8ページ 8ページに、写真を1点掲載しています。 インタビュー 当事者が本当に欲しい情報 写真1:元特別支援学校教諭 柴田 留理(しばた るり) ある日、私は聞こえない友人と4人で、美術館に行きました。手話で話しながら展示物を見ていたとき注意事項を説明するスタッフがいました。私たちは立ち止まり説明を聞こうとしたら、スタッフは私たちを見て、なぜか英語版案内ボードを差し出してきました。「この人聞こえにくいのかも?」と考えるより、「外国人なのかも」と判断したようです。 相手の言っていることが聞こえずとまどったり、自分たちの発音が悪かったりすると、相手から私たちが外国人だと判断されることが多いのです。手話を使っているのに、英語で話しかけてくる人もたまにいます。 話しかけられても、気付かず反応できない聴覚障害者もいます。その時、話しかけた人は「聞こえていないかも」と思うより、「無視された」と思ってしまいます。聞こえにくい人が身近にいるかもしれないにも関わらず、「聞こえにくいのかも、聞こえていないのかも」と想像してくれる人は少ないのです。 私は、生まれつきの聴覚障害ではなく、人生の途中で聞こえにくくなりました。そのため、母語は日本語であり、第二言語として英語、第三言語として日本手話を習得しました。普段の生活では補聴器をつけて、口話(※1)でやりとりをすることが多いですが、手話を使う友人と話すとき等、手話を使って話すこともあります。場面によっては、手話通訳や音声認識システムの使用等文字でのやりとりをお願いしたりしています。 聴覚障害者とコミュニケーションを取る際は、聞こえ方やコミュニケーション方法が様々であることを思い出して、どんなコミュニケーション方法が良いか本人に聞いてください。 まちには多様な人が暮らしていますが、施設の多くが歩けない人や見えない人、聞こえない人等、多様な人のことを考えずに作られています。それは「社会の仕組み」や「環境」に障害者の存在が想定されていないことが多いからです。 障害の有無に関係なく、どんな人にも不利にならない環境を考え作り出すことで、より多くの人の社会への参加が可能になります。そのためには、多様な特性がある方々(障害当事者等)の意見を聞くことが何より大切です。 そして、「聞こえにくい人がいるかも」「この人聞こえていないのかも」と想像してみる、想像力も大切にしてほしいと思います。 ※1 口話:口の形から言葉を読み取り、伝えたいことを声に出して話すコミュニケーション方法 9ページ 9ページに、画像を2点掲載しています。 教えて!川内先生 画像1:アクセシビリティ研究所 川内 美彦(かわうち よしひこ)先生の似顔絵。川内先生「一緒に学ぼう」 画像2:せたっちの顔。 質問1 せたっち:先生!バリアフリーなのに使えない人がいるのはどうしてなの? 川内先生:バリアフリーは大事ですが、万能ではないからです。人によって「やり方」が違うため、使えない人がいるのです。 質問2 せたっち:「やり方」って、 どういうことなの? 川内先生:障害のある人は、何かするときに、多くの人とはやり方が違うことがあります。例えば、車椅子を使う人は移動に足ではなく車椅子を使います。 視覚に障害のある人は目で見るのではなく、点字や音で情報を得ます。 「できない」のではなく、「やり方」が違うので不便な思いをするのです。 質問3 せたっち:多くの人とは違う「やり方」をする人は不便に感じるんだね。それって、大変じゃない? 川内先生:そうです。障害のある人の暮らしづらさは、自分たちに合った「やり方」ができないから生まれているのです。問題は、他の人が自分と違う「やり方」を知らないことや、違う「やり方」を受け入れてくれないことです。 質問4 せたっち:あの人は使えるのに、だれかが使えないというのは、不公平だよ! 川内先生:そう、自分に合った「やり方」ができないのは「平等」ではありません。「差別」です。障害を理由に「差別」したり、「平等に暮らす権利を侵害」してはなりません。他の人と平等に出かけて、平等に使えるように、周りが変わる必要があります。 質問5 せたっち:でも、みんなの「やり方」を用意することは難しい気がするな。 川内先生:どんな「やり方」にすれば良いか話し合って、お互いに納得できれば良いのです。例えば、車椅子を使う人がエレベーターのない2階のお店に用があるとき、2階に上がることが無理なら、店員さんがそれを説明して、1階で商品を選べるよう希望の商品を持ってくる等、代わりのやり方で解決することもできます。 質問6 せたっち:なるほど。では、「他の人と同じように使えるため」には、どうしたらいいの? 川内先生:人権や尊厳を大切にする社会には「平等」が重要です。大多数の人とは違う「やり方」をする人のことを無視したり、変に思ったりするのではなく、その人なりの「やり方」や違いを尊重することで、その人の人権と尊厳を守り「差別」を生まない社会をめざしましょう。