写し 令和3年11月22日 世田谷区長 保坂 展人 様 世田谷区特別職報酬等審議会 会長 沼尾 波子 特別職報酬額等及び政務活動費の額について(答申) 令和3年8月2日付3世総第334号により諮問のあった標記の件について、別紙のとおり答申します。 世田谷区特別職報酬等審議会委員 会長 沼尾 波子 会長職務代理 外山 公美 委員 朝倉宏美 委員 小島和子 委員 鈴木竹夫      委員 楯香津美 委員 中村重美 委員 永山 明  委員 山口 マリカ 答申 1 はじめに 世田谷区特別職報酬等審議会(以下「審議会」という。)は、令和3年8月2日、世田谷区特別職報酬等審議会条例第2条の規定に基づき、区長から、区議会議員の議員報酬の額、区長、副区長、教育長及び監査委員の給料の額(以下「特別職報酬等」という。)並びに政務活動費の額についての諮問を受けた。 審議会は、第三者機関としての自覚と責任のもと、国及び他の地方公共団体における特別職報酬等との比較、一般職の給与改定の状況、社会経済情勢等を考慮し、広範かつ客観的な立場から審議を行った。 2 区長、副区長、教育長、監査委員、区議会議員の職責について 区政の最高責任者である区長は、区の現在のみならず未来を見据えるとともに、複雑多様化する区民要望を的確に捉え、区政の目指すべき将来像を実現していくために、高度な先見性や決断力、指導力が必要とされ、その職責は重大である。 副区長は、区長を補佐する立場として、区長の意向を踏まえた、部や領域を越えた全庁的な視野に立った政策判断や、国や都等関係機関との調整の役割を担っていることから、その職責は極めて重いといえる。 教育長は、教育委員会の会議の主宰者であり、委員会の活性化等を図る立場にある。また、具体的な事務執行の責任者、事務局の指揮・監督者として教育行政を進めていくことが求められており、重要な職責を担っている。 監査委員は、区が執行する事務等の監査を通じ、行政の適法性及び妥当性を確保するとともに、地方自治行政の透明化を図ることを目的に設置されていることから、各委員が担う社会的責任の重さは増している。 区議会議員は、区民の代表として、議会活動を通じて執行機関のチェック機能を果たすとともに、新型コロナウイルス感染症を発端とした諸課題に対する区民の声を政策形成に反映させるなど、その職責は重要となっている。 3 特別職報酬等の額について (1)基本的考え方及び区の現状 特別職報酬等の額は、その職務と職責に相応するとともに、一般職の給与改定の状況、社会経済情勢及び区の財政状況等を勘案し、区民の理解を得られる適正な額であることが望ましい。 世田谷区における現在の特別職報酬等の月額及び月額に地域手当及び特別給(期末手当)を加えた年間収入総額と他の地方公共団体(東京23区)との比較は、下記のとおりである(令和3年10月1日現在)。 区分 月額現行額(円) 東京23区内における順位 年収総額現行額(円) 東京23区内における順位 区長 1,050,100 21位 21,953,915 10位 副区長 808,300 23位 16,898,723 22位 教育長 763,300 19位 15,957,931 9位 常勤代表監査委員(*) 660,200 5位 13,802,471 2位 常勤監査委員(*) 640,200 7位 13,384,341 3位 区議会議員 議長 926,900 6位 16,297,219 5位 副議長 784,800 12位 13,798,746 8位 委員長 663,600 5位 11,667,747 6位 副委員長 631,700 9位 11,106,865 6位 議員 614,700 7位 10,807,962 6位 注:「東京23区内における順位」は金額の多い順とする。  (*)東京23区において、常勤代表監査委員を選任しているのは9区、常勤監査委員を設置しているのは16区である。(令和3年10月1日現在) なお、世田谷区の場合、特別給(期末手当)はすべての区分において、年間3.85月である。 (2)一般職の給与改定の状況 特別区人事委員会は、一般職の給与水準について、特別区内の民間従業員の給与水準と均衡させることを基本とし、毎年、給与に関する報告及び勧告を行っている。その基礎となる「職種別民間給与実態調査」の結果によると、本年は、月例給は一般職の給与が民間従業員の給与を0.02%上回っているとした。しかしながら、この較差は僅少であり、おおむね均衡していることから、月例給の改定は行わないとした。 また、特別給については、一般職の特別給(期末手当・勤勉手当)の年間支給月数が民間の特別給(賞与)を0.13月分上回っていることから、0.15月の引下げを勧告した。    4 政務活動費の額について 政務活動費は、区議会議員の調査研究その他の活動に資するために必要な経費の一部として、条例に基づき区議会における会派又は議員個人に対し、交付される費用である。 世田谷区の政務活動費の額は、「世田谷区政務活動費の交付に関する条例」が施行された平成13年以来、月額240,000円で据え置かれている。 5 社会経済情勢及び区の財政状況について 政府は日本経済の状況について、月例経済報告(令和3年10月)で「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、そのテンポが弱まっている。」としている。また、先行きについては「感染対策を徹底し、ワクチン接種を促進するなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待される。」とする一方で、「サプライチェーンを通じた影響による下振れリスクに十分注意する必要がある。」と指摘している。 事実、新型コロナワクチン接種の促進により、感染者数が減少傾向にあるものの、中国などでは感染力の強い変異株が流行しており、日本においても、いわゆる「第6波」の恐れもあることから、先行きが明らかになったとは言い難い状況にある。 他方、区の財政状況は、令和2年度決算によると、実質収支が139億3,700万円の黒字、実質収支比率は6.1%と、適正な水準が維持されている。また、特別区債の残高は、玉川総合支所・区民会館改築事業や小学校改築事業などについて新規発行したことにより、約38億円増加した。さらに、区の基金残高は、財政調整基金や庁舎等建設等基金等へ新たに約58億円積み立てたことで、令和2年度末残高は約1,119億円となり、昨年に続き過去最高を記録した。これにより、基金残高が特別区債残高を約383億円上回ることとなった。 しかしながら、令和4年度の世田谷区の財政見通し(令和3年8月時点)では、歳入の根幹をなす特別区税や特別区交付金は、新型コロナウイルス感染症流行以前の水準への回復が見込めないとし、今後の区の財政についても依然として厳しい状況にあると予測されている。 6 結論 (1)改定の適否等について 審議会では、政務活動費の額及び特別職報酬等の額について、区政を取り巻く社会経済情勢の動向や特別区人事委員会による勧告の経緯に加え、これまでの改定経過等を十分に考慮したうえで、審議をした。 結果として、区議会議員の政務活動費の額については、新型コロナウイルス感染症が区内経済や区の財政に与え続けている深刻な影響を考慮すれば、増額とする積極的な意義は認め難い、との意見が出された。また、減額については、このような状況から、区民感情としては引き下げることも考えられる、という意見も出されたが、先行きが不透明であることに加え、他自治体との比較や過去の推移等を踏まえ、現行の額が適正であるとの結論に至った。 次に、区長、副区長、教育長、監査委員の給料月額及び議員報酬月額並びに期末手当について、現在に至るまで同勧告に沿って改定内容を検討してきたことに鑑み、本年の特別区人事委員会勧告による一般職の給与措置と同様に、給料月額及び議員報酬月額は据え置きとし、期末手当は減額措置を講ずることが適当であるとの総意に達した。 (2)改定額について 審議会は、区長、副区長、教育長、監査委員及び区議会議員の期末手当について、一般職に対する本年の特別区人事委員会勧告の内容に準じ、それぞれ0.15月を引下げることが妥当との結論に至った。 (3)改定の実施時期について 改定の実施時期については、本答申後、速やかに実施することが望ましい。 7 附帯意見 審議会としての要望事項をここに附記する。 政務活動費の使途については、その原資が税金であることを鑑み、適正な支出とすることはもとより、収支報告書等を公表するホームページにおいては、区民に解りやすく、より納得感を得られるような見せ方の工夫を求める。 8 おわりに 本審議会は、区長の諮問に対し、以上のとおり答申する。 なお、新型コロナウイルス感染症の感染者数が減少に転じる中、区民からは、継続した感染症への対応に加え、感染症の影響による落ち込みが著しい社会経済の活性化等、感染症流行以前への回復を目指した政策の立案・実施が求められている。 このような厳しい状況下においても、特別職等各位におかれては、区民の負託に応えるべく、一層努力されることを願うものである。