障害のある人もない人も共に楽しめるスポーツ・レクリエーション交流事業 第1回講習会 講義テキスト 【スライド3】 今日の講習会ですけれども、まずはこの事業のタイトルでもありますように、何らかの障害のある方だけの体験会とか教室とかいうのはけっこうされているんです、今でも。特に2020のオリパラの前には東京都も、もちろん世田谷区も相当な予算を組んで体験会をやりました。都知事も、なんかボッチャの都知事じゃないかというぐらいえらくボッチャが気に入ったんだと思いますけれども、とにかくそういう事業がいっぱいありました。それでそれなりに根付いた部分はあるんですけれども、ちょっと負のレガシーの方が今新聞を賑わすようになってしまって、私なんかは内部にいましたのでもうそんなことはよく知っていたことなんですけれども、まあやっぱりなという感じなんですが、とにかく障害のある方のことをちゃんと理解するということは大前提なんですけれども、それではやっぱりせっかくパラリンピックをやったレガシーとしてはだめなんじゃないっていうのがもうずっと私は思っていましたので散々こう言ってきたんですけれども、だから世田谷区だとかその他の自治体からもご依頼があって、この世田谷区の同じような形式でやってほしいということで、今でも杉並区とかで頼まれてやっています。 最初に書いてあったと思います。他の自治体でもやっています。首都圏以外でもやっています。というようなことがあるので、この共に楽しむスポーツ・レクリエーションというふうな表記、これスポーツ基本法でこう書いてあるんです。スポーツ、・(中黒)、レクリエーションって。でも、おそらく皆さんにとってはスポーツといったらどんなものといったら、大体の方がイメージはお持ちだと思うんです。だから今日の話の主題からはちょっと置いておきます。ただどこかで一回おさらいはした方がいいなとは思っていますけれども、ひとつレクリエーションという、この表記は確かにスポーツ基本法という法律にこういう表記がしてあるんですけれども、私たち専門家からするとこの表記は明らかに間違いなんです。こう書いてはだめなんです。こう書くとどうなるかと言うと、スポーツというものがあって、スポーツじゃないものとしてレクリエーションというものがあるとなっちゃうんです。そうすると、じゃあサッカーが大好きで高校までサッカー部に入っていてガチでサッカーやっていました、でも高校卒業してからはその高校のOB会、卒業生でチームを組んで市のリーグだとか出たりして、もう全然そんな高校時代のように勝ったり負けたりとかではなくて、とにかくみんなで集まってサッカーやって、みんなで後で飲むビールがおいしくてやっていますよというようなサッカーを続けているとなったら、これは生涯スポーツの領域です。 そう、生涯スポーツといってもスポーツなわけですから、じゃあ何のためにやっているんですかといったら、いやサッカーが楽しくてさあ、というふうにやっているわけじゃないですか。楽しくてやっているとなったらこれ、レクリエーションというのに入りますよね。つまりスポーツをトップアスリートのように人生かけてやるとか、それから本当にプロスポーツのように、まさに今ワールドカップやっていますけれどもあの人たちは仕事としてやっていますから、それはレクリエーションとしてやっているわけではないんです。でも、このスポーツも全部がレクリエーションに入るわけではないんです。仕事としてやっている人がいるんです。ではない人はほとんどレクリエーションとして、楽しみとしてスポーツをしているわけです。そうすると、スポーツというのがあって、それ以外にレクリエーションというのがあるといったらスポーツはレクリエーションに入らないということになっちゃうじゃないですか。それはおかしいですよね。皆さんだっておそらく大多数の方が体を動かしたり、運動したりするのが楽しみのためにやられているという方もおられると思うんです。その方にはなんでそうやって体動かしたり、運動したり、スポーツしたりしているのといったらやっぱり楽しいからでしょとなったら、レクリエーションじゃん、となるわけです。 ではみんなで楽しく体動かしましょうよ、運動不足だからやっぱり体動かした方がいいでしょうとかそうなってきたら、スポーツと表記するよりも運動と言った方がいいんです。運動とかスポーツとかいうようなニュアンスで捉えてもらった方がいいんですけれども、それを継続的に日常の生活の中で取り込んで、体を動かしたり、みんなと一緒にボールを追いかけたりするのが楽しくてとなったらその方にとってはレクリエーション活動になるわけですから、そのレクリエーションというところが一番大事なので、この辺の、今日は特にレクリエーションというところに焦点を当てて前半お話しします。 皆さんからいただいている情報ではすでにレクリエーション介護士という資格があるのはもちろん承知しております。お持ちの方もいらっしゃいます。それから、世田谷区のスポーツ・レクリエーション指導者というふうに書いておられる方もいらっしゃいます。世田谷区としてもこうしたスポーツ・レクリエーションということに関してのリーダーをたくさん増やそうということでやられていると思うので、そこで聞かれたレクリエーションというものをどう捉えるかという話と、私の立場からお話しする話は違うところがけっこうあると思います。 どうしてかということなんですけれども、ここをあんまり長くしゃべってしまうと時間的に足りなくなるので簡単に申しますと、パラスポーツというのは生涯スポーツの中の一部なんです。別にパラスポーツだけに限った話ではないので、生涯スポーツ、その生涯スポーツの原点というかベースはレクリエーションなんです。私の学問的なバックボーンというか一番のベースはレジャー・レクリエーション学という学問なんです。そんな学問領域があるのかと初めてお聞きになる方もいらっしゃるかもしれませんが、学会もちゃんとあります。そのレジャーとかレクリエーション学という学問領域を日本の大学で専門的に勉強しようとすると、学科ないんです。日本人で、遊んだりとか、レクリエーションとか、レジャーとかいうようなことを専門的に学べる大学とか高等教育機関はないんです。なぜかって、ニーズがないから。なのに、日本人は働き過ぎなんです。働き方改革とかやっているじゃないですか。結局みんな遊べてないんです、うまく。日本人は。欧米から見ると、日本人はすごく不思議な人たちに見えるんです。 私はアメリカの大学院にいってこのレジャー・レクリエーション学というのを専門に学びに行ったんです。向こうから見ると、本当に日本人は何でこんな働いているんだろうなとつくづく思いました。中にいるとなかなか、みんながそうしているからそんなもんだろうと思うかもしれないけれども、海外から見るとやっぱり日本人は本当に不思議な国民なんです。でも、だんだん海外との交流が進んで、どんどん海外の人入っているじゃないですか。そういう人たちは、例えば外資系の企業なんかにいると有給休暇取るなんていうのは当たり前だし、取らないと上司から怒られるんです。休みなさいと言われるわけです。だからそういうような所で働いている人たちも増えてきたし、だんだんそういう意味では欧米化してきて、意識も有給休暇なんて取って当たり前みたいなそういう雰囲気になってはきているものの、やっぱり高齢の方になればなるほどまだ古いタイプの日本人の感覚、遊んでいるとなんか悪いように見られるというそういう感覚がやっぱりあるわけです。そうじゃなくてねというようなところがあって、レジャー・レクリエーション学といっても幅が広いんです。 その中のセラピューティックレクリエーション。これも書いてもしょうがないので書いていませんから、ちょっと聞き流してください。セラピューティック、セラピーっていったら治療ということですよね。セラピューティックは治療的ということなんですけれども、その治療的レクリエーションというふうに直訳しちゃうと、私がアメリカの大学院行って勉強したセラピューティックレクリエーションという専攻は、治療的レクリエーションというふうに訳しちゃうとちょっとニュアンスが違うんです。 そうでなくて簡単に言うと、自分が映画を見に行きたいとか、それから飛行機のチケットを取ってカタールに行ってワールドカップを応援したいとか、それからカラオケに行って歌をうたいたいとか、それから週末、いつも競馬が好きで馬券買って競馬場行ってとか、楽しみたいことは皆さんそれぞれありますよね。皆さんにもおありだと思うんです。それが何らかの原因で、例えば経済的な原因かもしれないし、それから例えば障害があるというようなことが1つの原因かもしれません。それから家族の理解が得られないとかそういうこともいろいろ要因があるんですけれども、そうしたいろんな要因がある中で、自分がこうありたい、こうしたい、こういうふうにして人生を楽しんでいきたいと思っても、その要因があるがためにうまくできない人、あるいは何をしたら自分は楽しいと思うのか、人生楽しいと思うのか、何をすれば生きていてよかったというふうなものになるのかがよく分からないというような人もいっぱいいます。日本人は特に多いです。 そういう何をしたら楽しいと感じるか、何をすればいいのか、やりたいと思うけれどもやれない、これは特に何か障害があるということが1つの要因になってできないというような方々がいたら、例えば病院で長期に入院している患者さんなどはずっとベッド上でいたら、やっぱりだんだん生きている意味だとか人生だって考えちゃうわけです。自己治癒力、早く元気になろうという気持ちになってこないと、やっぱり治りが遅くなっちゃいます。だからアメリカなんかは病院にそのセラピューティックレクリエーションのスペシャリストがちゃんといて、どんどん患者さんに、自分で治していこう、早く退院して早く遊びたいというふうに思ってもらおうというのでちゃんと配置されるんです。 そういうようなセラピューティックレクリエーションスペシャリストというのをアメリカでは養成しているんです。精神的に病んでいる方だとか、学校に行きたくないだとかそういう方たちに、こういうことしたら楽しいじゃん、楽しいということめっければ元気も出るし、元気が出れば学校行こうかなと思うし。そもそも学校行ってもつまんないから行かないわけですよね、全部がそういう理由ではないんですけれども。人とうまくお付き合いして、みんなとワイワイするのが楽しいなと思えば人の中にも入っていけるし、そういうようなところをサポートする専門的な知識を持つ専門家をアメリカが中心になって、カナダもやっております、ドイツでもやっていますし、それがもう大学のひとつの学部・学科として、レジャー・レクリエーション学部・学科としてセラピューティックレクリエーション専攻というのがあるんです。そこで私は勉強してきたので、だから何らかの障害のある方々が楽しいと思えるようなことをどういうふうな支援・サポートをすればそういう気持ちになってもらえるか、あるいはどういう支援をすればその方がしたいと思うことができるようになるかというベースを勉強してきたので、日本に帰ってきて日体大に勤めるようになったら、武器はやっぱりスポーツ。日体大だから。スポーツというのはそういうレクリエーションとして継続的にみんなが楽しんでもらえるその要素、ツールですよね、道具としてはうってつけなんです。 なので、何らかの障害のある方にも人生をより楽しくするために体を動かして、運動して、スポーツしてという立場で関わっていたんです。そしたらこのちょうど基本法で障害者はと入っちゃったので、なんか障害者スポーツというだけのレッテルが貼られちゃったんですけれども、ベースはレクリエーションの方なんです。学問的に言うと。それがあるので、一般の方がレクリエーションに関して学ぶ機会もないわけではないんですけれども、そういう時に話をされる講師の先生の話と私が話す話の内容ではそういう意味で立ち位置が違うので、でもむしろ私はこういう専門的な領域で学んで、かつ現場で実践してきたから皆さんにお伝えできることがあるんだというふうに思っていますので、話は話として聞いていただいて、なるほどそういうことかと思われるところはちょっと頭の中をリセットしていただきたいし、そういうこともあるのかということでちょっと付け足していただいてもいいなというふうに思っています。 これ、1回聞いて理解できるようだったら大学院まで行く必要はないので、こんな2時間ばかりの話でそれが全部分かるわけではないので、実技とかいろいろ講習会、今回の講習会を通して私ずっといますので、一緒に話をしながらちょっとずつ理解していっていただければと思います。 さあ、後半は障害のある人もない人もというので実技をやります。実技のやっぱり配慮・工夫というのも必要です。なぜかと言ったら、今、障害者差別禁止法という法律があるんですから、障害を理由にこれはだめ、あれはだめ、うちでは受け入れられませんと言っちゃいけないんです。国および自治体および民間事業者でさえ、障害を理由に合理的配慮をしなければならないというのは義務ですから、今。改正障害者差別禁止法が施行されて民間事業者も入ったわけですから、介護福祉施設だとかもこれやらなきゃいけないことになっているわけです。なので、運動したいと言った時に、いや、うち専門のスタッフいないから無理と言っちゃだめなんです。合理的配慮をしていません。だから合理的配慮をしないといけない。というので今日の話を活かしてください。 じゃあ次いきます。 【スライド4】 さあ、いよいよレクリエーションということなんですけれども、すごく簡単に言うと、私たちのセラピューティックレクリエーションの領域では、レクリエーションは、普通皆さんはレクリエーションといったら何をイメージするかといったら、レクリエーションといえばそうだなあ、みんなで歌をうたったりとか、カラオケ行ったりとか映画見たりとか、そういうのがレクリエーションなんじゃない?DVDをTSUTYAから借りてきてとか。だからそれぞれ皆さんイメージがあると思うんです、レクリエーションって。言ってみれば、あなたにとってのレクリエーションは何ですかと聞くのと同じような感じで、レクリエーションというのはこうだろうというイメージがあると思うんです。でもそれはそのひとつの何か活動をイメージしているわけです、頭の中で。でもレクリエーション活動といったら、その方にとってのレクリエーションたり得る活動になるんですけれども、活動という文字を取っちゃったらレクリエーションしか残らないでしょ。じゃあレクリエーションという単語だけだったらどういう意味を持つのかというのが定義ちょっと難しくなっちゃうけれども、そういうことを1回理解しておいたらいいなと思うんです。 どういうことかというと、赤字で書いてあるようにプラスの感情という感情の概念なんです。概念といったらまた難しくなる、感情に関する意味合いなんです。感情は喜怒哀楽とかあるじゃないですか。だからプラスの感情というのは、マイナスの感情というのがあるのと同時にプラスの感情というのがあるんですけれども、マイナスの感情を考えたらプラスの感情は分かりやすいです。マイナスの感情はつらい、苦しい、悲しい、厳しい、嫌だとかこういうのばっかりいくらでも出てくるでしょ、マイナスの感情は。私たち普通に生活していても、マイナスの感情を抱くことはいくらでもあるじゃないですか。もう勝手にマイナスの感情になるようなこと来ますよね。それがずっと続くと、例えばもう仕事でストレス感じて、上司ががみがみ言うし、ボーナスなんか出ないぞとか、生活苦しいなとか、年金本当にもらえるんだろうかとなんかいろいろ考えると、マイナスの感情を抱いちゃうようなこといっぱいあります。それがずっと降りかかってくると、体に異変が起きるじゃないですか。ストレス性胃炎なんてもうしょっちゅうです。胃がキリキリ痛むようなことなんて。 結局マイナスの感情というのはもう勝手に向こうからやってくるんです。だからそればっかり浴びているとやっぱり精神的にダメージを受けます。だから人間は、そのマイナスの感情になることを止められるんだったら止めたいけれども、止められないことだっていっぱいある。その分、プラスの感情になるようなことを自分で見つけて、それでマイナスの感情になって気持ちだとか気分だとか落ち込んだ時にもう一回元に戻してくれるようなことをしなかったら、もうマイナスの感情に押しつぶされていくわけです。それは大人も子どもも。子どもだって今一緒ですよ。そうすると、じゃあこのプラスの感情というのは、代表例は楽しいということです。楽しい。楽しいとかうれしいとか、すてきだなあとか、きれいだなあとか、そんなように感じることはプラスの感情なんです。やっぱりそういうことがなかったらやっていけないですよね、人間。 でもそれがうまく感じられないとしたらその方の責任ではなくて、そういう経験を小さい頃から積んでこなかったら、何をしたら自分はそういううれしいとか楽しいとか面白いとかということを感じられるのかが分からないまま大人になっている人がいっぱいいるんです、日本人は。子どもの頃、散々みんなでワイワイ遊んでくれば、楽しみ方をけっこう覚えてくるんです。ところが日本の子どもたちは、本当に遊べない。特にコロナ禍でそのことは顕著になったと思うんです。いかに人と会えないかとか、外で遊べないとかというようなことが、いかにつらいことかというのがもう痛いほど分かったと思うんです。だからこれはレクリエーションに関して理解してもらう、私はもう絶好のチャンスだと思っているんです。コロナが厳しくて行動制限がかかったということは、まさにレクリエーションに対する見方を変えるきっかけなんです。これ解除されて、みんなだんだん旅行に行ったりと行くようになったでしょ。結局やりたいことはそういうことやりたいわけです。それで気持ちをリセットしたりとか。 レクリエーションというのは、単純にマイナスになった部分を取り戻す、プラマイゼロのところにするだけじゃないんです。それだけで終わるんじゃなくて、さらに人生を豊に楽しくしていくというこのプラスの部分があるからいいんです。そうすると死ぬ時に、ああ、いい人生だった、楽しい人生だった、はい、さようならと死ねるんです。だからプラマイゼロって気晴らしとかそういうふうに辞書なんかで書いてあるんです。回復とか。それはプラマイゼロまででしょ。でもレクリエーションってそうではない。プラマイゼロじゃなくて、プラスにどんどんしていくんです。人生は年取れば取るほど楽しく豊かになっていくべきものです。いろんな経験積んで、いろんな楽しいことをやっていけるようになるから面白いんです、人生は。 でも、本当にこれからもっと高齢者が増えていく中で、それから障害のある方だって長生きできるようになったし、長生きするがゆえに障害のある状態になる、高齢障害者も増えていくのがもう当たり前になってくるのを見ても、そういう方でもああいい人生だった、楽しい人生だったって死にたいじゃないですか。そのために自分でできないことは、専門的な人間のサポートが必要です。それが我々なり、皆さんなんです。そういう存在になっていただきたいんです。だから、レクリエーションというのは感情の概念、感情のことなんだというふうにまず思っていただきたいんです。そのプラスの感情というものが、クオリティオブライフ、生活の質というのを高めていく、あるいはさまざまな怪我・病気というようなのもマイナスな状態ですよね、そういうものを回復させる治療的な効果は絶対にあるんです。だから専門的な知識を持っている人が必要なんです。 【スライド5】 はい。というようなことをベースにしながら、もう一回確認します。レクリエーションという単語だけを見ると、これはプラスの感情という意味。そのプラスの感情になるような活動をレクリエーション活動というんです。だから、レクリエーション活動というのは人と同じでなくても全然構わないし、むしろ人と同じじゃないはずなんです。人によって全然違います。だってカラオケ行くのが大好きでも、カラオケ行っていれば気が済む人もいれば、もう誰が見てもよく分かんないという石を集めている人だっているじゃないですか。何がそんな楽しいのといっても、石集めて眺めてうーんとかやっている人はもうそれが楽しいわけで、他人に理解されなくてもいいんです。本人がそれでいいと。ただ法律に触れたり、人の迷惑はだめですけど。 でも人によって違うでしょ、何が楽しいかは。だから、体を動かしたり運動したり、スポーツをするということが楽しいという人が増えれば、レクリエーションとしてのスポーツ活動が増えていくはずなんです。でも現実は、スポーツ実施率というのは国が定める目標になかなか達しません。運動やスポーツしていませんという人はまだいっぱいいます。なぜかと言ったら、運動・スポーツは楽しくないと思っているから。そんなやる必要ないじゃん、何でやんなきゃいけないのと思っている人が多いから。そういう人に、いややろうよと言ってもやらないです。だって嫌なんだもん。やることがむしろマイナスの感情を感じちゃう。どこでかって、一番は体育です。体育の授業で嫌な思い一回でもしたら、もう二度とやるか、卒業したらもう絶対やるもんかという感じになっちゃう。 代表的なレクリエーション活動というのは、昔はこういうものをレクリエーションと呼ぼうというのがいっぱいあったんです。今でもだからレクリエーション・スポーツと表記するということは、スポーツというのはこっちにあって、こっちにレクリエーションというのがあって、こっちの何か活動として輪投げしちゃったりとか、フライングディスクやったりとかなんていうのはスポーツではなくてレクリエーションだというふうに言っているんだけれども、冗談じゃないって、体動かして楽しいと思えばみんなスポーツなんだから、スポーツでしょと思うんだけれども、何が楽しいかというのを今は、代表的なそのレクリエーション活動ないです。何でもいいんです、その人が楽しいと思えば。人それぞれ。千差万別。ここはだから多様性を認めようというところのやっぱり原点にあるんです。でも、それぞれみんな違うんだけれども、これはみんなで一緒にやった方が楽しいよねというのがあれば、それはそれであってもいいわけです。これはひとりでやるもの、これはみんなでやるものといっぱいあってもいいんです。でも、みんなでやるものがほとんどなくていつもひとりだけでやっているというのだったら、ぜひ他の人とも一緒にやるようなことをやりませんかというふうに、こちらへ引っ張り込みたいですよね。 なぜかと言うと、もう皆さんは経験あるから分かると思う、ひとりでやったら楽しいけれども、やっぱりみんなでやったらもっと楽しいじゃないですか。そうなって欲しいんです。 【スライド6】 レクリエーションの機能は、これは細かいことなので読んでいただければいいですけれども、レクリエーションというものはプラスの感情ですから、こういう感情を抱くということは、人間にとってさまざまな働き、効果・効能です。温泉入る時に、効果・効能表とか書いてあるでしょ。痛みに効くとか、肩こりにいいとか。それと同じようなことだと思ってください。 だからレクリエーションというのは人間にとってプラスになること、いいことがいっぱいあるよということなんです。単なる気晴らしとかそういうことだけじゃないよ、人と人とを結びつけるような、下から2番目の交流機能、特に対人関係の再開発、ひとりぼっちで人と関わるのが嫌だと思っている人も、何か楽しいということがあれば他の人と一緒にやってもいいなあと思うことはあるわけです。それは楽しいから一緒にやってもいいなあと思うわけです。楽しくないことを、あまり楽しいと思わないことをなんか義務的に、はい、じゃあ一緒にやりましょうと言ったって嫌々やることになるわけで、結局それはマイナスの感情じゃないですか。そうならないようにするという意味で、こういう機能ありますよということです。 【スライド7】 はい、次。なんでそうなるのかと言ったら、レクリエーションは単なる経験値だとかそういうものじゃなくて、もう今科学的にちゃんと分析されていて、プラスの感情を抱くというのはどういう仕組みになっているかというのがもういろいろ解明されて、今、脳科学が発達してきていますから、結局脳がやっていることなので、そのプラスの感情というのは。心と言っても結局脳でしょ。脳内物質というのがあるわけです。みんなよく聞くと思います。ドーパミン、これは脳内報酬系といって、ご褒美をもらった感じになるわけです。何かやってほめられたりとか、すごいねと賞賛を受けたりとかすると、なんかちょっといいなあ、気持ちいいなあと思う人の方が多いですよね。それは何かといったら、このドーパミンというのは脳内で出てくるから。だから、あ、ほめられるとか、そういうのはいいことなんだというふうに感じられるんです。 オキシトシンというのは幸福感とか安心感とかあって、ご飯食べたら何か幸せという人いますよね。いろいろつらいことあるんだけれども、ご飯食べて寝たらもうOKという人いますよね。そういう人は、ご飯食べた後はこのオキシトシンというのが出てくるんです、脳内に。それでもう大丈夫。音楽を聴いている時とか。なんか落ち込んだらB’zのこの曲聴くとか決めている人はけっこういるじゃないですか。長渕剛の乾杯の曲聴けばなんか元気が出てくるという人だっている。そういう人はその曲聴いたらそのオキシトシンというのが出てくるんです、脳内で。だから、よし、明日も頑張るかとなるんです。 セロトニンというのもあるんです。これは鬱の方の治療にも使われます。落ち込んだのを戻すには、やっぱり薬も必要な場合もあるということです。それからノルアドレナリン。アドレナリンといったらけっこう聞いたことあると思うんです。スポーツの選手が、さあいよいよ試合だっていってアドレナリン全開みたいなよく言うじゃないですか。そう、元気が出てくるんです。いよいよ戦闘モードになる時に、アドレナリンが体の中にガンガン出てくるわけです。だからそれを意図的に出すようにすればやる気になるわけです、ビュンビュンって。 じゃあこういう物質の中で、ドーパミンはちょっと気を付けた方がいいんです。なぜかと言ったらこれ快楽物質といって、人間の脳の中に快楽中枢というのがあるんです、そこを刺激してあげると人間は快楽、つまり楽しいと思う仕組みになっているんです。この快楽中枢をうまく刺激すればいいんだからドーパミンというのは必要なんだけど、快楽中枢というのをダイレクトに刺激するのにいろいろある。代表例、アルコール、薬物。これ、依存性が高くて中毒性が高いから、アルコール中毒、薬物中毒の方が中毒から抜け出すのはものすごく大変でしょ。なぜかと言ったら、非常に手軽に簡単にすごくいい気分になれるわけです。私、薬物やったことないから分かんないけど、そういう人から聞いた話では。なんかもう自分は何でもできる、最高に幸せ、もう空も飛べちゃうと思っちゃう。それを本当に手軽に今手に入る時代で、こういう人たちはもう明らかに病的な状態だからちゃんと入院させて治療しないといけないんだけれども、その一歩手前だとちょうどよく刺激すればいいんだけれども、この薬物とかアルコールだとかいうようなものは行動嗜癖といって、もうそれをやらないと生きてられないというふうになっちゃうんです。 だから実はそのセラピューティック、治療的と言っているように薬と一緒なんです、レクリエーションって。だから、それまで落ち込んだ生活で人生楽しい事もないし、何をやっても面白いと思わないし、何かこう人生意味あるのかなあと思っている人にうまくヒットする、マッチするレクリエーション活動に引き合わせてあげたら人生ガラッと変わるんです、考え方や行動が。もうそれが楽しくて、それを楽しみに生きていくというふうになれるんです。だから、行動変容というんだけれども、日常的な行動の仕方や物の考え方が変えられるんです。それを薬物使わないで僕らはプログラムでそういうふうになってもらいたい。僕らが薬物使ってはだめですしね。そもそも薬物使うことはだめなんだから。でもレクリエーションというものをプログラムサービスとして提供する私たちは気を付けないといけないんです。もしそれが依存性のあるもので、社会的にやっぱり認められないようなもののところに引き込んでいってしまうようなものであれば、我々の責任ですから。 だから例えばお馬さんが見たいといって競馬場連れて行って、それでお馬さん大好きというので毎週お馬さん見に行くというレベルだったらいいですよね。それで、1回友達に言われて馬券買ったら当たっちゃった。ビギナーズラックです。それで毎週馬券買うようになって、自分の得られる収入以上のものを馬券につぎ込むようになったらアウトじゃないですか。誰が最初に競馬場連れていったんだという話になるじゃないですか。やっぱりそこにいかないように、誰にでもどんな活動でも提供すればいいというものじゃなくて、やっぱり相手を見て、その人の日常の生活の行動様式だとか、経済的な基盤だとか、そういうものもちゃんと見ながら提供していかないと、その人の人生壊すことになるんです。本当にもうバラ色の、うまくいけばですよ、いい人生だって言っていただけるようなことになる可能性もあるし、その方の人生を台無しにしてしまう可能性もあるということがレクリエーションというものにはあるんだということはどこかの心の隅に置いておいていただきたいんです。 だから、セラピューティックレクリエーションスペシャリストというやっぱり専門的にこれを学んだ人間がまずやるべきことなんだということなんです。だからアメリカでは病院に必ずドクター、ナース、それからOT(Occupational Therapist:作業療法士)、PT(Physical Therapist:理学療法士)、それでTRというんです、セラピューティックレクリエーションスペシャリストが必ず配置されています。つまり病院にそういうOTとかPTとか理学療法士とか作業療法士がいるというのはなんとなく皆さん理解できますよね。お世話になったことがあると思います。そこにTRというセラピューティックレクリエーションスペシャリストも入っていて、急性期も、例えば交通事故でガシャッと当たって脊髄を損傷しました。完全な脊髄損傷だったら、おそらく退院したとしても下肢まひだろう。それで車椅子を使う生活になるだろうといったら、急性期はまず治すこと。急性期の病院はそれで終わったら、今度はリハビリテーション病院に転院してリハビリやりますよね。だから日本ではこういうリハビリテーションの段階に入ったらようやくレクリエーションということも少し考えてくれるようになったんだけれども、アメリカでは急性期、まだその最初に入った病院の治療の段階からTRが関わるんです。なぜかと言ったらその治療方針の中に、その後どういう生活をしていくのかということを患者さんと一緒に相談しながらいろいろなことを始めていくんです。 そんなようなことをやっている国がある一方で、そのレクリエーション支援者とか何万人と日本にいるんですけれども、そんな専門的なことをやる人間はほとんどいないという日本と、やっぱりレクリエーションというものに対する認識の違いだと思うんですね。もう1時間になりましたから、もうちょっとで休憩します。 【スライド8】 これも言葉の問題ですから、これまで障害者スポーツと言ってきましたけれども、本家本元の公益財団法人日本障がい者スポーツ協会がパラスポーツ協会に名称変更していますから、言ってみれば障害者スポーツと言ったがゆえに、障害のある人がやるスポーツという認識が広がっちゃったわけです。パラリンピックもやったから余計定着しちゃって、これ本当にどう考えてもおかしいんです。だって障害のある人だけしかやっちゃだめだというようなスポーツなんてあるわけないじゃないですか。みんなあのパラリンピックでやっていたやつとか言うんですけれども、じゃあ陸上競技、水泳競技、障害のある人だけやるんですか。オリンピックにあるじゃないですかと言ったら、どっちとも言えなくなるじゃないですか。だから障害者スポーツといったら障害のある人がやるスポーツだなんて考えはもう消え去るべきです。そうではなくて、障害のある人もやれるしとなったら、もう障害者スポーツなんてそもそもないんです。障害者スポーツという領域とかカテゴリーはないんです。何らかの障害のある人だって、後で出てくるかなと思うんですけれども、2020、さらに2021年、去年やりましたけれども、オリンピックとパラリンピック、何らかの障害のある人のアンケートの結果によると、自分自身障害のある人ですよ、障害当事者はオリンピック見ていた人は50%をちょっと超えているの。パラリンピック見ていたのは40%台です。10ポイントも違うんです。 だから障害があるからパラリンピックというプロトタイプの物の見方というのはもう一切成り立たないんです。障害があったってオリンピック見たいんです。やりたいんです。スケートボードなんかもう、オリンピック終わった後、みんなやりたかったんです。それで車椅子ユーザー、車椅子を日常的に使っている方がスケートボードやりたいと言って、スケートボードスクールへけっこう行ったんです。そうしたら、うちでは障害のある方は指導した経験もないし、受け入れられないと断られてガクッとなったの。 これ差別禁止法に抵触しています。どうしてそこで、じゃあどうやったらやれるか一緒に考えようって言えないのかと。障害のある方だけのスポーツなんて考えるんじゃなくて、スポーツは一つのスポーツ。一緒。誰がやるかだけの問題。子どもがやろうが高齢者がやろうが、男性か女性かなんてもう今言えない時代ですから。LGBTQIA+まで来ているんですから、今。だから性別も、男性・女性で丸付けてくださいというのはもうだめなんです。それぐらい多様な社会に我々は生きているので。国籍だってばらばら。だからそもそも日本語で何かをやりとりするというコミュニケーション障害のある方だっていらっしゃるかと思ったら、外国籍の方で。そういう方にも対応して、我々は誰でもどうぞということです。単に障害あるなしだけの問題じゃないんです。 そういうようなことも考えてパラスポーツと言った方がいいかなということで考えたんだろうけれども、パラスポーツと言ったがゆえに、あのパラリンピックのあれでしょといって、結局パラリンピックの正式競技のことだけを指すような狭い理解をされたとしたら、これ、意図と反しています。だからスポーツはスポーツで一個にまとまればいいんです、本当は。シッティングバレーだって、バレーボール協会が全部やればいいんです。バレーボール協会の中のディビジョンとして、部局としてシッティングバレーをやる部局もあったりとか、そういうふうにして陸上だってパラ陸上協会があるんじゃなくて、何らかの障害があって車椅子のレースをやるという専門家がいるセクションがいてというふうに、陸上競技は陸上競技でしょというふうになっていけば一番いいと思うんです。だから…。まあいいや、そこまでにしましょう。はい、次いきます。 【スライド9】 これはもうデータとして出ているのでよくご覧になると思いますけれども、令和2年の段階で、国内で何らかの障害のある方は、障害者手帳の発行数からの推計値ですからこれ、でも964万人。でも手帳を発行されていない方も数多くいらっしゃいます。そもそも手帳は発行は申請ですから申請しなければいいだけの話で、申請する必要はない。何らかの障害があっても働いて高収入を得ている方はたくさんいらっしゃいますから、だからこれは推計値なんです。しかも施設入所者が含まれてないんです。そうしたらもう1,000万人を超えているのは明らかなんです。これはますます増えるのは当たり前。先天的な障害のある方も増える。なぜかって言ったら、出産年齢も上がっているから。先天的な障害のある出生児が産まれる可能性は高くなっている。しかも長生きするから、当然高齢で機能が衰えて目が見えにくくなる、耳が聞こえにくくなるから、目が見えなくなる。白内障、緑内障で見えなくなる。聞こえにくくなるが聞こえなくなる、それで障害者手帳を発行されるという方が増えてくるのは当たり前なので、もうマイノリティじゃないんです、障害のある方は。だって日本人全体のもうこれ1割いるんですもん。10人いたら1人はいるということです。この割合はもっと増えるんだから、もうそういう方々が地域に必ずいらっしゃるということを前提で私たちはいろいろなことを進めていかないといけない時代に入っているということなんです。 【スライド10】 アダプテッドスポーツとかインクルーシブスポーツとかいろんな言い方があるんです。それぞれ言いたい方はそれを意味するんでしょうけれども、結局スポーツはスポーツなんです。なんと言おうが、スポーツはひとつ。それを誰がどんなかたちでやるかだけの話なんです。そこをやっぱり基礎に置きましょうということです。 【スライド11】 何らかの障害のある方にとってだけの話じゃないんだけれども、この講習会の内容からいうと、スポーツはやっぱり多くの方が健康のためにというふうに、何でスポーツするのと聞いたら、やっぱり健康のためにというのが多いわけです。でも、健康のためとか社会性を養うとかのスポーツ基本法を読んでいただくと分かるんですけれども、もう本当に日本人だなと思うんだけれども、青少年の健全育成というのが書いてあるんです、基本法に。なんでスポーツをそんな青少年の健全育成というところに絡めるかなあと思うんです。だってスポーツの選手、健全育成って、必ず健全育成につながるというんだったら、日体大の学生で悪い学生1人もいないですよ。そんなことはない。人間は人間だもの。スポーツやっていたって悪いやつはいる。やってなくたっていい人はいくらでもいる。健全育成するかどうかというのは、それは結果であって、スポーツをすればいい。しかもスポーツを健全育成のためにやっているからみんな体育で嫌になっちゃう。スポーツといったら、ちゃんと並べとか、あいさつちゃんとしろとか、健全育成のためだからっていやそうじゃないでしょ、スポーツは楽しく体を動かしてみんなでワイワイやるからいいんでしょ、それでスポーツなんでしょと思うんだけれども。 だから手段としてのスポーツにやっぱり重きが置かれちゃってるんです。でもスポーツというのは、学習指導要領にも書いてあるんです、体育の目標って。それは何で体育やるのと言ったら、豊かなスポーツライフを実現するため、つまり卒業後もスポーツを通じて豊かな生活を送るための基礎をつくるんだ、そのために体育教育というのがあるんだとちゃんと書いてあるんです、学習指導要領に。だから、このスポーツだとか体を動かすことだとか体育というのは楽しい、つまり目的としてのスポーツ、それが授業なんだというふうに思うんだけれども、なかなかそうは言ってない。 【スライド12】 何らかの障害のある方々のスポーツの実施率。これ、スポーツ基本計画というのが基本法に基づいて設定されていて、週1回以上何らかの運動・スポーツをする人が40%になるようにしましょうと言っているんだけれども、まだ目標に達していません。世田谷区は世田谷区の独自の政策目標をお持ちですから、区民が今どれぐらいやっているかというのを直近データを見ていただければ分かります。ホームページに出ていますから。私たちはここを目標にやっていただきたいんだけれども、週1だったらトレーニング指導士をお持ちの方いらっしゃるのでお分かりだと思うんですけど、週1で体を動かしてと言って筋力がアップとか週1レベルではあんまり効果ないでしょ。大体週3じゃないですか。だから健康のためにと言っても健康の幅がやっぱり広いんです。本当に体の健康という意味じゃなくて、なんか社会的な健康という意味で週1回は会ってみんなでワイワイやって体動かして、ああいい汗かいたねという感じの健康という捉え方ならいいですけれども。 でもこれ目標40%は何を根拠に40%かというのが問われるんですけれども、もっと大事なことは、週1どころか年に1回もやってないという人は同数いるんです。過去1年間に運動やスポーツをまったくやったことがありませんという人が同じ数いるんです。この人たちが運動・スポーツを年に数回とか月1回とかやるようにならなかったら、実施率の割合は上がってこないわけです。だから我々のマーケットと言うんですけど、ちょっとごめんなさい、市場、マーケットはすでにもうスポーツをやられている方じゃないんです。その方々はもうどうぞどうぞお続けくださいでいいんです。ではなくて、運動未実施者、運動やスポーツ、体を動かすということを定期的にまったくやってない方がこういう集まりに来ていただいて、こういうのだったら私もできる、こういうのだったらうちの子も参加できる、こんな人たちと一緒だったら楽しいなあ、こういうように支援してくださる、サポートしてくださるスタッフがいるんだったら安心して安全に体を動かしたり運動したりすることができる、そういう場所があったら継続的にやろうかという気持ちになりますよね。そのために、皆さんにそういう存在になっていただきたいんです。 だから我々のターゲットは運動・スポーツの未実施者、に来てくださーいって手上げたってスルーですから。来ませんから。来るんだったら苦労しないですけど、来ないんですから。興味ないですから。区報とかにいろいろ教室とかが出たって見ないですから。興味関心ないから。でもそこをどうやったらいいかというのがマネジメントです。それはまた別の機会にやります。 【スライド13】 ちょっとこれデータ古いんですけれども、あんまり変わってないので。 何らかの障害のある方がスポーツ・レクリエーションを実施する主な目的として、やっぱり健康増進のためというのが多いんですけれども、それ自体は全然いいんですが、赤い丸付けといたんですけれども障害のない方、健常者っていう言い方は僕、絶対使わないようにしているんですけれども、データ上こう出ているのでしょうがないですけれども常にすこやかな者というのが障害のない人だという言い方がすごい上から目線ですよね。こういうのが差別を生むんです。障害のない方との交流のためというのは0.8%しかないんです。これで障害のある人もない人も一緒にやりましょうと言ったって、障害のある方はそもそも望んでないんです。ニーズがない。ニーズがないところはいくら障害があるなしに関わらず一緒にやりましょうと言ったって、やっぱり来ないです。じゃあどうするか。ニーズを掘り起こす。ニーズをつくり出さないといけない。そのためにどうするかというところからこういう事業はスタートしていかないといけないです。 下、誰とやっていますかといったら、ひとりと家族が圧倒的多数。結局みんなで一緒にワイワイとやるのが楽しいというのは、我々は分かるんです。経験があるし。そういう感情を抱くような脳内物質が出る経験をしているから。でも、小さい頃から障害があって、学校と家、バス通学で学校と家だけ。外に出るというのは親御さんのいろいろこう、お二人とも働いているから、家にいないとひとりでは外に出ていけないとかいうようなご家庭だっていっぱいあるわけです。そうすると経験がないから、どうしてもやるのがひとりだったり家族とになっちゃうんです。これが地域の人とか友人とかがもっと増えていかないといけないから、そういう経験、場所、機会、チャンスをやっぱり我々は提供していかないとだめですよね。そこで楽しいと思っていただけるかどうかがポイント。 【スライド14】 何がスポーツ・レクリエーションをする上で壁になっているか、バリアになっているか。一般的な全国調査、世論調査では、常に「忙しい・時間がないから」が1位です。だけど、何らかの障害のある方に限っていうと、「金銭的な余裕がない」が1位に出てくるんです。ただし、これは障害種別と言うんですけど、次のスライドを見て見ます。 【スライド15】 これ次のことなんですけれども。障害と言っても、身体障害、知的障害、精神障害、その他の障害の四つに分かれるし、身体でも肢体不自由、視覚、聴覚、内部といっぱいあるじゃないですか。でもそれで分けてみると、金銭的な余裕がないのは視覚障害と知的障害と発達障害、これ精神障害に含まれるんですけど精神障害と、なんです。だからこれ就労との兼ね合いがあるんです。働けるかどうか。 それから「移動交通手段がない」は、身体障害の肢体不自由の車椅子を使ってらっしゃる方は移動手段がないからそういう場所に行くのが難しいと言っているんです。そうすると、我々体育館にいてこうやって「はい、みなさん来てくださーい」と言っても、そもそもこの体育館に来られなかったらやりたくても来られないわけです。そこをどういうふうに誰が保証するか。誰が担保するか。そこを考えてあげなかったら、こういうのやっていますよ、来てくださいといって行きたいのに行けないなあといったら余計ストレス感じちゃうわけです。そこをどうカバーするかまで考えて我々はやっぱり事業を企画し、運営しないとだめだと。 だから障害者別によって違うんです。身体障害の肢体不自由で車椅子を必要としない、立位で、歩いて来れる方。体力はない。じゃあこれどうカバーするかです。聴覚障害は時間がない。つまり聴覚に障害があってもやっぱり就労の機会は他の障害種に比べると多いから、だから金銭的な問題じゃなくてむしろ忙しいと言っているわけです。その他内部障害とか、それから難病がこのその他の障害というところに入るんですけれども、そこは体力がないとなるんです。難病だったらやっぱりそうですよね、いろいろ行動制限が加わるから。だから、我々は単に障害のある方もどうぞというふうに言ってもそれぞれ事情は違うんです。そこを含めて、じゃあ自分が対象とするエリアだとかこういう地域の方々を相手にしようと思ったら、そこの地域にどういう方々がお住まいなのか、障害のある方といってもどういう障害種の方がいらっしゃるのか、そういう方々が何が困っているのか、何を求めていらっしゃるのか、それをちゃんと把握した上でプログラムというのは考えていかなきゃいけないということになるわけです。それを全然無視して、はい、みなさんボッチャ教室やりましょうと言っても、それはボッチャ教室やれるものならやりたいし、行けるものなら行きたいけどもという方に全然アクセスしていなかったら、それはボッチャ教室やっても来れる人はいつも一緒。来てボッチャ教室楽しいと思う人ばっかりで、リピーターがずっと固定化しちゃって、他の人は広がらないとなるわけです。そうならないようにするためにどうするかというのはなんか考えないといけないよということになるんです。 【スライド16】 じゃあいきます。福祉に関係する仕事をされている方は、多分介護福祉士とかの資格を取るための勉強をするカリキュラムの中に、このAPIEプロセスというものはあったことがあると思います。一般企業に勤めてらっしゃる方はPDCAサイクルといったらよく分かると思うんです。PDCAサイクルというのはどっちかというと企業経営だとか組織運営だとかに向いているプロセスなんですけれども、ことレクリエーションプログラムというものを考えていく上ではこのAPIEプロセスの方が向いているんです。なので、これがメソッドだというふうに考えていただいて、APIEプロセス、「エー・ピー・アイ・イー」と書いて「エーパイ」と読むんですけれども、APIEプロセスについて基本的に理解していただければと思います。 Aはアセスメント。査定と言うことなんです。出ていましたよね、査定。車を買い取ってもらおうと思ったら、中古車センター持っていくと車の走行距離だとかタイヤの減り具合だとかボディに傷がついているだとかいうのを見て、じゃあいくらで買い取りますよと査定するじゃないですか。あの査定です。だから、プログラムをやる時に対象となる人、さっきマーケットと言いましたよね、そのマーケットにどれぐらいの方がいらっしゃって、どれぐらいの地域に募集をかけるのかということによって応募してきてくださる方が、障害のあるなしに関わらず応募してきてくださるわけです。その方々をちゃんと、一人ひとりをどういう状況・状態なのかというのを把握しないと、どのプログラムがより適切かというのが分からないわけです。 例えば障害があるというのが丸付いているとしても、それだけじゃ全然分からないじゃないですか。障害有りといってもどういう障害なのかによってやれることとやれないこと、やりやすいこと、やりにくいこと、違いますもんね。だから、ちゃんとアセスメントをする。施設の方は、施設に入所されるとか通所を開始する時には、必ずインテイク時のアセスメントというんです。インテイク時というのは、入所時とか利用開始時とかにちゃんと書いてもらったりするわけです。この人どういう人なんだろうって分からなかったらどういうサービスをすれば適切か分からないですから、普通やりますよね。病院に行ってもまず問診票に書いてくださいと言われるじゃないですか。あれ、早く診てほしいのに、ドクターに。早く診察してほしいのに問診票書くのちょっと面倒くさいですよね。でも、やっぱりまずその問診をして、ある程度どういう治療が必要なのかの当てをつけてからやらないと、やっぱりスムーズに早く、適切な治療だとかプログラム提供ができないんです。 なので、まずこのアセスメントが必要なんです。ここがAPIEプロセスの特徴なんです。まずアセスメントしよう。今日も実は講習会で受講されている方々は、皆さんスタッフに将来なっていただける、もしくはスタッフ的存在で今仕事をされている方なんですけれども、私は皆さんの、これは個人情報ですから皆さんには渡らないんですけれども、皆さんの状況・状態を記したシートを持っている。だからどういう職業なのかとかどういう資格を持っているのかとか、どこにお住まいなのかというような情報を私は持っていて、皆さんはこういうようなことは分かるだろうなとか、こういう専門性をお持ちなんだからこんな話の内容・レベルにしようとかいうのを決めているわけです。こういうふうにしないと、僕が話したいことを話すんじゃなくて皆さんが知りたい、聞きたい、望んでいることを話した方が、皆さんにとっては満足度が上がるじゃないですか。そんなことを聞くために、そんなわざわざ希望丘体育館まで来たんじゃねえと後になって言ったら、それはもったいない話です。ですので、アセスメントを私だって講習会へ参加される皆さんのことだってしているわけです。年齢も書いていただいています。これは年齢層によって経験値が違ったりとか、考え方が違ったりとか価値観が違ったりしますから、やっぱりそこをどういうふうなところに持っていくかというのが必要なんです。 Pはプランニング。プランニングというのは計画するということですから、普段皆さんやられていると思うんです。でも日本人の特性として、このレクリエーションプログラムをさあ何かやりましょうと言ったら、アセスメントしないで対象者が誰かとか、どういう特性を持っているかではなくていきなりプランニングから入っているんです。まずこれをやろうと決めちゃうんです。それで集めているから、合う人しか来ないんです。それができる人しか来ない。興味ある人しか来ない。ではなくて、どういう人たちにこのプログラムを届けたいのかがあって、その人たちがどういう状況かをちゃんと考えながら企画して、それで情報として発信して応募してくださった方々をちゃんとアセスメントして、それから何をすればいいのかということを考える。この手順が大事なんです。今日は、その後はインプリメンテーションはこの後実技やりますから、その時に私からちょっとコメント出します。 最後評価、エバリュエーション。評価する。これが日本人、本当下手くそなんです。反省会と称して、何か今日はけがなく、みんな笑顔で帰ってくれたから良かった、で終わっちゃうんです。いやいや、それじゃだめでしょと。お一人おひとりの満足度をちゃんと効果測定というのをしないと。だって来る前の期待値と終わった後のその期待にちゃんと応えられたかどうかを評価しなかったら、次にプログラム提供する時の改善点は見つからないじゃないですか。本当に我々が提供するプログラムが参加された方々にちゃんと合っているのかどうか。これは薬と一緒ですから、さっきも言いましたけれども。だから薬は最初は3日分出しますから、全部飲み切ってください。それで3日たったらもう一回来てくださいとよく病院で言われることあるでしょ。それは、3日たって病状が改善していなかったら薬を変えるか、何か変えないといけない。つまり評価をちゃんとするということです。そういうことをちゃんと普段している所はいっぱいあるでしょ。なので、レクリエーションプログラムを提供する、のスポーツもまったく同じことですから、やっぱりその評価までが大事なので、このよかった、けがなくてよかったという反省会ではだめですよね。 【スライド17】 これのプロセスというのはこういうイメージです。ぐるぐる回っていくんです。アセスメントして、プランニングして、インプリメンテーションで実際にやってみて、評価して、それでリアセスメントといってもう一回、それで多少なりとも何か興味・関心の度合いが変わってくれば、またそれに応じたアセスメントをするかプランニングをして、ぐるぐるらせん状のように登っていって、この地域のこういう対象者の皆さんにはこういうプログラムはいいとか、施設であれば施設の利用者さんに対してこういうプログラムをやっていくと利用者さんの行動変容が見られるとかいうのをちゃんと評価しながら、だんだんにプログラムを考えていくというようなことになるんです。APIEプロセスというのはこういうイメージです。だから一回りで終わりではないんです。それがぐるぐるいって、定期的・継続的なプログラムに参加してもらえるようにしていくということなわけです。一発必中はなかなかないですから。 【スライド18】 アセスメントというのは結局何かと言ったら、対象者のことをちゃんと知ろうということです。できるだけ詳しく知ろうということです。特に障害がある方・ない方といったら、障害のある方の障害の内容だとか程度だとかにまず目がいきますよね。そこはちゃんと知っておこうと。それはやっぱりリスクが有りますから、我々は。スポーツを何らかのかたちで提供する以上、誰に対してもリスクはありますから。ただし障害のない方のことをほっときがちなので、そうではないということだけはちょっと頭に入れておいてください。というのは、障害がない、つまり手帳が発行されてないとはいえ、ちょっと年齢が高齢で少し目が見えにくい方がいらっしゃるだとか、障害手帳をもらうほどではないけれどもちょっと難聴気味で、右の耳がちょっと聞こえないというようなことが分かれば、話す時にちょっと左側の方から話すことは多くなるとかいうのはやっぱり我々としてはやるべきことですよね。 それからつえをついていらっしゃる。これは障害がないといってもつえをついていらっしゃるんだったらそこで危険がありますから、そういうことを知る必要はあるので、障害があるなしに関わらず、やっぱり取れる情報はしっかりと取って対象者のことをしっかりと知る。でもすべて分かるわけじゃないんですよね。実際には会場に来ていただいたら、今日もスポ・レクネットの方々がやられていたと思うんですけれども受付しますよね。その前に駐車場があるじゃないですか。まず来所される時に車で来られますかどうですか、何で来られますかというのを聞く必要があるんです。それはまず駐車場の用意を何台分すればいいかということにも関わってくるからするんですけれども、駐車場にいるスタッフはすごく大事なんです。駐車場で降りて来られる時に、車を運転して自分が車椅子使ってらっしゃったら、車椅子出して移乗して、車椅子に乗り換えて来られる様子を見てどの程度動けるかというのはもうそこで情報が取れるわけです。もうアセスメントしているんです。ペーパー上じゃ分からないですからそこは、実際に。どういうタイプの車椅子かというのも、事前の情報で電動だとか、手動で自走してこうやって自分でくるといったって、自分でこぐといってもそんな力があんまり出せないなあというんだったら、運動の強度をやや変えないといけないなという対象になってくるじゃないですか。そういうところをちゃんと見るということです。 受け付けた、それで荷物置いていただくためにご案内する、そういう時の移動のところもちゃんと見ておくというのがアセスメントなんです。だから単純に来ていただいて、ああどうもありがとうございます、じゃあお荷物あちらでといって誰もスタッフ見てないってこれだめです。ちゃんとスタッフ見ているの、荷物置く様子。今日だったら皆さんの来られて座るのも、こちらへお座りくださいというご案内があったと思うんです。これ、そういうご案内をすることによってちゃんとその方を見て、あ、この方こういう状況だなとかいうのを把握する大事な部分なんです。そういうことを考えて、やる。それでペーパー上では分からないところを現場できちんとアセスメントするということが大事です。そこでやっぱり話をするんです。今日すごい天気良かったんですけれども、寒い時普段どうされています?とか何かよもやま話というか、そういうのをするんです。そうすると、いや普段もう全然寒い時は外にも出ないし家の中でじっとしているとかって聞けば、あ、そういう感じだなというのが分かるじゃないですか。いや寒いんだけど毎日外に必ず一回は出るようにしているよとかいう世間話があれば、あ、この方けっこう外に出て運動するということは日常的にされているんだなということが分かる。 コミュニケーションが取りにくいのは、知的に障害があって自発的に自分の言葉をうまく表現できない場合には、介助で来られた親御さんに聞くとかそういうようなことも必要だし、自分で来るけれども、ひとりで行きますということであっても、聞けるんだったら事前に親御さんから普段の様子だとか、特に精神障害がおありの場合にはパニックなんかなったらいけないですから、どういう時にそういうパニックになったりとか、状態がぐーんと落ちてしまうとか悪くなるとかっていうのはありますか、そういう時にどういうふうに家では対処されますかとか、お薬はお持ちになって来られますかとかそういうようなことを聞いておくというのは、体を動かす、運動するというので安全性を担保する意味でも必要な情報ですから、そういうことはちゃんとアセスメントして調べるということです。 【スライド19】 アセスメントというのは、こうやって多種多様なプログラムを提供していくわけですけれども、私たちがやりたいことをやるんじゃなくて、参加される方が楽しいと思ってくださることを提供するということ、その考え方が大事なんです。それをするためには、対象者にどうしたら合うだろうかということを考えておくことが大事です。今日もボッチャとかやりますけれども、ボッチャだって、ボッチャという一つのプログラムはあるけれどもやり方はさまざまじゃないですか。その人のやり方のボッチャというのがあるわけで、みんなが同じやり方でボッチャやらなくたっていいわけですよね。でも、人それぞれのやり方は違うけれども、チームとしてボッチャができればそれでいいわけです。なので、やっぱりこのアセスメントというのが必要だということをぜひご理解ください。 例えば施設でやられる場合には、こういうアセスメント自体は十分できると思うんです。そうするとデイサービスなのか、それともグループホームなのか、それとも入所なのか通所なのかというそういう施設の種別によって、この施設は何のためにあるのか、誰を対象にしてつくられたものなのかという施設の目的があるわけです。その目的に沿って、レクリエーションプログラムというのはどういうレベルで何をすればいいのかというのが当然出てくるので、そこは施設のいろいろ目標とか目的に合ったものというのを考えていかないといけないということはあります。だからこういう体験会のようにみんな不特定多数の方に告知をして、どなたでもどうぞというかたちにするのと、特定の人を対象にするのではやっぱりそもそも考え方のスタート地点が違うということです。アセスメントというのはこういう意味で重要だというのは分かっていただけると思うんです。 【スライド20】 次にプランニングですけれども、プランニングというのは今言ったアセスメントに基づいて、こうやって来られる方々にどういう内容をしたらより楽しいと感じていただけるか。プラスの感情を抱いていただけるかということをベースに考えるということです。だから今回は知的に障害のある方がほとんどで、そうしたらあまり細かいルールで言語指示、言葉による指示を多くしないとプレーそのものができにくいというのは避けたほうがいいです。できるだけサインボードなんかで絵で示してこれやればいいんだというのが分かるようなものだとか、それからある程度見本を見せて、これをまねしてみようというかたちでやったらできるというようなものにするとか、これをやらないとだめなんじゃなくて、この人たちに対して何をやったらいいかということをベースにして考えるんだというのがこのAPIEプロセスの大事なところです。このプランニングの段階で最も重要なことはこういうことなんです。 【スライド21】 アクティビティ分析というんですけど。22ページになるんですけれども、アクティビティ分析はあんまり皆さん聞き慣れない言葉だと思うんですけれども、アクティビティは要はその活動ですから、またはボッチャならボッチャというアクティビティと考えてください。今日、ボッチャ、ペガー、それからダンスと三つやりますけれども、それぞれが、一個一個のアクティビティです。そうすると、まあボッチャでいいです、ボッチャは公式なルールに基づいてやればどうやるかというようなイメージは大体皆さん分かりますよね。あのボッチャというアクティビティはどういう構成要素でできあがっているのかというのをちゃんと分けて考えるんです、まず。公式ルールにのっとって考えてみるのはベースになります。そうすると、3対3、3人対3人とかというベースになるじゃないですか。ボールの大きさ・重さは公式球を使うとしたらこの重さになるというようなことになりますよね。それで何をするといったら、ジャックボールという白いボールを投げて、それに向けて赤投げて、青投げて、遠い方がまた投げてという、こうやってどういう構成でこれはボッチャというのは成り立っているかというのを全部分解してみるんです、一度。 そうすると、この参加者にとってこのパート、この部分がやりづらい、難しい。例えば中度から重度、最重度になるとまたちょっと別ですけれども、重度レベルの知的に障害がある場合、白いジャックボールに向けて自分の持ったボールを投げるということを理解するのは難しいですよね。ボールを投げるといったらどこでもこうやってビーッと投げちゃうとなったら、ジャックボールというものに対して投げるんだというルールは難しい。でもボールを投げるのが面白いというんだったら、投げてもらっちゃっていいわけです。だってそのジャックボールに対して投げるんだという要素を取っ払えば、ボールを投げて面白いと思ってもらえばそれでいいわけです。このボールの重さがちょっと高齢でそもそも投げるの難しいとなったら、ランプというのを使えば…。転がすのが嫌だ、つまんない、自分で投げたいんだとなったら、ボッチャボールを公式のものじゃなくてもっとソフトな持ちやすい軽いボールにしてその方には投げていただくというようなのでもOKというふうに、その方に対してこのアクティビティのこの部分をどうやって合わせていくかということを考える時には、このアクティビティ分析は欠かせないんです。 結局のところ、何がこのアクティビティで一番楽しいかというところは、やっぱり肝なんです。ボッチャやって一番楽しいところは、公式でいけば白いジャックボールに赤と青がボボボボーって投げていって、最後こうやってみんな集まって見て、赤が一番近いとなって、青がここで一番で、赤が何対何で赤の勝ちーとなった時にうおーってなるじゃないですか。だからそこが一番楽しいんだったら、そこだけ結局やれればいいわけです。その途中はカットしたっていいわけです。そしたら1人ずつ順番にというのが難しければ、一斉に同時にワッと投げてどっちが近いとやったっていいわけです。道具だってランプというのはあるけれども、ランプ以外でも別の物を使っても何でもいい。要はそこが一番楽しいというところさえできればいいというぐらいに考えた方がいいんです。だからアクティビティ分析というのは、結局アセスメントをすることによってアクティビティそのものをアセスメントするというような考え方なんです。その一番面白いことさえできればよしというふうに考えて、そもそもこれできる、私にもできる、参加できた、面白かったと思ってもらえればいいわけですから。それが入口だから。そこからだんだんにチャレンジをしてハードルちょっとずつできる範囲で上げていけばいい。いきなり公式ルールでハードル高くてこれでやらないとだめとなったら、それはできる人しかやらないだろうとなっちゃいますよね。 なので、このアクティビティ分析というのは、このアクティビティの一番面白いところは何なのかというのを探す作業だというふうに思ってください。それを早くやってしまう。余計なグダグダ説明を長くして早くやらせろよとか、ボール持ったらもう早く投げたくてという気持ちになるのは人間の性じゃないですか。なんか訳分からないけども、持って投げろというんだったら投げたいでしょ。そしたら1人ずつ順番にというよりはみんなで一斉に一回練習、投げてーと言って投げてもらうとか、その時にこの人はこれぐらいの距離だったら投げられるなといったら、じゃあ投球ラインこの人はもっと前にしようとか、この人はもっと後ろから投げてもらってもいいなとか投球ラインそのものを変えちゃったっていいわけです。そうやって一番楽しいところに早くたどり着くようにした方がいいので、その人がどれぐらいできるかというのをアセスメントするということもありますけれども、そういうためのアクティビティ分析なんです。 障害のある場合にはということもありますけども、障害なくても同じことです。 【スライド22】 アクティビティ分析は。アクティビティ分析にはやっぱり利点があるんです。さっきも言いましたけれども、どんなスキルが必要なのか、どの程度のことができればそれができるのかという事柄のめどがつくということです。やっぱり募集の段階でアセスメントしてもこれは分かりませんから、やっぱり来てやってもらって、とりあえずこれができるかなというのをやってもらってできるかどうか確認をするということです。 グループでやるとなってもチーム戦になっても、今日はチーム戦になりますけれども、皆さんだからそうなるけどもチーム戦として成り立つかどうかというのも人によって違いますよね。場所には来れた。だけどもみんなと一緒にいるのは無理といって走り回る子どもがいたって、そういう注意欠陥多動性障害というのがあれば、それはみんなと一緒にいるというのは無理なことですから、いきなりは。だんだんに何回か来て、ああこの人なら会ったことがあるというふうに信頼してもらわないといけないわけだから、そういうようなグループにどうしたら適応できるかなんていうのもだんだんに考えていくということです。 結局評価をするというのは、このプランニングの段階でこの人に対してはこういうようなことができるようになればよし、今日のプログラムではこの人に対してはこういうようなことをできるようになって、こういうふうなレベルを期待するという、それぞれが何をするというようなことがちゃんと目安が立ちますよね。それができるかどうかというのが評価になってくるので、プランニングをちゃんとしないのに評価しようがないわけです。ちゃんと計画をしておけばきちっとした評価ができる。つまり達成率です。だからスポーツ実施率を50%にしようとか何十%にしようとかいいけれども、それのためには何をすればそうなるのかの根拠がちゃんと明確になってないのになんとなく自治体としてその目標何%と言っても、それ絵に描いた餅ですよね。そのための具体策がなかったらそれはいかないし、じゃあなぜいかなかったのか分からない。この障害者の人が何人いて、実施率何%だからこの人たちは何%ぐらいにしようというぐらいに緻密にちゃんと目標値掲げている。だからトータルすると全体で何%とかいうんだったら理解できますよね。そして本当にそうなったかどうかというのを1年ごとにちゃんと評価していく。それで5年たったところで一回計画見直して、これはちょっと目標値高過ぎたといったら目標値ちょっと落としてもう5年間やってみるとか。こういうようなプログラムというのが、こうしたAPIEプロセスではやられる内容なんです。 【スライド23】 なので、アクティビティ分析の構成要素というのは5つあるんです。体の状態がどうかということもあります。それから社会的な状況というのもあります。これは世田谷区民を対象にとなったら、世田谷区民の特性は他区とは違うところっていっぱいあるじゃないですか、世田谷区独特の。高齢化率は世田谷高いですよね。江東区なんかでは今すごい若くなっているじゃないですか、新しいマンション群が建って。だからそういうようなところだとかを見ながら、このアクティビティの内容によってどれぐらい人がグループとしてやれたらこのアクティビティは進むのかなって。だから本当にボッチャは3対3で、じゃあ6人じゃなきゃだめなのかといったらそうじゃなくて、みんなで一緒にといったら10対10だっていいわけです、別に。それはその10人で仲間になってもらおうと思ったら、10人1チームにしてその中でワイワイ言いながらやった方が、このアクティビティとしてはよくなるわけです。認知的とか情緒的とか管理的というのがあるということです。これはアクティビティやりながら。 【スライド24】 原則なんですけれども、これ2番目に言った分析をする時には、普段通りのアクティビティを分析するって通常やると、公式なものでやるとこうなるよというのをまずベースに置いてそこから分解していって、この要素はもう取り除いてもいいとか、この要素は普段公式なところにないけれども、この対象者にとってみればこの要素を入れておかないと無理とかというのを入れるというそういう意味です。だからまずベースになるものをちゃんと置いておいて、そこから分析していくということです。さっきも言いましたけど、分析をする時に障害のある人だけを念頭において分析しないことというのが大事なんです。じゃないと、障害のある人のことばかり意識が集中すると、親子で来られたりした時に障害のあるお子さんがいらっしゃって、お子さんのことばかりみんな目向いてお子さんのためにとかといってやっていると、親御さん満足しない。親御さんは親御さんでやりたいようにやってもらって、満足して帰っていただいきたいんです。じゃないと子どもさん連れてきてくれないんです。子どもさんがまたやりたいって言っても、親御さんがあんなん面白くないじゃん、ただ連れて行っておまえが楽しいだけだろうと言ったら連れてきてくれなくなっちゃうから。だから親御さんにも楽しんでもらえるように、そういうためにはどうすればいいかというのを考えるのはとても大事なんです。 最小限のスキルで達成できるんです。とにかく最初はもう難しいのはできるだけ排除して、もうできるんだ、これならできるじゃんという、本当は子どもの頃にそういう経験いっぱい積んでおいてほしいことをやって、みんなでほめて、すごい、なんかもうプロになれるんじゃないですかとかいうような感じでこれならできるわってやったら、じゃあまた来てくださいねで続けてもらうし、じゃあこれもうできるようになったから、もうちょっと違うのにチャレンジしません?というふうに持っていって、違うこともやってもらってできる幅を広げていく。一緒にやれる仲間を増やしていく。こういうようなものがプランニングの段階で必要なんです。それを考えてプランニングする。そのための基礎としてアクティビティ分析というのが大事だよということなんです。 【スライド25】 こういうことですよね、当然。結局施設なんかでいつも困るのは、スタッフのスキルが、それができるスタッフがいないとか、それから備品がない、高くて買えない。買ったとしても入れておく倉庫がないとかなんていうのがよく施設では言われることなんです。ならどうしたらいいか。やっぱり工夫するということなんです。その工夫の仕方というのはあるんですけれども、こういうようなことも含んでアクティビティを選択していく必要がありますよということです。だから世田谷では今、貸出しとかやっていますから、そこでどういうものが借りられるのかというのを見ていくということですよね。 【スライド26〜27】 それでもうこれで最後にしましょう。 できるだけオリジナルなアクティビティを保つようにすることというのは、ここで面白かった、他でも同じことをやっている、だから他もやってみたいといった時に、ここでしかやってないことで他に行ったら、そこはまだやってないからできないとなったらやっぱり幅が広がっていかないから、できるだけ他に行ってもできるようになるようにプログラムを少しずつ進めていくという必要はあるということです。ここの独自のプログラムだけで終わらせないというのは大事だということです。必要な部分だけ改良するとか、個人個人で改良部分を変えるとか、これはもう散々言ってきたのでいいでしょう。 要は、人見知りとか場見知りとかもありますから、まず、例えば知的に障害のある方が来られて、一度も来たことがなかったらここ入れないというケースだってあるわけです。嫌だって言って。そうしたらそこでずっと見ていてもらっていいからと。無理して入らなくていいからと言って。見ていて、後半になって最後の10分ぐらいでちょっと一歩でも入ってきたら、もうそれで十分です。場見知りとか人見知りとかみんなあるんだから。それがだんだんに入ってきて、入ってきたらみんながやっているのはワイワイやっているのは嫌だってなったら、例えば自閉症スペクトラムだったらワーっていったら途端にこうなったりするわけだから、そうなったらそっちの隅っこで、ちょっと静かな所で道具だけちょっと渡して、そこでコロコロ転がしたりとか何かやっているだけでもいいわけです。それで十分。それでまた次来てくれたら、それでよかったということになるわけじゃないですか。そうやってこうプログラムというのは対象者を考えながら、しかも障害あるなし両方一緒に考えながらプランニングをして、実際やってみて評価をして、それでまた来てねという感じで来てもらえたとしたら、ちゃんとプログラムは我々の意図の通り進んでいるということになるということです。 こういうメソッドがあるので、この全3回を通してちょっとずつご説明もしていきますので、今日この講義としてはベーシックなところだけのお話とさせていただきます。ちょっと4分ほどオーバーしましたけれども、2時間ということで、最初の講義を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。