資料12(別紙2) 世田谷区社会的養育推進計画(概要版) 令和3年4月 第1章 基本的考え方と全体像 計画の「理念」・「目指すべき姿」 区は、子ども・子育てにかかる施策を総合的に推進するとともに、家庭への養育支援から代替養育までを通した、社会的養育の体制整備に一貫して取り組み、平成28年改正児童福祉法の理念にのっとり、子どもの権利が保護され、最善の利益が優先された「みんなで子どもを守るまち・せたがや」の実現を目指します。 計画の位置づけ 区は、令和2年4月に、特別区で初となる区立の児童相談所を開設し、家庭への養育支援から代替養育までを通した社会的養育の体制整備に一貫して取り組むとともに、子ども・子育てにかかる施策を総合的に推進する「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」に基づく新たな取り組みを開始しました。 「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」とは、区の子ども・子育てにかかる相談支援を網羅し、家庭への養育支援から代替養育までを通した区の社会的養育の全体像として位置づけられる計画です。 世田谷区社会的養育推進計画は、「家庭養育優先原則」を徹底し、子どもの最善の利益の実現に向けた体制整備を進めるため、当事者である子どもの権利擁護や、里親等への養育委託の推進等に向けた目標や具体的な内容等について定めるものです。 世田谷区社会的養育推進計画と他計画との関係性の図 計画期間 計画期間は、令和3年度から令和11年度までの9年間とし、令和6年度に進捗状況の検証、計画の見直し等を行います (令和6年度は、区の社会的養育の全体像として位置づけられる「世田谷区子ども計画(第2期)後期計画」の終期にあたるとともに、本計画の中間年にあたることから、当該年度において本計画に基づく取り組みの進捗状況の検証や、計画の見直し等を行います。) 第2章 世田谷区の状況 施設・里親のもとで生活する区の子どもたち 令和2年10月1日現在、117人の区の子どもたちが児童養護施設や里親のもとで生活しています。 (乳児院7人、児童養護施設(本園)46人、グループホーム40人、ファミリーホーム3人、養育家庭等21人)。 養育家庭等には、養育家庭への委託児童16人のほか、養子縁組里親への委託児童5人を計上しています。 児童虐待相談の対応件数 児童虐待相談の対応件数は、年々増加傾向が顕著となっています。 これまで、児童相談所と子ども家庭支援センターは、それぞれが児童虐待通告の窓口となり、児童虐待相談に対応していました。 グラフは、それぞれの機関が対応した年次ごとの相談件数を示しています。 令和2年の区立児童相談所開設以来は、児童虐待通告の共通ダイヤルを設置するとともに、両機関が問題の解決まで協同でかかわる体制を構築することにより、確実に子どもの生命と安全を守り、虐待の再発・連鎖を断ち切る予防型の相談支援を展開しています。 第3章 世田谷区における具体的な取り組み 現在の取り組みに加え、次のように家庭への養育支援から代替支援までを通した、社会的養育の体制整備に取り組みます。 現在の主な取り組み 予防型の児童相談行政の構築 子ども家庭支援センターと児童相談所の両機関の職員がチームとなり、日常から担当区域の情報共有を行い、必要に応じて双方が持つ機能を組み合わせた支援を行っています。 これにより、虐待等の要保護児童等の早期発見・早期対応の徹底と、子どもの安全と生命を確実に守る予防型の児童相談行政を展開しています。 家庭と同様の環境における代替養育の推進 民間事業者を活用し、里親登録家庭の普及・促進に向けた戦略的な情報発信やリクルート活動を展開するとともに、児童相談所・児童養護施設・地域関係機関により構成する支援体制を組み、里親家庭が地域で孤立することなく児童を養育していけるよう、関係機関がチームとなった支援を展開しています。 子どもの権利擁護 子どもの意見が尊重され、権利が守られた適切な養育環境を提供することを基本的な考え方とし、施設への入所措置などを行うにあたっては、子どもへの十分な説明に努めるとともに、子どもから意見を聴取し、援助方針決定に反映させるよう努めています。 今後の主な取り組み 子どもの最善の利益の実現に向けた率先した取り組み 区は、引き続き当事者の意見を聞く機会の確保に努め、子どもの最善の利益の観点から、これらの意見を踏まえた適切な基準の制定・運用に努めます。 また、国の定める基準や、都・特別区で統一を図っている基準・運営等についても、必要に応じて関係機関へ積極的に見直しを提案するとともに、見直しの実現に向けて率先して取り組みます。 予防型の児童相談行政の推進 児童相談所業務の第三者評価の導入を進めるとともに、児童相談行政の専門性の維持・向上が継続的な課題であることを踏まえ、業務へのAI(人工知能)の導入の可能性について検討を進めます。 特別養子縁組の促進に向けた取り組み 民間事業者の活用を視野に、特別養子縁組の推進体制の構築に取り組みます。 一時保護児童への支援体制の強化 第三者委員等の意見や外部評価の結果などを踏まえながら、常に一時保護所の適正な運営が図られていることを確認し、適切な運営に努めます。 家族再統合に向けた取り組み 児童虐待問題の根本の解決の再発生予防のためには虐待を行う親が抱える問題にもアプローチする必要があるとの視点から、家庭内で児童虐待や夫婦間暴力(DV)を行った養育者に対するアプローチとして、養育者支援に取り組むこととし、その実施に向けた検討を進めます。 児童相談所、フォスタリング機関、里親、児童養護施設等は、パーマネンシー保障の視点が最優先されることを共通認識とし、協力して子どもの家庭復帰に取り組みます。 代替養育のもとで育つ子どもたちの自立支援 区と施設、里親、地域、関係機関は、児童虐待の連鎖を断ち切る社会を実現することを目標に、施設等で生活する子どもたちの入所期間中の支援から自立後の見守りまで、協力・連携して取り組みます。 入所中から支援に取り組むとともに、個々にあわせた自立支援が展開できるよう、家庭での生活を経験する機会の設定や、支援や見守りに携わる地域の人材確保・育成など、多様な支援の整備に引き続き取り組みます。 社会情勢の変化により自立がさらに困難を増す中、給付型奨学基金に寄せられた寄付を最大限活用し、着実に退所者等の社会的自立に活かされるよう、速やかにせたがや若者フェアスタート事業の見直しに取り組みます。 第4章 里親等委託・施設養育の推計と目標 区は、平成28年の改正児童福祉法で示された家庭養育優先の理念に則り、里親を中心とした社会的養護の受け皿の拡充に取り組みます。 目標達成のために機械的に里親等委託を進めるものではなく、個々の子どもに対する具体的な措置は、児童相談所における「家庭養育優先原則」を十分踏まえたアセスメントの結果に基づいて子どもの最善の利益の観点から行うものとし、子どもにとって最適な環境での養育を最優先に考えることを前提とします。 区は、家庭養育の推進に向け、「新しい社会的養育ビジョン」で示された里親等委託率の数値目標の令和6年度の達成を目指します。 (就学前の子どもについては75%以上、学童期以降は50%以上)。 (新しい社会養育ビジョン。平成28年の児童福祉法改正の理念を具体化するために、国による「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」が平成29年8月にまとめた報告書。 目指すべき里親等委託数 令和6年度に里親等委託率(就学前の子どもについては75%以上、学童期以降は50%以上)を達成するとした場合、目指すべき里親委託数は次のとおりとなります(右側%が里親等委託率です。) 里親等委託数の表 里親等登録数の目標整備量 過去の実績を踏まえると、里親等委託すべき児童数の約1.49倍の登録家庭が必要になると見込まれています。 令和6年度に向け、各年度に均等に整備目標を課すものとして、里親家庭の登録数の拡充等に取り組みます。 目標整備量の表 取り組みの評価・検証 子どもにとって最適な環境での養育を最優先に考えて里親等委託を行った場合、実績と目標数値が乖離することが予想され、里親等委託率だけでは区の取り組みの適切な評価にはならないと考えられます。 ついては、里親委託率に加え、子どもの最善の利益の観点から、十分なアセスメントが行われていること、また、里親委託が適している児童が適切に里親等委託されていることについて各年次において評価・検証を行います。 また、本来は、里親等への養育委託が適している児童は、すべて里親等へ養育委託されるべきであることを踏まえ、区は、年次ごとに里親等委託率や潜在的な里親等委託児童数(里親等委託が適していたが委託できていなかった児童の数)を調査し、これを公表するとともに、里親登録数の一層の拡充などの改善措置を講じます。 評価・検証手法の確立に向けて 新たな評価・検証手法の確立に向けては、児童相談所の第三者評価の項目に加えるなど、当区独自の工夫を検討します。 また、「里親委託に適した児童」の定義などについても検討を行うものとし、評価方法と合わせ、令和6年度の計画の中間見直しまでの間にこれらの手法の確立を目指します。 新たな手法の開発に取り組みつつ、当面の間においては、国の定める児童相談所運営指針に基づく十分なアセスメントが行われているかについて、援助方針会議等の記録に基づく十分なアセスメントが行われているかについて、援助方針会議等の記録に基づき確認を行うなどにより、状況を把握のうえ、評価・検証を行うこととします。