第3次世田谷区立図書館ビジョン素案 知と学びと文化の情報拠点 令和5年8月 目次 第1章 世田谷区立図書館ビジョンの概要 1 世田谷区立図書館ビジョンの目的 2 図書館ビジョン改定の背景 3 計画の位置づけ 4 計画の期間 第2章 世田谷区立図書館の現状 1 区立図書館の概要 2 第2次図書館ビジョンにおける主な取り組み 3 第2次図書館ビジョンの評価 4 図書館運営体制に関する振り返り 第3章 第3次図書館ビジョンの基本的考え方 1 基本理念 2 第3次図書館ビジョンの3つの視点 第4章 第3次図書館ビジョンの事業方針 1 施策体系 2 事業方針 利用者の視点を重視した図書館サービスの構築 第1章 世田谷区立図書館ビジョンの概要 1 世田谷区立図書館ビジョンの目的 世田谷区立図書館ビジョンは、世田谷区の未来を展望しつつ、図書館を取巻く状況の変化を踏まえ、区民の期待や要望に的確に応え、世田谷区における知識・情報・文化の拠点としての図書館をより一層充実・発展させるための、図書館サービスの基本方針を示す計画です。 平成27年に策定された第2次世田谷区立図書館ビジョン(以下、第2次図書館ビジョン)は、当時の世田谷区基本計画や第2次世田谷区教育ビジョンに基づき「知と学びと文化の情報拠点」という基本理念を掲げ、図書館運営の改善に取り組んで来ました。第3次世田谷区立図書館ビジョン(以下、第3次図書館ビジョン)は、新たに策定される世田谷区教育振興基本計画に基づき、これまでの成果と課題を踏まえ、新たな図書館像を実現する5年間の計画として策定されるものです。 2 図書館ビジョン改定の背景 これまで、世田谷区立図書館は、第1次世田谷区立図書館ビジョン、第2次図書館ビジョンに基づき、図書館に蓄積された情報や知を、区民ニーズに対応し、より柔軟に提供できるよう新たな図書館機能の整備をはじめ、中央図書館、地域図書館等からなる図書館ネットワークを構築してきました。また、資料の充実、ICTの活用、文化施設や区内大学との連携を深め、区民の課題や学びによる生活の質を高める知と学びの文化の情報拠点を目指してきました。 一方、第2次図書館ビジョン策定時に比べ、図書館を取り巻く状況は大きく変化しました。ICT技術の進展により、情報メディアや情報流通の仕組みは大きく変化し、今日、知識 や情報は、インターネットを始めとした様々なルートを通じて社会に広がり利用されるようになっています。 出版市場全体の売り上げについても大きく変化しており、インターネットやスマートフォンの普及に伴い、雑誌の売り上げは減少傾向にあり、電子出版の売り上げは増加しています。この状況の中で、人々に必要とされる情報や知をどのように提供すべきなのか、新たな方策が図書館には求められています。さらに新型コロナウイルス感染拡大により図書館が休館となる中、来館しなくてもそのサービスを利用できる方策が求められてきました。 このように新しい図書館の在り方が模索される中にあっても、人々が図書館に寄せる信頼感や読書を楽しみたいと思う素朴な思いは変わりません。また、多様な属性を持った人がその特性に応じた資料及びサービスの提供を受けられるべき、という意識もますます高まっています。 図書館を取り巻く状況の変化をとらえながら、これからの社会、これからの世田谷において求められる図書館像とその実現を支える手立てを構想することが、今、必要となっています。 3 計画の位置づけ 第3次図書館ビジョンは、次期世田谷区基本計画(骨子)の重点政策である「子ども・若者が笑顔で過ごせる環境の整備」「新たな学校教育と生涯を通じた学びの充実」及び「多様な人が出会い、支え合い、活動できるコミュニティの醸成」を踏まえ、それらの実現の一翼を担う計画となります。また、新たな教育ビジョンである「世田谷区教育振興基本計画」において定められた「生涯にわたってともに学び成長し続ける方針」に基づき、「知と学びと文化の情報拠点としての図書館の充実」のため、新たな図書館サービスを推進する計画として位置づけます。 第3次図書館ビジョンでは、これまで取り組んできた施策をさらに拡充するとともに、誰もが利用しやすいサービスを意識しながら、それぞれの特性に対応した、多様な人々を包摂するためのサービスの充実を図ります。 4 計画の期間 第3次図書館ビジョンの計画期間は、これまでの図書館ビジョンの上位計画として教育ビジョンが存在しており、計画期間も教育ビジョンに合わせた10年間の計画期間としていました。今回は、上位計画である「世田谷区教育振興基本計画」の計画期間が5年間となったため、これに倣って 第3次図書館ビジョンの計画期間も、5年間とします。 第2章 世田谷区立図書館の現状 1 世田谷区立図書館の概要 世田谷区では、中央図書館と地域図書館15館、地域図書室5室、図書館カウンター3か所を展開しています。令和3年度には、尾山台・上北沢・鎌田・烏山図書館におけるセルフ貸出機の設置、また、令和4年3月より図書館カウンター下北沢を開設するなど地域の特性やニーズにあった図書館づくりに取り組んできました。令和4年4月1日からは経堂図書館に加え烏山・下馬図書館にて指定管理者による管理運営を開始しました。各図書館・図書室は、徒歩15分(半径1㎞)の範囲を一館あたりのサービス圏として、概ね区全域を網羅するように設置しています。 令和4年度末時点での世田谷区立図書館の全体の資料数は、合計で208万点です。このうち児童図書は54万7千点、CD等の音響資料は、5万4千点、録音図書や点字本といった障害者サービス資料は、9千点です。また、世田谷区立図書館の利用登録者数は、26万人です。このうち、児童の登録者数は、4.4万人、障害者サービスの利用登録者は465人です。 図書館情報システムは、世田谷区立図書館16館と地域図書室5室、及び図書館カウンター3館を相互に結び、利用登録や資料情報を一元管理しています。各館で収集、保存している資料を図書館利用者がどの図書館でも利用できるシステムとなっています。 2 第2次図書館ビジョンにおける取り組み 第2次図書館ビジョンでは、「知と学びと文化の情報拠点」という基本理念を定め、その実現に向け、「0歳児からの読書を支える図書館」、「大人の学びを豊かにする図書館」、「暮らしや仕事に役立つ図書館」、「世田谷の魅力を収集・発信する図書館」の4つの基本方針と「図書館ネットワークの構築」、「専門性と効率性を両立した運営体制の構築」の2つの運営方針に基づき、それぞれの事業に取り組んできました。 10年間の長い計画期間の間に2年~4年程度の具体的な事業項目と、第1期、第2期、第3期行動計画を策定し、図書館サービスの充実に努めてきました。特に、第1期行動計画では、6つの基本方針や取り組み項目を踏まえ、横断的に取り組む事業を定めました。 第2期行動計画では、特に重点的に推進する5つの重点プロジェクトを定め、力点をおいて取り組んできました。 第3期行動計画では、第2次図書館ビジョンの6つの基本方針や取組項目を踏まえるとともに、「世田谷区立図書館運営体制あり方検討委員会報告書」に基づく3つの取り組みの柱の方針等も踏まえ、中央図書館のマネジメント機能を強化し、図書館の公共性と専門性を維持しながら民間を活用した運営体制等の構築を目指すこととしました。特に重点的に推進する4つの重点プロジェクトと1つの視点を定め、取り組んでまいりました。 第2次図書館ビジョンで実施された主な取り組みは以下のとおりです。 (1)子どもサービスの推進に向けた図書資料の充実 子どもの読書活動を支援する取り組みを継続して、絵本、児童資料、中高生世代向き資料の収集に努め、絵本、児童資料については、長く読み継がれている基本図書の充実を進めました。また、視覚障害など配慮を要する子どもの読書のため、バリアフリー図書やマルチメディアデイジーなどの資料の充実を図ってきました。 (2)図書資料等の充実と区民の情報をつなぐサービスの推進 利用者からの要望が多いのは蔵書・資料の充実です。図書館サービスの根幹をなす図書資料等の充実に継続的に取り組んできました。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、臨時休館等を教訓に、来館を前提としたサービスを見直し、電子書籍サービスの拡充につとめてきました。 (3)課題解決支援のためのサービスの拡充 図書館のレファレンスは、日々の暮らしや健康、仕事、地域の課題などに対して有効な図書資料等や情報を提供するもので、図書館の重要な機能です。中央図書館による地域図書館等への支援体制を整備するため、専門的で多様な調べものに対応できるコレクションづくりや商用データベースの充実、国立国会図書館レファレンス協同データベースの参加・活用を図ってきました。また、区の政策立案や行政サービス検討等に伴う、庁内各所管課からのレファレンスなどの行政支援サービスに取り組みました。 (4)図書館ネットワークを整備する 令和4年3月に、資料の予約や貸出・返却を中心としたサービスを行う図書館カウンターを、二子玉川・三軒茶屋に続き下北沢に開設しました。また、セルフ貸出機の設置などにより、貸出の際の時間短縮やプライバシー保護などの利用者の利便性の向上や、蔵書点検時間短縮による資料管理の効率化等を目的に梅丘図書館を除く全図書館施設へのICタグ及び関連機器導入を進めました。 3 第2次図書館ビジョンの評価 第2次図書館ビジョンの取り組みに対しては、世田谷区立図書館運営協議会によって令和4年度に世田谷区立図書館全体に対しての評価・検証を行いました。 その評価・検証は「令和4年度世田谷区立図書館運営協議会からの意見等一覧」として、第3次図書館ビジョン策定検討委員会に報告されました。 第3次世図書館ビジョンには、報告された意見等を踏まえてを検討しています。 この関連性・相関性によって、「PLAN」である図書館ビジョンと「DO」である図書館の運営、さらに図書館協議会による評価・検証の「CHECK」、さらに新しい図書館ビジョン策定に対しての報告が「ACTION」と位置付けられ、図書館運営におけるPDCAサイクルが実現できたと考えられます。 4 図書館運営体制に関する振り返り 第2次図書館ビジョンの計画期間(平成27年度~令和5年度)において区立図書館はこれまで直接運営(直営)としていた運営を一部民間活用に移行するといった転換期を迎えることになりました。 第2次図書館ビジョンでは、6つの基本方針の一つに「専門性と効率性を両立した運営体制の構築」を掲げ、多様化する区民ニーズを的確に捉え、図書館サービスをより一層の充実を進めるために必要な職員の専門性を高めるとともに、民間活力を計画的に導入すると定めました。 また、第2期行動計画(平成30年~平成33年度)では、4年間の計画期間において5施設の地域図書館等の新規活用・更新を進めると定められました。第2期行動計画の終了する令和4年3月末時点で、経堂図書館(平成29年)へ指定管理者制度が導入され、世田谷図書館(平成28年)、梅丘図書館(平成31年)の2館に一部業務委託が実施されました。さらに、令和4年4月より烏山図書館・下馬図書館へ指定管理者制度が導入され、5館の区立図書館で民間活用が図られています。 民間活用と並行して、区では、学識経験者や公募による区民等を構成員とする世田谷区立図書館運営体制あり方検討委員会(以下「検討委員会」という。)を令和2年に設置し区立図書館の運営状況等に関して、民間の評価機関による分析・評価報告等を踏まえ、図書館運営の現状と課題、目指すべき方向性を検討し、令和3年3月に報告書を取りまとめました。 あり方検討委員会報告書における区立図書館の運営体制案は次のとおりです。 中央図書館の運営体制案は、区立図書館全体の統括・調整機能を担い、マネジメント力を強化するため、直営とするべきであると考える。 地域図書館の運営体制案は、直営が原則であると考える。ただし、民間事業者のノウハウやスピード感等を活かし、地域特性や利用者ニーズに応じ、自由度の高い図書館サービスの充実を図る必要がある場合は、図書館の規模や来館者数、地域資源の利用可能性など、施設環境を勘案して「指定管理者制度」の順次、導入を選択肢として検討することが考えられる。 令和4年度には、検討委員会で提言のあった区民や学識経験者等が、図書館運営やサービス水準をチェックしていくガバナンス機能を担う世田谷区立図書館運営協議会(以下図書館運営協議会という。)を発足し、全区立図書館の評価検証を行っています。 今後の区立図書館の新たな民間活用に関しては、この間の検討結果や、図書館運営協議会における図書館の評価検証を踏まえるとともに、我が国における生産年齢人口の減少、新型コロナウィルス感染症収束後の人手不足といった国内労働者を取り巻く環境など、図書館運営の持続性の視点から注視していく必要があります。 一方で、公立図書館の中核を担う直営の区立図書館においては、人材育成が課題であると指摘されおり、司書資格者についても、将来的に減少が見込まれ、人材育成にとどまらず、効果的な人材確保について検討すべき時にきています。 司書資格職員(常勤職員)退職予定者数推移は、令和5年度1名、令和6年度6名、令和7年度4名、令和8年度6名、令和9年度5名、令和10年度4名、となっております。 令和5年度の有資格者の年齢構成では、50歳代が全体の47%を占め、再任用職員の22名で全体の38%と合わせると、85%となっており、年齢層が高いことが分かります。計画期間における退職数は、5年間で26名となっているため、有資格者を一定数確保しなければ、図書館の質の維持は困難な状況となります。 なお、利用者アンケートにおける民間活用を導入した5館の評価(満足度)は、いずれの館も60%を超えており、満足度は高い状況にあります。また、直営館及び図書館カウンターにおいても、満足度は60%を超えており、直営、民間活用併用による図書館運営は一定の評価を得ているものと考えられます。 そのため、第3次図書館ビジョンの計画期間中における民間活用の導入にあたっては、この間の検討委員会の指摘事項や、図書館運営協議会による各館の評価検証のほか、労働環境、区職員のスキル、図書のデジタル化等、様々な視点も踏まえ、民間活用を導入する地域図書館数や対象館、その移行時期を適宜適切に決定し、導入を計画するに至った経緯を含めて区民や利用者に分かりやすく説明していく必要があります。 第3章 第3次図書館ビジョンの基本的考え方 1 基本理念  「知と学びと文化の情報拠点」 第3次図書館ビジョンにおいて、第1次ビジョン、第2次ビジョンに引き続き「知と学びと文化の情報拠点」を基本理念と定めます。その趣旨は次の通りです。 図書館は、地域の全ての人々に対して資料、知識、情報を提供し、人々が学び、自分の世界と可能性を広げ、また抱える問題・課題を解決し、よりよく生きていくことを支援する機関です。それは、人々の知る自由を保障することによって民主的な社会を支えると同時に、人々の知識・情報の利用・活用を支援することによって健全な知識社会の形成に寄与します。 また、人々の創造性、想像力、知的好奇心や共感を刺激することにより、感動や充実感を与え、成長の機会を提供します。 世田谷区は、次期基本計画実行の指針としてSDGsの推進を掲げています。もとより図書館は、SDGsが示す教育、平等、公正さなどを追求する機関であり、世田谷区のSDGs推進にとって有力な機関です。 世田谷区立図書館は、区民一人ひとりが、よりよい、より持続可能な未来を築くこと、この第3次図書館ビジョンを通じて、図書館がそのための「知」と「学び」と「文化」のための情報拠点となることを目指します。 2 第3次図書館ビジョンの3つの視点 図書館ビジョンにおける「視点」とは、計画の策定及び遂行において関心を持ち重視する生活領域や社会課題です。計画の遂行によって、これらの領域や課題をめぐる状況の改善や向上に貢献することを目指します。 第3次図書館ビジョンの視点は、次の3つとします。 「生涯を通じた知や学びへの支援」 人生100年時代が到来します。子どもから大人まで、生涯にわたって豊かな人生を送れるよう、あらゆる世代が本に親しみ、それぞれの学習意欲や知的欲求に応える取り組みを支援して行きます。特に子どもは未来の世田谷を支える主体であり、彼らの成長こそ、次世代の世田谷の可能性を切り拓きます。子どもが読書の楽しさや知識や情報の大切さを知り、本に親しみながら創造性を育み、また、想像力を養うことができるよう、そのための機会や環境を提供します。ICT技術の進歩により、図書や雑誌については、紙資料から電子資料への普及が進む中で、ICT技術を活用した図書館サービスの拡充に努めて、全ての利用者が利用しやすい図書館を目指して行きます。 「地域文化とコミュニティ」 私たちは地域の中で、様々な人や機関とのつながりの中で社会生活をおくっています。また、地域は歴史を持っており、私たちも地域の記憶を持ち、過去とのつながりを感じながら生活しています。人々が地域を知り、地域に愛着を感じ、さらに地域の人々とつながり協力しあって生きていくことは、持続可能な地域社会をつくっていくうえで極めて重要です。図書館は、地域の文化を支え、地域のつながりづくりに努めます。 「多様性と共生社会」 社会は多様な人々によって構成されており、今日、その全ての人がその人らしく、また、その個性を生かして、参画していけるような社会となることが求められています。人々が、お互いに理解し合い協力し合うためには、知識や情報の共有及び考え方の相互理解が不可欠です。図書館は、様々な特性を持った方々に対して、その状況に応じた資料及びサービスの提供を行い、暮らしや学びに必要な知識や情報、社会生活や社会活動のための知識や文化、教養等を共有するための社会基盤として機能し、人々を包摂する共生社会の実現に貢献します。 第4章 第3次図書館ビジョンの事業方針 1 施策体系 基本理念及び視点を受け、基本方針の下に、今後具体的に進めていく事業方針として「施策の方向性」「取組項目」を体系的に設定します。 施策体系は次の通りです。 基本方針1求められる知識・情報を確実に提供する図書館 施策の方向性(1)課題解決支援など調査研究の支援 取組項目 ①調べものに有効なコレクションの構築と提供 ②調査に有効なリモート情報源の活用検討 ③レファレンスサービスの強化 施策の方向性(2)電子書籍ほか様々な情報メディアの収集・提供 取組項目 ①電子書籍サービスの拡充 ②新たな情報メディアの収集・提供の検討 ③区の発行する資料の収集・提供 施策の方向性(3)多様で豊かな学びの支援 取組項目 ①知識を深め認識の世界を広げるようなコレクションの構築と提供 ②本の世界をより深く理解するための様々な学びの機会の提供 ③学習成果を発信し、交流する機会の提供 基本方針2子どもの健やかな成長を支える図書館 施策の方向性(1)子どもが本に出合う機会を広げる 取組項目 ①図書館を子どもたちから見て楽しい場所にする ②子どもの読書を支援する取り組みの拡充 ③読書や図書館に興味を持つ子どもたちの支援 ④地域住民・関係機関・団体と協働した子どもの読書を支援する取り組みの推進 施策の方向性(2)読みづらさを抱える子どもに対するサービス 取組項目 ①読みづらさを抱える子どもへの対応 ②図書館利用に困難を抱える子どもへの対応 ③日本語以外を母語とする子どもへのサービス 施策の方向性(3)中高生世代の居場所となりその成長を支える取り組み 取組項目 ①中高生世代にとって居心地のいい場所づくり ②中高生世代の興味関心に合ったイベントの開催 ③中高生世代へのサービスの推進に向けた資料等の充実 施策の方向性(4)学校図書館との連携、役割分担の明確化 取組項目 ①学校及び学校図書館等への資料・情報の提供・支援 ②学校図書館等と区立図書館の連携体制づくり 基本方針3地域の特徴を活かし人々がつながる図書館 施策の方向性(1)地域の特色に対応した資料の収集 取組項目 ①地域・まちづくり・区民活動等に関する資料の収集 ②地域の人々や関係機関と連携した地域の記録や記憶の収集・公開 ③地域資料のデジタル化の検討 施策の方向性(2)地域活動団体との連携・協働 取組項目 ①地域の各施設、機関との連携 ②地域の人々との連携、地域の人々の図書館活動への参加 ③地域の活動団体への資料の提供 施策の方向性(3)居心地の良い知的刺激のあふれる施設づくり 取組項目 ①落ち着いて快適に読書や調べものができる施設づくり ②イベントや展示ができるスペースの確保 ③施設の改修による快適性の確保 基本方針4それぞれの特性に対応した、多様な人々を包摂する図書館 施策の方向性(1)障害があっても利用しやすい資料とサービスの充実 取組項目 ①対面朗読サービスの提供 ②資料の充実及び読書支援機器の充実 ③デジタルデータの提供 ④カウンターでの筆談体制の整備 ⑤来館困難な方へのサービス ⑥車いすや体が不自由な方も利用しやすい施設へ ⑦区民や区内団体や関係機関との連携 施策の方向性(2)日本語以外を母語とする人々に対するサービス 取組項目 ①日本語以外を母語とする人々への資料提供等 ②日本語以外を母語とする人々への利用案内等 施策の方向性(3)デジタル機器を上手く使いこなせない方への対応 取組項目 ①デジタル機器を上手く使いこなせない方に対する支援 ②デジタルコンテンツ閲覧環境の充実 基本方針5図書館DXとリモートサービスの推進 施策の方向性(1)非来館型図書館サービスの充実 取組項目 ①図書館ホームページ機能の充実 ②図書館サービスを利用するためのアプリの検討 ③非来館型図書館サービスの取り組み ④電子書籍サービスの拡充(再掲) 施策の方向性(2)図書館利用の利便性の向上 取組項目 ①貸出・返却の利便性向上 ②閲覧席の予約システムの検討 施策の方向性(3)次世代図書館情報システムの機能検討 取組項目 ①図書館情報システムの機能検討 ②AIの活用検討 基本方針6専門性と効率性を両立した運営体制 施策の方向性(1)図書館運営に関する高い専門性の確保 取組項目 ①職員に必要なスキルと専門知識の向上 ②図書館専門職に関する新しい職員制度の検討 ③図書館運営のマネジメント能力向上 施策の方向性(2)効率的効果的な図書館運営の在り方 取組項目 ①業務委託館、指定管理館を含めた施設ごとの運営評価の実施 ②直営及び民間活用それぞれの強み弱みを踏まえた施設ごとの管理運営方式の検討 ③個別課題への対応 ④中央図書館のマネジメント機能の充実 施策の方向性(3)事業・運営の指針・目標の設定 取組項目 ①定期的な事業実施状況や運営状況の評価 ②評価や運営方針への利用者の視点の取り込み ③図書館運営の成果を的確に把握できる評価指標の検討 ④SDGsに配慮した図書館経営 2 事業方針 利用者の視点を重視した図書館サービスの構築 基本方針1 求められる知識・情報を確実に提供する図書館 仕事や暮らしの中で生じた問題・課題の解決のために必要な資料・知識・情報を提供します。提供にあたっては、図書・雑誌等の紙の資料だけでなく、電子形態の資料やオンラインデータベースを始めとしたネットワーク上に存在する情報源(以下、「リモート情報源」)など様々な情報メディアを導入・活用し、問題・課題の解決のために有用な文献等を探し出し提供します。また、教養、レクリエーションのための読書、楽しみとしての読書も支援し、様々な資料を幅広く提供し、人々の文化的活動を豊かにすることを目指します。人々の関心に合った時機に応じたテーマのイベント等を開催し、人々の、「知る」、「考える」、「学ぶ」、応援します。 施策の方向性(1)課題解決支援など調査研究の支援 暮らしのなか、仕事のなか、また学業のなかで生じた様々な問題・課題を解決するための調査研究(調べもの)を支援します。図書・雑誌を始め、オンラインデータベースなど調査研究に有効なツールを確保し、必要な知識・情報を提供する体制を整えます。また、調べものの相談に応じ(レファレンスサービス)、必要な文献を、他の図書館等からの取り寄せなども活用して提供します。 取組項目①調べものに有効なコレクションの構築と提供 暮らしや仕事、学業のなかで生じる様々な問題・課題を解決するには、一般的な資料だけでなくある程度の専門性がある資料が必要です。調べものに対応できるコレクションなしに人々の調査・研究には対応できません。調べもののために作られたいわゆる「参考資料」はもちろん、分野によっては専門的な技術情報を含め必要な資料を収集し、調べものに対応できるコレクションを構築します。 取組項目②調査に有効なリモート情報源の活用検討 近年、調べものに対応する多くの資料は電子化されオンラインで提供されています。辞書辞典類、新聞記事、統計データ等のオンラインデータベースです。また、調べものに有効な雑誌も、今日では、デジタル化されバックナンバーを含めてオンラインで提供されるようになりました。これらのリモート情報源は、非常に有効である一方、操作の個別性が高く、様々なリモート情報源を使いこなすには一定のハードルがありましたが、今日では統合的に利用するようなシステムも開発されつつあります。これらのリモート情報源の活用とそれらを統合的に利用するシステムの動向を注視し、より効果的な調査研究の支援を目指します。 取組項目③レファレンスサービスの強化 調べものに関する相談を受け付け、その回答となる資料、記事等を提供したり、調べ方をアドバイスしたりするレファレンスサービスを強化します。資料・情報探索能力を高めサービスへの信頼を高めるとともに、レファレンスサービスについては、そのサービスの存在があまり知られていないことを鑑み、サービスの内容の周知、広報に努めます。また、調べる事柄によって調べる方法(道筋)を説明した「パスファインダー」を一層充実させます。 施策の方向性(2)電子書籍ほか様々な情報メディアの収集・提供 これまでの紙の資料を大切にしつつ新しい情報メディアを積極的に取り入れ、多様なメディアで人々の資料や情報に対する要求に応えます。令和2年度から開始した電子書籍サービスについてはコンテンツの一層の充実を図ります。また、地域行政資料に関しても電子形態の資料の収集提供、資料のデジタル化を検討します。 取組項目①電子書籍サービスの拡充 令和2年度より導入した電子書籍サービスを一層充実させます。利用できるコンテンツの質・量を充実させるよう努めます。また、利用の仕方についての広報、利用の支援も行います。 取組項目②新たな情報メディアの収集・提供の検討 情報化の進展に伴い様々な資料・情報がデジタル化、ネットワーク化されています。図書館は、従来、紙の資料を収集し蔵書となった資料を提供することを基本としていましたが、今日の情報化社会はそれだけでは必要な知識・情報を人々に提供できない、という状況になりつつあります。 前述した調べものに有効なリモート情報源、その他ネット上の様々な情報源を含めて新しい情報メディアの導入・提供について検討します。 取組項目③区の発行する資料の収集・提供 世田谷区の公立図書館として、区が発行する資料については収集・整理・保存し、提供することが求められます。情報化の進展に伴い、区が発行する資料についてもPDFなどのデジタル版での配布、ホームページでの掲載などが主体になってきました。これらの資料・情報をどのように収集・管理・提供するか、検討していきます。 施策の方向性(3)多様で豊かな学びの支援 人々の様々な本を読んで楽しみ、また、文化や教養を得たいという要望に応える幅広い豊かなコレクションを構築します。本の中身をさらに良く理解したり体験したりできる事業や講座を提供し、人々の知的関心に応えます。学んだ成果を発表したり交流したりできる機会を設け、ともに学ぶ機運を醸成します。 取組項目①知識を深め認識の世界を広げるようなコレクションの構築と提供 図書館は、文化機関であり、人々の教養とレクリエーションに資することを目的とした機関でもあります。多くの人々が、教養を深め、様々な世界観を楽しみ、また、豊かな充実した時間を過ごすために図書館を利用します。それに応えるために、図書館は、様々な知識を得られたり認識の幅を広げたりできるような資料、また感動したり面白いと感じてもらえるような資料を収集し提供します。 どのようなコレクションの構築を目指すかについては、その考え方や基準をホームページ等で公表していきます。 取組項目②本の世界をより深く理解するための様々な学びの機会の提供 著者の講演会や、本に親しむようなイベントなど、本と読書の世界をもっと理解し深く感じられるようなイベントを開催します。本と共に、それに関連した事業や講座に参加し体験する機会を提供し、それらを通じて知識や認識が一層広がり、さらに、新たな学びのきっかけをつくります。   取組項目③学習成果を発信し、交流する機会の提供 図書館の資料を使って学んだこと、図書館で学習した成果などを発信し、成果を共有し、同じような経験をしている人々と交流する機会をつくります。そのことで、図書館で調べ学んでいる人を後押しすると同時に、発信することによって図書館の調査、学習支援の役割を多くの人々に知らせ理解を広めます。 基本方針2 子どもの健やかな成長を支える図書館 子どもにとって、楽しい、居心地のいい場所としての図書館を目指します。様々な活動ができ、気軽に立ち寄ることができ、また心安らかに時間を過ごせる場となるよう努めます。様々なきっかけを通じて子どもたちが図書館及び本と出合い、本を読む楽しさや大切さ、学び成長する楽しさを感じる機会を増やし、生涯にわたる読書習慣や学ぶ姿勢を身に着けることができるよう支援します。 学校及び学校図書館と連携し、学校に必要な資料・情報を公共図書館から支援するとともに、学校以外の様々な子ども関連施設・機関とも連携し子どもたちの成長を支え読書を広げます。 施策の方向性(1)子どもが本に出合う機会を広げる 子ども達から見て、図書館がまず楽しいところ、行きたくなるところとなるよう施設のレイアウトや運営の仕方を工夫します。また、本を読むだけでなく図書館で子どもたちが体験できることを増やします。地域の人々や子ども関連機関と連携し、子どもの発達段階に応じたブックリストの作成・配布や本に親しむきっかけとなるようなイベントや取り組みを行います。 取組項目①図書館を子どもたちから見て楽しい場所にする 図書館は、何よりも子どもたちにとって楽しい場所であることが望まれます。なんとなく本や読書は苦手だな、と思っている子どもたちも「あ、面白そうだな」と思えるような施設やサービスを検討します。子ども室の飾りつけ、ディスプレーの工夫、子どもたちの興味関心にあったイベントなどにも取り組みます。また、マンガやライトノベルなど従来図書館で積極的ではなかった分野についても充実させていきます。 取組項目②子どもの読書を支援する取り組みの拡充 本に親しむ子どもを増やし、子どもたちがより広い範囲の様々な本を知り、読書の世界を広げられるよう、子どもの年齢や発達段階に応じたブックリストの作成、配布、保護者向けの講座などを開催します。子どもたちに本の楽しさを感じてもらい本に親しむきっかけとなるようお話し会を始めとした催しを開催します。お話し会を定例的に開催するとともに、年齢別のお話し会の開催、ボランティアによるお話し会など、開催の仕方や内容も工夫して行います。 取組項目③読書や図書館に興味を持つ子どもたちの支援 読書好き図書館好きの子どもたちがもっと本や図書館を楽しめるよう「読書リーダー」を募集し、本や図書館の仕事を知ってもらう活動を進めます。職場体験を積極的に受け入れ、図書館と図書館の仕事をよく知っている子どもたちを増やします。 取組項目④地域住民・関係機関・団体と協働した子どもの読書を支援する取り組みの推進 区立図書館のみならず、地域の人々、関係機関、団体と連携し、子どもの読書を支援する取り組みを実施します。図書館で地域の人々が参加し様々な体験談を語って頂いたり、保育園などの子ども関連施設に図書館が出かけてお話し会やイベントを行ったり、地域全体で子どもたちを支え子どもの読書を推進・支援する取り組みを行います。 施策の方向性(2)読みづらさを抱える子どもに対するサービス 障害や様々な理由で図書館や本を利用できなかったり、困難を抱えたりしている子どもたちに、利用できるあるいは利用しやすい資料の提供や、図書館を利用しやすくするためのサービスを提供します。 取組項目①読みづらさを抱える子どもへの対応 読むことや図書館利用に困難さを抱えている要因には、見え方に原因がある場合と見え方以外の要因で読むことに困難がある場合(ディスレクシア等)があります。それぞれの見え方や特性により、使いやすい資料を選べるよう、音訳図書、マルチメディアデイジー、点字図書、さわる絵本、大活字本、拡大読書器などを用意します。また、読み上げ機能対応の電子書籍の充実や、視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」の活用を図ります。さらに学校や関連の機関と連携しICTを活用して読書ができる方法を検討していきます。 取組項目②図書館利用に困難を抱える子どもへの対応 読むことに問題はなくともそれ以外の要因で図書館が利用しにくい場合があります。身体が不自由で図書館に来にくい、施設を利用しにくいなどです。聞こえが悪くコミュニケーションがとりにくい場合もあります。それぞれの要因に対応し、施設や設備の改善、体制の整備等により極力図書館を利用できるようにするとともに、宅配サービスや「サピエ」の活用など図書館に来なくとも利用できるようなサービスに取り組みます。 取組項目③日本語以外を母語とする子どもへのサービス 令和5年7月に公表された「世田谷区将来人口統計」では、「世田谷区における外国人人口は、平成27年度以降、令和2年度まで高い増加傾向を示していた。コロナ禍以降、いったん減少したが、入国制限が緩和された令和4年4月以降は再び増加に転じた。」 と外国人人口が増大しているとされました。そのため、日本語以外を母語とする子どもたちへは、その言葉の子どもの本をそろえ提供するよう努めます。また、利用の案内等にあたってはやさしい日本語を使用するなどコミュニケーションに配慮をします。子どもたちが日本語にも慣れ不自由なく日本語で読み書きできコミュニケーションも取れるよう、どのような援助が可能か検討し、支援できるよう努めます。 施策の方向性(3)中高生世代の居場所となりその成長を支える取り組み 中高生世代が行きたくなる図書館になるよう、読書及び本に関連することはもちろん、それ以外にも様々な活動ができる居心地のいい図書館を目指します。また、不登校の児童生徒の居場所としての機能についても検討していきます。 本に関しては、様々な、関心の世界を広げるような本、面白い本、成長の糧となるような資料を中高生世代に紹介し提供します。若者の興味関心を惹き、本の世界をより深く感じられるようなイベントを開催します。そして、本にとどまらず、様々な活動、体験を提供する図書館を目指しそのための施設の改善、サービスを検討します。 取組項目①中高生世代にとって居心地のいい場所づくり 勉強用の席を用意する、グループ室を作って友達と一緒に勉強できるようにする、また、比較的長い時間落ち着いて時間を過ごせるようにするなど、中高生世代とってサードプレイスとなる図書館スペースのモデルを検討します。 取組項目②中高生世代の興味関心に合ったイベントの開催 中高生世代の興味関心に合った講演会やイベントを開催します。本や雑誌その他の資料には、若い世代が興味を抱き関心を持つテーマが無限に含まれています。本に書かれている中身が体験できたりリアルに感じられたりするイベント等は、中高生世代に楽しみや充実感を提供すると同時に、彼らが図書館を訪れ本に親しむきっかけにもなります。 取組項目③中高生世代へのサービスの推進に向けた資料等の充実 成長に伴い広がる関心領域に対応し、様々な分野の資料、考え方の礎となりうる資料を体系的に収集します。様々な事柄に関する認識を深め世界を広げる幅広い資料、また、感動できる、想像力を掻き立てるような面白い本を充実させます。 施策の方向性(4)学校図書館との連携、役割分担の明確化 1人1台端末時代の学校へ、デジタルコンテンツを含めた資料及び情報を提供し、より豊かで充実した教育環境を支援します。また、学校図書館や、特別支援学級等と連携し、学校図書館と区立図書館の協働・連携事業を検討します。 取組項目①学校及び学校図書館等への資料・情報の提供・支援 調べ学習のための支援貸出、学級文庫への団体貸出を引き続き充実させるほか、区立図書館の電子書籍サービスについて、一斉読書や教室内での調べ学習などのため教室でクラス全員が同じ本を利用できるようにすることを検討します。 取組項目②学校図書館等と区立図書館の連携体制づくり 学校図書館と区立図書館の連携の体制をつくり、資料や利用状況に関する情報交換や資料やシステムに関する情報の共有を図ります。また、どのような連携した事業が可能か検討します。 基本方針3 地域の特徴を活かし人々がつながる図書館 図書館が立地している地域の特徴を踏まえ、それを活かしたコレクションやイベント等を進めます。一人でも誘い合っても気軽に立ち寄れ、また、地域の人々の協力により様々な魅力的なイベント等が行われ、人の交流が生まれ、その結果、図書館がつながりの場として機能することを目指します。地域資料の収集はもちろん、地域の人々や様々な機関との協力・連携を得ながら資料化されていない記録や記憶の収集、公開などを検討していきます。 施策の方向性(1)地域の特色に対応した資料の収集 地域にゆかりのある作家の作品をあつめたり、地域の史跡や伝統、その他の特色にちなんだ資料を集めたりなど、地域をよりよく知るためのコレクション、コーナーを作り充実させます。地域図書館は立地している地区、中央図書館は弦巻地区及び世田谷区全体を対象として取り組みを進めます。また、地域の様々な資料、資料化されていない写真や様々な記録なども地域の人々や各種機関との連携や協力の下で収集、アーカイブ化を検討していきます。 取組項目①地域・まちづくり・区民活動等に関する資料の収集 地域の資料の網羅的収集、整理保存、公開を目指します。地域の歴史、まちづくりや区民の活動等に関する資料は、可能な限り収集し、整理保管、公開します。それらは地域の歴史の共有、地域への親しみや愛着に繋がります。 取組項目②地域の人々や関係機関と連携した地域の記録や記憶の収集・公開 地域の歴史を形作る情報は、必ずしも資料化されておらず、各家庭や団体機関の片隅で眠っていることがあります。記録化もされておらず人々の記憶に残っているだけという情報もあります。これらの情報を記録化、資料化、収集整理し、広く一般に公開するために、郷土資料館やせたがやWeb写真館等とも連携して検討していきます。 取組項目③地域資料のデジタル化の検討 地域資料の中には、全国の図書館の中でも世田谷区立図書館しか所蔵していないものが沢山あります。このような資料は、デジタル化しネット上に利用しやすい形で公開する(アーカイブ化)ことが求められます。 施策の方向性(2)地域活動団体との連携・協働 世田谷文学館をはじめとした(公財)せたがや文化財団や郷土資料館などの文化・資料収集・教育機関を始め様々な機関や団体と連携・協働して地域の活動、文化活動を推進します。また、町会、自治会、商店会などとも連携し、人々の生活の中で本や情報、図書館を感じ、様々な形で図書館を利用して頂く機会を増やすよう努めます。 取組項目①地域の各施設、機関との連携 地域に存在する各施設機関、地域に関連がある施設機関等と連携し、イベント情報の共有、お互いに関連した取り組みの実施、共同事業の企画実施など、様々な形で連携に取り組みます。特に世田谷美術館、世田谷文学館、郷土資料館など親和性の高い施設と、地域に根差した活動や様々な連携を検討します。 取組項目②地域の人々との連携、地域の人々の図書館活動への参加 地域の人々と図書館との距離を縮めるよう地域の人々との連携を強めます。地域の人々の活動に図書館が連携・協力すると同時に、地域の人々に図書館を活動の場(展示、発表等)として使っていただけるよう施設等の条件整備に努めます。また、図書館の業務に多くの区民にボランティア(お話しボランティア、音訳・点訳ボランティアなど)として参加して頂けるよう運営を工夫します。 取組項目③地域の活動団体への資料の提供 地域で本に関連する活動をしている団体、施設に団体貸出の形で資料の提供を行います。読書会等のために複数の人数で利用できるよう一定数の本を長期間貸出したりすることができます。 施策の方向性(3)居心地の良い知的刺激のあふれる施設づくり 落ち着いて快適に読書ができるスペースづくり、また、コーナーや展示の工夫等で知る・学ぶといった好奇心が生まれる空間を目指し工夫します。中央図書館の大規模改修(プラネタリウム含む。)にあたっては、多様な利用ができるようなレイアウトを検討します。   取組項目①落ち着いて快適に読書や調べものができる施設づくり 中央図書館の改修にあたっては、落ち着いて本が読める席、また、調べものができる机、パソコンが利用できる席、環境など館内で資料や情報の利用活用ができるスペースを増やすよう努めます。 取組項目②イベントや展示ができるスペースの確保 本を手に取り読んでみようという刺激が様々にあふれる図書館となるよう、小規模イベントやテーマ本の展示ができる場所を図書館内あるいは図書館が含まれる施設内に作れないか検討します。 取組項目③施設の改修による快適性の確保 区民ニーズを踏まえ居心地のいい空間や多様な活動ができる施設づくりを追求するとともに、SDGsの目標にあるように、環境に配慮し、人々が快適・安全に利用できる、また持続的に利用できる施設づくりを目指します。 基本方針4 それぞれの特性に対応した、多様な人々を包摂する図書館 印刷された文字の資料は利用しにくい、また日本語が母語でなく日本語の読解が困難など、多数の人々向けの資料やサービスだけでは十分に図書館を利用できない方々のために、それぞれの方の事情に対応した資料やサービスの提供を進めます。また、情報社会が進化するなかで、いわゆるデジタル機器を上手く使いこなせない方を支援し、情報社会に対応するためのスキルや活用する力の獲得を支援します。様々な特性を持った全ての人が特別な負担を感じることなく自由に利用できる図書館を目指します。 施策の方向性(1)障害があっても利用しやすい資料とサービスの充実 それぞれの見え方や特性により、使いやすい資料を選べるよう、音訳図書、点字図書、大活字本、拡大読書器、マルチメディアデイジー、バリアフリー図書などを用意します。また、読み上げ機能対応の電子書籍の充実や視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」の活用を図ります。 施設のバリアフリー化を進めると同時に、障害等で図書館への来館が困難な方に対しては自宅配本サービスを行います。また、様々な特性をお持ちの方々に対し十分な情報提供やコミュニケーションが取れるよう工夫します。 取組項目①対面朗読サービスの提供 目が不自由なため印刷された文字が読めない方に対し、図書館の資料等を朗読する対面朗読サービスを提供します。 取組項目②資料の充実及び読書支援機器の充実 それぞれの見え方や特性により、使いやすい資料を選べるよう、音訳図書、点字図書、大活字本、拡大読書器、マルチメディアデイジー、バリアフリー図書などを用意します。また、読み上げ機能対応の電子書籍の充実や視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」の活用を図ります。 取組項目③デジタルデータの提供 パソコン等の読み上げ機能を利用できることから、電子書籍を充実させ、印字された文字を読むのに困難がある方の利用促進を図ります。パソコンの読み上げ機能を前提にテキストデータによる資料、情報提供を行います。 取組項目④カウンターでの筆談体制の整備 聞こえない方とのコミュニケーションを図るためにカウンターに筆記用具を常備し、筆談でコミュニケーションが取れるようにします。また、イベント等の際は、会場に手話通訳者の配置を検討します。 取組項目⑤来館困難な方へのサービス 障害等のため来館困難な方を対象に、図書館資料の宅配サービスを行います。 取組項目⑥体が不自由な方も利用しやすい施設へ ユニバーサルデザインの実現のため、図書館内の段差をなくす、ドアを自動ドアを採用する、必要な場所には手すりを設ける等を行い、だれもが利用しやすい施設とします。また、必要な場所には点字サインをつけるよう努めます。 取組項目⑦区民や区内団体や関係機関との連携 誰もが図書館、資料を利用できるような図書館をつくり、サービスを提供するにあたっては、区内の様々な団体、機関と連携を取り協力して進めていきます。また、音訳・点訳ボランティア等の協力を得てサービスを提供します。 施策の方向性(2)日本語以外を母語とする人々に対するサービス 利用者の母語の資料を収集し、日本語以外を母語とする方でも、一定の範囲では母語で本が読め、知識・情報が入手できるようにします。また、図書館の利用案内は多言語で作るとともに、やさしい日本語やサインを活用し図書館の使い方が理解できるようにします。 取組項目①日本語以外を母語とする人々への資料提供等 区内在住の方々の母語(日本語以外)の主要な言語を中心に、暮らしに必要な資料・情報が母語で入手できるよう資料の収集・提供を引き続き行います。資料の収集にあたっては当事者の要望を把握し、要求に合ったコレクションとなるようにします。 取組項目②日本語以外を母語とする人々への利用案内等 利用案内等の多言語化について一層の努力を図るとともに、日本語で作成する場合は、日本語が堪能でない方でも理解できるよう、わかりやすい優しい日本語で記述します。 施策の方向性(3)デジタル機器を上手く使いこなせない方への対応 図書や検索機能がデジタル化する中で、図書館利用者がデジタル化に応じ資料検索等ができるように支援をします。 取組項目①デジタル機器を上手く使いこなせない方に対する支援 パソコンやスマホなどデジタル機器の操作が分からない、インターネットでの目的のWebが見つからない、アプリの操作が分からないなどのデジタル機器をうまく使いこなせないという方々向けに、外部講師による講演会などイベントを開催します。 取組項目②デジタルコンテンツ閲覧環境の充実 ご自身でデジタル機器をお持ちでなく、ネット上の情報を見ることが出来ない、あるいは、電子書籍を読むことが出来ない等の方に、館内でのデジタルコンテンツ閲覧環境の充実を図ります。 基本方針5 図書館DXとリモートサービスの推進 図書館利用の利便性を高め多くの区民に利用してもらえるよう手続きのデジタル化を進め、サービス改善に取り組みます。図書館ホームページを改善し、様々な資料を探し、ホームページから利用できるサービスを増やします。図書館まで来なくても資料を受け取れるサービスをさらに発展させることを目指します。AIなど新しい技術の発展にも注目し、その活用を検討します。 施策の方向性(1)非来館型図書館サービスの充実 図書館のホームページの機能を充実させ、ウェブ上で完結できるサービスを増やします。資料・情報検索システムの機能を充実させ、特定資料の有無を確認できるだけでなく様々な角度から資料や情報を検索・発見できるようにします。また、資料の予約・貸出に関しても、開館時間中に図書館に来なくとも資料を受け取れる体制を検討します。また、文献複写物の送信サービスについても検討します。   取組項目①図書館ホームページ機能の充実 図書館ホームページの機能充実等により、ホームページ上でできることを増やします。また、ホームページから利用できる検索機能を向上させ、探している資料や情報を検索・特定しやすくします。 取組項目②図書館サービスを利用するためのアプリの検討 現行の共通利用カードだけでなく、スマホの画面に利用者IDのバーコードを表示することで資料の貸出しができ、紙のレシートを受け取らなくても借りている資料とその期限が分かるなどペーパーレスの実現と利用者の利便性向上のために「世田谷区立図書館アプリ」などを検討します。 取組項目③非来館型図書館サービスの取り組み 宅配ボックス型のブックボックスを設置し、図書館開館前の早朝や閉館後の深夜に図書館以外の場所において、予約した図書資料を受け取ることができるブックボックスの本格導入に向けて、検討、設置に取り組みます。また、文献複写物を送信するサービスを検討します。 取組項目④電子書籍サービスの拡充(再掲) 令和2年度より導入した電子書籍サービスを一層充実させます。利用できるコンテンツの質・量を充実させるよう努めます。また、利用の仕方についての広報、利用の支援も行います。 施策の方向性(2)図書館利用の利便性の向上 デジタル化によって図書館利用の利便性向上を目指します。セルフ貸出システムの一層の活用を進めるとともに、共通利用カード(利用者登録カード)のデジタル化、順番が来た予約資料のセルフ貸出等を検討します。また、閲覧席の数や利用者属性などに合わせて、閲覧席の予約・使用管理システムを検討します。 取組項目①貸出・返却の利便性向上 全館全資料へのICタグ貼付を進めるとともに、それを活用し貸出・返却の利便性を一層高めます。セルフ貸出機の増設、予約資料セルフ貸出の仕組みなど、利用者自身での貸出手続きの拡充を検討します。ただし、対面での処理を希望される方には引き続き対面での手続きを行います。 取組項目②閲覧席の予約システムの検討 閲覧席の数や利用者属性などに合わせて、席の予約と利用管理ができるシステムの導入を検討します。あらかじめ予約して来館することによりスムースに席を利用でき、また、多くの利用者にとってストレスなく公平な利用管理ができることを目指します。 施策の方向性(3)次世代図書館情報システムの機能検討 人々にとって有用な多くの情報が紙の世界にとどまらず、デジタルの形で、またネット上に膨大に存在していることを鑑み、それらの情報を統合的に検索し利用するシステムを検討します。また、ロボットやAIなど先端テクノロジーの動向を注視し、図書館での活用を検討します。 取組項目①図書館情報システムの機能検討 図書館の蔵書だけでなく、オンラインデータベースや電子ジャーナル等の様々なリモート情報源を統合して検索し、求めていた情報を発見、特定、利用するあたらしい情報検索システムについて調査研究します。 取組項目②AIの活用検討 進化・進展が加速するAI技術に注視し、チャットボット、ロボット、生成AIなどの新しい技術によって図書館でどう活用できるか、検討していきます。 基本方針6 専門性と効率性を両立した運営体制 職員研修を強化し、職員の専門的能力を高める取り組みを進めるとともに、図書館のマネジメント機能や能力を強化し、計画の実行力を高めます。図書館運営協議会において利用者ニーズに即した図書館運営やサービスの評価・検証も踏まえながら、今後の図書館運営の在り方を検討します。また、その前提となる評価指標についても検討していきます。 施策の方向性(1)図書館運営に関する高い専門性の確保 職員が、資料や情報の専門家として利用者から信頼を獲得できるよう研修を充実します。資料や情報を扱う知識やスキル、地域や行政に関する知識、コミュニケーション能力やリーダーシップ、マネジメント能力など、サービスを展開し図書館を運営していくための力を身に着けさせます。   取組項目①職員に必要なスキルと専門知識の向上 人材育成計画を立案し、図書館サービスに必要な図書、情報に関する知識、スキルの習得を目指す研修をはじめ、必要な専門能力の獲得、支援を計画的に実行します。司書資格取得のための講習に職員を派遣します。 また、図書館サービスや業務の幅が、子どもへのサービス(快適な居場所づくりなど)や地域づくり地域活動などの支援、さらに今後は情報技術的なサービスなどへと広がっていくことを踏まえ、そのためのスキル獲得するための研修を行い、またそれらのスキルを持った人材の配置に取り組みます。 取組項目②図書館専門職に関する新しい職員制度の検討 図書館に専門的な知識及びスキルを持つ職員を体制として確保できるよう、組織体制及び人事制度の検討を行います。また、専門的な知識及びスキルを持った人材確保の方策についても、試行を含め検討します。 取組項目③図書館運営のマネジメント能力向上 図書館ビジョンの計画実行に向けて、図書館運営のマネジメント能力を向上させるための実務研修、外部研修を行います。また、他部署へのジョブローテーションを通じて、組織としてのマネジメント能力を向上する体制整備について、庁内外の関係部署と検討します。 施策の方向性(2)効率的効果的な図書館運営の在り方 指定管理、業務委託など民間の活力を生かした運営手法に関し、図書館運営協議会における利用者の視点からの意見等を踏まえ、今後どのような体制で運営するか施設ごとの機能を整理し検討します。また、世田谷区立図書館全館の業務を統括しサービス水準を向上させることのできるよう、中央図書館を中心に、業務標準の明確化、体制の整備、計画の遂行・推進を図ります。 取組項目①業務委託館、指定管理館を含めた施設ごとの運営評価の実施 図書館運営協議会における区立図書館の評価・検証や区の指定管理者制度運用にかかるガイドラインに基づく個々の指定管理館の運営状況の評価など、外部の視点を通じた意見等を踏まえながら、すでに実施している業務委託館(世田谷・梅丘)、指定管理館(経堂、烏山、下馬)を含めて、区としての運営評価を行います。 取組項目②直営及び民間活用それぞれの強み弱みを踏まえた施設ごとの管理運営方式の検討 上記①の区としての運営評価等の実施や、第2章(4)「図書館運営体制に関する振り返り」で述べた様々な課題を整理し、指定管理者選定委員会による評価を実施する令和7年度にあわせて、直営および民間活用それぞれの特色を活かした施設ごとの管理運営方式を検討します。その検討結果を踏まえ、令和8年度以降に民間活用を図る施設について、区民や関係者に示していきます。 なお、改築や大規模な改修を実施する地域図書館など、自由度の高い図書館サービスの充実を図る場合は、世田谷区立図書館運営体制あり方検討委員会報告書に基づき「指定管理者制度」の導入を選択肢として検討すべき図書館と考えられることから、当該制度の活用を基本に検討します。 取組項目③個別課題への対応 定年延長など人事制度の変革により地域図書室職員の人員確保や、耐震補強工事のスケジュールが定まらない奥沢図書館の今後の取り組みなど個別の課題については、本ビジョンの計画期間中での検討に取り組みます。 取組項目④中央図書館のマネジメント機能の充実 区立図書館の円滑な業務遂行として、直営館、委託館、指定管理館が混在している状況において、図書館全体の業務水準を中央図書館がリーダーシップを発揮して、人材確保、組織体制や業務指針の整備、検討を行います。 施策の方向性(3)事業・運営の指針・目標の設定 定期的に利用者アンケートを始めとした利用者の意見・評価を収集する取り組みを行い、利用者の視点を取り込んだ運営の評価を行います。その際の指標については、世田谷区内外の知見・経験を踏まえて検討し、明確化します。また、評価を踏まえて、改善アクションを起こし、業務及びサービスの質の向上を図ります。 取組項目①定期的な事業実施状況や運営状況の評価 確実に図書館計画の実行、図書館サービスの向上を図っていくために、事業統計、事業報告、利用者からのアンケートなど様々な方法で、定期的に事業実施状況、運営状況を把握し、評価します。 取組項目②評価や運営方針への利用者の視点の取り込み 評価にあたっては、運営側の視点だけでなく図書館運営協議会の意見を踏まえるなど利用者からの視点を取り入れるようにします。図書館ビジョンに基づく取り組みを意識した定期的な利用者アンケート調査を実施、利用者の意見を把握し、それらを踏まえた改善のための方針を策定します。 取組項目③図書館運営の成果を的確に把握できる評価指標の検討 有効有用な評価をするための評価指標を検討します。事業の回数や利用の量などのアウトプットに関する指標だけでなく、利用者や地域社会に生じた変化や与えた影響を把握するアウトカム指標も検討・活用し、PDCAによる計画評価に取り組んでいきます。 取組項目④SDGsに配慮した図書館経営 図書館の運営及び図書館サービスの提供のすべての局面で、環境への配慮、人権・平等・多様性への配慮、持続可能な運営などSDGsに配慮した運営・サービスに取り組み、その目標達成を目指した図書館経営を行います。