無秩序な広告が乱立することで景観を乱さないよう、設置場所や大きさ、高さ、総量などに許可基準を設けています。 その一方、風景づくり条例では地域の魅力を高めていくことを目的として屋外広告物の情報や色彩、大きさや位置、トータルデザイン等について誘導をしています。区全域共通の誘導方針・基準、地域別の誘導方針・基準、特定の区域における誘導指針・基準を定めることで、それぞれの地域に調和した広告物となるよう誘導しています。 このように、東京都屋外広告物条例に基づく規制と風景づくり条例に基づく誘導の両輪によって、世田谷区の良好な屋外広告物による風景が形成されています。 第7章 公共施設における風景づくり 1.公共施設における風景づくりの考え方 7-2 2.公共施設の整備に関する指針 7-2 3.「風景づくりのガイドライン(公共施設編)」に基づく整備など 7-2 4.景観重要公共施設に関する事項 7-5    第7章では、魅力的な風景づくりにおいて重要な役割を果たす公共施設について、風景づくりの考え方や公共施設の整備に関する指針、「風景づくりのガイドライン(公共施設編)」や景観重要公共施設に基づく整備や維持管理について示します。 1.公共施設における風景づくりの考え方                              道路や公園・河川、それらに附属する工作物、公共建築物などの公共施設は、都市空間の主要な部分を占めるもののひとつです。こうした公共施設は、人々の暮らしを支える重要な基盤であるだけでなく、魅力的な風景づくりにおいても重要な役割を果たします。  そのため、公共施設の整備や維持管理の際には、法に基づく建設行為等の届出の要否に関わらず、風景づくりの理念や方向性、風景づくりの方針・基準を踏まえるとともに、以下に示す「公共施設の整備に関する指針」や「風景づくりのガイドライン(公共施設編)」に基づき整備や維持管理を行うなど、風景づくりを先導していくことが求められます。  このように、地域の特性に配慮した風景づくりを積極的に進めるとともに、隣接する公共施設を一体的に整備することにより地域全体の魅力や質を高めるように取り組みます。   2.公共施設の整備に関する指針                             公共施設の整備にあたっては、以下の「公共施設風景づくり指針」に基づいて整備や維持管理を行います。     <公共施設風景づくり指針(条例第8条第3項)> ・区民に愛され、地域の誇りとなるような公共施設とする。 ・区民の風景への意識を高める公共施設とする。 ・場所の記憶をつなぎながら新たな風景の魅力を創出するような工夫をする。 ・周辺の風景の要素をつなぎ、まとまった街並みとなるような工夫をする。 ・区民が利用したくなるような魅力的な風景を積極的に創出する。 ・区民が住み続けたいと思える街となるよう適切な維持管理を行う。 3.「風景づくりのガイドライン(公共施設編)」に基づく整備等など            上記の指針をもとに、道路、公園、河川、建築物などの整備において配慮すべき事項などを具体的に示す「風景づくりのガイドライン(公共施設編)」を作成し、これに基づき整備や維持管理を行うとともに、国、都、その他関係区市との調整を図っていきます。 コラム:風景づくりに配慮した公共施設の整備や維持管理  公共施設(道路や公園、公共建築物など)における風景づくりの取組み  公共施設の整備の際に連続性、一体性に配慮し、魅力的な風景を創出した事例として、「区立保健医療福祉総合プラザ(うめとぴあ)」や「世田谷代田駅前広場」、「世田谷区役所本庁舎及び世田谷区民会館」の整備事例があげられます。 【区立保健医療福祉総合プラザ(うめとぴあ)】 「区立保健医療福祉総合プラザ(うめとぴあ)」は梅ヶ丘病院の跡地に保健医療福祉の拠点として整備され、令和2年(2020年)に開設されました。整備にあたっては、周辺地域への影響や、街づくりとの関係についても考慮し、ユニバーサルデザインの視点をはじめ、「周辺地域の緑との連続性に考慮したみどり豊かな環境の創出」「周辺地域に配慮した施設整備と景観形成」「オープンスペースや通り抜けの確保、安全な歩行空間の確保等による地域の防災性・安全性の向上」などの風景づくりの視点で、道路、公園、公共建築物、民間建築物の一体性に配慮されたデザイン・意匠となるよう計画・整備されました。 また、東日本大震災を踏まえ、防災拠点となるよう防災・交流広場や備蓄庫が整備されるなど、災害時の機能も備えています。さらに、省エネルギー設備の導入等による環境負荷の低減や、グリーンインフラの整備による緑地や生態系の保全、豪雨対策にも配慮されています。 このように様々な面に配慮され整備された「区立保健医療福祉総合プラザ(うめとぴあ)」では、利用者だけでなく、地域住民が気軽にオープンスペースを利用し交流する風景が生まれています。 【世田谷代田駅前広場】 「世田谷代田駅前広場」は、平成12年(2000年)に地域にお住いの方々と検討が始まり、平成22年(2010年)に駅前広場整備計画を策定しました。その後ワークショップなどを通じて地域の方々から意見や要望を頂きながら検討を進めました。 整備にあたっては、利用者の安全安心に配慮しつつ、水捌けを考慮した舗装材の利用などの機能面に加えて、地域の個性を活かしながら、秩序のある連続した空間づくりに役立てるためのデザインの指針として策定された「北沢デザインガイド」に基づき、舗装や道路附属物の色彩を周辺環境に合わせるなど、駅前広場内の施設と調和したデザインにすることで、街並みに一体感が生まれるよう配慮しています。 また、広場の舗装には、かつて代田の地に存在し、代田の地名の由来とされている「だいだらぼっち」の足跡をモニュメントとして示し、由来などの案内板も設けることにより、地域の伝承を継承し、特徴的で魅力的な風景を作り出しています。 【世田谷区役所本庁舎及び世田谷区民会館】 「世田谷区役所本庁舎及び世田谷区民会館」は、建築後50年以上が経過し、災害対策や区民サービス、環境性能などの様々な機能を向上させる必要があることから、整備に向けた検討を重ね、令和3年(2021年)7月に着工し、現在工事中です(令和8年(2026年)4月時点)。 整備するにあたり、区は正面広場に立ち並ぶケヤキ並木を“可能な限り保存”することを、建替えの基本設計方針に明記しました。このケヤキ並木は区民の暮らしとともに歩んできた存在であり、「地域風景資産」にも選定されるなど、長年にわたり区民に親しまれていました。設計段階ではケヤキ並木を保全活用していくこととし、樹木診断によって1本1本の状態を確認しながら、保存・移植・伐採を検討し、移植可能と診断された樹木に関しては、100トンクレーンと低床トレーラーにより敷地内で移植を行いました。また、残念ながら状態が悪く伐採することとなった樹木については伐採・処分するだけでなく、区民ワークショップを通して家具として生まれ変わり、現在は新庁舎で活用されています。 世田谷区民会館の外壁改修にあたっては、特徴的な「折板構造」の外壁を保存再生することで、区民から親しまれている風景の継承を図りました。 外壁については建築家・前川國男氏のオリジナルデザインを尊重しつつ、竣工当時の外観を復元するため、始めにひび割れ、色合い、凹凸などの箇所を目視や打診点検などで丁寧に洗い出しました。その後、職人の手作業で下地肌合わせや色合わせなどを行い、歴史ある意匠を忠実に復元しました。外壁の色調や素材は周辺環境との調和にも配慮されており、周辺の風景との一体感も図られています。こうした工夫により、建築文化を継承しながら、区民にとって親しみやすく使いやすい公共施設として生まれ変わりました。 区内にはこうした魅力的な風景を生み出す公共施設や公共空間がいくつもあります。これらの公共施設や公共空間を、限りある財源の中で維持管理し、より魅力的なものにしていくためには、周辺風景や近隣の風景資源との調和に配慮した色彩や配置など、様々な工夫を行うことが大切です。 4.景観重要公共施設に関する事項                          道路、河川、都市公園などの公共施設は、風景を構成する重要な要素です。そのうち、良好な風景の形成において特に重要なものについては、法第8条第2項第4号ロに基づく景観重要公共施設として、その周辺の土地利用と調和した整備や維持管理を行い、効果的に良好な風景を形成するため、整備及び占用許可などに関する事項を定めます。   (1)景観重要公共施設の整備に関する事項(景観法第8条第2項第4号ロ)  世田谷区では、計4か所(道路:3か所、河川:1か所)の景観重要公共施設を指定しています。景観重要公共施設及びその周辺で整備を行う際には、以下に示す事項に基づいた整備となるよう、区と協議が必要です。   1)道路   @成城の富士見橋及び不動橋(成城四丁目1番付近)  富士山への眺めを多くの人が楽しめる場所であり、橋から富士山を眺められることが分かるような道路として整備を行いました。今後も富士山の眺望景観に配慮した維持管理をします。 A上野毛の富士見橋(上野毛三丁目3番付近)  富士山への眺めを多くの人が楽しめる場所であり、橋から富士山を眺められることが分かるような道路として整備を行いました。今後も富士山の眺望景観に配慮した維持管理をします。 B岡本の富士見坂(岡本三丁目28番付近)  国分寺崖線の斜面にある坂で、坂の上から富士山への眺めを多くの人が楽しめる場所です。今後も富士山の眺望景観に配慮した維持管理をします。  また、岡本の富士見坂については法第8条第2項第4号ハに基づき、以下の通り道路法第32条第1項又は第3項の許可の基準を定めることで良好な風景の形成に取り組みます。   岡本の富士見坂 道路法第32条第1項又は第3項の許可の基準 (法第8条第2項第4号ハ) 【富士山への眺望の保全の範囲】 ・坂の上端部中央と階段の上端部北端との間からの富士山への眺望において、多摩丘陵の山の端より上のところで、富士山の中心から両方向に富士山の2倍の幅の範囲に電線などの道路占用物が入らないこと。   2)河川     @ 多摩川の河川区域(喜多見、宇奈根、鎌田、玉川、上野毛、野毛、玉堤の一部)  多摩川は、武蔵野台地の南縁に沿って瀬と淵を織り成し、密集した市街地の中を抜けて東京湾に注いでいます。その流れは人々に憩いとやすらぎを与え、首都圏を代表する河川として、広く愛されています。  多摩川は、流域の人々の暮らしに大きな役割を果たし、都会の人々にとって自然が残る数少ない休息の場所です。年間多くの人々が訪れ、釣りやスポーツなどのレクリエーションの場としても利用され、多摩川を中心としたコミュニケーションづくりが行われています。  また、万葉集に詠まれるなど、人とのかかわりが古くから記されており歴史的にも流域の文化と深くかかわっている河川でもあります。  以上のような多摩川らしい河川風景を継承していくため、多摩川水系河川整備計画【直轄管理区間編】※に基づき、河川や周辺環境が織りなす個性的な魅力づくりに配慮した整備や生態系に配慮した自然環境の保全・創出などを進め、多摩川らしい河川の風景づくりをしていきます。   ※多摩川水系河川整備計画【直轄管理区間編】・・・平成13年(2001年)3月策定。河川法第16条の2第1項に基づく。策定にあたっては沿川住民、市民団体及び河川管理者などによる検討を基に作成。景観に関しては、昭和59年(1984年)に選定された多摩川八景と多摩川50景の景観の保全に努めることを明記しており、世田谷区内には、多摩川八景として「二子玉川兵庫島」、多摩川50景として「等々力渓谷」「二子玉川兵庫島」「二子緑地」がある。 (2)景観重要公共施設の指定の考え方  風景づくり計画に新たな景観重要公共施設として指定する際には、以下のいずれかに該当するもので、管理者の同意を得たものとします。 <景観重要公共施設を指定する場所>  良好な風景の形成において特に重要なものであり、 ・眺望空間を有する場所 ・線状に広がり骨格的な風景を形成する場所 ・風景づくりに寄与し地域のシンボルとなる場所 ・地域風景資産に登録された場所 第8章 様々な制度を活用した風景づくり 第8章では、まちの魅力を高め、地域の個性を特徴づける建造物や樹木などを、景観重要建造物・景観重要樹木に指定する際の方針や指定方法を示すとともに、良好な景観を形成・保全する必要がある場合や、風景づくりをより実効性のあるものとするために活用が可能な制度を示します。 1.景観法に基づく制度の活用                         景観法に基づく仕組みの活用の考え方などを示します。 (1)景観重要建造物及び景観重要樹木の指定 建築物や樹木は、風景を構成する重要な要素です。そのうち、良好な風景の形成において特に重要な建造物(建築物及び工作物)や樹木については、景観法に基づき指定し、その維持、保全及び継承を図ります。 1)景観重要建造物及び景観重要樹木の指定の方針 (景観法第8条第2項第3号) 下記の要件を満たすものを、景観重要建造物及び景観重要樹木として指定します。 指定要件 ・周囲の風景づくりの核又はシンボルとなると認められること。(地域の自然、歴史、文化などからみて、建造物の外観や樹木の樹容が風景上の特徴を有し、景観計画区域内の良好な風景づくりに重要なものであること。) ・道路その他の公共の場所から容易に望見されるものであること。 ・適切な維持管理がなされる目途があること。 2)規定事項 指定方法 指定にあたっては、所有者の意見を聴き、風景づくり委員会で審議の上指定します。 管理義務 所有者や管理者は、その良好な風景が損なわれないよう、適切に管理する必要があります。 現状変更における世田谷区長の許可 現状を変更する際、区長の許可が必要となります。 建築基準法の特例許可(建造物) 景観重要建造物である建築物のうち、良好な風景の保全を図るためその位置又は構造を保存すべきものについては、建築基準法の特例許可を受けることができます。 (2)その他の仕組みの活用 特徴のある街並みを保存・再生するなど、良好な景観を形成・保全する必要がある場合や、風景づくりの実効性を高める必要がある場合は、以下の制度を活用していきます。 1)景観地区 一定の地区を景観地区に指定し、良好な景観の形成を図ることを目的として、形態・意匠の制限や建築物の最高限度、敷地面積の最低限度などについて都市計画として決定する制度です。景観地区内で建築等を行うためには、定められた制限に適合することについて、区長の認定を受けることが必要となります。形態・意匠の制限など、定められた制限は、建築確認の対象となります。 2)景観協定 一団の土地の所有者などが、良好な景観の形成のため、その全員の合意により、建築物、工作物、緑化、屋外広告物など風景に関する様々な事柄を一体的に協定として定める制度です。建築物や工作物の形態・意匠、色彩や高さ、緑化などについて、地域独自の基準を住民が主体となって定めることができます。 3)景観整備機構 区がNPO法人などの団体を「景観整備機構」に指定することにより、指定を受けた団体が、風景づくり活動を行う区民等に対してアドバイザーの派遣、情報の提供、相談等の支援の実施や、景観重要建造物又は景観重要樹木の管理、景観重要公共施設の整備などを行う制度です。 2.他の法令などに基づく制度の活用                            風景づくりを進める内容に応じて、景観法以外の方法もあわせて活用していきます。 ・地区計画 都市計画法などに基づき、街づくりのルールを定めることができます。具体的には、建物物の用途の制限や、敷地面積の最低限度、壁面の位置の制限、建蔽率・容積率・高さなどの建築物に関するルールや、道路・公園などの公共施設の配置や規模を地区整備計画として定めます。 ・地区街づくり計画 世田谷区街づくり条例に基づく、世田谷区独自の制度です。地域にお住まいの皆さんの視点から幅広く街づくりのテーマを取り上げ、法的な項目にとらわれることなく、地区の特性に応じて幅広い内容を地区のルールとして定めることができます。 ・区民街づくり協定 世田谷区街づくり条例に基づき、区民や自治会等が、地域で定めた街づくりに関するルールを「区民街づくり協定」として区に届出することができます。区は一定の要件を満たしたものについて区民街づくり協定として登録します。 ・建築協定 建築基準法に基づき、土地所有者などが建築物の敷地面積や用途、面積や高さ、意匠などについて、独自の基準をつくり、お互いに守りあっていくことを約束(協定)する制度です。 ・緑地協定 都市緑地法に基づき、地域の環境を良好に保つために、土地所有者の合意を得たうえで、緑地の保全や緑化に関するルールを定める制度です。 第3部 風景づくりの推進体制 第9章 協働による風景づくりの推進体制 第9章では、多様な主体との協働により風景づくりを推進するため専門家や国や都、周辺自治体などの関係機関、庁内関係部署との連携の考え方と、風景づくり計画の検証・評価の考え方について示します。 1.協働による風景づくりの推進体制                          本計画で示した内容などについて、以下に示す推進体制のもと、多様な主体との協働により風景づくりを進めます。 (1)多様な主体による協働・連携 区民、事業者、区の責務を明確にするとともに、地域団体や学校、大学、企業など、多様な主体との協働、連携により、区民ひとりひとりが担い手となる区民主体の風景づくりに取り組みます。 (2)世田谷区風景づくり委員会による調査・審議 風景づくりに関する重要事項を調査・審議する機関として、区民及び学識経験者にて構成する世田谷区風景づくり委員会を設置しています。風景づくり計画の策定・変更に関することをはじめ、以下の内容について、風景づくり委員会の調査や審議を得ながら進めます。 主な審議事項 ・風景づくり計画の策定・変更に関すること  ・風景づくりの推進に功績があったと認める者への表彰に関すること  ・建設行為等の届出の勧告・変更命令に関すること  ・住民等による風景づくり計画の策定等の提案(景観法第11条)に関すること  ・景観重要建造物の指定・現状変更の規制・原状回復命令・指定の解除に関わること ・景観重要樹木の指定・現状変更の規制・原状回復命令・指定の解除に関わること など (3)せたがや風景デザイナーを活用した指導・誘導 建設行為等や屋外広告物の設置等に関する技術的指導・助言を効果的に行うため、各部門における経験や知識のある専門家「せたがや風景デザイナー」を活用した「事前調整会議」により誘導・調整を行います。 届出や協議が必要となる一定規模以上の建築行為等や屋外広告物設置等に加え、公共施設の整備や大規模開発などによる街づくりなど、風景づくりに関する事項についても積極的に活用し、良好な風景づくりを進めます。 (4)関連機関との調整・連携 1)国及び地方公共団体との協議・連携 国や他の地方公共団体などが区内に公共施設を整備する際は、「公共施設風景づくり指針」をはじめとした風景づくり計画に定める事項に整合する計画となるよう、協議します。 道路や河川整備に関わる眺望の保全など、行政の境界を越えて一体的な風景の形成を調整する必要がある際は、都や隣接区市との連携を図り、役割分担などの調整をしながら風景づくりを進めます。 2)その他関連機関との連携 風景づくりに関わる機関と積極的に連携し、風景づくりを推進します。 (5)庁内関係所管との調整・連携 風景づくりは、街づくり、公共施設整備・維持管理、復旧復興街づくり、文化財の保存・利活用、区民活動など、幅広い分野に関わります。良好な風景づくりをより効果的に推進するためには、庁内の関係所管との横断的な情報共有や施策との連携・調整を図ることが必要になります。 そのため、大規模な再開発や、まとまった樹林地の伐採を伴う開発行為、復旧復興街づくり等を行う際は、地域の自然や歴史資産を含めた地区の特性を把握し、風景に配慮した計画となるよう、関係所管と調整・連携します。 庁内関係所管との調整・連携イメージの図を掲載しています。 2.計画の検証・評価                                 (1)計画の検証・評価と見直し 風景づくり計画の計画期間は、世田谷区都市整備方針の「第二部 地域整備方針(後期)」の計画期間に即し概ね10年とし、計画期間満了を目途に見直しを行います。また、計画期間内においても上位計画の変更や風景づくり重点区域の指定など、必要に応じて、適宜計画の見直しを行います。 風景づくり計画の見直しにあたっては、施策・事業の進捗確認、区民意識の把握、実際の風景の状況把握、風景づくりに関する動向把握、せたがや風景デザイナーへの意見聴取など、適宜方法を選択しながら検証・評価を行うとともに、風景づくり委員会に諮りながら実施します。 (2)基本理念の評価指標 風景づくり計画の実現に向けた達成状況を測る方法のひとつとして、2つの成果指標を設定します。 成果指標1は、計画改定の検証・評価を行う際、区政モニターアンケートなどにより把握していきます。 成果指標2は、「世田谷区基本計画(2024−2031)」第5章の実施計画に定める「事業の成果指標」により、具体的な施策の効果などを把握していきます。 成果指標1の表 お住まいの街(世田谷区内)の風景を良いと思う人の割合 現状値(令和6年度)82.8% 目標値(令和16年度)85% お住まいの街(世田谷区内)の風景に興味・関心がある人の割合 現状値(令和6年度)95.4% 目標値(令和16年度)98% これまでに風景づくり活動に参加したことのある人の割合 現状値(令和6年度)11.4% 目標値(令和16年度)15% 成果指標2の表 事前調整会議における指摘事項に対する協議成立割合 現況値(令和5年度) 令和6年度 78% 令和7年度 78% 令和8年度 78% 令和9年度 78% 総量 78% 風景づくり交流会参加団体の交流会への評価(満足度) 令和6年度 75% 令和7年度 75% 令和8年度 80% 令和9年度 80% 総量 80% イベント参加者の風景づくりへの理解が深まった割合 令和6年度 75% 令和7年度 75% 令和8年度 80% 令和9年度 80% 総量 80% 世田谷区基本計画2024から2031の第5章実施計画より引用しています。 関連資料 関連資料については、改定案の作成の際に整えます。 現在の計画の目次 1.風景づくり資源図(別刷) 2.風景特性基準の対象 (1)まとまったみどり基準 (2)河川基準 (3)緑道基準 (4)歴史的資産基準 (5)農の風景基準 (6)拠点基準 (7)幹線道路基準 (8)世田谷線沿線基準 3.地域風景資産、界わい宣言一覧 (1)地域風景資産 (2)界わい宣言 参考資料 参考資料についても、改定案の作成の際に整えます。 現在の計画の目次 1.用途地域図 2.色彩について 3.風景づくり計画見直しの検討経過 4.風景づくり委員会名簿 5.用語集 世田谷区風景づくり計画改定素案は以上です。