参考資料8 世田谷区子ども計画(第2期)後期計画 令和2~6年度 令和2年3月 世田谷区 第7章 若者計画 1 若者計画の策定にあたって (1)若者を取り巻く状況 国は、平成15 年に青少年育成推進本部を立ち上げ、幅広い分野が青少年施策を総合 的かつ効果的に推進するため「青少年育成施策大綱」を決定し、平成21 年には「子ど も・若者育成支援推進法」を制定し平成22 年に施行、同年に「子ども・若者育成支援 推進大綱(子ども・若者ビジョン)」を策定しました。平成28 年には、顕在化してき た子ども・若者の課題の複合性、複雑性等も踏まえ新たな大綱を定め、子ども・若者が 健やかに成長し、自立・活躍できる社会を目指した取組みを進めています。 区においては、ひきこもり、不登校等、若者の抱える問題の複雑・多様化に対し、従 来の縦割的な対応での限界も背景に、平成25 年度に専管組織を立ち上げ、「基本計画 (平成26 年度~令和5年度)」において①若者の交流と活動の推進、②若者の社会的 自立の促進、③生きづらさを抱えた若者の支援、を柱に施策を進めてきました。 これまでの若者施策を評価・検証するため平成30 年度に区が実施した「世田谷区若 者施策に関する調査」からは、多くの若者は、家庭や学校・職場以外で地域や社会にお いて多世代とつながる機会を持てておらず、家や学校・職場以外で安心して過ごせる場 を持っている若者は半数以下ということが分かっています。さらに、ヒアリング調査に おいて「学校では、集団から外れないよう気を遣いながら過ごしている」といった声が 複数から聴かれたように、同調傾向がある社会集団の中で、本来の自分を出せず息苦し さを感じている若者の存在も明らかになっています。一方で、SNS 等インターネット を介した情報の取得や発信、コミュニケーションがスタンダードとなる中、ネット上の 交流の場が居場所にもなっている若者がいることも分かりました。 また、多くの若者が地域や社会への参加意欲がありながら、日常が多忙であることな どから現実には参加できていないという実情があります。 一方、この5年間で、就職氷河期世代が40 代以上にシフトしてきていることや、高 齢の親の元で家族以外と交流することなくひきこもっている中高年の問題が社会的に 注目されるなど、若者世代のうちに適切な支援へとつながることができないまま40代 以上になった長期ひきこもりの方やその家族への支援が課題となっています。 平成30 年度、内閣府は、これまで39 歳までを対象としていたひきこもり調査につ いて、40 歳から59 歳までを対象として実施し、ひきこもりと思われる方はこの世代 の率にして1.45%、全国で61.3 万人との推計を出しました。東京都では、これらの 課題に対応するため、概ね34 歳までを対象としていたひきこもり訪問相談事業につい て、令和元年6月より年齢制限の上限を撤廃したところです。 メルクマールせたがやの5年間の支援実績からは、ひきこもり期間が長期化するほど、 自立に向けた動き出しまでの時間が必要であることが裏付けられたことから、若者施策 としては、できるだけ早期に当事者や家族とつながり、関係機関と連携しながら適切な 支援を行うことが重要となります。早期に支援につながるためには、支援機関や支援内 容が広く認知されている必要がありますが、区が実施した調査では、メルクマールせた がやをはじめとする支援機関の認知度の低さが浮き彫りとなりました。認知度の向上や 支援につながりやすい仕組みづくりが求められています。 (2)若者計画策定の趣旨 1)策定の趣旨 世田谷区では、平成25 年度より専管組織を立ち上げ若者施策に取り組んでいます。 若者施策は子ども期で展開する施策と密接に関わっていることから、子ども計画(第 2期)では、若者期を見据えた子育て支援を検討の視点に掲げて策定するとともに、今 後の若者施策の取組みについて1つの章に掲げ、施策を展開してきました。 若者が健やかに成長し活躍できる社会を目指し、交流・活動を支える取組みや、就職氷 河期という社会経済情勢を背景に社会問題化したニート、ひきこもりの問題への取組み を進めてきましたが、たとえば8050 問題のように、若者世代に留まらない課題への 対応が求められる中で、若者世代での取組みや支援施策への期待が高まるなど、当事者 や周囲の意識等も変容しています。 このことから、現在の状況に対応した計画を、子ども・若者育成支援推進法に基づく 「若者計画」として位置づけ策定しました。 2)計画の位置づけ 「若者計画」は、子ども・若者育成支援推進法に定める「子ども・若者計画」のうち、 若者の育成支援に関わる計画として位置づけています。なお子どもに関わる計画は、「子 ども計画(第2期)後期計画」に内包されています。 3)計画の期間 本計画は、平成27 年度から令和6年度を計画期間として策定した「子ども計画(第 2期)」の第6章について、計画策定後の若者を取り巻く社会情勢の変化や、国・都の 動向を勘案し、必要な調整を図り、新たに令和2年度から令和6年度を計画期間とした 「若者計画」として策定しました。 (3)若者施策の取組みの中間評価 1)子ども計画(第2期)第6章に基づく主な成果 子ども計画(第2期)第6章に基づき進めてきた主な取組みは、以下のとおりです。 ◆ 若者の交流と活動の推進 平成31 年2月、希望丘中学校の跡地を活用した複合施設内に、希望丘青少年交流セ ンター(愛称アップス)を開設しました。開設にあたっては、当事者である若者や地域 から意見を聞く機会を定期的に設け、施設整備や運営ルール等に反映しました。 青少年交流センターと児童館では、若者の主体的な参加・参画を促す取組みとともに、 地域での多世代交流の機会と活動の場を拡げる取組みを進めました。 ◆ 生きづらさを抱えた若者の支援 メルクマールせたがやとせたがや若者サポートステーションが連携し、生きづらさを 抱えた若者の社会的自立に向けた支援を行いました。また、子ども・若者支援協議会に より、複合的課題をもつ方を重層的に支えるネットワークの構築を進めました。 メルクマールせたがやでは、相談を経ることなく利用できる居場所「メルサポ」をせ たがや若者サポートステーションと定期的に運営したり、訪問による相談、希望丘青少 年交流センターでの出張相談を行うなど、生きづらさを抱えた若者やその家族が相談に つながりやすい仕組みの充実に努めました。また、早期に支援につながるよう、平成 28 年度よりティーンズサポート事業を開始し、10 代からの相談の増加につながりま した。 ◆ 若者の社会に向けた文化・情報の発信 若者がSNSによって、まちの魅力を発信するメディア「情熱せたがや、始めました。」 を平成29 年度から開始しました。若者の言葉による地域情報の発信が、若者の地域活 動への参加を促しています。 ◆ 子ども計画以外の計画に含まれる「若者支援施策」との連携 就労、福祉、保健、医療、教育等の各分野が関わる「子ども・若者支援協議会」によ り、若者支援に取り組む各機関等との連携及び、区の若者支援施策に関する取組みの情 報と課題の共有の場づくりを行っています。 2)子ども・青少年協議会による評価・検証及び提言 ◆ 若者の交流と活動の推進 【評価・検証】 ・ 児童館、青少年交流センター、プレーパークなどが、家でも学校でも職場でもない「第 三の居場所」となっており、またそれらの場は、若者の意見を吸い上げる仕組みづく りをスタッフが行うなど、若者が主体的な活動にシフトしていく役割を果たしている。 ・ 希望丘青少年交流センターは、中高生世代以上の若者の利用を想定していたが、利用 登録の約半数が小学生であったことから、子どもにとっても年上の世代と交流できる 場として機能していることがわかった。今後、さらに複合施設内の施設や地域との連 携を強化し、多世代交流を推進していくことで若者の交流と活動の範囲を広げること が必要である。 ・ 居場所での交流や主体的な活動により、自己肯定感や自己有用感が育まれていること が調査からも確認できた。 ・ これらの居場所を、子ども期から利用することにより構築された信頼関係が、思春期 の若者のサポートにつながっている一方、居場所の存在を知らず、利用していない若 者も多い。気軽に利用してもらえるよう、早期からのアプローチや居場所に対する理 解の促進が求められる。 ・ 地域での世代を超えた出会いやつながりから、若者が主体的に地域の活動に参画でき るようにするためには、地域の大人の知恵を借りることも有効である。 【提言】 ① 世田谷区の若者にはみな「第三の居場所」がある ② 地域に「大人・若者のたまり場(情報や活動、交流の拠点)」(=地域コンソー シアム)がある ③ リアルもネットも若者がつながる場に ◆ 生きづらさを抱えた若者の支援 【評価・検証】 ・ 生きづらさを抱えた若者の相談・支援機関メルクマールせたがやは、事業開始から5 年が経過し、関係機関から紹介を受け相談につながるケースや、他機関と連携し伴走 しながら支援を行っているケースが増えており、子ども・若者支援協議会をはじめと する関係機関の連携、支援の重層化の進展がみられる。 ・ 一方で、区内で4,400 人いると推計される15歳から39歳までのひきこもりのう ち、これまでにメルクマールせたがやにつながったのは約1割に留まるなど、支援機 関の利用率や認知度が低いことから、認知度の向上について、手法の検討を含めさら なる取組みが必要である。 【提言】 ① 生きづらさを抱えた若者が、「居場所」を中核とした専門機関と地域との連携に より総合的に支えられている ② 教育機関との連携により、生きづらさを抱えた若者が早期につながり切れ目が なく支えられている ◆ 若者の社会に向けた文化・情報の発信 【評価・検証】 ・ 大学生を中心とした若者による情報発信の取組み「情熱せたがや、始めました。」の 活動は、若者目線のメディアとしての役割だけでなく、参加している若者にとっての 居場所にもなっている。一方、区が取り組んでいる若者施策は、全体を通して認知度 が低いという実態が見えた。 【提言】 ① 地域の大人、行政職員が若者施策の情報を共有しながら若者を支えている ② 若者と地域の大人、行政職員が協働しながら若者の文化・情報の発信を支えて いる 2 若者計画の内容 (1)若者の交流と活動の推進 【現状と課題】 ・ 若者の活発な地域参加と社会の担い手への成長には、若者の主体的な活動を通して 自立と成長を促し、世代を超えた交流の機会を創出し、社会への参加・参画意識を 高める場の充実が不可欠です。 ・ 3か所の青少年交流センターが各々の特色を活かしつつ、交流センター同士が交流 を深め、課題解決、情報共有を図り、連携を強化することにより、交流センターの 質の向上を図り、若者の交流と活動を広げる機会の充実が求められます。 ・ 平成31 年2月に希望丘青少年交流センターが開設し、区内に青少年交流センター が3か所となりましたが、子ども・中高生世代の利用に比べて、大学生世代以上の 若者の利用が少ない状況にあります。大学生世代以上の地域・社会への参加・参画 意識を高めるには、子ども・中高生世代が利用する児童館と連携し、児童館から青 少年交流センターへとスムーズに利用を移行できる仕組みづくりが必要です。 ・ 大学と連携した居場所事業は、あいりす・たからばこの2か所で運営していますが、 利用者にとっての居場所、学生スタッフにとっての自立と成長の場として貴重な場 であり、さらなる充実が求められます。 【目標】 ・ 若者が地域や社会とつながることができる場や機会が充実している。 ・ 中高生世代のみならず、大学生世代以上の若者が地域・社会への参加・参画意識を 高めることができる場や機会が充実している。 ・ 若者が地域とつながり、同世代や異なる世代の人々と関わることにより次代の担い 手づくりが推進されている。 ・ 若者支援事業全般で連携することにより、すべての若者が地域や社会とつながり、 成長と自立を促すことができている。 【施策展開】 ① 若者の交流と活動の場の充実 若者自らの主体的な活動を通して自立と成長を促し、若者たちが地域や社会とつなが り、世代を超えた出会いや交流の機会を創出することにより、若者の社会への参加・参 画意識を高め、交流と活動を広げる機会を充実します。 ⅰ 青少年交流センターの運営 青少年交流センターでは、主に中高生世代以上を対象に、様々な社会体験、ものづく り体験事業や若者を中心としたイベントを実施することにより、若者の自立に向けた主 体性を育みます。青少年交流センターの運営には、職員のみならず大学生世代以上のイ ンターン等も関わることにより、職員のサポート役と利用者である若者の身近な相談相 手役を担っていきます。 また、就職への一歩が踏み出せない等、生きづらさを抱えた若者に対して、メルクマ ールせたがややせたがや若者サポートステーション等と連携し、就労に向けた土台づく りのプログラムを実施します。 地域活動団体等との連携を通して若者の参加・参画意識を高め、次世代の担い手とし ての意識を醸成します。さらに、各々の特色を活かしつつ青少年交流センター同士の連 携を強化し、質の向上を図ることにより、若者の交流と活動の場を充実します。 ⅱ ユースワークスキルの向上 若者の交流と活動の場である青少年交流センター等の若者支援施設には、若者に寄り 添い、適切な対応ができ、若者の成長を手助けするスタッフ(ユースワーカー)の存在 が必要不可欠です。人材研修や事例検討等を通じて、ユースワークスキルの向上を図り、 若者の健全な成長と自立を促す役割を担えるユースワーカーを育成していきます。 ⅲ 身近な居場所事業の充実 専門的支援を行う支援事業者が他機関との連携強化や、伴走者として大学生スタッフ へのサポート体制の充実を図ることで、若者が意欲を高め、学びながら活動を広げてい き社会・地域の担い手へと成長する体制を整えます。 ⅳ 中高生世代が主体となって行う活動の支援 中高生世代が自ら参加・参画して行う活動の支援を進めます。 ⅴ 中高生世代が気軽に利用できる居場所の確保 子どもたちが地域の居場所を知り、自身のニーズに合った居場所を自ら選択できるよ う、地域の中で中高生世代を中心とした子どもが過ごす場所や機会の充実を図るととも に、周知を進めます。 ② 青少年交流センターと児童館の連携 青少年交流センターと児童館が連携することにより、子どもから若者への成長に合わ せた若者支援の体制を構築し、若者たちによる今の、そして次代の担い手づくりを推進 します。 ⅰ ユースリーダー事業の推進 青少年交流センターと児童館で活動する中高生世代同士の交流の機会を創出し、様々 な事業を通じて地域で活躍できるようになる「循環の仕組み」の構築を進めます。 ⅱ 青少年交流センターと児童館職員間の交流の推進 青少年交流センターと児童館の職員による合同研修や相互の企画交流参加等の連携 充実を図ることにより、若者支援体制の構築に取り組みます。 ⅲ ニーズに応じた施設の利用に向けた職員間の情報共有と仕組みづくり 児童館や青少年交流センターを利用する子ども・若者は、どちらか一方を利用してい たり併用していたりする状況ですが、子ども・若者が、第三の居場所としてニーズに合 った通いやすい居場所を選択できるよう、それぞれの施設間で、必要に応じ、情報共有 や利用促進を図っていきます。 また、中高生世代の児童館利用者で青少年交流センターへ利用施設を移行することを 希望する若者に対しては、スムーズな移行を支え、それぞれの年代に合ったニーズに寄 り添い、若者の「やりたい」を叶え、自己実現の機会を重ねることにより、社会的自立 につながり、次代の担い手として活躍できる仕組みづくりに取り組みます。 (2)生きづらさを抱えた若者の支援 【現状と課題】 ・ 児童館、青少年交流センター、区内大学と連携した中高生の居場所など、多くの居 場所が、様々な背景を持つ若者の日常をケアする場となっている一方、専門機関に つなぐにあたっては、伝え方に配慮を要するなどの難しさがあります。 ・ 平成30 年度に区が実施した若者施策に関する調査において、専門機関の認知度を 尋ねたところ、5 割以上に認知されていた機関はなく、「メルクマールせたがや」は 1 割以下であるなど、認知度の向上についてさらなる取組みが求められます。 ・ 区内で4,400 人いると推計される15 歳から39 歳までのひきこもりのうち、これ までにメルクマールせたがやにつながったのは約1割に留まっています。専門機関 に相談する際の迷いや不安等を軽減するなど、専門機関の敷居を下げる工夫が必要 です。 ・ 学校や教育機関と連携したティーンズサポート事業など、10 代支援の取組みによ り10 代の新規相談が増えていますが、ひきこもり期間が長期になるほど、動き出 すのに時間がかかる傾向があることから、早期に支援につながるための取組みをさ らに進める必要があります。 ・ 生きづらさを抱えた若者の相談・支援機関「メルクマールせたがや」は、関係機関 から紹介を受け相談につながったり、他機関と連携し伴走しながら支援を行ってい るケースが増えていますが、複合的で複雑化した課題を抱える若者の自立を支える ため、なお一層の連携強化が求められます。 ・ 内閣府の調査より40 歳から64 歳でひきこもりの状態にある方は、区内に4,800 人いると推計されます。また、令和元年度に区が民生・児童委員に行ったアンケー ト調査では、ひきこもりに該当すると思われる方のうち、40 代から50 代が6割 を占めました。家族からの発信がないと把握が難しい現状や、長期ひきこもりによ る社会的孤立の深まり、問題の深刻化が課題となっています。 【目標】 ・ 若者がみな、生きづらさを抱えた時に相談できる人や機関を知っている。 ・ 不安を感じた際に、ためらうことなく、身近で気軽に相談ができる場がある。 ・ 安心して利用でき、対人関係や社会生活に対する自信を取り戻せるような「居場所」 がある。 ・ 自らに合った進路の選択ができるよう、多様な体験の機会が用意されている。 ・ 全庁的な相談・支援体制が構築され、様々な専門機関や地域資源と連携しながら切 れ目なく対応することにより、ひきこもり等生きづらさを抱えた方が、年齢を問わ ず本人のニーズを尊重した適切な支援を受けながら希望する自立を果たしている。 【施策展開】 ① 支援につながりやすい仕組みづくり 相談支援機関の情報が若者に届くよう情報提供の手法を工夫するとともに、若者が日 常的に過ごす場や若者の身近にいる人が必要に応じて専門機関へのつなぎ役を果たせ るよう、広く周知・啓発に取り組みます。また、居場所やセミナーなど支援への動機づ けとなる多様な入口を設けたり、身近な場で相談を受けられる環境を整えるなど、相談 支援に対する心理的・物理的なハードルを下げる取組みを進めます。 ⅰ 若者総合支援センターの運営 メルクマールせたがやとせたがや若者サポートステーションの一体的運営により、生 きづらさや悩みを抱える若者の社会参加や就労を、切れ目なく伴走しながら支えます。 ⅱ 相談しやすい環境整備 来所が困難な方や、相談にためらいを感じている方が、世田谷若者総合支援センター の支援とつながりやすくなるための仕組みづくりを進めます。また、生きづらさを抱え た方が年齢にかかわらず適切な支援とつながれるよう、ニーズに合わせた相談ができる 場のわかりやすい周知に努めるとともに、相談の場におけるアセスメント機能の充実を 図ることにより包括的なサポート体制の整備を進めます。 ⅲ 早期に支援につながる仕組みの充実 早期に支援につながった方ほど社会参加に向けた動き出しもスムーズであることか ら、学校や居場所など若者の日常に近い場と連携した早期支援の取組みを充実します。 ⅳ ピアサポートによる支援の充実 家族会や当事者会など、ピアサポートによる交流・エンパワーメントの場に対し、専 門スタッフの派遣や学習会開催の支援、サポートスキル向上への支援等による充実を図 るとともに活動の周知を進め、敷居の低い場から相談・支援のネットワークにつながり やすい環境を整えます。 ⅴ 支援情報の周知・啓発 支援につながるためのきっかけや後押しとなるよう、当事者だけでなく、当事者の身 近にいる方など広く周知・啓発を行います。 ② 多機関で連携した支援 生きづらさの背景要因は多様かつ複雑であることから、その人その家族に適した支援 を提供できるよう、多機関、多職種の連携を進め、切れ目なく重層的に支えていきます。 ⅰ メルクマールせたがやとせたがや若者サポートステーションの円滑な連携 世田谷若者総合支援センターを構成する両機関が円滑に連携し、合同プログラムや、 共同で開設する居場所事業等の取組みによる利用者や職員の交流の取組みも活かしな がら、就労までを見据えた若者の自立に向けた継続的な支援を展開します。 ⅱ 子ども・若者支援協議会の運営 子ども・若者支援協議会での、就労、医療、保健福祉、教育、生活困窮等関係機関に よる課題共有とともに、「不登校・ひきこもり」「ひきこもり・就労支援」「思春期青年 期精神保健」の各部会ごとに実務担当者が事例や課題の検討を通し関係性を構築してい くことにより、重層的な支援を行える体制の強化を進めます。 ⅲ 若者総合支援センターと若者に身近な場との連携 青少年交流センターや大学と連携した居場所、児童館などの身近な居場所は、若者の 日常を見守り、必要に応じ寄り添いながらケアすることができる場でもあります。若者 総合支援センターと若者に身近な場との連携を進めることにより、生きづらさを抱える 若者の状況に応じて、見守りから専門的な支援まで切れ目なく伴走し支えていきます。 ⅳ 年齢により途切れることのない連携 様々な専門機関や地域資源を理解しコーディネートできる人材を育成し、連携を強化 することにより、ひきこもり等生きづらさを抱えた方やその家族を、年齢で途切れるこ となく寄り添いながら支えていく相談支援体制を充実します。 (3)若者が地域で力を発揮できる環境づくり 【現状と課題】 ・ 社会参加への意欲はあっても、実際の参加につながっていない若者が多い状況です。 ・ 生きづらさを抱えている若者や、障害や疾病等により特別な配慮が必要な若者、外 国にルーツがある若者、家族のケアを担っている若者(ヤングケアラー・若者ケア ラー)、社会的養護のもとにある若者など、社会参加にあたり困難を抱えている若者 も力を発揮できる仕組みが求められます。 ・ 若者集団による活動が継続していくためには、世代交代やファシリテート役(リー ダー)の育成、モチベーションの維持などの課題があります。 ・ 若者がやりたいことを実現していく過程で、若者だけで解決することが困難な課題 にあたることがあり、地域の中で十分に力を発揮できない状況があります。 【目標】 ・ 若者のニーズや声を受け止め、実現に向けサポートする仕組みがある。 ・ 多様な若者が、社会の一員として様々な世代とともに地域の中で力を発揮している。 ・ 若者支援に関わる区民、地域活動団体のネットワークが公的ネットワークと連携し、 若者の活動を支えている。 【施策展開】 ① 地域での若者の参加・参画の推進 若者が参加・参画を進めるためには、すべての若者が安心して意見を言える場があり、 表明した意見を受け止め、ともに考える大人がいることが望まれます。そのような環境 を整えるとともに、若者の提案や企画を実現するための新たな仕組みについて、検討を 進めます。 ⅰ 安心して意見を言える場の拡充 周囲に合わせるような気遣いをすることなく安心して話を聞いてもらえる場、考えや 意見を言える場を誰もがもてるよう、環境の整備を目指します。 ⅱ 多様な大人との交流 若者が多様な大人と接することにより、様々な可能性や選択肢を知るとともに、提案 や企画の実現の方策や伴走者を得られる機会をつくります。また、多様な大人が若者の ニーズや力を知ることで、若者の参加・参画を広く受け入れる土壌を育みます。 ⅲ 若者の意見を受け止める大人 若者が発言をしやすい環境を拡充していくため、若者の人権を理解し、若者の意見を 聞き、受け止める大人を増やす取組みを進めます。 ⅳ 若者の提案を実現するための仕組みづくり 若者の提案や企画を実現するための新たな仕組みについて、検討を進めます。 ⅴ 若者の参加・参画にかかるプロセス・成果の周知 若者が参加・参画したプロセスや成果の発信・周知により、同世代の若者の活動への 興味を引き出すとともに、若者の活動に関心を持ち関わる大人を増やすことを目指しま す。 ② 若者の活動を支えるネットワークの強化 子ども・若者支援協議会をはじめとする公的なネットワークとともに、地域で若者支 援に関わる区民や活動団体のネットワークの構築を促進し、双方が連携しながら若者の 成長と活動を支えていきます。 ⅰ 若者支援ネットワークの構築 若者に関わる相談・支援を行う各機関の双方向の連携を進めます。また、地域で若者 を応援する活動を行っている団体や個人の把握に努め、連携の機会を設けます。 ⅱ 公的ネットワークと地域のネットワークの連携 公的機関と地域の活動、それぞれの持つメリットを活かして若者の活動を支えていく ため、交流や連携の機会を設けます。 (4)若者の社会に向けた文化・情報の発信への支援 【現状と課題】 ・ 地域活動団体の取材等を通じた連携や情報発信による若者の参加・参画の機会を広 げる取組みを進めていますが、メンバーが活動しやすい環境を整え、情報発信数や 地域との協働による参加・参画の機会の拡充により認知度をあげる取組みが必要で す。 ・ 若者によるSNSを活用した情報発信「情熱せたがや、始めました。」を通して、若 者視点で若者世代に世田谷の文化・情報や魅力を発信していますが、活動メンバー が卒業し世代交代するなかで、今まで培ってきたノウハウや課題の引継ぎを円滑に 行える組織体制づくりが必要です。 【目標】 ・ 若者に伴走する大人によるサポートがしっかりとされていることにより、若者が主 体的な活動、参加・参画できる環境が整っている。 ・ メンバーの世代交代を経てなお活動継続できる組織が構築されており、参加・参画 の循環が行われ、引き続き世田谷区の文化・情報や魅力が発信できている。 【施策展開】 ① 若者の主体的な活動、参加・参画の機会を広げるための支援 若者が活動しやすい環境を整備し、連携協力を推進していくことで、若者の主体的な 行動を促し、若者の意見表明、参加・参画の仕組みを構築し、地域活性化や多世代交流 の意識を高めることを目指します。 ⅰ SNSを活用した情報発信による若者の主体的な活動、参加・参画への支援 「情熱せたがや、始めました。」事業に若者が参加・参画することにより、若者の求 める情報、発信したい情報を若者自身の目線で分かりやすく伝達し、若者の活動成果を 表現する機会の活性化を図ります。また、この取組みを支援する事業者が若者の伴走者 として、情報発信のサポート業務、参加・参画の仕組み構築を担うことにより、若者の 活動範囲の幅を広げます。さらに、メンバーのみならず、情報を受け取った若者が地域 活動に参加し情報の発信側も受け手側も主体的に活動が行えるよう支援していきます。 ⅱ 取材等を通じた地域との協働による参加・参画への支援 若者が情報を発信するにあたり、地域の方や団体への取材の機会を増やすことにより、 メンバーの地域活動や地域課題への参加・参画の意識を高めていきます。 ② 安定・継続した情報発信の仕組みづくり 「情熱せたがや、始めました。」メンバーが卒業し、世代交代を経てなお活動継続で きる組織を構築し、今まで培ってきたノウハウ等の引継ぎ、参加・参画の循環が行われ ることにより、安定・継続して若者自身により世田谷区の文化・情報や魅力を発信して いくことを目指します。 ⅰ 安定・継続した活動ができる組織の構築 メンバーが世代交代しても安定・継続した情報発信ができるように、全体会議での情 報共有、研修会や勉強会を定期的に実施することにより、メンバー全員が同水準の活動 が行えるよう支援していきます。 ⅱ メンバー確保のためのPR 安定・継続して情報発信を行っていくためには、メンバーの確保が重要です。そのた め情報発信事業に理解のある大学と連携を強化したりSNS媒体を増やすなど、効果的 なPRを行いメンバーの確保に努めます。