懲戒処分の指針 世人発第164号平成15年7月24日 世人第1564号平成19年3月23日 24世人第158号平成24年5月24日 24世人第279号平成24年6月21日 28世人第104号平成28年5月1日 2世人第3号令和2年4月1日 第1 基本事項 本方針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な処分量定を掲げたものである。 具体的な量定の決定に当たっては、原則的には以下の諸要素を考慮のうえ、過去に行った非違行為の事例にも照らして、総合的に判断するものとする。 @非違行為の態様、被害の大きさ及び司法の動向など社会的重大性の程度 A非違行為を行った職員の職責、過失の大きさ及び職務への影響など信用失墜の度合い B日常の勤務態度及び常習性など非違行為を行った職員固有の事情 C非違行為後の対応等 なお、標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象となり得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判断する。 第2 標準例 1.一般服務関係 (1)欠勤 ア.正当な理由なく過去1年間に3日以上1週間程度勤務を欠いた職員は、 戒告とする。 イ.正当な理由なく過去1年間に2週間程度勤務を欠いた職員は、停職とする。 ウ.正当な理由なく引き続き3週間以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。 (2)遅参・早退 勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。 (3)休暇の虚偽申請 病気休暇又は特別休暇等について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告とする。 (4)勤務態度不良 勤務時間中に繰り返し職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。 (5)職場内秩序を乱す行為 ア.他の職員に対する暴行により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒告とする。この場合において、人の身体を傷害した職員は、停職、減給又は戒告とする。 イ.他の職員に対する暴言等により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒告とする。 (6)公文書の不適正な取扱い ア.公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。 イ.決裁文書を改ざんした職員は、免職又は停職とする。 ウ.公文書を改ざんし、紛失し、又は誤って廃棄し、その他不適正に取り扱ったことにより、公務の運営に支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。 (7)不適切な事務処理 故意若しくは重大な過失により適切な事務処理を怠り、又は虚偽の事務処理を行い、公務の運営に支障を生じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。 (8)虚偽報告 事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、停職、減給又は戒告とする。 (9)利害関係があるものとの接触 ア.利害関係があるものから金品を受領し、又はその要求若しくは約束をした職員は、免職、停職又は減給とする。 イ.利害関係があるものから利益又は便宜の供与(社会通念上許される範囲のものを除く。)を受けた職員は、免職、停職、減給又は戒告とする。 (10)入札談合等に関与する行為 区が入札等により行う契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格等の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行った職員は、免職又は停職とする。 (11)営利企業等の従事 許可なく営利企業等に従事した職員は、停職、減給又は戒告とする。 (12)違法な職員団体活動 地方公務員法第37条第1項後段の規定に違反して同項前段に規定する違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおった職員は、停職又は戒告とする。 (13)秘密漏えい 故意に職務上知ることのできた秘密を漏らし、公務の運営に支障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。 (14)個人情報の不適正な取扱い ア.その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告とする。 イ.過失により個人情報を盗まれ、紛失し、又は流出させ、公務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。 ウ.職務上知ることのできた個人情報を自己の利益のために利用する等、不当な目的で使用した職員は、免職、停職又は減給とする。 (15)コンピュータの不適正利用 ア.職場のコンピュータを職務外の目的(インターネットへの不正アクセス、わいせつ文書・図画の閲覧、商取引等)で不適正に利用した職員は、停職、減給又は戒告とする。 イ.コンピュータシステム又は情報資産を故意に損壊し、改ざんし、又は消去した職員は、免職、停職又は減給とする。 (16)セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動) ア.職場における上司・部下等のその地位を利用した関係に基づく影響力を  用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。 イ.相手の意に反して、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。 ウ.相手の意に反して、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。 エ.ア〜ウの場合において、わいせつな言辞等の性的な言動を行ったことにより相手が強度のストレスによる精神疾患に罹患したときは量定を加重する。 (17)パワー・ハラスメント 他の職員又は同じ職場に勤務するその他の者に対して、職務上の地位又は人間関係等の職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的若しくは身体的苦痛を与え、又は職場環境を悪化させる行為をした職員は、停職、減給又は戒告とする。 この場合において、相手が強度のストレスによる精神疾患に罹患したときは量定を加重する。 (18)妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメント 他の職員又はその職務に従事する際に接する職員以外の者に対して、妊娠、出産、育児若しくは介護に関する制度等を利用すること、妊娠若しくは出産をしたこと又は育児若しくは介護をすることを理由に、精神的若しくは身体的苦痛を与え、又は職場環境を悪化させる行為をした職員は、停職、減給又は戒告とする。 この場合において、相手が強度のストレスによる精神疾患に罹患したときは量定を加重する。 (19)その他のハラスメント行為 他の職員又はその職務に従事する際に接する職員以外の者に対して、モラル・ハラスメント、ソジ・ハラスメント、レイシャル・ハラスメントその他のハラスメント行為と認められる不適切な言動を行い、精神的若しくは身体的苦痛を与え、又は職場環境を悪化させる行為をした職員は、停職、減給又は戒告とする。 この場合において、相手が強度のストレスによる精神疾患に罹患したときは量定を加重する。 (注)処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考 慮の上判断するものとする。 2.公金公物取扱い関係 (1)横領・窃取 公金又は公物を横領した職員及び公金又は公物を窃取した職員は、免職とする。 (2)詐取 人を欺いて公金又は公物を交付させた職員は、免職とする。 (3)盗難 重大な過失により公金又は公物の盗難にあった職員は、戒告とする。 (4)紛失 公金又は公物を紛失した職員は、戒告とする。 (5)公物損壊 故意に職場において公物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。 (6)出火・爆発 ア.放火し、又は故意に職場において公物の出火、爆発を引き起こした職員は、免職とする。 イ.過失により職場において公物の出火、爆発を引き起こした職員は、減給又は戒告とする。 (7)給与の違法支払・不適正受給 故意に法令等に違反して給与を不正に支出した職員及び故意に届出を怠り、又は虚偽の届出をするなどして給与を不正に受給した職員は、減給又は戒告とする。 (8)公金公物処理不適正 公金又は公物の不適正な処理をした職員は、減給又は戒告とする。 3.公務外非行・信用失墜行為関係 (1)殺人・放火 人を殺した職員及び放火をした職員は、免職とする。 (2)傷害・暴行 他人に暴行を加えた職員は、減給又は戒告とする。この場合において、人の身体を傷害した職員は、停職、減給又は戒告とする。 (3)横領 他人の物(公金及び公物を除く。)を横領した職員は、免職又は停職とする。 (4)窃盗・強盗 ア.他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。 イ.暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。 (5)詐欺・恐喝 人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。 (6)賭博 ア.賭博をした職員は、減給又は戒告とする。 イ.常習として賭博をした職員は、免職又は停職とする。 (7)麻薬・覚せい剤等の所持又は使用 麻薬・覚せい剤等を所持又は使用した職員は、免職とする。 (8)危険ドラッグの所持又は使用 危険ドラッグ(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律又は東京都薬物の濫用防止に関する条例により指定されている薬物)を所持又は使用した職員は、免職又は停職とする。 (9)わいせつ行為等 ア.強制わいせつ 暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした職員は、免職とする。 イ.淫行 18歳未満の者に対して、淫行をした職員は、免職又は停職とする。 ウ.児童買春 18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与 し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職とする。 エ.痴漢行為 公共の乗り物等において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。 オ.その他のわいせつな行為 法律や条例等に違反して盗撮、のぞき、児童ポルノの所持・提供等、その他のわいせつな行為を行った職員は、免職、停職、減給又は戒告とする。 (10)ストーカー行為 ストーカー行為をした職員は、免職、停職又は減給とする。 (11)器物損壊 故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。 (12)酩酊による粗野な言動等 酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。 4.交通事故・交通法規違反関係 (1)飲酒運転での交通事故(人身事故を伴うもの) ア.酒酔い運転で人を死亡させ、又は傷害を負わせた職員は、免職とする。 イ.酒気帯び運転で人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職とする。 ウ.酒気帯び運転で傷害を負わせた職員は、免職又は停職とする。この場合において事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職とする。 (2)飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの) ア.人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職とする。 イ.人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職とする。 (3)交通法規違反 ア.酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こしてその後の危険防止を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職とする。 イ.酒気帯び運転、著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、免職又は停職とする。 ウ.飲酒運転となることを知りながら、運転者に飲酒を勧めた職員、及び飲酒した者に運転を強要若しくは車を提供した職員、又は飲酒運転であることを知りながら同乗した職員は、免職、停職、又は減給とする。 (注)処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考慮の上判断するものとする。 5.監督責任関係 (1)指導監督不適正 部下職員が懲戒処分を受けた場合等で、管理監督者としての指導監督に適正を欠いていた職員は、減給又は戒告とする。 (2)非行の隠ぺい、黙認 部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、又は黙認した職員は、停職又は減給とする。 第3 内部通報及び告発関係 1.非違行為の事実を内部機関に通報した職員は、通報したことにより、いかなる不利益も受けないものとする。 2.非違行為の事実を、自ら発覚前に申し出た職員に対しては、懲戒処分の量定を軽減できるものとする。 3.職員が行った非違行為のうち、刑事事件に係る事案については、刑事訴訟法の定めるところにより告発又は告訴を行う。 第4 職員の賠償責任関係 職員が行った非違行為のうち、職員の賠償責任に係る事案については、地方自治法第243条の2の2の定めるところにより監査委員に対して監査を求める。 第5 職員の懲戒処分の公表基準 世田谷区長が地方公務員法に基づき、職員の懲戒処分を行った場合は、下記の基準により公表する。 1.公表基準 (1)職務遂行上の行為又はこれに関連する行為に係る全ての懲戒処分 (2)職務に関連しない行為に係る懲戒処分のうち、免職又は停職の処分を行った場合 (3)特に区民の関心の大きい事案又は社会に及ぼす影響の著しい事案 2.公表の例外 被害者が事件を公表しないよう求めるとき、又は公表により被害者が特定される可能性が大きいときなど、被害者の人権に十分配慮する必要がある場合は公表しない。 3.公表する内容 公表する内容は、原則として以下のとおりとする。 (1)発生年月日 (2)職種及び職層 (3)所属名(部名) (4)年齢及び性別 (5)事件概要 (6)処分内容 (7)処分年月日 ただし、収賄事件、詐欺又は横領事件等非行行為が重大であり、警察・報道機関等で所属、職名及び氏名等が公にされている場合、又は社会に及ぼす影響が大きい事案は、所属、職名及び氏名等を公表する場合がある。 4.公表時期及び方法 (1)懲戒処分を行った後に、速やかに公表する。 (2)公表は、資料提供及び区ホームページへの掲載により行う。