小児初期救急啓発事業(玉川医師会小児科医師監修) インフルエンザの流行と対応について その1 インフルエンザについて インフルエンザの流行シーズンに入りました。全国的に感染者数が増加しており 世田谷区でも学年閉鎖や学級閉鎖の対策が取られている学校もあります。 小児では、中耳炎、気管支炎や肺炎以外に、脳症・脳症や心筋炎を合併することもあります。 インフルエンザは、日本の小児の脳炎の最大の原因で、毎年100〜150人が脳炎になります(2024/25シーズンは181例)。 発熱したら? 家庭では、体を冷やす、安静、こまめな水分補給を行ってください。 家庭での見守り 就学期以降の小児や未成年者では、発熱から2日間は異常行動に伴う事故防止などを念頭に 見守りや安全対策を行ってください。 医療機関の受診 呼吸が苦しそう、けいれん、呼びかけても反応が乏しい、つじつまの合わないことを言ったり 動き回ったりするなど異常言動が見られたときは医療機関を受診してください。 インフルエンザ検査は12時間後? インフルエンザ迅速検査は、発症から12 時間以内では正しい結果が出ない可能性があるため 検査は「発症12 時間以降」に実施することが望ましいです。 インフルエンザ治療薬は? 自然経過で治ることがほとんどです。乳幼児へのオセルタミビル(タミフル)早期投与は重症化防止に繋がる可能性や 1〜3 歳の幼児の場合、発症から12〜24時間以内の投与で症状の持続が3日ほど短縮するとの報告があり 日本小児科学会も、幼児や、基礎疾患がある方など、重症化リスクが高い患者や呼吸器症状が強い患者への投与を推奨しています。 タミフル 5日間内服が必要ですが、生後2週以降の新生児から処方可能です。副作用は、主に吐き気(8〜10%) 嘔吐(8〜16%)といった胃腸症状が中心です。 ゾフルーザ 1回の内服で従来の抗インフルエンザ薬に劣らない効果がある薬ですが、薬剤耐性ウイルスの出現が懸念されることや 小児に特化したエビデンスが乏しいため、12 歳未満の小児への積極的な投与は推奨されていません。 リレンザ 1日2回吸入、計5日間投与の薬です。吸入可能な患者が対象ですが、4歳以下の幼児に対する安全性は確立していません。 また、喘息など呼吸器系の基礎疾患がある患者や、乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者には投与できません。 イナビル 単回吸入投与の薬剤ですが、低出生体重児、新生児、乳児に対する安全性は確立していません。 また、リレンザと同様に、喘息など呼吸器系の基礎疾患がある患者や、乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者には投与できません。 ラピアクタ 点滴薬で主に入院の時などに使います。 インフルエンザの予防策は? 知っていますか?インフルエンザ脳症。 インフルエンザ脳症は、特に1〜3歳の小児において、発熱して2 日以内に起こりやすく 死亡率は約30%で、後遺症も約25%の子どもに見られる重篤な疾患で、ワクチン接種が唯一の予防策です。 ワクチン接種 ワクチン接種はインフルエンザのもっとも効果的な予防法です。 (1)不活化インフルエンザHAワクチン (2)経鼻弱毒生インフルエンザワクチン 生ワクチンは2023年から2歳?19歳未満の子どもが選択できるようになりました。 生ワクチンとは、病原性を弱めた生きたウイルスを使用したワクチンで、接種後ワクチンウイルスを、最長3-4週間排出する可能性があります。 妊婦・授乳婦さん、免疫不全、ミトコンドリア脳筋症、ゼラチンアレルギー、ウイルスが中枢神経系に伝播しやすい解剖学的バリアー破綻のある患者や 家族が免疫不全症、抗がん剤治療を受けている、移植後であるなどの場合には、不活化インフルエンザHAワクチンが推奨されます。