第8章 帰宅困難者対策 本章における対策の基本的考え方 帰宅困難者対策の基本的考え方 大規模な震災が発生した場合、多くの帰宅困難者が発生し、駅周辺や大規模集客施設など、区内において混乱が想定される。事業者や学校などにおいて、従業員や児童・生徒を職場や学校等に待機させ、一斉帰宅を抑制し混乱を防止する必要がある。また、帰宅困難者の搬送について、国や都を中心とした広域的な応援調整が必要となる。 本章では、地震が発生した場合における帰宅困難者についての対策を示すとともに、行政機関だけではなく区民、事業者、学校など社会全体で連携し取組みを進めることにより、駅周辺をはじめとした混乱の防止や帰宅困難者の安全な帰宅を実現することを目標とする。 ※帰宅困難者の定義「内閣府:大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン」より 【帰宅困難者】 地震発生時に外出している者のうち、近距離徒歩帰宅者(近距離を徒歩で帰宅する人) を除いた帰宅断念者(自宅が遠距離にあること等により帰宅できない人)と遠距離徒歩帰宅者(遠距離を徒歩で帰宅する人)。 【駅前滞留者】 特定の駅周辺における「滞留者」を指し、帰宅可能な近距離の徒歩帰宅者及びそれ以外 の帰宅困難者等。 第8章 帰宅困難者対策 第1節 現在の到達状況 1 首都直下地震帰宅困難者等対策協議会 都は、国と共に東日本大震災の教訓を踏まえ、首都圏自治体、鉄道・通信事業者、民間団体等からなる協議会を、平成23年9月に設置し、平成24年9月に最終報告及び各種ガイドラインを取りまとめた。 2 都帰宅困難者対策実施計画の策定 都は、平成24年11月に、帰宅困難者対策の事業方針や行政の支援策等を取りまとめた「東京都帰宅困難者対策実施計画」を策定した。 3 都帰宅困難者対策条例の施行 都は、平成25年4月に「東京都帰宅困難者対策条例」を施行し、帰宅困難者対策を総合的に推進している。 区は、都や関係機関と連携して、一斉帰宅駅周辺の混雑防止に努めるとともに、帰宅困難者が安全に帰宅できるよう帰宅者への支援に努めている。 4 東日本大震災時の状況 東日本大震災では、交通機関等の運行停止により、通勤、通学、買い物客等多くの帰宅困難者が発生した。東日本大震災では、区内幹線道路に帰宅困難者が大量に発生したため、区は緊急的な措置として、区立の集会施設などを24箇所開放した。 5 一時滞在施設の確保 都は、都立施設200箇所を一時滞在施設(約7万人分)として指定し、備蓄品の配備を行うとともに、都と一時滞在施設間の情報連絡体制の整備等を行った。また、区内において「一時滞在施設」(7箇所)を指定した。 区は、帰宅困難者の受入れに協力できる民間事業者と協定を締結し、3箇所の一時滞在施設を確保した。 *帰宅困難者のための支援施設、「一時滞在施設」一覧〔資料編資料第57・P137〕 6 帰宅困難者支援施設の指定 区は、東日本大震災を踏まえ、駅や幹線道路に近い区民施設11箇所及び協定締結施設1箇所を、「帰宅困難者支援施設」として選定している(令和2年4月現在)。帰宅困難者支援施設では、飲料水やトイレ、情報などを提供する。 *帰宅困難者支援施設一覧〔資料編資料第58・P138〕 7 帰宅支援ステーションの確保 都は、混乱収拾後の帰宅支援のため、災害時帰宅支援ステーションを10,752箇所確保した((令和2年4月現在)。災害時帰宅支援ステーションでは、可能な範囲で水道水、トイレ、地図等による道路情報、ラジオ等で知り得た通行可能な道路に関する情報などを提供する。 *災害時帰宅支援ステーション一覧〔資料編資料第59・P139〕 8 帰宅困難者支援の取組み 【帰宅困難者対策】 平成26年6月二子玉川駅周辺で、SNS活用により、帰宅困難者対策訓練を実施した。 二子玉川駅周辺では、平成27年度から、駅周辺事業者等による駅前滞留者対策の検討を行ってきた。平成29年1月には連絡会が発足し、定期的に情報共有等を行っている。 第2節 課題 【被害想定(東京湾北部地震)】※都内での想定 *図表省略 1 都帰宅困難者対策条例に基づく取組みの周知徹底における課題 都帰宅困難者対策条例で規定した内容について、区民、事業者、学校などにおいても周知を図り、従業員等の施設内待機に係る計画の作成や3日間の水・食料等の備蓄を行うことが必要である。 2 帰宅困難者への情報通信体制整備に関する課題 東日本大震災では、通信事業者の安否確認に関するツールは十分に活用されたとは言い難く、行政と民間が連携して帰宅困難者に対する情報提供に向けた体制を整備する必要がある。 3 一時滞在施設等に関する課題 被害想定では、行き場のない帰宅困難者が多数発生すると想定されており、都や区や関係団体が連携し、滞在を支援する施設の確保及び体制の充実が必要である。 帰宅困難者の円滑な支援を行うため、国・都と情報共有について連携した対応を行っていく仕組みが必要である。 帰宅困難者となる人々に対して一時滞在施設、帰宅困難者支援施設及び災害時帰宅支援ステーションを周知する必要がある。 大量の帰宅困難者が殺到することが想定される主要駅周辺地域等における対策が必要である。 4 帰宅支援に関する課題 混乱収拾後の、代替交通機関による帰宅困難者の搬送体制や、徒歩帰宅者をサポートする災害時帰宅支援施策などの支援体制の充実が必要である。 また、東日本大震災の教訓を踏まえて、関係団体が事前の役割分担の下、連携・協力する体制を推進する必要がある。 さらに、新BOP、区立・私立保育園、児童館、私立幼稚園、一時預かり事業実施施設における児童、生徒等の保護策を充実させる必要がある。 *図表省略 第3節 対策の方向性 1 組織の力の活用 「組織は組織で対応する」ことを帰宅困難者対策の基本原則とする。すなわち、企業、学校等組織のあるところは、発災時には、組織の責任において、安否確認や交通情報等の収集を行い、災害の状況を十分に見極めた上で、従業員や顧客等の扱いを検討し、帰宅する者については安全確保の観点に留意して、一時にターミナル駅等に殺到することがないよう、一斉帰宅の抑制を行う。 2 役割分担の明確化 帰宅困難者対策は、多岐にわたる分野に課題が及んでおり、個々の対応には限界がある。このため、この課題に関するすべての機関と事業所や帰宅困難者自身の責務と役割を明確にし、分担して的確に対策を実施するものとする。 3 相互連携体制の構築 多岐にわたる分野に課題が及んでおり、行政(国、都、周辺自治体)、事業所、防災関係機関及び関係機関が、相互に連携・協力する仕組みづくりを進め、発災時における交通関係情報等の提供・交換、水や食料の確保、従業員等の保護、仮宿泊場所の確保等について、支援体制の構築を図っていくものとする。 4 都帰宅困難者対策条例に基づく取組みの周知徹底 都帰宅困難者対策条例で規定した内容を区民、事業者、学校等に周知していく(従業員の一斉帰宅抑制、3日分の水・食料等の備蓄、駅・大規模集客施設の利用者保護、学校等における児童・生徒等の安全確保など)。 5 情報通信基盤の整備 国、都、区市町村、事業者等の連携による、帰宅困難者に対する安否確認や情報提供のための基盤を整備する。 6 帰宅困難者の支援施設に関する課題 帰宅困難者が滞在する施設の確保に向けて、区関連施設を指定するとともに、国、都、事業者団体等と連携し、帰宅困難者を支援する施設の充実を目指す。 7 帰宅支援のための対策 帰宅支援の対策として、主要な沿線沿いの災害時帰宅支援施策の更なる充実、地域での取組みの推進を目指す。 区、事業者、就労者、区民が一体となった実践的な対策訓練等を継続的に実施する。 国・都と情報共有について連携した対応を検討していく。 二子玉川だけでなく、さらに三軒茶屋や下北沢などの主要駅においても帰宅困難者対策を進めていく。 帰宅困難者ハンドブック等を活用して、一時滞在施設及び帰宅困難者支援施設について周知を図っていく。 新BOP、区立・私立保育園、児童館、私立幼稚園、一時預かり事業実施施設における児童、生徒等の保護策を充実させていく。 第4節 到達目標 1 事業所における帰宅困難者対策の強化 都帰宅困難者対策条例に基づき、都内の事業所は、一斉帰宅を抑止し、従業員等の施設内待機のための計画を策定し、従業員等への周知や3日分の備蓄の確保などの取組みを行う。 2 災害時帰宅支援の充実 混乱収拾後に徒歩帰宅する帰宅困難者の支援及び駅周辺における混乱防止のため、都や関係諸機関と協力し、情報提供を図るなど災害時の帰宅困難者支援の充実を図る。 第5節 具体的な取組み 第1 予防対策 1 帰宅困難者対策条例に基づく取組みの周知徹底 2 帰宅困難者への情報通信体制整備 3 一時滞在施設の確保 4 徒歩帰宅支援のための体制整備 1 帰宅困難者対策条例に基づく取組みの周知徹底 (1)対策内容と役割分担 首都直下地震等への備えを万全とするためには、「自助」、「共助」、「公助」による総合的な対応が不可欠である。帰宅困難者等の発生による混乱を防止するための一斉帰宅の抑制などの条例の内容を周知する必要がある。 機関名 区(災対地域本部) 対策内容 都帰宅困難者対策条例に基づく取組みの区民・事業者への周知 駅ごとの駅前対策協議会等を設置・運営支援 駅周辺の滞留者の一時滞在場所となる誘導先を確保 機関名 区(災対統括部) 対策内容 都帰宅困難者対策条例に基づく取組みの区民・事業者への周知 機関名 区(災対土木部) 対策内容 鉄道・バス・タクシー等事業者との連携・対策 駅ごとの駅前対策協議会等を運営支援 機関名 警視庁・警察署 対策内容 所轄の警察署は、計画の策定、広報及び誘導要領等に関し、駅前対策協議会等に対して助言 駅前対策協議会等と連携した訓練の実施 地域版パートナーシップを活用した広報・啓発活動の推進 機関名 東京消防庁・消防署 対策内容 所轄の消防署は、駅前対策協議会等に対して指導・助言 消防計画・事業所防災計画の作成状況の確認、作成の指導 機関名 世田谷区商店街連合会 対策内容 団体及び会員企業向け啓発や対策の実施 団体における連携協力体制の整備 機関名 事業者 対策内容 企業等における従業員等の一斉帰宅の抑制のための施設内における体制整備や必要な備蓄の確保 外部の帰宅困難者を受入れるため10%程度余分の備蓄を検討 企業等における施設内待機計画の策定と従業員等への周知 機関名 集客施設及び駅の事業者 対策内容 集客施設及び駅における利用者保護のための施設内における体制整備や必要な備蓄の確保 集客施設及び駅における利用者保護計画の策定と従業員等への理解の促進 機関名 一時滞在施設 対策内容 帰宅困難者を受入れるための体制整備や必要な備蓄の確保 一時滞在施設開設の訓練 機関名 区民 対策内容 外出時の発災に備えた必要な準備 機関名 都総務局 対策内容 都帰宅困難者対策実施計画に基づく取組みの推進 都帰宅困難者対策条例の都民・事業者への普及啓発 都は、国とともに、首都圏自治体、鉄道・通信事業者、民間団体等からなる「首都直下地震帰宅困難者等対策連絡調整会議」を設置 機関名 都都市整備局 対策内容 都市開発の機会を捉え、従業員用の防災備蓄倉庫等の整備を促進 機関名 東京商工会議所、東京経営者協会、東京青年会議所 対策内容 団体及び会員企業向け啓発や対策の実施 団体における連携協力体制の整備 (2)詳細な取組み内容 都及び区は、帰宅困難者対策に関する対策全般について、都帰宅困難者対策実施計画に基づき、取組みを推進する。 ①都帰宅困難者対策条例に基づく取組みの周知徹底 都及び区は、都民、事業者、学校等、そして行政機関が取り組むべき基本的事項について定めた、都帰宅困難者対策条例の内容について、ホームページ、パンフレットの配布、説明会の実施等により普及啓発を図る。 都帰宅困難者対策条例で規定した内容を実施するための事業方針及び行政の支援策等を取りまとめた都帰宅困難者対策実施計画に基づく取組みを推進するとともに、区民や事業者等に周知していく。 帰宅困難者対策の必要性を訴求する動画の活用や従業員の一斉帰宅抑制に積極的に取り組む企業等を認定する制度などを通じ、対策に協力する都民・企業等の裾野拡大を図るとともに、災害時の助け合いの気運を醸成する。 都帰宅困難者対策条例の概要 企業等従業員の施設内待機の努力義務化 企業等従業員の3日分の備蓄(飲料水、食料等)の努力義務化 駅、大規模な集客施設等の利用者保護の努力義務化 学校等における児童・生徒等の安全確保の努力義務化 官民による安否確認と災害関連情報提供のための体制整備等 一時滞在施設の確保に向けた都、国、区市町村、民間事業者との連携協力 帰宅支援(災害時帰宅支援ステーションの確保に向けた連携協力等) *東京都帰宅困難者対策条例〔資料編資料第132・P329〕 ②事業者における施設内待機計画の策定 【実施主体】事業者 従業員等の施設内待機に係る計画の策定 事業者は、「事業所における帰宅困難者対策ガイドライン」を参考に、消防計画・事業所防災計画を定めておく。 その際、他の企業等との連携、行政機関との連携、地域における帰宅困難者等対策の取組みへの参加等についても可能な範囲において計画に明記する。 テナントビルの場合や入居者が複数存在する複合ビルの場合、あらかじめ役割分担を取り決める。 事業者は、計画を従業員等に周知する。 都及び区は、都市開発の機会を捉え、従業員用の防災備蓄倉庫等の整備の促進を図る。 備蓄 従業員等が企業等の施設内に一定期間待機するためには、必要な水、食料、毛布、簡易トイレ、衛生用品(トイレットペーパー等)、燃料(非常用発電機のための燃料)等をあらかじめ備蓄しておく必要がある。 発災後3日間は、救出・救助活動を優先する必要があるため、従業員等の一斉帰宅が救出・救助活動の妨げとならないよう、発災後3日間は、事業者が従業員等を施設内に待機させる必要がある。ただし、震災の影響の長期化に備え、3日分以上の備蓄についても検討していく。 事業者は、共助の観点から、外部の帰宅困難者のために、10%程度の量を余分に備蓄することも検討していく。 備蓄の考え方は、下記の「一斉帰宅抑制における従業員等の備蓄の考え方について」のとおりとする。 【「事業所における帰宅困難者対策ガイドライン」における一斉帰宅抑制における従業員等の備蓄の考え方について】 1 対象となる企業等 国、都、区市町村等の官公庁も含む全ての事業者 2 対象となる従業員等 雇用の形態(正規、非正規)を問わず、事業所内で勤務する全従業員 3 3日分の備蓄量の目安 水については、1人当たり1日3リットル、計9リットルとする。 主食については、1人当たり1日3食、計9食とする。 毛布については、1人当たり1枚とする。 その他の品目については、物資ごとに必要量を算定する。 4 備蓄品目の例示 (1)水:ペットボトル入り飲料水 (2)主食:アルファ化米、クラッカー、乾パン、カップ麺 ※ 水や食料の選択に当たっては、賞味期限に留意する必要がある。 (3)その他の物資(特に必要性が高いもの) 毛布やそれに類する保温シート 簡易トイレ、衛生用品(トイレットペーパー等) 敷物(ビニールシート等) 携帯ラジオ、懐中電灯、乾電池 救急医療薬品類 (備考) 1 上記品目に加えて、事業継続等の要素も加味して、企業ごとに必要な備蓄品を検討していくことが望ましい。(例)非常用発電機、燃料、工具類、調理器具(携帯用ガスコンロ、鍋等)、副食(缶詰等)、ヘルメット、軍手、自転車、地図 2 企業等だけでなく、従業員自らも備蓄に努める。 (例)非常用食品、ペットボトル入り飲料水、運動靴、常備薬、携帯電話用電源 施設の安全対策 事業者は、日頃から耐震診断・耐震改修やオフィスの家具類の転倒・落下・移動防止措置、事務所内のガラス飛散防止対策等に努める。 災害発生時の建物内の点検箇所をあらかじめ定めておくとともに、安全点検のためのチェックリストを作成する。 停電時の対応も含め、建物及び在館者の安全確保の方針について、消防計画・事業所防災計画で具体的な内容をあらかじめ定めておく。 高層ビルについては、高層階で大きな揺れの影響を受ける長周期地震動への対策を講じておく。 連絡手段の確保 事業者は、発災時における従業員等との連絡の手段・手順をあらかじめ定めておくとともに、従業員等が安心して施設内に待機できるよう、その家族等との安否確認手段を従業員等へ周知する必要がある。 (ア)外出する従業員等の所在確認 従業員等は、訪問先の事前連絡、訪問先変更の連絡を行うことなどにより発災時に企業等が、従業員等の所在を把握できるような対応に努める。 また、被災した場所から会社もしくは自宅の距離に応じて従業員等が取るべき対応を検討しておくことが望ましい。 (イ)安否確認手段 安否確認については、電話の輻輳や停電等の被害を想定し、それぞれの通信手段網の特性を踏まえて複数の手段を使うことが望ましい。 帰宅ルールの設定 (ア)帰宅時間が集中しないための対応 日頃から、従業員等の居住地、家族の事情などの把握に努め、帰宅者の順序をあらかじめ定めておく。この際には、帰宅する方面に応じて順序を考慮することも検討する。 (イ)帰宅状況の把握 従業員等が安全に帰宅したことをメール等の方法により確認する。 また、従業員等を班編成し、帰宅させる場合には、その班ごとにあらかじめ連絡要員を指定し、定期的に企業等と所在確認することなども検討する。 訓練 事業者は、地震を想定して自衛消防訓練等を定期的に実施する際に、併せて施設内待機に関する手順等についても確認し、必要な場合は改善を行う。 事業者は、年1回以上の訓練を定期的に実施し、当該訓練の結果について検証するとともに、必要に応じて施設内待機に係る計画等に反映させる。 関係団体との連携 事業者や関係団体は、ポスター・パンフレット等の配布や講習会等の開催及び企業備蓄の啓発などを行う。また、都や区、地域と連携し、団体及び会員企業向け対策を実施する。地域住民と会員企業との連携・協力について、会員企業に対し、啓発を行うとともに、団体において連携協力体制を整備する。 ③駅前滞留者対策ガイドライン 内閣府で取りまとめた「駅前滞留者対策ガイドライン(平成24年9月)」においては、関係団体が連携し、駅ごとに、都、区、所轄の警察署・消防署、鉄道事業者、駅周辺事業者等を構成員とする、協議会等を設置し、災害時の各機関の役割や地域の行動ルール等を定めるとしている。 【駅前対策協議会(仮称)の主な所掌事項】 滞留者の誘導方法と役割分担 誘導場所の選定 誘導計画、マニュアルの策定 駅前対策訓練の実施 災害時における情報の共有化と連絡体制の確立 帰宅困難者の駅舎での待機の実施と体制の整備 【地域の行動ルール】 駅前対策協議会(仮称)では、首都直下地震等発生時の駅周辺の滞留者の安全確保と混乱防止に向けた「地域の行動ルール」を策定する。基本となる「地域の行動ルール」は以下のとおりである。 組織は組織で対応する(自助) 地域内の事業所、施設、学校等は、自らの所属する組織単位ごとに、従業員、来所者、学生等に対する取組みを行う。 地域が連携して対応する(共助) 駅前対策協議会(仮称)が中心となり、地域の事業者等と連携した取組みを行う。 公的機関は地域をサポートする(公助) 区が中心となって、都、国と連携・協力して、地域の対応を支援する。 【駅前対策協議会(仮称)による取組み】 駅前対策協議会(仮称)では、平時より参加団体の役割分担を定め、現地本部を中心とした連絡体制を構築する必要がある。図上訓練や情報連絡訓練などで検証し、地域の行動ルールに反映させる。 電話の輻輳や停電等の影響を受けないように、参加団体間の情報共有のための連絡体制を計画的に整備する。 駅前対策協議会(仮称)が所在する駅周辺の地域特性を踏まえ、情報提供手段について検討する。あらかじめ、情報収集や駅前への情報提供について、駅前対策協議会(仮称)で参加団体の役割分担や手順を決めておく。 駅前対策協議会(仮称)は、区が行う一時滞在施設の確保に協力する。 災害時における避難経路等の安全点検等を平時から実施し、地域の防災力を高めるよう取り組むことが重要である。 都と区は、都内の大規模ターミナル駅周辺など、多くの帰宅困難者が発生すると想定される地域については、重点的に施策を行っていくことも検討する。この際、駅前対策協議会(仮称)と連携し、地域内の一定規模の施設に対し、区と一時滞在施設の協定を結ぶよう働きかけるとともに、地域への来訪者に、自助の取組みを促すよう普及啓発していく。 ④集客施設及び駅等の利用者保護 【実施主体】事業者、学校等 利用者保護に係る計画の策定 事業者は、内閣府で取りまとめた「大規模な集客施設や駅等における利用者保護ガイドライン(平成24年9月)」及び都帰宅困難者対策実施計画を参考に、消防計画・事業所防災計画において、利用者の保護に係る計画をあらかじめ定めておく。 利用者保護の対応方法の検討 事業者は、利用者の安全確保のため、発災直後の施設内待機や安全な場所への誘導や案内手順について、あらかじめ検討しておく。 この際、必要と考えられる備蓄品の確保や必要とする人への提供方法、要配慮者(高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦)通学中の小中学生や急病人への対応等の具体的な内容についても検討しておく。 要配慮者、通学の小中学生への対応 事業者は、施設の特性や状況に応じ、必要となる物資を検討してあらかじめ備えておくこととする。例えば、車椅子や救護用担架、段差解消板等を備えておく。また、可能な限り優先的に待機スペースや物資が提供されるように配慮する。 外国人への対応 誘導の案内や情報提供などについて配慮する。例えば、英語、中国語等の誘導案内板による対応や、外国人でも分かりやすいピクトグラム・「やさしい日本語」の活用を検討する。 施設の安全対策 事業者は、日頃から耐震診断・耐震改修や家具類の転倒・落下・移動防止対策、施設内のガラス飛散防止対策等に努める。なお、高層ビルについては、高層階で大きな揺れの影響を受ける長周期地震動への対策を講じておく。 事業者が管理する施設に隣接して、道路や通路、広場など、自治体等が管理所有する施設がある場合は、これらの管理者と連携し、案内又は誘導に必要な経路の確保や経路上の被災時の安全確保等について確認するなど、状況に応じた施設の安全確保に努める。具体的な対象施設として、駅及び駅に接続する自治体管理の自由通路などが考えられる。 事業者は、施設の安全点検のためのチェックリストを作成する。その際、事業者は、利用者が待機するための施設内の安全な待機場所リストもあらかじめ計画しておく。 備蓄 各事業者は、一時滞在施設の開設が遅れることも視野に入れ、施設の特性や実情に応じて、当該施設において利用者の保護に必要な水や毛布等を備えておく。 訓練 各事業者は、建物所有者、施設管理者、テナント事業者等と相互に協力し、年1回以上の訓練を通じて、利用者保護の手順等について確認し、必要な場合は改善を行う。 また、事業者は、訓練の結果を検証し、計画等に反映させる。 訓練に当たっては、停電や通信手段の断絶など、発災時の様々な状況を想定した利用者への情報提供に関する訓練を行う。 区、駅、駅周辺事業者、公共施設の管理者などは、混乱の防止や安全確保、一斉帰宅抑制、安否確認、一時滞在施設の開設・誘導、帰宅支援など帰宅困難者対策訓練の実施に努める。 学校等における児童・生徒等の安全確保 区立小中学校、保育園、通所福祉施設において、施設内での長時間にわたる待機に備えた対応マニュアル等の作成や飲料水、非常食、毛布などの物資の備蓄を行う。 学校等は、学校危機管理マニュアル等に基づくとともに、必要に応じ災害時の児童生徒の安否確認ハンドブック等を参考にし、保護者等との連絡体制を平時より整備するとともに、発災時には、児童・生徒等の学校内又は他の安全な場所での待機、その他児童・生徒等の安全確保のために必要な措置を行う。 区民における準備 外出時の災害に備え、家族その他の緊急連絡を要する者との連絡手段の確保、待機又は避難する場所、徒歩による帰宅経路の確認、歩きやすい靴などその他必要な準備をする。   2 帰宅困難者への情報通信体制整備 (1)対策内容と役割分担 機関名 区(災対財政・広報部) 対策内容 事業者及び帰宅困難者への情報提供 機関名 区(災対統括部) 対策内容 事業者及び帰宅困難者への情報提供ツールの周知 機関名 警視庁・警察署 対策内容 適切な情報連絡や安全な避難誘導の指示を伝えるための広報用資器材の整備 機関名 通信事業者 対策内容 事業者及び帰宅困難者が情報提供を受けられる体制の整備 災害用伝言ダイヤル(171)、災害用伝言板(web171)等の災害用安否確認サービスの普及啓発、防災訓練等における利用体験の実施 機関名 都総務局 対策内容 事業者及び帰宅困難者が情報提供を受けられる体制整備及び情報提供ツールの周知、ガイドライン等の作成 都のホームページにおける帰宅困難者向けポータルサイト等の設置・運営 (2)詳細な取組み内容 【実施主体】都、区、事業者等 都及び区は、震災時の帰宅困難者等に対する安否の確認及び災害関連情報等の提供を行うため、通信事業者と連携して、情報通信基盤の整備及び災害関連情報等を提供するための体制を構築する。 帰宅困難者等への円滑な情報提供を確保するため、関係機関の役割分担・連携要領、情報提供内容について、内閣府が定めた帰宅困難者等への情報提供ガイドラインを基に、国・都・区・事業者等は取組みを進めていく。 3 一時滞在施設の確保 (1)対策内容と役割分担 駅周辺の滞留者や路上等の屋外で被災した外出者などは、帰宅が可能となるまでの間に待機する場所がない場合が多い。そのため、このような帰宅困難者を一時的に受入れるための施設(一時滞在施設)を確保する。 機関名 区(災対地域本部) 対策内容 帰宅困難者支援施設の選定、運営体制の構築 一時滞在施設の周知・運営の具体化 事業者や関係団体と、一時滞在施設の提供に関する協定締結 機関名 区(災対統括部) 対策内容 一時滞在施設の周知 事業者や関係団体と、一時滞在施設の提供に関する協定締結 機関名 事業者団体 対策内容 加盟事業者に対して、一時滞在施設確保の協力を依頼 機関名 事業者 対策内容 事業所建物や事業所周辺の被災状況を確認の上、従業員等の安全を確保するため、従業員等を一定期間事業所内に留めておくよう努める。 帰宅困難者の受入れにできる限り協力 機関名 一時滞在施設となる施設 対策内容 行政機関と連携して、帰宅困難者の受入れをするための体制を整備 機関名 区 対策内容 区民等に対して一時滞在施設について普及啓発 一時滞在施設の名称や所在地等を、各防災関係機関へ周知 機関名 国、都総務局 対策内容 一時滞在施設の運営に係る費用について、国庫補填の対象となる災害救助法の考え方(適用可能性や費用負担)について整理 民間施設の協力を得るために、災害救助基金の活用等の必要な仕組みや補助等の支援策について検討し、地域の実情に応じて支援策を具体化 機関名 都総務局 対策内容 都立施設及び関係機関の施設を一時滞在施設として指定し、周知 国、区市町村、事業者団体に対して、一時滞在施設の確保について協力を要請 都帰宅困難者対策実施計画に基づく対策を推進 機関名 都都市整備局 対策内容 都市開発の機を捉え、一時滞在施設の整備を促進 (2)詳細な取組み内容 ①帰宅困難者支援施設の選定 【実施主体】区災対地域本部、区災対統括部 東日本大震災を踏まえ、区として帰宅困難者支援施設を選定し、駅や幹線道路に近い区民施設12箇所を、帰宅困難者が発生した場合の支援場所として活用することとした。 帰宅困難者支援施設では、飲料水やトイレ、情報などを提供する。 *帰宅困難者支援施設一覧〔資料編資料第58・P138〕 〔徒歩帰宅者に対する支援〕 機関名 区 内容  帰宅困難者支援施設に指定した11箇所の施設では、飲料水やトイレ、情報などを提供する。 区の帰宅困難者支援施設(11箇所)は以下のとおりである。 太子堂区民センター、上馬地区会館、経堂地区会館、北沢総合支所、新代田区民センター、深沢区民センター、桜新町区民集会所、砧区民会館成城ホール、大蔵第二運動場ロビー、烏山区民センター、上北沢区民センター 区が協定締結した帰宅困難者支援施設(1箇所)は以下のとおりである。 世田谷郵便局 機関名 都 内容  帰宅支援ステーションに指定した都立学校等で水、トイレ、休息の場の提供等を行う、また、コンビニエンスストアやガソリンスタンド、ファミリーレストラン等と帰宅困難者支援に関する協定を締結し、飲料水、トイレ等の提供を要請する。   機関名 警視庁・警察署 内容  避難道路への警察官の配置や、交通規制資器材資機材を活用した誘導路の確保等 機関名 東京電力グループ 内容  電力供給の早期復旧及び帰宅者支援のための施設の電力安定供給の確保 ②一時滞在施設の確保 【実施主体】区災対地域本部、区災対統括部、都 地元の事業者等に協力を求め、必要に応じて、大規模集客施設(ホール、映画館、学校など)や民間施設について、一時滞在施設の提供に関する協定を締結する。 【施設の選定基準】 鉄道駅や幹線道路からのアクセスが良いこと 鉄道については、主要駅からのアクセスを考慮する。 幹線道路からのアクセスを考慮する。 以下の位置・設備等施設状況を考慮して選定する。 鉄道駅もしくは幹線道路から無理なく誘導できるか 食料・飲料水・防寒用品の備蓄場所が確保されているか 一時的な休憩ができるスペースを確保できるか 既存設備を活用して災害・交通・気象情報を提供できるか 【避難所との分離設置】 避難所は原則として周辺住民の避難を想定しているため、帰宅困難者の滞在施設は、避難所以外の公共施設に単独設置する。 【区役所本庁舎の取扱い】 区役所については、次の点を踏まえ区本部の機能に特化することを優先する。 区役所本庁舎は認知度において、一時滞在施設として帰宅困難者や避難者が集まってくることが予想される。 区役所は、発災時に多数の関係機関との連絡調整や立ち入りが想定され、応急対策・復旧・復興のための拠点施設になる。 そのため、本庁舎に訪れた帰宅困難者に対しては一時滞在施設又は帰宅困難者支援施設を、避難者については避難所を案内する。 ③都との連携 【実施主体】都 区は、都が「一時滞在施設の確保及び運営のガイドライン」に基づいて実施する取組みについて協力する。 都は、広域的な立場から、国、区市町村、事業者団体に対して、一時滞在施設の確保について協力を求める。国が所有・管理する施設については、区市町村又は都からの要請を受け、又は自主的に国が一時滞在施設として帰宅困難者等を受入れる。 都は、都市開発の機会を捉え、大規模な新規の民間建築物に対して、一時滞在施設の確保に向けた環境の整備を促進する。 都は、鉄道、幹線道路沿線にある公的施設から、都が実施する災害時帰宅支援ステーション及び一時滞在施設の連携を踏まえ、選定基準に基づいて施設を指定している。 *「一時滞在施設の確保及び運営のガイドライン」における一時滞在施設の考え方 〔資料編資料第60・P141〕 *「一時滞在施設の確保及び運営のガイドライン」における一時滞在施設の運営の準備(平常時)〔資料編資料第61・P143〕 ④事業者における対策 【実施主体】事業者、学校、マンション開発者、マンション管理者等 事業者、学校、マンション開発者、マンション管理者等は、区や都の要請に応じて、管理する施設を一時滞在施設として提供することを検討し、受入可能な場合は、区と協定を締結する。 事業者団体は、加盟事業者に対して、それぞれが管理する施設を一時滞在施設として提供することについて協力依頼を行う。 一時滞在施設として確保した公立施設の名称や所在地等は、原則として公表する。 民間施設等で施設管理者側が非公表を希望した場合でも、発災時は公表を前提とし、発災時は、地域における施設への誘導方法などと整合性を図ることにより開示する。あわせて行政機関や駅前対策協議会等の関係機関において情報共有する。 「一時滞在施設の確保及び運営のガイドライン」を踏まえ、都が策定した「都立施設を活用した一時滞在施設の運営マニュアル」に基づき、都立の一時滞在施設は、災害時に帰宅困難者を受入れるための体制を整備する。 要配慮者等への対応を図るため、一時滞在施設の待機スペースの一部を要配慮者への優先スペースとすることや、外国人にも分かりやすいピクトグラム等の活用、「やさしい日本語」、英語、中国語等の誘導案内板等による対応を検討するなど受け入れのための態勢を整備する。 【実施主体】都 都は、地域の実情に応じて、民間の一時滞在施設へ備蓄等の支援などを、都帰宅困難者対策実施計画に基づき実施する。   4 徒歩帰宅支援のための体制整備 (1)対策内容と役割分担 混乱収拾後、帰宅困難者の帰宅を支援するため、都や区、関係機関等が連携して、鉄道運行状況や帰宅道路に関する情報の提供、徒歩帰宅者に対する沿道支援、代替輸送手段の確保等の体制を構築する。 機関名 区(災対地域本部) 対策内容 帰宅困難者等への情報提供体制を整備し、区民・事業者に周知 帰宅支援対象道路の沿道において帰宅支援を行う体制を整備 機関名 区(災対保健福祉部) 対策内容 帰宅困難児童等の保護・対応 機関名 区(災対教育部) 対策内容 帰宅困難児童等の保護・対応 機関名 区(災対統括部) 対策内容 帰宅困難者等への情報提供を区民・事業者に周知 機関名 事業者 対策内容 災害時帰宅支援ステーションの意義について普及啓発 協定等を締結し、災害時帰宅支援施設を運営できる体制を整備 帰宅ルールを策定 機関名 通信事業者 対策内容 事業者及び帰宅困難者が情報提供を受けられる体制の整備 災害用伝言ダイヤル(171)、災害用伝言板(web171)等の災害用安否確認サービスの普及啓発、防災訓練等における利用体験の実施 機関名 都総務局 対策内容 帰宅困難者等への情報提供体制を整備し、都民・事業者に周知 災害時帰宅支援ステーションの拡充を図り、都民・事業者に周知 全都立学校(島しょを除く)を、災害時帰宅支援ステーションとして指定し、指定された施設への連絡手段を確保 災害時帰宅支援ステーションの運営に関する事業者用ハンドブックを配布 沿道の民間施設等について、新たな災害時帰宅支援ステーションとして位置付けることを検討 (2)詳細な取組み内容 ①災害時帰宅支援ステーションによる支援 【実施主体】都、事業者、都立高校 事業者、都立高校は、都が実施する次の取組みに協力、連携する。 都は、全都立学校(島しょを除く)を災害時帰宅支援ステーションに指定し、指定された都立学校への連絡手段を確保する。 また、沿道の民間施設等と協定を締結して災害時帰宅支援ステーションの拡大を図る。 都は、災害時帰宅支援ステーションにおける帰宅支援が円滑に行われるよう、運営に関するハンドブックを事業者に配布する。 【実施主体】事業者 事業者は、災害時帰宅支援ステーションの意義について普及啓発するとともに、自治体と協定等を締結し、災害時帰宅支援ステーションを運営する。 ②徒歩帰宅訓練の実施 【実施主体】行政機関(都、区等)、通信事業者、交通事業者、事業者、学校等 行政機関、通信・交通事業者、事業者、学校等は、連携して徒歩帰宅訓練等(引き取り訓練を含む)を実施し、帰宅困難者支援施設や企業等の帰宅ルール並びに備蓄等の検証など、徒歩帰宅支援の充実を図る。 ③帰宅支援対象道路 【実施主体】都 都は、帰宅支援対象道路として指定した16路線について都民へ周知を図る。   【世田谷区内の帰宅支援対象道路(5路線)】 世田谷区内では、「玉川通り」、「甲州街道」、「井の頭通り」、「環状7号線」、「環状8号線」の5路線が帰宅支援対象道路に指定されている。 区分①放射状路線 路線 第一京浜(日本橋~六郷橋) 第二京浜(日本橋元標~多摩川大橋) 中原街道(中原口~丸子橋) 玉川通り(三宅坂~二子橋) 甲州街道(桜田門~八王子) 青梅街道・新青梅街道(新宿大ガード西~箱根ヶ崎) 川越街道(本郷3~東玉橋) 中山道 (宝町3~戸田橋) 北本通り(王子駅~新荒川大橋) 日光街道(日本橋元標~水神橋) 水戸街道(本町3~新葛飾橋・金町~葛飾橋) 蔵前橋通り(湯島1~市川橋) 井の頭通り(大原2~関前) 五日市街道(関前~福生) 区分②環状路線 路線   環状7号線 環状8号線 *図表省略 (都帰宅困難者対策実施計画より) 第2 応急対策 1 駅等の混乱防止策 2 事業所等における帰宅困難者対策 1 駅等の混乱防止策 震災時には、列車の運転を見合わせることなどから、駅を含めた駅周辺等においては、帰宅しようとする乗客などが殺到し、混乱が生じる可能性があるが、行政の「公助」に限界があるため、駅周辺の関係者が行政と連携し、混乱防止を図る。 1-1 駅周辺の混乱防止 (1)対策内容と役割分担 機関名 区(災対地域本部) 対策内容 駅周辺の滞留者の誘導先を確保 滞留者に対する情報提供、帰宅困難者等の誘導 機関名 警視庁・警察署 対策内容 所轄の警察署は、区等に対して、駅周辺の混乱防止対策に係る支援を実施 機関名 東京消防庁・消防署 対策内容 所轄の消防署は、区等に対して、災害情報の提供等、駅周辺の二次災害発生防止に係る支援を実施 機関名 事業者等 対策内容 施設内に待機している利用者を保護し、情報を提供 関係機関と連携し、一時滞在施設への誘導を実施 機関名 商店街 対策内容 炊き出し等の実施 機関名 通信事業者 対策内容 事業者及び帰宅困難者に対し、情報を提供 災害用伝言ダイヤル(171)、災害用伝言板(web171)等の利用を周知 機関名 都総務局 対策内容 都本部内に、帰宅困難者対策部門を設置 帰宅困難者に対し、区市町村や報道機関等と連携して、一時滞在施設の開設状況等について情報を提供 機関名 報道機関 対策内容 行政機関や交通機関等からの情報について、都民・事業者に提供 1-2 集客施設及び駅等における利用者保護 (1)対策内容と役割分担 機関名 区(災対地域本部) 対策内容 事業者及び一時滞在施設が必要な情報を得られる体制を構築 集客施設及び駅等において、利用者を一時滞在施設等へ誘導 機関名 区(災対財政・広報部) 対策内容 報道機関や通信事業者等と連携協力して、事業者及び一時滞在施設が必要な情報を得られる体制を構築 機関名 集客施設及び駅等の事業者 対策内容 集客施設及び駅等において、利用者を保護 駅前滞留者を一時滞在施設等へ安全に案内又は誘導 機関名 鉄道事業者 対策内容 駅利用者に必要な情報を提供 機関名 国、都総務局 対策内容 報道機関や通信事業者等と連携協力して、事業者及び一時滞在施設が必要な情報を得られる仕組みを構築 集客施設及び駅等において、利用者を保護 駅前を滞留者一時滞在施設等へ安全に案内又は誘導   (2)業務手順 *図表省略   (3)詳細な取組み内容 【実施主体】集客施設及び駅等の事業者 施設の安全性の確認 施設の安全の確認 事業者は、利用者及び自らが管理する施設の安全を確認する。 施設の周囲の安全の確認 国や都の一斉帰宅抑制の呼びかけ等を受け、行政機関や関係機関から提供される災害関連情報等により、火災の状況等、周辺の安全を確認する。 利用者の保護 安全を確認できた場合、利用者を施設内の安全な場所で保護する。なお、各施設管理者による自発的な対応を妨げるものではない。 一時滞在施設への誘導等 事業者等による案内又は誘導 保護した利用者については、区市町村や関係機関との連携の下、事業者や駅前対策協議会等が一時滞在施設へ案内又は誘導することを原則とする。 一時滞在施設への案内又は誘導が困難な場合 災害発生時、一時滞在施設への案内又は誘導が困難な場合においては、各事業者は、区市町村や関係機関と連携し、施設の特性や状況に応じ可能な限り待機中の施設又は隣接施設の協力を得て、当該施設が、帰宅が可能になるまでの間、一時的に受入れる一時滞在施設となることも想定する。 さらに、利用者を保護した施設が、一時滞在施設となる場合は、施設の安全性や確保可能なスペース等を勘案し、外部の帰宅困難者等の受入れについても検討する。 建物や周辺が安全でないために、施設内保護ができない場合の対応 建物や周辺が安全でないために、施設内で利用者を保護できない場合は、区や関係機関との連携の下、事業者が一時滞在施設等へ利用者を案内又は誘導することを原則とする。 要配慮者への対応 利用者保護に当たって、事業者は、区や関係機関とも連携し、あらかじめ定めた手順等に基づき、要配慮者のニーズに対応する。 利用者に対する情報提供 事業者は、災害関連情報や公共交通機関の運行情報等を行政機関や関係機関から入手し、施設内で待機している利用者に情報提供する。 例えば、施設に備わる電子掲示板や放送設備を活用するなど、施設の特性や状況に応じて多様な手段を用いることにより情報提供を行う。 【実施主体】鉄道事業者 駅利用者に対し、構内放送や駅周辺の地図を配布するなど、駅から誘導場所までの情報を提供する。 駅利用者に対し、列車や代替輸送などの運行情報を提供する。  1-3 一時滞在施設の開設・帰宅困難者の受入れ (1)対策内容と役割分担 機関名 一時滞在施設となる施設 対策内容 施設管理者が一時滞在施設を開設し、帰宅困難者を受入れ (2)業務手順 *図表省略 (3)詳細な取組み内容 【実施主体】施設管理者 一時滞在施設の開設 施設管理者は、発災時の国や都の一斉帰宅抑制の呼びかけ、区からの要請等により、当該施設の待機場所や施設入口などの安全確認及び行政機関や関係機関から提供される災害関連情報等による周辺状況を確認の上、一時滞在施設を開設する。 なお、施設管理者による自主的な判断による開設も妨げるものではない。 また、施設管理者は、当該施設が一時滞在施設としてあらかじめ公表されている場合においては、帰宅困難者等による混乱を回避するためにも、施設の入口やその他の目に触れやすい場所に、一時滞在施設として開設できない旨の掲示を行う。 一時滞在施設の運営の流れ 災害発生からの経過時間に応じて、目標となる一時滞在施設の運営の流れは、おおむね以下のとおりとなる。 発災直後から一時滞在施設開設まで(発災直後からおおむね6時間後まで) 建物内の被害状況の把握や施設の安全性の確認 施設内の受入スペースや女性優先スペース、立入禁止区域の設定 従業員等による運営組織の編成、備蓄や設備の確認などの運営準備 施設利用案内の掲示等 施設の入口や施設内の目に触れる所に下記の趣旨の文章を掲示する。 「共助の観点から管理者が自主的に施設を開放していること。」 「一時滞在施設は、災害時という特殊な状況下で開設されるため、施設管理者の指示に従うとともに、施設管理者が責任を負えない場合もあることを理解した上で、施設内において行動すること。」 「余震等の影響で建物の安全性や周辺状況に変化が生じた場合、施設管理者の判断により、急きょ閉鎖する可能性があること」 「負傷者の治療等、施設において対応できない事項」等 電話、災害時用公衆電話(特設公衆電話)、FAX、Wi-Fi等の通信手段の確保 区市町村等への一時滞在施設の開設報告 帰宅困難者の受入等(おおむね12時間後まで) 帰宅困難者の受入開始 簡易トイレ使用区域の設定、医療救護所の設置などの保健衛生活動 計画的な備蓄の配布など、水、食料等の供給 し尿処理・ごみ処理のルールの確立 テレビ、ラジオ、インターネット等での情報の収集及び受入者へ伝達 受入可能人数を超過した場合の区市町村等への報告 運営体制の強化等(おおむね1日後から3日後まで) 受入者も含めた施設の運営 公共交通機関の運行再開、搬送手段に関する情報等、帰宅支援情報の提供 一時滞在施設の閉設(おおむね4日後以降) 一時滞在施設閉設の判断 帰宅支援情報の提供による受入者の帰宅誘導   2 事業所等における帰宅困難者対策 発災時には、帰宅困難者の発生を抑制するため、企業等における従業員の施設内待機や学校等における児童・生徒等の保護を図ることが必要であり、その対応について定める。 (1)対策内容と役割分担 機関名 区(災対地域本部) 対策内容 報道機関や通信事業者等と連携協力して、事業所が必要な情報を得られるよう支援 機関名 区(災対財政・広報部) 対策内容 報道機関や通信事業者等と連携協力して、事業所が必要な情報を周知 機関名 事業者 対策内容 従業員等を施設内に一定期間待機 機関名 学校等 対策内容 児童・生徒等を保護し、保護者へ連絡 機関名 国、都総務局 対策内容 報道機関や通信事業者等と連携協力して、事業所が必要な情報を得られる仕組みを構築 機関名 都総務局 対策内容 事業者に対し、従業員、顧客に対する安全確保に努めるよう要請 事業者団体を通じて、事業者へ基本原則の周知徹底 機関名 東京商工会議所、東京経営者協会、東京青年会議所 対策内容 加盟事業者に対して、基本原則の周知徹底を要請   (2)業務手順 *図表省略   (3)詳細な取組み内容 ①事業所による従業員等の施設内待機 【実施主体】事業者 従業員等がチェックリストにより施設の安全を確認する。 国や都の一斉帰宅抑制の呼びかけ等を受けた後は、災害関連情報等を入手し、周辺の火災状況等を確認し、従業員等を施設内又は他の安全な場所に待機させる。なお、各事業所の自主的な判断による待機等の行動も妨げない。 来所者についても、従業員等に準じて、施設内又は他の安全な場所で待機させるようにする。 ②施設内に待機できない場合の対応 【実施主体】事業者 建物や周辺が安全でない場合は、事業所は、行政機関からの一時滞在施設、避難場所等の開設情報等を基に、一時滞在施設等へ従業員等を誘導する。なお、誘導先は地域の事情によるものとする。 また、テナントビルの場合は、施設管理者の指示に従うものとする。 ③防災活動への参加 【実施主体】事業者 事業所は、事業継続のための要員を除き、可能な範囲で、被災者支援・復旧活動(特に要配慮者の保護等)に努める。 ④情報提供体制の確保 【実施主体】国、都、区、事業者 事業所は、災害発生時に施設内待機の判断を行うとともに、待機させる従業員等に対して災害関連情報や公共交通機関の運行情報等を提供する必要がある。 そのため、国、都、区は、あらかじめ報道機関や通信事業者、公共交通機関等と連携協力して、事業所が必要な情報を得られる仕組みを構築しておく。 ⑤学校等の対応 【実施主体】学校等 学校等は、児童・生徒等を保護し、必要に応じて備蓄物資等を提供する。また、児童・生徒等の安否等について、事前に定める手段により、保護者へ連絡する。 第3 復旧対策 1 徒歩帰宅者の代替輸送 2 徒歩帰宅者の支援 1 徒歩帰宅者の代替輸送 (1)対策内容と役割分担 職場や一時滞在施設等に留まった帰宅困難者は、地震発生以降の混乱が落ち着いた後、特に、救出・救助活動が落ち着くと考えられる発災後おおむね4日目以降、順次帰宅することを想定している。しかし、首都直下地震等が発生した場合には、鉄道などの公共交通機関の多くが長期間にわたり、運行を停止することが想定される。 ここでは、帰宅困難者が帰宅するに当たり必要な情報提供などについて定める。 ①鉄道運行情報等の提供 機関名 区(災対地域本部) 対策内容 都や交通事業者などからの情報により、徒歩帰宅者の誘導などを支援 機関名 区(災対土木部) 対策内容 都や交通事業者などからの情報により、徒歩帰宅者の誘導などを支援 機関名 区(災対財政・広報部) 対策内容 都や交通事業者などからの情報により、徒歩帰宅者の誘導などの情報を周知 機関名 鉄道事業者 対策内容 折り返し運転の実施状況、乗り継ぎが可能な路線等に係る情報を都や報道機関に提供 発災後、早期に運転を再開 機関名 都総務局 対策内容 都内の交通事業者からの情報を集約し、都のホームページにおける帰宅困難者対策ポータルサイト等を活用して、区市町村、都民等に提供 機関名 関東運輸局 対策内容 所管区域の総合的な交通情報の集約・提供 機関名 バス事業者 対策内容 運行状況、鉄道に乗り継ぎが可能な路線等に係る情報を都や報道機関に提供 機関名 報道機関 対策内容 行政機関や交通機関等からの情報について、都民・事業者に提供 ②代替輸送手段の確保 機関名 区(災対地域本部) 対策内容 徒歩帰宅者を利用可能な交通機関などに誘導 機関名 区(災対土木部) 対策内容 徒歩帰宅者を利用可能な交通機関などに誘導 機関名 区(災対財政・広報部) 対策内容 徒歩帰宅者を利用可能な交通機関などの情報を周知 機関名 国、都総務局、都建設局、都交通局、等 対策内容 国の緊急災害対策本部(緊急災害現地対策本部)で、内閣府作成の「帰宅困難者等搬送マニュアル(仮称)」に基づき、搬送オペレーションに係る総合調整を実施 バスによる代替輸送手段を確保 機関名 関東運輸局 対策内容 代替交通の許可等を速やかに実施 機関名 バス事業者 対策内容 バス等による代替輸送手段を確保 (2)業務手順 *図表省略 (3)詳細な取組み内容 ①鉄道運行情報等の提供 【実施主体】区災対地域本部、区災対土木部、区災対財政・広報部 区は、都や交通事業者などからの情報により、徒歩帰宅者を利用可能な交通機関などに誘導して、帰宅を支援する。 【実施主体】鉄道事業者 鉄道事業者は、折り返し運転の実施状況、乗り継ぎが可能な路線等に係る情報を都や報道機関に提供する。 【実施主体】バス事業者 バス事業者は、運行状況、鉄道に乗り継ぎが可能な路線等に係る情報を都や報道機関に提供する。 バスの運行に当たっては、鉄道折り返し駅までの短距離区間のピストン輸送など、効率的な形態により実施する。 調達できるバスには限りがあるため、代替輸送の利用者については、原則、要配慮者を優先する。 バス事業者は、運行状況、鉄道に乗り継ぎが可能な路線等に係る情報を都や報道機関に提供するとともに、行政機関と連携して、バス等による代替輸送手段を確保する。 【実施主体】報道機関 報道機関は、行政機関や交通機関等からの情報について、区民・事業者に提供する。   2 徒歩帰宅者の支援 (1)対策内容と役割分担 帰宅困難者が帰宅するに当たっては、交通機関の輸送力については限りがあることから、自宅まで帰宅可能な距離にある帰宅困難者は、原則として徒歩で帰宅するよう促さなければならない。このため、帰宅困難者等の秩序立った徒歩帰宅を促すため、徒歩帰宅支援を充実させる。 機関名 区(災対地域本部) 対策内容 事業者と連携し、帰宅困難者の円滑な徒歩帰宅を支援 機関名 警視庁・警察署 対策内容 交通規制資器材を活用した誘導経路の確保等を実施 避難誘導を行う警察官は、被害状況等徒歩帰宅に必要と認める情報を提供 機関名 事業者、学校 対策内容 帰宅経路沿いの被害状況などの情報や、行政及び関係機関から提供される情報等により、従業員等が安全に帰宅できることを確認し、従業員や児童・生徒等の帰宅・引き取りを開始 災害時帰宅支援ステーションに指定されている施設は、徒歩帰宅者を支援 機関名 都総務局 対策内容 交通情報や災害時帰宅支援ステーションなどの情報を提供 災害時帰宅支援ステーションに指定された都有施設において支援を実施 機関名 日赤東京都支部 対策内容 帰宅困難者支援所を設置し、炊出食、飲料水の配布、応急手当、交通情報、地理情報、徒歩帰宅者情報等を提供 (2)業務手順 *図表省略